ロンドン・テムズ川に浮かぶ。アンティークなハウスボート「Chinampa Houseboat」
イギリスは、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの連合王国。そのイングランドの首都であるロンドンは、非常に長い歴史を持つこの国の中心で、世界の様々な人種があつまり、モダンと伝統が相まった様相をなす街。
ロンドンは街の中心を流れるテムズ川とともに発展して来た。
古代から文明は川を中心に発展してきたが、近代化とともに次第にその関わりが薄れていく。しかし、テムズ川では、現在でも人々の暮らしと深い関わりを持っている。その一つは「ナローボート」と呼ばれる、家と船が一体になったボートの存在だ。
テムズ川を見渡すと、このようなボートが停泊しているのをよく目にするだろう。
実際にここで衣食住の生活をしている人も多く、イギリスでは決して珍しいことではない。
今回紹介するChinampa Houseboat (チナンパ・ハウスボート) は、全長17.6メートルほど。ファッション、ランドスケープ業界で働いていたオーナーによって設計された。
Chinampa ( チナンパ ) とは、古代メキシコのアステカ人がしていた農業の手法で、浅い池や湖の下に農作物の植えてある庭を浮かべるというもの。つまり、この船は「水上に浮かぶ庭」と言ったところ。
その名前のとおり、甲板や室内でも多くの植物を育て、非常に余裕を感じる暮らしぶりが想像出来る。
想像以上にエレガントで優雅な室内は、アンティークでレトロな調度品の数々が丁寧に陳列されている。この写真だけ見ると、とてもボートの中とは思えない。
効率よく配置された窓からは自然光を十分に取り込み、光が白い壁に反射して、より室内を明るくする効果が。曇天が多いイギリスではとても有り難い。壁に取り付けられたベンチ下の収納スペースなど、空間の有効活用もしっかりと考えられている。飾られた生花やドライフラワーにも優雅な暮らしぶりがうかがえる。
リビングルームはかなり奥行きがあり、重厚な家具を置いても圧迫感を感じさせない。
アンティークなデザインのキッチンでは、西洋アカマツを使ったオーダーメードの食器棚が、周りと調和して落ち着いた雰囲気を醸し出している。
寝室はダブルベッドをおいてもまだまだ余裕の広さだ。
寝室とリビングの間の天井には非常に大きな、木のフレームで作られた天窓があり、そこから太陽光が差し込む。
日中の電気代を節約できるだけでなく、欧州でもかなり北のほうにあり、冬はかなり冷え込むロンドンでも暖かに過ごせる。さらに換気効果もあり、中で植物を育てるにも最適な場所となっており、まさしくこれこそ「水上に浮かぶ庭」だろう。
このボートは、4x 130wのソーラーパネルを搭載していて、電気はそこから供給し完全にオフグリッドでの暮らしも可能になっている。
もちろん太陽光だけでは夜は寒いので、Webasto (ウェバスト)の浄化器、高機能温水システムを搭載し、ラジエーターも船内全体に張り巡らされている。
薪をもやす暖炉もあり、寒さが厳しいロンドンでもこれがあれば安心だ。
さりげなく飾られたインテリア雑貨や、絵画もセンスの良さとこだわりを感じ、日本のこけしや鉄瓶も不思議と室内の雰囲気とマッチしている。丸窓が「ボート」ということを思い出させてくれる唯一の象徴のようだ。
洗面所もしっかりとスペースがあり、ラグジュアリーなバスタブも設置。シャワーだけではなくて、湯船につかることも可能かも。
現在は、東ロンドンのHaggerston ( ハガーストン ) という住宅地の停泊地にボートをつけているそうだ。
このようなモバイルハウスとして、川に沿って転々とできる点もこのナローボートのメリットのうちの一つだ。
世界に名だたる大都市ロンドンでも、高騰する家賃や、ご近所トラブル、シェアルームの増加に伴うプライバシーの欠如と言った住宅に関する様々な問題が存在する。
そんな中、このように昔の文化を思い起こすボートの暮らしを、現代的な装備でしかも優雅に、そんな暮らし方が一つのソリューションとして注目を集めている。
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