日本が取り入れるべき「都市広場」の形 とは?~ライフスタイルを支える公共空間~


全世界を震撼させた「新型コロナウイルス」。今までに経験したことの無いような孤独感や疎外感を感じた方も多いのではいだろうか。
しかしこのコロナ禍で逆に必要性が再発見され、デザイン性が再考され、活用されたものもあるのだ。その中でも公共空間である「都市広場」の必要性・重要性が注目されている。例えば公園や市場のようなものが挙げられるだろう。

様々な公共空間がある中で、どうして「都市広場」が特に注目されているのか。それは上手く活用することで、都市広場が「多くの人のニーズを満たす場所になり得るから」である。電車=移動、レストラン=飲食、テーマパーク=娯楽のように、公共空間にもニーズが限られているものが多い。しかし都市広場(公園や地域の広場なども含む)は、人によって使い方が違い、その人たちが交わる機会を作り出してくれる場所なのだ。

今回は、新しく再考された世界の都市広場をご紹介していく。都市広場が私たちのライフスタイルにとってどれほど重要なものなのか、一緒に考えていこう。

日本の「都市広場」の特徴


日本は海外、とりわけ西欧に比べて広場が少ないと言われている。そこには日本人の意識に起因があるようだ。
空間意識として日本人は比較的に社会の出来事に関心が薄く、都市を周りの人と共同的に営もうとする意識が低い。それに対し特に西欧では、個人の社交を行う場として公共的な場所への関心が高いと言われている。

そのため西欧では、共同の敵に、家族以外の団体で防衛する闘争の歴史が多かったことから、個人間が利害に基づく自分のコミュニティづくりのために昔から公共空間が必要とされていたようだ。
しかし日本人の意識の根底にあるのは、家族が1コミュニティであり、家の中と外との区別をつける傾向だ。室内で靴を脱ぐ習慣もそこから来ているそう。そのために社交的な公共空間がそもそも少ない。
そんな中コロナ禍を経て、日本でも少しずつ都市空間や、そこで育むコミュニティとライフスタイルの必要性が見直されてきたというわけなのだ。
続いてはそんな日本が今取り入れるべき世界の都市空間デザインを見ていこう。

都市部空間や人々すべての健康を考えた公園(バルセロナ)

https://www.metropolis.org/
https://www.metropolis.org/

大都市においては人が多く、多くの人々が生活することによって発生する「CO2排出量の増加」や「ヒートアイランド現象」が主な問題点の1つとして挙げられる。そして環境に悪影響が出て、そこに住む人々にも悪影響がでてしまうという負の循環が生まれてしまう。

都市広場づくりにおいて、住む人々はもちろん、空間の健康をも考えることが大切なのだ。都市部や都会に住みながらもライフスタイルを大切にしている人にとって、身近でアクセスしやすいウェルビーングな空間。そんな場所を実現するためにデザインされたのが、バルセロナ都市圏の「レ・プラネス公園」だ。

・周りに木々を増やすことによる温暖化対策とリラクシング効果
・日陰を作ることで気温上昇を抑制
・自動車交通を制限することで排気ガス量を減少させる

緑が少ない都市部に自然を取り戻して、溢れかえる車や人々から距離を置き、環境にも人々の体にもウェルビーングな空間を実現したデザインだ。

https://img.archiexpo.com

また都市部における問題には「子供が安心して遊べる空間が少ない」ことも挙げられているようだ。

このレ・プラネス公園では、地面にゴムが敷き詰められたことで安全性を担保し、子供の感覚を刺激する遊具やアクティビティを設置している。完全に包括的なこの公園のデザインでは、都市と切り離した空間で親の目が届きやすい構成にもなっているようだ。
このように子どもが安全で健康的な空間で遊ぶことで「身体的・精神的健康」が、想像力を掻き立てる場所で遊ぶことで「好奇心・創造性・ポジティブな行動と思考の促進」が期待されるという。

空間にとっても、人々にとっても、自然ある持続可能で健康的な空間を都会に生み出し、子供たちの成長にとっても有効的なを提供してくれている都市広場の例である。

人々の精神的回復を考えた都市部の広場(コロンビア)

https://www.metropolis.org/
https://www.metropolis.org/

新型コロナウイルスによるパンデミックを通して、人々の「レジリエンス(精神的回復)」のために都市広場を活用する考えも生まれてきた。精神的ダメージの原因として大きく上げられるのは、孤独によるストレスだという。友達と関わる機会、友達を作る機会、人とコミュニケーションをとる機会が減ってしまったことで孤独を感じることが増えたのである。孤独が健康に与えるダメージも多くあることから、人々のコミュニティを保たせ、活性化させるための都市空間も必要になった。

コロンビアのメデジンにある「ボリバル公園」は、そんな課題に寄り添った都市広場である。
この広場は緑化スペースを増やすだけでなく、公共スペースを増やすことに尽力している。少しでも社交的エリア(スポーツ・遊びのためのフリースペース)を増やそうと道路を閉鎖する取り組みだ。レストランのテラスを拡張できたり、自転車が通れるエリアが増えたりと、活用目的を幅広くすることができる。

何かを食べる、何かを買うという目的ではなく、ただゆっくりと過ごせる場所は都市では特に少ない。都市に住んでいても自動車の騒々しい空間から離れて、自分のプライベートを外で過ごせる場所が必要になってくる。新たなコミュニティが生まれたり、既存のコミュニティを持続させられたりする都市空間により、人々を孤独によるストレスから少しでも回復できるように工夫しているのだ。

公共空間である「都市広場」は、”公共”といえるだけの幅広いニーズを満たさなければならない。どんな人でもライフスタイルの一部にでき、人との繋がりを認識させるという”多様性”あるレジリエンスの役割を都市広場に持たせた例である。

パンデミックが私達に再考&促進させた「公共空間」の形とは


パンデミックをきっかけに日本でも「当たり前だった空間・時間・場所」が再考され、促進されてきている。
既にあったZOOMのようなインフラ、リモートワークという柔軟な働き方・住まい方の促進は目まぐるしかった。コロナ禍では人に会わず、如何に効率的に暮らすかが重視されていたのだろう。しかしその中で起きた問題が、人と会う機会の減少による社交性の低下や、心身的ストレスである。外に出ないことで、人との繋がりが減っただけでなく、心身ともに不健康な生活習慣になってしまったのだ。

そんな柔軟な働き方・住まい方の促進によって生まれたライフスタイルの課題解決のため、再考されたものの1つが「都市広場」なのである。もっと気軽に人と交流し、自然と触れ合える公共空間ができることは人々のライフスタイルを心身ともに健康的なものにしてくれる。また多様なニーズを満たしていけるようなオープンスペースを確保することは、都市広場に関わらず、シェアオフィスのような公共空間にも活用でき、人々が繋がるきっかけをもたらしてくれるのだ。

コロナ禍を通して新しい空間・時間・場所も生まれたが、公共空間は再考され、更に促進されるきっかけとなった。
新しいものを作り出すだけでなく、もとあるものを見直すことも大切なのだ。
日本が都市空間の仕組みを世界から学び、少しずつ増やしていくことで、日本に住む人々のライフスタイルを更に健康的なものにできるだろう。

<参考>
【解説編】 3. 日本における公共空間の使い方の特徴
公共空間の私生活
公共空間を正しく活用する: 社会を根本から変革する
公共スペース – 「あればいいもの」ではなく、都市にとっての基本的なニーズ
パンデミック時代の後に幸福な都市公共空間を生み出す新しい認識
パンデミック中に公共スペースと私たちの関係はどう変わったのか
パンデミック後の公共スペースをどのようにデザインするか?