生まれながらに持ち、一生を支えていく。秘められた感性「Sense of Wonder」

「センス・オブ・ワンダー」
これはすべての子どもが生まれながらに持っている感性のひとつだ。

幼少期の頃のことを思い返してみてほしい。

動物や乗り物、食べ物などに似た形をした雲を見つけたり、
月の中にいるうさぎを探してみたり、
木の蜜に群がるカブトムシや、両手のハサミを大きく広げるザリガニたちの世界を覗いてみたり、
道路の白線からはみ出ないように慎重に歩いてみたり。

こういったことにワクワクした経験はないだろうか。
これらの瞬間に芽生えるワクワクした気持ちや感動は、センス・オブ・ワンダーによるものかと思われる。

今回は、私たちに秘められた感性、「センス・オブ・ワンダー」を紹介する。

変わり映えのない日常に飽きてしまった大人たち、子どもとのかけがえのない日々を大切に過ごしたい人達に何か力を与えられるかもしれない。

「センス・オブ・ワンダー」とは、一体・・・?

センス・オブ・ワンダーとは、すべての子どもが生まれながらに持っている「目の前にあるものに対して神秘さや不思議さを感じ、驚いたり感動したりする感性」のことをいう。

自然の雄大さに感動すること。
月の中にうさぎを探す、雲の形を別の何かと捉えてしまうような豊かな想像力を発揮すること。
昆虫や動物など、別の生き物の存在に目を見張ること。
幼少期に体験するこのような瞬間には、この「センス・オブ・ワンダー」が発揮されているのだ。

この感性があれば、私たちの日常は、感動や驚きが連続する豊かな日々となる。そしてこの感性は、私たちにとって大切なものや本当に美しいものを見極めることを手助けしてくれるだろう。

つまり、センス・オブ・ワンダーは、その人の人生をずっと支えていく大切な力となるのだ。

しかし、難しいことや複雑なことなど、多くのこと見聞きしていく私たちのセンス・オブワンダーは、大人になるにつれてだんだんと薄れていき、時にそのすべてを失ってしまうこともあるのだとか。

失ったセンス・オブ・ワンダーを取り戻すことは出来ないの?

大人になってしまった私は、失ったセンス・オブ・ワンダーをもう取り戻すことは出来ないの?
そう諦める必要はない。
ここでは、大人たちがこの感性を取り戻すために出来ることを紹介していこう。

①子どもと共に自然の中で時間を過ごす。


子どもと共に自然の中で過ごしてみることは、あなた自身の感受性に磨きをかけることにつながるのだという。

センス・オブ・ワンダーに富み、目・耳・鼻・指先などの様々な感覚を使って自然の豊かさを享受する子どもたちから、使わずにいた感性や感覚を味わえるようになるためのヒントがもらえるかもしれない。

ぜひ、一緒に何かをじっくりと見たり、気になるものを触ったり、顔を近づけて香ってみることに挑戦してみてはいかがだろうか。

②「もう二度とみられないとしたら?」自分自身に問いかけてみる。

毎日歩く通勤経路や通学路、いつもの犬との散歩コースなどあなたにとって当たり前にある景色を、しっかり味わえているだろうか。

私たちの多くは、まわりの世界のほとんどを視覚を通して認識していると言われている。
しかし、周囲の景色に見慣れていくうちに、目にはしていながら本当には見えていないものが増えていくのだという。

見すごしていた美しさに目を開く方法は、
「もしこれが、いままでに一度も見たことがないものだとしたら?」「これをもう二度と見ることができないとしたら?」そう自分自身に問いかけることだ。

これを続けていくうちに、周囲にひそむ美しいものを見すごさず、その素晴らしさに気づくセンサーを身につけることが出来るだろう。
当たり前になり、気にも留めていなかった景色に感動する瞬間に出会えるかもしれない。

③湧きおこった感情を、すぐに言葉にしないこと

わたしたちの頭の中には、便利な言葉がたくさんある。

例えば、「面白い」という言葉。
不思議な植物や生き物のしぐさを見た時、映画を見て涙が出るほど感動したとき、漫才をみてゲラゲラ笑っているとき、難しい本を読んで「なるほど!」と思ったときでも、どんな場面でも使用出来る万能な言葉だ。
私たちは、日ごろからこのような万能な言葉たちを使用して、自分の気持ちを言葉にしている。

一方、小さな子どもたちの姿を観察してみたときのこと。
初めて花火をして、自分の近くに火があるということに不安げな顔をしたり、大好きな公園で「キャッキャ」と声を出しながら跳びはねたり、走り回ったり。彼らは感情を言葉にする前に、表情や体で気持ちを表現している。

そんな姿を見ていると、存在する言葉の数以上に、子どもたちの感情表現が豊富にあることに気づかさる。

同時に、その時自分が抱いた感情をすぐに言葉にしてしまうことによって失ってしまったり、こぼれてしまう発見や感動があるようにも思えてこないだろうか。

言葉にせずに、ただその時抱いた気持ちを感じとってみたり、素直に表情や行動に表してみたり、もしくは自分の抱いた感情に自分で名前をつけてみたり、いつもとは少し違う感覚で「感動」を味わうことを楽しんでみてほしい。

今だからこそ、価値がある。これからの生き方としての「センス・オブ・ワンダー」

ここまで、子どもたちは生まれながらに持ち、人の一生を支えていく力「センス・オブ・ワンダー」について紹介してきた。
この感性は、人々の日常に彩りや感動を与え、私たちの人生を支え続けるものであることがお分かりいただけただろうか。

何かにワクワクしたり、感動したり、楽しいと感じる時間は大切で、かけがえのないものだ。
だからこそ私たちは、映画を鑑賞したり、友人とフェスやライブ、ショッピングに出かけたり、行ったことのない場所に旅に出たりもする。
時間やお金という「対価」を払って、「感動」や「ワクワク」を体験することは、今私たちの中では当たり前のこととして受け入れられている。

しかし、だからこそ今、大きな対価を払わずに、身近な日常の中に輝きを見つけ、大きな感動を抱くことの出来る「センス・オブ・ワンダー」という感性を育てることに、大きな価値があるようにも思える。

未来を担う乗り物は、車や新幹線、飛行機ではないのかもしれません。

優しく気持ちのよい、そよ風に乗ったり、
わたあめのようにふわふわとしてみえる雲に乗ったり、
自分の中にある‟気分”に乗ってみたり。

私たちは、目に見えなかったり、触ることの出来ない乗り物にも、
案外乗ることが出来るのかもしれませんね。

参考文献
レイチェル・カーソン著, 「センス・オブ・ワンダー」新潮社, 1996
福岡伸一, 阿川佐和子著, 「センス・オブ・ワンダーを探して ~生命のささやきに耳を澄ます」,大和書房, 2011