必要なところだけ照らす。心地よい空間をつくる北欧の灯り
暗くなったら電気をつける。こうこうと光るライトの下で、時間を忘れて作業に没頭してしまうことはないだろうか。
明るい場所にいると「動かなくては」と思うのは人間の性なのかもしれない。
光の色によっても、私たちの気分は大きく変わる。
たとえば、暖かいオレンジ色の光の下では穏やかな気持ちになったり、スッキリとした青白い光の下では集中力が高まったり。
照明は時に音楽のように、私たちのマインドセットや、過ごしたい空間を演出してくれる。
特に北欧では、冬の日照時間が短く、照明を選ぶということは豊かな暮らしをつくるために欠かせない大切なもの。
今回は光の明るさや色、配置をたくみに使い分ける北欧の照明術から、心地よい日々をデザインする方法を考えていきたい。
食卓を包みこむペンダントライト。皆が集う場所にはとっておきの灯りを
対話を重んじる北欧諸国では、家族や友人と食卓を囲む時間がとても大切にされている。皆で集い、今日あった出来事や気持ちをじっくりと共有するのだ。
ダイニングテーブルには、その時間を彩る照明が欠かせない。
テーブルの上60cmほどの位置にペンダントライトが吊るされている光景が特徴的だ。低い位置にライトを置くことで、手元をしっかりと照らしながらも、食卓を優しい光のベールで包むよう工夫されている。
照明によって、人々を一つの場所に集わせ、リラックスして話ができる空間を作り上げているのだ。
何かをするお供にはタスクライト。メリハリをつけて気持ちを整える
読書に編み物、たまには絵を描いてみたり・・・。お家時間を大切にする北欧の人々は、実は一人で黙々と過ごすことも多い。
ほっと一人時間を楽しみたい時には、手元を優しく照らす灯りを。
タスクライトは読書や書き物をする場所に置き、“何かをすること”を助けてくれる。
光が届く範囲が限られる分、空間に明暗をつけやすい。「この場所に来たら作業をする」と気持ちを切り替えたり、逆にその他では何もしないと決めてみたりする。そうすることで、自分に必要なものをコントロールし、生活に余白を生み出せるのではないだろうか。
光を組み合わせて“Hygge”な空間を
“Hygge(ヒュッゲ)”とはデンマーク語で、心地よいを表す言葉。
お気に入りのライトを必要に合わせて置いていけば、いつのまにか部屋全体が暖かい光に包まれ、心落ち着く空間ができあがる。
ポイントは、天井や壁など全体を照らす「アンビエントライト」と部分的に照らす「タスクライト」をうまく分散させること。頭の片隅に置きながら暮らしの動線をつくると、奥行きのある素敵な部屋になりそうだ。
人に寄り添った灯りと暮らしを見つめ直す
北欧の照明は、デザインの美しさがフォーカスされがちである。だが、長く暗い冬を家の中で過ごす人々が、毎日を少しでも楽しく、心地よく暮らせるように工夫を凝らし、進化を遂げてきた。
普段何気なく点ける灯りは、あなたにとってどのようなものだろう。心を豊かにするもの?それとも、すり減らしてしまうもの?
まずは一晩だけで良い。太陽が沈んだ後はあえて自然に逆らわず、照明を点けないで過ごしてみてはどうだろう。必要ならば、その場所にだけ光を灯す。
大切な時間に添える灯りを見つけることで、日々の暮らしに欠かせない、自分にとっての豊かさが見えてくるかもしれない。
via:
ThanCa Ltd. /心地よさを追求する北欧流の照明選びのポイント