【海外事例】バウハウス・バスがくり広げる、デザインと教育の脱植民地化を巡る旅
場所にとらわれない自由な暮らしをグッと身近なものにしてくれるトレーラーハウスやキャンピングカー。
彼らが自由にしてくれるのは、住まいだけではない。教育、アート、地域コミュニティなど様々なプラットフォームを、より自由なものに変容させている。
今回ご紹介するのは、バウハウス・バスのプロジェクト。デザインの脱植民地化が重要なテーマとして掲げ、世界各地を周りながら、アートや教育の新たなあり方を提案しているという。
4都市を巡るバウハウス・バス
バウハウス・バスのプロジェクトは、バウハウスの設立100周年を記念し、2019年1月に行われた。
その目的は、バウハウスの理念を探求し、デザイン実践における新植民地主義的な権力構造に挑戦すること。ベルリンの建築家ヴァン・ボ・レ・メンツェルによって設計された15平方メートルのモバイルビルディングであるバウハウス・バスが、このプロジェクトの中心にある。バスはデッサウ、ベルリン、キンシャサ、香港の4都市を巡り、各地でワークショップや展示を通じて、地域コミュニティとの対話を促進した。
小さな声に焦点を当ててつくられた空間
バスの内部には、展示やワークショップを開催できるスペースと、バウハウスの歴史に関する書籍が揃った読書室があり、訪問者はこの空間で学び合う。デザインの脱植民地化が重要なテーマとして掲げられており、プロジェクトは、現代のデザイン実践に埋め込まれた植民地的な態度に対抗することを目指している。特に、ヨーロッパ中心の視点が支配するデザインの議論において、グローバルサウスの声や実践が疎外されてきたことに焦点を当てている。
このツアーは、地域コミュニティとの関わりにも力点が置かれている。ワークショップやシンポジウムを通じて、遺産や社会正義に関する議論を深めることが意図された。バウハウス・バスは、従来のデザイン教育に対抗し、地域の知識と実践を優先する「アン・スクール」としての新しい教育モデルを提案したのだ。これは、確立された西洋の方法論から脱却し、協力的な学習体験を通じて参加者が自らの知識を広げる機会を提供することを目指すものだ。
このプロジェクトは、デザイン実践と教育に内在する権力のダイナミクスについても探求している。誰が現代性を定義する権限を持つのか、そしてその定義が異なるコミュニティに与える影響について考察する。この観点から、権力構造や不正義、暴力といった大きなグローバルな問題に取り組むことを目指した。
バスは2019年1月にデッサウを出発し、ベルリンでの「100年バウハウス」のオープニングフェスティバルに参加した後、キンシャサ、そして香港へと向かった。各都市でのイベントは、地域の特性に応じて異なる内容が盛り込まれ、参加者がデザインと現代性の関係を自ら交渉する場を提供した。
このプロジェクトが示唆するものは、バウハウスの遺産を再考し、デザイン教育の新しい可能性を探ることの重要性だ。ヨーロッパ中心主義に関する問題を掘り下げ、デザインの多様性を尊重し、グローバルな視点での対話を促進することによって、より包括的なデザインの理解が進むことが期待された。このバウハス・バスのプロジェクトは、デザインの未来を形づくるための重要な一歩として位置づけられている。
Via:
archdaily.com
dezeen.com