自然と自然の間に人間がいるだけ。循環の一部になれるタイニーハウス

via: archdaily.com

「最近、いつ、どこで自然を見た?」と聞けば、さまざまな答えが返ってきそうだ。駅前の花壇や、窓ごしに見た空、何ならテレビに映った花々だって「見た」に入るだろう。

質問を変えてみよう。「最近、いつ、どこで自然を感じたか?」この問いに対し、返事を詰まらせる人もいるはずだ。なぜなら、自然の仕組みや自然そのものに対して思いを巡らせる環境や機会、そして心の余裕を、みんながみんな持っているわけではないからだ。

自然と自然の間にサンドイッチされてみる

都会での暮らしの中で自然をめいっぱい感じることは、決して簡単なことではない。そんな常識を覆すのがタイニーハウス「Ursa(ウルサ)」だ。

Ursaは、ポルトガルに拠点を構える建築デザイン事務所「Madeiguincho(マディギンチョ)」がつくったタイニーハウス。
太陽の光や熱といった自然のエネルギーを機械を介さずそのまま用いる「パッシブ・デザイン」を採用したこの住まいは、暮らしの快適さはそのままに、自然の力を感じながら生活できる仕様になっているという。
Ursaで暮らす人々は、自然をどのように感じているのだろうか?場所を問わず、自然とのつながりを感じるための工夫について、詳しく見ていこう。

via: archdaily.com

Ursaの素晴らしさは、生活用水の流れをたどるとよく分かる。
天から降り注いだ雨は、粒子フィルターでろ過されたのち、Ursaが備えた650リットルもの水を貯える貯水機に送られる。その後、必要に応じて加圧され、キッチン、バスルーム、シンクといった水回りの機器へと回されていくのだ。

人間が使用したすべての水は再度ろ過され、水やり用の水として再度土に染みこんでいく。雨水が人間の中や生活圏を通り、地面に戻る。上から下へという自然の流れの中に、当たり前のように人間の暮らしが組み込まれているのだ。

排せつ物を堆肥にして「自然の循環」に関わる

Ursaの特徴はろ過システムだけではない。室内に電気ドライトイレを搭載しており、人々の排泄物をただ廃棄するのではなく、植物を育てる堆肥として利用することができるのだそう。

自然が育てた食物を食べ、その成長の糧となる形で自然に還すことは、自分が自然のなかの一員であることに加え、その循環に前向きな形で関われることを思い出させてくれるだろう。

暮らしからずっと遠くにある自然

via: archdaily.com

一度、自分がいる部屋を見渡してみてほしい。蛇口をひねれば飲み水が出て、スイッチを押せば電気がつく。それらがどうやってその場に来ているのかということまでを考える必要はなく、ただ「こうすればこうなる」という思考になってしまってはいないだろうか。人々が暮らしやすい空間が作られていくことのよって、自然とのつながりを感じる機会が少なくなってしまうのかもしれない。

好きな時に水や電気が使えて、指先ひとつで買い物が終わるような便利な世界で暮らす私たちにとって、自然は時に遠いもののように感じられるだろう。私たちは、人間が自然に与えたり、与えられたりしながら日々の生活が成り立っていること、そして自然の循環の中に人間がいて、自然と人間がつながり合っていることを思い出す必要がありそうだ。

Ursaのような住まいの仕組みがあれば、自然とのつながりを再度感じることができる。

日々の暮らしに困らない程度の便利さ、気分を明るくするシックなデザインを保ちつつ、自然をめいっぱい感じることのできる空間づくり。自分が過ごす空間を作ったり、選んだりする際の参考になれば幸いだ。

Via:
designboom.com
archdaily.com