島国なのに日本は海と「距離感」がある?~ハワイやカーボベルデから海との共存法を学ぶ~


島国である”日本”に住む我々が、リゾート地へ行きたくなる。
割と海沿いの地域に住んでいる人でも、沖縄、湘南、はたまた海外に旅行感覚で「海」を求めに行く。
思っているより身近なものなのに、「海」を遠いものに感じてはいないだろうか。
そして「海」との距離感があることで、環境問題(とりわけ海岸・海洋問題)をも遠いものになってはいないだろうか。

今回はこの「海」に対する意識や共存法を、海との暮らしがステータスであるハワイ、カーボベルデの取り組みから学ぶ。
そして「海と共に生きる」ことの魅力や大切さとは一体何かを考えていこう。

日本は島国なのに海との「距離感」がある?


リゾート地や旅行先として海を指定する日本人が多いのも分かる。
「内陸の人は海から遠いから」
「きれいな海が近くにないから」
そういう人もいるかもしれない。

しかし島国である日本は、海からの恵みである「海鮮」がどこでも食べられる。
また水族館の数は、世界で1位、2位を争うほど多い。
気づいていないだけで、世界的に見れば海との距離は近く、素敵な海がある国なのだ。

https://uminohi.jp/
https://uminohi.jp/

日本財団によって2年に1回実施されている「海と日本人に対する意識調査」。
2022年にも行われたのだが、この結果によると「海に親しみを感じる」人は37%であった。
また「この1年で海へ行っていない人」と「行った人」で、「海への愛着や関心」にも相関があるのも分かっている。
やはり海との「距離感」があることで、海の環境問題への関心が少ない人も多いのだ。

この日本の素敵な海を守るためには、そもそも日本人が少しでも海との「距離感」を縮めなければならない。
続いてはそんな自国の海を守る国の取り組みを見ていこう。

【ハワイ】海を愛する”ロコ”達の取り組みは?


まずは言わずと知れた常夏のリゾート地「ハワイ」。
なんとなく
「みんなサーフィンしている」
「みんなビーチでまったりしている」
というイメージもあるだろう。

https://sotokoto-online.jp/
https://sotokoto-online.jp/

日常に海があるハワイの社会目標は「ゼロ・ウェイスト」。
ハワイには「ゼロ・ウェイスト・ショップ」というものがあり、量り売りでリフィル(詰め替え)して購入できるお店が出ている。
その中には、ビーチクリーンアップ(海のごみ拾い)で拾われたマイクロプラスチックを再利用するアップサイクル商品も販売されているのだ。

https://www.allhawaii.jp/
https://www.allhawaii.jp/

また「ゼロ・ウェイスト・オアフ」の取り組みには、「Full Cycle Takeout」がある。
これはテイクアウトでも持ち帰り用容器(タッパー)などを使用したり、100%リサイクル可能な容器にしたりと工夫されている。
返却ステーションも町中に設置され、しっかりと再利用できる仕組みなのだ。

島民全体で協力しなければ実現できないゼロ・ウェイスト。
日常で海が身近にあり、愛があるからこそ掲げられる社会目標なのかもしれない。

【カーボベルデ】海で国を支えるための取り組みは?


アフリカ大陸の西側に位置する「カーボベルデ」をご存知だろうか。
あまり知らない人もいるかもしれないが、「カーボベルデ」も旅行先としては人気の島国である。
この国は観光業がGDP比の2~3割程を支えているが、水やエネルギーの資源不足の問題もある。
そのため海と繊細に関わり、海を守ろうとする活動が盛んであるのだ。

https://www.aljazeera.com/
https://www.aljazeera.com/

特に有効だと思ったのが、「観光のための教育」。
子供のころから国の観光業、そして環境問題を学び、海を守る意識を持ってもらう実践的な教育をしている。
自分たちの国にどんな魅力的な資源があるのか、そしてその資源がどう国の役に立っているのか。
小さいころにその課題に触れておくことが、国づくりの基盤にもなっているのだ。

カーボベルデは「The World’s Ten Best Ethical Destinations(世界の倫理的な発展途上国ベスト10)」にも選ばれている。
男女平等、LGBTの権利、環境問題、報道の自由に献身的な活動をしてきた国が選ばれるものだ。
比較的貧しい国でありながらもこのランキングに載るのは、観光業で国を支えていくためにも、海のみならず全ての問題に島民が自分事として真摯に向き合っているからではないだろうか。

「海と共に生きる」ことの魅力や大切さとは?


ハワイやカーボベルデの取り組みを見て気づいたのは「海から与えてもらうばかりではない」ライフスタイルだということだ。
美味しいもの、楽しいもの、癒しになるもの、美しいもの全て、私達が維持していかなければ受け取ることができない。
それができれば、フェアな関係性で「海と共に生きる」ことができる。
今のままでは日本は海と距離感があるままだ。
今からその距離感を変えるのであればハワイのように海へ赴く時間を作り、カーボベルデのように子供へ海やその環境問題に触れる時間をあたえてあげることではないだろうか。

自分たちの生活に欠かせないリソースであることを皆で認識することから始めていこう。
そして海から素敵な恵みを受け取り、また自分たちが良い形で海に還元できる関係性が大切なのだ。
その関係性が成り立った時、海と私たちが繋がる魅力的なライフスタイルがやっと成立するだろう。

【参考】
2022年「海と日本人に関する意識調査」
「海と⽇本⼈に関する意識調査」 について 2022年7⽉15日
ゼロ・ウェイストに注目すると、今のハワイが見えてくる
Zero Waste Oahu (ゼロウェイストオアフ) の取り組み
カーボベルデのリサイクル取り組みは世界のゴミと対峙する
カーボベルデの新たなチャレンジ