第1回木曜喫茶 〜Discussion like a Radio〜「タイニーハウス」の、概念の先に。

YADOKARIメンバーが夜の喫茶店で駄弁っているような、あれやこれやの盗み聞きラジオ「木曜喫茶 〜Discussion like a Radio〜」。

第1回は、「「タイニーハウス」の、概念の先に」。
YADOKARIの原点である「タイニーハウス」とは、そもそも何者なのか。その概念は、私たちの暮らしに何を問いかけるのか。
YADOKARIメンバーがお菓子をつまみながら、ざっくばらんなラジオのように掘り下げています。

タイニーハウスって、なんだろう

みちこ「この間、プロダクトチームで(タイニーハウスを二拠点目として所有できる)オーナーモデルの構想をした時、どういう名称がいいかなって。
「セカンドタイニーハウス」「セカンドタイニーホーム」とか考えたけど結果的に、ハードじゃなくて新しい別荘の持ち方、概念を伝える方が大事だよね、ってなったの。
その考えるプロセス自体が大事で、YADOKARI.netで発信しているのはどちらかというと「ホーム」寄りの概念の部分かもね。」

ゆうひ「用語の定義を決定するプロセスって、難しいね。一個の商品を作るときに、ついスピード感重視になってしまう場面もある。
以前全体定例会議でした、タイニーハウスかトレーラーハウスかの議論も、「みんなイメージしているものが違うんだあ」で終わってしまうと意味がないよね。本当の意味で、YADOKARIにとってのタイニーハウスって何だろう?」

みちこ「さわださんがタイニーハウスを知ったきっかけってなんですか?」

さわだ「俺らは、アメリカのタイニーハウスムーブメントから。カウンターカルチャー、より概念に近いものだった。」

みちこ「私は、simplife(タイニーハウスのドキュメンタリー)の映画を観てから興味を持った。その後、デンマークのタイニーハウスワークショップにも参加したけど、移動式ではなかったし、今思うととても大きい家だったかも。向こうの人にとってのタイニーハウスというか。笑
タイニーハウスの概念って、それを知った経緯にもよるかもしれないね。ゆきさんはタイニーハウスをどう知ったの?」

ゆき「私の経緯は、たまたま海外のタイニーハウスに住む人の記事を読んでだった。
興味を持ったのは、元々家ってローンを組むもの、移動できないもの、自分で作れないもの、という社会の常識があったけど、それを全て覆すもので、そこに可能性を感じて興味を持ったかな。」

ゆうひ「どうして自分で作って、実現しようとまで思ったんですか?」

ゆき「海外で実際に暮らしている人を訪れたとき、そのタイニーハウスの中に入るとその人らしさがわかって。
人の本来性を開花させるきっかけとして、可能性を感じたから。自分自身がそこに住んだ時どういう本来性に出会うか、興味があった。
しかもそれが特定の人じゃなくて、私みたいに不器用で力もない女性が自分で作れたら、一つの希望になるんじゃないかと思った。だから辛かったけど、やり遂げようと思ったかな。」

さわだ「思考停止しないことかもね。工夫しながら、それでいて快適に、ワクワクするか。人生のスケール、自分の心地よさってなんだろうと考えることとか。」

ゆうひ「ミニマリストをテーマに、youtuberでいかにモノを減らすかって動画があるけど、違和感を感じることがあって。」

ゆき「ミニマリスト競争がゴールじゃないよね。」

ゆうひ「そう。選び取れる状態、ミニマリズムを履き違えてはいけないなって思う。」

みちこ「私はついついものが増えちゃうけど・・・。でも、全てのモノの思い出を語れるんだよね。」

ゆき「でもそれって、いいんじゃない。減らすことじゃなくて、自分の本当に大切なもの、ストーリーがそこにあれば、持っていてもいいと思う。」

ゆうひ「タイニーハウスに住むことを実践する人と、しない人の違いって何だと思いますか?」

ゆき「暮らしの価値観を追求することってすごく時間がかかって。私もタイニーハウスに出会ってから実現まで、構想期間、暮らしを見つめ直す期間だけで5、6年かかった。
タイニーハウスの体験も、そこに住んだ時に自分が大切にしたいこだわりとの違いを知る。擦り合わせていく過程で、すごく貴重。だから、すぐ実現しなくていいと思うし、行き着く先が物理的にタイニーハウスに住むことでなくてもいいと思う。
出会って、気づいて、暮らしに向き合って、スタートを切ったこと自体が大切。あと、住んでからもゴールじゃなく常に向き合っている感じがする。」

さわだ「常に自分が鼓舞される感じなのかな。もし鼓舞され続けることが辛ければ、ずっとそこにいるのではなく、時々体験できる場、というのもいいかもね。」

見せる窓、閉じる窓

ゆき「YADORESIは元々、ゆうこさんと設計してる時、この小さい個室でもタイニーハウスの暮らしを疑似体験できるようにという思いがあったんだ。タイニーな空間の中に、どうモノや家具を収めるかの工夫、企画もセットだと思う。じゃないとただの狭い暮らしになって、快適に住めないよね。」

ゆうひ「なるほど。今自分はYADORESIに住んでるけど、空間が小さい中で、まだそこを最大限に活用できていない思いがあって。でもちょっとした価値観があれば、タイニーハウスじゃなくても一軒家でもアパートでも、暮らしの豊かさは表現できるのかもしれないね。」

さわだ「YADORESIも、はなれマドでの表現もできるしね」

みちこ「デンマークって、みんな家がおしゃれで。もてなす文化があって、家は人に見せるもの。リビングはパブリックな空間だから、あえてカーテンが開けっ放しだったりして。」

ゆうひ「外から何が見えるかで配置を決めていたりするよね。外の人のためにおいているというか。日本は優先順位が低いのかな?家がプライベートな領域だと思っているから?」

りおな「日本は、衣食住の住がちょっと後回しになっている気がする。借りれば部屋はあるし、サバイバルみたいなこともなく、家は寝る場所というイメージ。日本はパブリック側が頑張りすぎているかも。ちょっと無機質だけどね。」

さわだ「日本人は、どこかプライベートとパブリックの線引きをしたがるのかもね。閉まってることの聖域があるというか、分けたがる。」

ゆき「昔は縁側もあって、内と外と間の空間だったはずなのに。それって最近になってのことなのかな?」

ゆうひ「ハードがコミュニティを分断するものになりつつあるよね。元々庭は、本来は誰でも入っていい、見せるためのものだったけど、塀で囲われるようになってしまったり。昔は、近所の人のことがわかってるから安心して、オープンにできたのかも。」

みちこ「知るには自分も開けに行かないとだよね。私はこの間、引っ越しのとき、目にみえる家全部に挨拶に行ったよ。そうすると、引っ越しの時もみんな協力体制だった。笑
でも最初、東京に来てすぐは必要がないと思っていたかも。挨拶もしなくて、誰が住んでいるかわからないから怖かった。」

継承すること、不便さを楽しむこと

ゆうひ「りおなはどんな暮らしに興味がある?」

りおな「私は、人を受け止められるスペースが欲しくて。吹き抜けと暖炉があってみんなで場を共有している家がいいな。住み開きしたい。
小さい頃から実家がそうで。近所の誰かが家にいたり、井戸端会議にも使われるし。でも、共働きだとやりづらいかも。うちは専業主婦で、誰かが家にいる状態だから開けたというのもあるかもしれない。あと、家を購入したり、一箇所に定住するイメージもなくて。まだ数年は、色々なところに行ってみたいな。」

さわだ「日本ってどこか、長期休暇が申し訳ない、みたいな空気感があるよね。一定期間海外で仕事した方が良い価値観にできないかな。笑」

みちこ「北欧はサマーハウスがあって、みんな一年のうち数週間休暇を取れるから、サマーハウスを家族や親戚、友人と一緒に使ってる。サマーハウスは長持するし、資産として親から受け継がれていくの。」

ゆき「日本の別荘って次第に空き家になっていって、親から受け継がれるのも迷惑、ということもよくあるよね。」

みちこ「そうだね。日本の働き方的に、継続的に使うのが難しくて使われなくなっちゃうのかな。
今の時代空き家もあるのに、あえて新しいタイニーハウスだったり、ものを作る理由ってなんだろう。」

ゆき「どんな家でもメンテナンスが必須だけど、タイニーハウスは小さいから、自分で手を加えて補修できるメリットもあるよね。」

みちこ「確かに。北欧もDIY、自分で手を加える文化があるから長持することもあるんだよね。」

ゆうひ「日本の原状回復の厳しさってあるよね。建材も、メンテナンス不要、に価値が置かれる。昔はじーちゃんが屋根を塗って、それをみて学んで、とかもあったはずだけど、技術やモノを継承する文化がなくなってきているかも。」

さわだ「それが幸せなことだよね、豊かだよね、というのを伝えることは重要かもね。
制限さ、不便さを楽しむこと。例えば今みたいな(良いディスカッションの)空気感も実際に入ることで感じる、わかることがある。その場に、コミットするのが大事だね。」

振り返り

ゆうひ「みんなの暮らしに対する印象、ルーツが聞けたのがよかったな。プライベートなことに触れられる時間が意外とないから。この人数感もよかったかも。
これから暮らしについて色々なテーマで掘り下げてみてもいいかもね。例えばゆうこさんは窓の研究したいと言っていたからそれを深く聞いたり、縁側、日本の昔の暮らしを掘り下げてみたり。」

りおな「プロデュースの仕事でも思うのが、制限、不便さを楽しむことの重要性。公園など公共空間、所有していない場所を使いづらいけど。でもその世の中のルールに乗りこなしてる感覚って、大事にしたいし挑戦したい。」

みちこ「ゆきさんが言っていた、タイニーハウスが答えじゃない、可能性を広げるもの、ということが今日初めて腑に落ちたかも。
タイミングが来るかも、来ないかもわからないけど、まずスタートに立つことが大切で。YADOKARIのみんなはすでにそれぞれスタートに立っているから、みんなとディスカッションしたり交わることで、自分が想像し得ない結果になっていく面白さがある。個人がそれぞれ、どんな方向に進んでいくのかが楽しみ。」

ゆき「YADOKARIは個性が際立つ集団というけど、それぞれがただ個で活動するだけでなく、こうやってディスカッションしたり交わっていくことで、自分だけで見えない価値観や世界が生まれていく面白さがあるかもね。
例えば窓とか縁側とか全然違うテーマについてディスカッションすることで、結果的にタイニーハウスが持つエッセンスや目指したい世界の解像度が上がることもある気がする。」

ゆうひ「今日スタートに立った感じがするよね。正直この会に参加するか、普段の業務もあるから迷ったけど。だけど、いい時間だった。
こういう余白の大切さを日々の業務で忘れてしまう怖さがあるけど。忘れないでいたい。」

りおなメモ