「学校の建築デザイン」は未来への投資?~世界の学校から持続可能な教育を学ぶ~


今や学校でもタブレットが使われ、幼い子供でもスマホを持つ時代になってきている。
テクノロジーやメディアに依存しやすい環境が、私生活だけでなく学校生活でも生まれてきているのだ。
そんな中、世界には健康的に子供を育てる工夫が為された「学校の建築デザイン」がある。あまり日本で見かけない持続可能な学校建築は、コストがかかるかもしれないが、日本の未来を作るための投資となるのではないだろうか。
今回は世界の学校建築を見ながら持続可能な教育を学び、どのように日本の未来を形作っていくことができるのかを考えていこう。

子供を育てる「学校」の建築デザインが海外で見直されている理由


みなさんの通っていた学校の「校舎」はどんなデザインだっただろうか。日本のとりわけ公立学校は団地にあるアパートのような見た目で、夏は暑く、冬は寒いというのも当たり前。逆にその建築構造に特に疑問を抱くこともなかっただろう。
しかし今では、大人の私たちのみならず、小学校でもデジタル化・テクノロジー化が進んでいる。タブレットやPCを使うのが教育のデフォルトとなりつつあり、それが世界から遅れを取らない秘訣でもある。
しかしそのような教育を毎日同じ場所で受けなければならない子供たちは、場所や環境を選ぶことができない。
そんな先進的な学校生活の中で、健康的で持続可能な学習環境を整えるべきだと考える国が増えてきているのだ。
海外で増えている「サステナブル(持続可能)」な学校デザインは、子供たちが自分たちの環境について好奇心を持ち、熟考し、学ぶことを促してくれる。また健康をも改善し、精神的疲労やストレスの軽減、注意力を回復させる役割を果たすのだ。
教育は「人々が残りの人生をどのように生きるかを決定するもの」でもある。
そのため、将来を担う子供たちには健康的かつ快適で、刺激的な学習環境を提供してくれる学校の建築デザインが必要なのだ。
次世代を担っていく子供たちのために、日本でも取り入れていきたい世界の学校建築デザイン例を見ていこう。

「持続可能」×「デジタル」のバランスがとれた学校デザイン

https://architectus.com.au/

学生がデジタルな環境で勉強をするのは、世界の動向に乗り遅れないために必要なことではある。しかしその学習環境は、座りがちになってしまう上に、孤立、うつ病、不安、注意力不足などの問題の増加がおきてしまう。
オーストラリアはメルボルンの「ロレトマンデビルセンター」は、そのような問題解決のために「持続可能なデザイン」と
「デジタルな設備」のバランスをとることを考えて設計された。

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学習スペースはアルファ世代がスマホ、タブレット、PCなどを使用し、テクノロジーやメディア、デジタルに関して学習しやすいレイアウトにしている。この世代の学習内容に合わせて必要なツールが施されているのだ。
しかしその環境下では「うつ病」「注意力」「不安」などの悪影響をもろに受けやすくなってしまう。
それだけのデジタルな設備がある中で、ロレトマンデビルセンターは外の自然ある環境と学習する内の環境とを繋げるようなデザインにされている。自然光が入ることで空間の質を上げる設計は図書館を参考にし、建物の形から東と西からの日射は遮り、ほしい日光の量までも調節しているのだ。
またそのような外的自然を建築や学習空間と融合をさせるために、天然素材の材料や布などを使用した構造になっている。生徒の学習スペースがデジタルな環境でも健康的になるようにバランスがとられた例なのだ。

「自然光」や「自然空調」に焦点を当てた学校デザイン

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持続可能な学校の建築デザインにおいて、素材や材料にこだわり、周りの緑を増やす工夫をするイメージがあるかもしれない。しかし素材や見た目だけでなく、「光」や「空調」に焦点を当てるデザインはとても重要だ。
もちろん心身の健康のためでもあるが、同時にパフォーマンスを上げる研究結果が出ている。自然光が入る空間では、生徒の学習がより良く、より早く行われることが実証されている。
また、エアコンが設置されている建物では、自然換気が行われている建物に比べて、症状のある従業員の罹患率が高いことが知られているのだ。
そんな「自然光」や「自然空調」に焦点を当てた学校デザインの例として、アメリカはカリフォルニア州「バーリンゲーム中等学校」や、デンマークの建築家兼設計事務所「CEBRA」によるドバイの学校デザインが挙げられる。

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バーリンゲーム中等学校は主に「自然光」を最大限に生かしたデザインだ。窓とクリアストーリー(高窓)によって北からの自然光を十分にキャッチできるようにしたり、一連の天窓を配置することで二次光源を作り出したりしている。オーバーハングといって上階を下階より突き出させる設計によって、教室を直射光から遮る工夫もある。自然光が入る角度や量を調節されているので、電気無しでも勉強ができるようなデザインなのである。

https://archello.s3.eu-central-1.amazonaws.com

デンマークの建築家兼設計事務所「CEBRA」によるドバイの学校デザインは進行中の学校建築である。
この構想として、人口空調ではなく自然の換気によって涼しくなる環境を目指している。生徒が直接オープンな学習環境に出て学べる屋外スペースを設置するといった工夫により、生徒だけでなく教師にとっても快適な気候を室内外両方で確保する構造が考えられたのだ。

持続可能な学校建築がは日本の次世代を担う「子供たちへの投資」


この持続可能で自然に密着する学校建築デザインは、日本の次世代を担う「子供たちへの投資」だと考えられる。
学習内容が変わっていくのに対して、学習環境も順応させていかなければいけないのは、子供たちのパフォーマンスを向上させる教育が必要だからなのだ。
“紙とペン”で学んでたところから”液晶と指”になり、プライベートだけでなく学習中でも心身に負担がかかり易くなってしまう。また外の自然から離れ、自然と触れる機会だけでなく、守るべき自然に対しての興味や触れようとする意欲さえ失われてしまうと考えられる。

そこで今後の日本を支えるために必要なのが、持続可能な学校建築デザインだ。心身ともに健康的な状態で子供たちに勉強をしてもらい、また自然に触れる時間や自然に関して考える時間を失わないようにすること。それは私たちができる子供たちへの、そして日本の「未来への投資」になるのかもしれない。

【参照】
新しいスクールデザインの「NATURE」 – 進化するコンセプト
持続可能な学校
持続可能な学校設計: ハミルトンとエイトケンの建築家が Vectorworks を使用して自然光を最大限に活用する方法