ジェンダーニュートラルなおもちゃから考える、子育ての可能性
男の子には、カッコいい恐竜や乗り物のおもちゃを。
女の子には、可愛らしいぬいぐるみのおもちゃを…..。
一昔前まではこのように、子どもの性別によっておもちゃが決められてしまう風潮があった。しかし最近では、性別に関係なくどんな子どもも遊べる “ジェンダーニュートラルなおもちゃ”の開発が進んでいる。
2023年8月に公開されるバービー人形をテーマにした映画、『Barbie』が話題を呼んでいるが、そんなバービー人形もジェンダーニュートラルになるべく、近年大きな変化を遂げているおもちゃブランドの一つだ。
ジェンダー平等に向けた動きやLGBTIQの社会的認知度向上が進む今、改めてジェンダーニュートラルなおもちゃと子育てのあり方について考えていこう。
「ジェンダーニュートラルなおもちゃ」の持つ意味合い
社会学的には、いわゆる「女の子らしさ・男の子らしさ」は、幼い頃から刷り込まれていくものだと言われている。子どもが触れる機会の多い “おもちゃ”も、そんな刷り込みを植え付ける大きな要因の一つ。
例えば、女の子向けのおままごとのおもちゃは「女性が家事/ケア労働をするもの」という性別役割を再生産しているとも言える。
また、LEGOのような組み立ておもちゃは男の子向けのイメージが強く、それによって女の子の空間認識能力が伸びる機会が奪われてしまっているのではないかとの指摘もあるのだ。
性別に関係なく遊べる “ジェンダーニュートラルなおもちゃ”は、子育てにおいて大きな可能性を秘めている。
男女の役割分担にとらわれず、子どもたちが自由に協力し合うことができる環境を作ることができるのに加え、LGBTIQの子どもたちがより自分らしさを表現することも可能になるだろう。
アメリカの大手小売業者であるTargetは、2015年に男の子用・女の子用と分けた売り場を廃止。
日本でも2021年に、業界団体が主催する「日本おもちゃ大賞」での「ボーイズ・トイ部門/ガールズ・トイ部門」の区分を廃止するなど、性別を問わないおもちゃの実現に向けた動きが進んでいるのだ。
ジェンダーニュートラルなおもちゃの実現に向けて
“Free Of Labels”を打ち出す、新しいバービー人形
1959年の発売以来、世界各国で人気を博してきたバービー人形。そんなバービーシリーズの生みの親・Mattel社も、ジェンダー規範に沿った子育てを脱しようと、積極的に動きを進めている。
着せ替えおもちゃとして長年人気が高い一方、近年では「過度に細身の体型を肯定することで、若い女性に悪影響を与えている」と、批判の声が挙げられてきた。
そんな中、Mattel社は2019年に新しい人形シリーズ“Free Of Labels(=ラベルのない)”を発表。人形のボディには、男性や女性といった区別はなく、髪型や服装などの外見を自由自在にカスタマイズできる。
またMattel社は、宇宙飛行士やエンジニアなど女性の職業選択に入りづらい職業をモチーフにしたバービー人形も発売し、ブランドビジョンである「You Can Be Anything=“何にだってなれる”」のメッセージを届けている。
“ジェンダーインクルーシブ”をモットーにするLEGO
デンマークに本社を置くおもちゃメーカー・LEGOは、2021年10月の国際ガールズ・デーに際し、おもちゃを選ぶ時の性差について調査を実施。
その結果、71%の男の子が、女の子向けのおもちゃを使うことでいじめられるのではないかと不安を抱いていることがわかった。親世代においても、その不安は顕著に現れている。
調査を受け、LEGOは「女の子向け・男の子向け」といった性別を規定する商品への表記を撤廃。元々、男の子が遊ぶイメージが強かったLEGOだが、女の子も遊びやすくなるよう「Ready fot Girls」のキャンペーンを実施している。
LEGOグループは性別を理由に誰かを排除しない、 “ジェンダーインクルーシブ”の考えをもとに商品開発を行っており、「子どもたちが何の制約も受けずに創造性を発揮できる社会の実現に尽力する」としている。
男の子もお世話ごっこができる、赤ちゃん人形「あおくん」
ジェンダーニュートラルなおもちゃを開発する動きは海外のみならず、すでに日本でも進んでいる。
お世話ごっこが楽しめる「メルちゃんシリーズ」を発売しているパイロットコーポレーションは、2016年にシリーズで初めてとなる、男の子の赤ちゃん人形「あおくん」を発売。
パッケージを水色にするなど工夫をした結果、購入する男の子の割合が、2%から15%まで増加したと言う。
これからの子育てを考える
子どもの健やかな成長を育むことのできるおもちゃ。
今まで無意識に「男の子向け・女の子向け」と、子どもの性別に合わせておもちゃを選んできた親も多いのではないだろうか。
しかしこの機会に、そんな先入観を見直すことはきっと意義があるはずだ。なぜなら子どもだけでなく、親にとっても新しい視点が得られる可能性があるからだ。
子どもにおもちゃを買ってあげる時は、まずは本人の好奇心のままに、欲しいおもちゃを聞いてみよう。そして「本人がなぜそのおもちゃを欲しいと思ったのか、なぜワクワクしたか」など、そのおもちゃが気になった理由や気持ちを聞いてみよう。
それによって「この子はこんなことに興味関心があるのか」「それなら、もっとこんな挑戦もさせてあげたい!」と、今まで似なかった気づきやアクションに繋がるかもしれない。
ジェンダーによる先入観を捨てることで、親の立場としても、より自由で可能性に溢れた子育てができるようになるはず。こんなワクワクする子育てを、ジェンダーニュートラルなおもちゃから始めてみてほしい。