車いす生活も快適。「できる」を増やすバリアフリーなタイニーハウスデザイン

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環境に優しいライフスタイルを追求しようとしている若いカップルや、仕事も生活も安定してきた大人たちなど、多様なバックグラウンドを持つ人々からの注目が集まっているタイニーハウス。そんな中で、体が不自由な人や高齢者に向けて提供されているタイニーハウスがあることをご存じだろうか。

とはいえ、ただ小さい空間に住まいを移すというだけでは快適な住まいを手に入れることは難しい。彼らが暮らす小さな空間の中には、スライド式、折りたたみ式のデバイスや、ドロップダウン式に展開可能な家具など、彼らの苦手なことを理解し、「できること」を最大限引き出すことの出来る仕組みが備わっているという。

今回は、そんなタイニーハウスと体の不自由な人を繫ぐために取り入れたい、世界の「バリアフリーなタイニーハウスデザイン」を見ていこう。

車いすのアクセスにこだわったタイニーハウス

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まずご紹介するのは、アメリカのバーモント州に本拠を置く「LineSync Architecture」によるタイニーハウス。こちらは保健師、医師、理学療法士、作業療法士からの意見も加えながらデザイン設計を行い、特に特徴的なのは、「車いすのアクセス」にこだわった点である。

車いすでも生活しやすいよう、すべての設備が低めに設置され、ベッドの横に格納できるテーブルや低電力コンセントも併設されている。両開きかつ自動のエントランスで広々としたバスルームや、車いすで家に上がるためのスロープが必要な時にトラック上から降ろせる仕組みもあるのだ。また自力で移動しにくいシャワールームやトイレへは、ホイヤーリフトが運んでくれる。
車いす生活を営む人の自立した生活を促し、住む人の「できること」を最大限引き出してくれるタイニーハウスだ。

住人と一緒に考えるオリジナルタイニーハウス

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続いては、ドイツにあるタイニーハウスの建築会社「Tiny Rolli House」の事例。Tiny Rolli Houseは、持続可能なデザインやバリアフリーなどのアクセシビリティ分野に注力して運営している会社だ。

この家に住むコンラッドさんは、長年車いす生活だった。休暇のためにバリアフリーと謳うホテルに行っても、ドアの開きやスペース的な面などに不備があり、満足のいくバリアフリー空間を見つけることが出来なかったという。そんな彼のために作られた、こだわりが詰まったタイニーハウスを紹介しよう。

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今回は車椅子でアクセス可能でありながら、タイニーハウスの魅力が生きるデザイン性を取り入れることが課題であった。どうしてもバリアフリーを重視すると、「老人ホーム」や「病院」のような雰囲気になってしまうからだ。
このタイニーハウスは、木材や羊毛などの自然な素材を使用しながら、オシャレで持続可能な建築としてのデザインにもこだわったのだという。

とはいえ、そこに住む車いす利用者が独立して、動き回れるようにするための機能も妥協はできない。そこでTiny Rolli Houseは、車椅子からどこに簡単に手が届くか、どの位置なら引き出しが空くか、窓を開けることができるかなどをコンラッドさんと一緒にテストした。体が不自由な方の欠点に焦点を当てるのではなく、「どこまでできるか」に注目することを考えたのだ。

この家の特徴は、車椅子ユーザーが快適にタイニーハウスにアクセスできるようにする「スロープ」。タイヤのグリップ力を高めるため、デザイナーズフロアを敷いたデザインになっている。
また、
・キッチン下に取り付けた「引き出し式冷蔵庫」
・手の届くところにある「シンクとコンロ」
・車椅子でアクセス可能かつ上下移動できる「ヒーターテーブル」
などを取り入れ、立ち上がることなく利用できる家具家電設計を実現した。

そして、お風呂場には車いすから移動しやすい「シャワー室のベンチ」を。どうしても車いすから離れなければならない状況でも自力で動けるように、車いすとの高さを合わせ、無駄なグリップのないデザインを取り入れているという。

重要なものが小さなスペースにまとまっていることで、車いすの方でも、ただ振り向くだけで何にでも手が届くのだ。 この狭いスペースでもコンラッドさんに快適な生活環境と休息できるリラックス空間を提供できることとなった。

バリアフリーなタイニーハウスにおける大きな課題

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バリアフリーなタイニーハウスを手に入れるにあたり、大きなハードルとなるのがその費用だ。全自動、精巧な折り畳み式家具など、設計にも技術にもお金がかかってしまうだろう。
しかし、バリアフリーにしてくれる比較的安価なアクセサリーを使用することも出来るという。

例えば、バスルームで言うと
・サポートレール
・グラブレール
・シャワーシート
などが挙げられる。

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今の体調に合わせて設計しまうと、今後どれだけ動けなくなるか、どれだけの操作ができるかの見通しを立てるのは難しい。先に費用をかけるより、まずは最低限のデザインから挑戦していくことも1つの手段だ。
大幅にアクセシビリティデザインに振り切るのは全ての人にとって簡単なことではない。小さなポイントからピックアップしてアクセサリーを利用し、「できること」を最大限に引き出したあなたに合ったタイニーハウスを少しずつ育てていくのもいいかもしれない。

【参照】
アクセシブルタイニーハウス:自由でアクセシビリティのある暮らし
車椅子でアクセスできるタイニーハウス:障害のある人にとって大きな選択肢
小さく暮らす: 家具とアクセシビリティ
タイニーハウス革命 – アクセシブル
ホイールパッドタイニーハウス – LineSync Architectureによるアクセス可能なタイニーハウス



QUOTE

バリアフリーな建築デザインを取り入れることで、「できること」を増やしていく。
小さな工夫から少しずつ「誰でも使えるタイニーハウス」を育てていこう。