学校を休む罪悪感は、もうコリゴリ。ラーケーションで変わる「皆勤賞と待ち時間」
子どものころ、平日に学校を休むなんて考えられなかったという人や、皆勤賞を取るために頑張って通学していた、という人は多いだろう。1997年生まれの筆者としては、その感覚は広く共有されていたし、実際、皆勤賞を取った子は表彰されていた。ところが、ここ数年の間で「遊ぶために学校を休む」ことを良しとする風潮ができつつあるのだという。
2023年9月、名古屋市を除く愛知県の全市町村でラーケーションが導入された。年に3回まで「遊ぶために休む」ことが可能になり、成績表では欠席扱いにならない―つまり、成績表に穴が開くようなことにはならないのだ。ラーケーションは事前申告制で、希望すれば3日連続で取得することもできるため、家族での遠出にも使えそうだ。この記事では、ラーケーションがもたらす恩恵と、ラーケーションが打ち破った「皆勤賞と待ち時間」という概念について掘り下げていく。
Leaning(学習)+Vacation(休暇)=Leacation(ラーケーション)、何ができるのか?
ラーケーションを取り入れた愛知県の解釈では、ラーケーションは「校外での自主学習活動」であり、活動の中に学びがあることが条件とされている。
無理に家族旅行などに行く必要はなく、家族みんなで料理をしたり、家の近くを散策したり、博物館や美術館で学んだり…といったこともラーケーションのひとつなのだ。
土日勤務で忙しい家族がいる場合、家でゆっくり話す時間が取れるというだけでも大きな癒し・学びにつながるだろう。
消えつつある「皆勤賞」。休まず学校に行くことの価値
ラーケーションが驚きを持って報道された理由の一つに、これまで支持されていた「毎日学校に行くことに価値がある」という考えを崩しかねない制度だったことが挙げられる。毎日学校に行くのが素晴らしければ、平日休むことにどことなく罪悪感を覚えることもあるだろう。
この「平日に休む罪悪感」は、出席停止や忌引きを除くすべての平日に出席した子に与えられる「皆勤賞」の存在が原因と考える動きがある。休まずに出席し続けることで表彰されるのであれば、その対極にある「出席停止・忌引き以外で平日に休む」ことはできるだけ避けたいものになるだろう。平日に休むためには、周囲が「それは仕方ない」と納得できるような理由がなければ難しい、とも捉えられる。
実はこの皆勤賞という概念は、年々消えつつあるのが現状だ。新型コロナをきっかけにやめたところや、その前から廃止に動いていたところもあるのだという。
毎日学校に行くことは、どこか根性論に聞こえたり、不登校の子どもを否定するような制度としてとらえ兼ねられないというのが理由だ。一方で、皆勤賞をモチベーションに頑張る子どももいることから、制度をそのまま続けている学校もあるのだそう。皆勤賞のポジティブな面とネガティブな面の、ちょうどよい具合を探っている最中のようだ。
ラーケーションのその先?長期休暇を「分割して」取得するフランス
実は、ラーケーションを用いて平日に出かけることは、混雑の緩和にもつながると言える。例えば、テーマパークや博物館は土日の方が混雑しており、家族旅行に出かけたものの、せっかくの休みのほとんどを待ち時間に費やすことも少なくない。対して、平日であれば人が少ないので、待ち時間が少なく、ゆっくりと見て回ることができる上、チケットも平日のほうが安かった!なんてこともある。
混雑緩和という意味で、ラーケーションの先を行く制度がフランスにある。住んでいる地域によって分割して休暇を取得するというものだ。この制度により、パリの子どもは休みだが、ボルドーの子どもは学校に通っている、という状況が生まれ、特定のリゾート地に一気に人が押し寄せるのを防ぐことができるとされている。
長期休暇は一斉に休むものだ、という固定概念を取り払い、みんなが過ごしやすい休暇を実現させる姿は、ラーケーションの先にある風景だとも言えそうだ。
学びの範囲を広げる新たな施策に注目
平日に学校を休むことに対する意見はさまざまだが、今回はラーケーションという新たな制度が子どもの学びを広げ、より多くの学ぶ機会を得られるようにしたという面に注目した。
変化に適応する考えが広まっていき、制度として取り入れる自治体が出てきたことで、この先にあるさまざまな課題-土日の混雑や学童問題など―についても変化が期待できるような、いい風の流れができたように感じる。子どもたち自身はもちろん、子育て世代も暮らしやすくなるような施策が、この先どんどん広まっていってほしい。
参考サイト:
愛知県.’愛知発の新しい学び方「ラーケーションの日」ポータルサイト’
‘https://www.pref.aichi.jp/soshiki/gimukyoiku/learcation.html’
NHK.’さよなら?皆勤賞’
‘https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210325/k10012934211000.html’
RÉPUBLIQUE FRANÇAISE.’Quel est le calendrier des vacances scolaires 2023-2024, 2024-2025, 2025-2026 ?’
‘https://www.service-public.fr/particuliers/vosdroits/F31952’