【探求レポ】断食は人生の質をどう変える?YADOKARIメンバーの断食ビフォアーアフター

「世界を変える、暮らしを創る」ため、「暮らしの美意識を体現し、新たなカルチャーを創造する」ことをミッションとしているYADOKARI。
その試行の一つとして数ヶ月に一度4〜5名でチームをつくり、興味のあるテーマを探求する活動を行なっている。

今回、上杉、荒島、齊藤、山下が、準備期・回復期も含めて約7日間の「断食」に挑戦した。事前の期待や断食中の体感、そして終了後の心身やライフスタイルにもたらされた変化とは? 4人の座談会をレポートする。

断食前の期待、未知を求めて

今回の断食メンバー。左上/代表上杉(愛称:うえスピさん)、左下/執行役員荒島(愛称:こーじさん)、右上/齊藤(愛称:ゆーひ)、右下/山下(愛称:りおな)

−「断食」「ファスティング」にはダイエットや腸活、自然治癒力の回復、アンチエイジング、意識の明晰化などさまざまな効果があると言われていますが、今回どんな動機から断食にチャレンジしたのですか?

上杉: 外に探求テーマを求めるのも良いのですが、今回は自分自身を探求しようという話で盛り上がり、手近な所からということでファスティングをしようと。荒島も最近、鍼灸に目覚めて「東洋がすごい」なんて話していたんだよね。

荒島: 友人に紹介されて3ヶ月ほど鍼灸院に通ってみたところ、冷え性だった体がポカポカになり、全く科学的な内容ではないのに体は充実しているという状態に驚いてしまって。それもきっかけの一つになり、以前に上杉から聞いた滝行の話など、自分には馴染みのなかった世界に関心が出始めたので、その入り口としての「断食」という感じです。

齊藤: 僕は「自己探求」というテーマにすごく共感して。20数年間当たり前だと思ってきた1日3食摂っている日常を疑う、ということをやってみたかった。僕は「自己成長への憤り」を感じていて、何か新しいことを始めようと思っても結局は自分の分かっている範囲内に留まってしまい、何をしても既視感があり、真の成長をあきらめつつあったんですよね。でも断食をすることでもう一歩、自分のコンフォートゾーンを超えられるんじゃないかと興味が湧きました。

笑顔でアフター対談を行う山下(愛称:りおな)。「断食やろう!」と盛り上がる男性メンバー3人を横目で「とんでもないチームに入ってしまった、、、まさか自分が断食することになるとは」と心の声がダダ漏れで怪訝な顔していたのは、いつのことやら(笑)

山下: 私は今までどちらかと言うと「1日3食、きちんと満腹食べられることが幸せだ」という思考で生きてきたので、「食べない」ということができるとは思っていなかったんです。一方で、ちょうどパートナーと「朝食は食べる方がいいのか、食べない方がいいのか?朝食を食べた方が体に良いからといって菓子パンを食べるのはどうなのか?」みたいな議論をしていた時でもあり、自分が納得のいく暮らしを創ろうとする中、知らず知らず摂ってしまう添加物に疑問を感じてもいました。そんな中で、思いがけずこんな機会が訪れたので、とりあえず乗っかってみようと。

上杉: 僕は高校生ぐらいから「内なる探求」に興味があって。論理だけでは説明できない世界に関心があるんですが、YADOKARIではそんな話もわりと普通にできる。僕はメンバーの心と体と技能、つまり「心技体」がバランスよく整って力が発揮されていく「ホリスティックな経営」をしていきたくて、断食もその一助になるんじゃないかなと。

準備期間、自分自身の惰性に気づく

荒島(愛称:こーじさん)は、山登りが好きで、ランニングが最近の日課。月100kmを超えるランを忙しい中でもシャーシャーとやり切る強者。断食や東洋然り、前世はもしかして修行僧?だったのかもしれない(笑)

−固形物を全く摂らない2日間に向けて、事前に少しずつ食事を制限していく準備期間を過ごされたんですよね。カフェインを抜いていったり。その間の体感はいかがでしたか?

山下: 自分がどれだけパンとコーヒーばかり選んでいたかに気づきました。楽だからですよね。それを選ばないようにしようとすると、世の中に簡単に食べられる体に良い食事はごく少ないと感じました。逆説的ですが、食べないようにすることで、食べることをより真剣に考えた。焼き芋とか、ナッツとか、丁寧に手づくりしているおにぎりを選ぶとか。さらに、自分が今まで常に満腹でいようとしたことを自覚しました。空腹になるとソワソワしてしまって、惰性で食べていたんだなと。

荒島: 僕はその時ちょうど引越しや展示会が重なって、ものすごく忙しかったんです。そんな中で、食べたいと思ったものをすぐに食べられないことへのストレスは大きかった。毎回食べ物を自分でよく考えて選択しなくちゃいけない。処理すべき情報の多い現代社会の中で、一つ一つ考えて選ぶのは大変だなと感じました。ちゃんとした良い習慣をつくっておけばいいんでしょうけど、惰性の中で、かつ忙しい中でやろうとすると大変です。それから、コーヒーを抜いたせいか頭痛が酷くて集中力が保てなかったですね。

東京ビッグサイトで行われた合同展示会。YADOKARIのタイニーハウス展示にも2000人近い方々がご来場頂きました。YADOKARIのタイニーハウスラインナップは「こちら」でご覧いただけます。

齊藤: 僕は社会人になって最初の仕事がコーヒー屋だったので、長らくコーヒーをたくさん飲む習慣があり、それを飲まないとなると口寂しいし、集中もできないし、何にも手につかなくて困りました。でも逆に、今までどれだけ大量にカフェインを摂り続けていたんだろうと、そのことへの危機感の方が大きかったです。

上杉: 僕もいつもはコーヒーを1日4、5杯は飲んでしまうので、デカフェに替えてからやはり頭痛が辛かったですね。食事制限は、これまでも16時間断食とか1日1食みたいなことは時々やってきたので、空腹が辛いということはあまりないのですが、やりすぎると過度に繊細になる感覚があります。人混みの中を歩けないとか。都会で生きるためのバランスも必要で、住むエリアの情報量と体は密接に関わっている気がしています。菜食やカフェイン抜きの生活は自然が多い場所の方がやりやすそうですよね。

最近メキメキと頭角を表してきた齊藤(愛称:ゆーひ)。元々「内的対話」に関心が高いようで、今回の断食もノリノリ。元々コーヒー屋さんで働いていた経験もあり、ダムやテトラポッドなどの造形物フェチなので、彼のデートコースにはアウトドアコーヒーとダム見学がもれなくついてきます(笑)デートオファーは「こちら」からどうぞ。

断食中、外れていく囚われ

−その後、酵素ジュースなどを飲みながら固形物は一切摂らない2日間の断食に突入しましたが、いかがでしたか?

山下: 私にとって「ごはんを食べない」というのは非日常的すぎる状態で、ふだん通りの行動をすると倒れちゃうんじゃないかと必要以上に自分を大事にしてました(笑)。家でじっとしてスマホの画面もできるだけ見ない、みたいな。私は「これを食べたいから、ここに行こう」というふうに食事を起点に日々の行動が決まっていきがちなので、食べることをしないと何をしたらいいのか分からなくなっちゃった。そのストレスもあって不機嫌になり、パートナーとまさかの大喧嘩をして「なんでこんなことやってるんだろう…」と後悔。でもこの期間に断食の本が届くように購入してあったのでそれを読み、「1日に摂る栄養を極限まで減らすと病気への治癒力が高まる」などの事例を知って、少し平常心になりました。「食べないことは不健康だ」という思い込みは外れましたね。

期間中のメモは「なんでこんなこと始めちゃったんだろう」と葛藤の時間、各々人生や暮らしを振り返る。参考図書としてあげた野口法蔵さんの「直感力を養う坐禅断食」では、身体を知ると、心と繋がり、日々内なる感動と幸福感で毎日を暮らせるという。

荒島: 断食中は準備期間よりも楽に感じました。この2日間は何もしないと事前に決めていたので、心も、時間の使い方も有意義だったと思います。妻も一緒に断食をしてくれたので、つくってくれたジュースを飲んで過ごしました。この期間は食べることについて悩まなかったのが良かったですね。朝も起きやすくなりました。

齊藤: 僕は、今回は水と塩だけで過ごすというかなりハードな2日間だったんですが、特に1日目は空腹で地獄のようでした。目の前で人がおいしそうな物を食べていると匂いを強く感じたり、その人に敵意を抱いたりして(笑)、準備期間とは違う感覚がありました。でも2日目が終わるとガラッと意識が変わり、食べ物を見ても「これは自分が食べられない物だ」と認識するようになり、心の奥ではそれが食べ物だとは思っていないという不思議な感覚になりました。今までにはなかった感覚です。

上杉: 1日目は頭痛が酷くて、遠方まで音楽ライブを聴きに行ったんですが、音楽が全然入ってこなかった(笑)。2日目になると体もスッキリして爽快感がありました。でもパソコンに向かうのがしんどくて無理でしたね。断食などで大きく自分を切り替えたい時は、やはり身を置く場所を変えてやるのが良さそうだと思いました。そういう理由で住む場所や滞在先を選ぶのもありですよね。

断食を経て、新たな選択肢を手に入れる

−そんな断食期間を経て、終了後に体や心、生活に何か変化はありましたか? また、今後は断食とどのようにつき合っていきたいですか?

山下: 断食が明けて、りんごやさつまいもなど回復食を口にした時の、素材そのものの味が本当においしくて感動してしまいました。素材だけでこんなにおいしいんだと幸せな気持ちになれた。私は、今後も断食を続けようというよりは、1回1回の食事を丁寧にしようと思うようになりました。惰性で食べるのではなく、一つの食材を買う行為が「自分を労っていると感じられる瞬間」になるようにしていきたい。安いから買うのではなく、選択する時の自分の軸が新たにうまれた感じ。断食は、それを忘れないためにたまにやるぐらいが私には良さそう。忙しすぎるとか、何か自分に目が向いていないなと感じた時に、体の不調も含めて自分に意識を向け直すきっかけとして活用したい。

荒島: 断食を体験して、自分の習慣が変わったと思います。コーヒーとお酒をあまり飲まなくなりました。おいしく感じなくなったという方が正確かな。食べる量も減り、夜は6時か7時頃には食事を済ませて翌朝気持ちよく起きたいと思うようになりました。先月、ハーフマラソンに出場したんですが、長距離を走るには、日々走る時間を確保し続けることが重要で、夜にお酒を飲んでしまうと走れないんですよね。走る時間もつくりやすくなったので、次はフルマラソンに挑戦しようと思っています。今後、断食を頻繁にやるイメージはないけれど、今の感覚は忘れないようにしたい。惰性で生活習慣をつくらず、本当に体に必要な物の選択肢を、入手方法も含めて一つ一つ生活の中に増やしていく。今は古い習慣を壊しただけなので、ここから新しい習慣や日常をつくっていこうと思います。

YADOKARIと子会社のはじまり商店街のグループ有志メンバーにて、定期的なランニングイベントを開催。ウェルネス経営やウェルビーイングのためにと堅苦しいスタートよりも、対話の機会を楽しみながら少しづつ実践。健康は全ての気運を高めます。

齊藤: 断食後のいちばんの変化は「体の濁り」に気づきやすくなったこと。自分の中にある悪い状態に気づきやすくなった。僕の中の「水」や「空気」がうまく循環していないと濁ってくるんだけど、サウナや運動もそれを取り替える行為で、「食」もその一つだなと。食べる物を見直すんじゃなくて「無くす」という調整の仕方を知り、日常で濁りを感じた時に「何を引けるか」を考えるようになりました。日々の仕事や人間関係の中で、目に見えないチリみたいなものが少しずつ溜まって濁りが出てきてしまうんだけど、その解決を外に求めるのではなく、セルフメディケーションが大事だと思います。そういう濁りを濾過して五感を整えるためにも、僕は今後も3ヶ月に1度くらいは3日間くらいの断食をしようかなと。

上杉の愛称:うえスピさんは、過去の断食や寺修行の話を嬉しそうにする彼をみたメンバーが「ウエスギ・スピリチュアル」と社内命名。「今、うえスピさん発動してるから」とドM気質?な社長を弄る日常です(笑)

上杉: 僕も毎日飲んでいたお酒が週1くらいになりました。今、欧米の若者の間でも「ソバキュリアン(あえてお酒を飲まないライフスタイルを選択する人々)」が増えていますが、僕もノンアルコールのクラフトジンを求めて京都を訪れるなど、断食をきっかけに新たな探求が広がっています。カフェインを摂ると体に痛みが出るようになったので、カフェインレス・コーヒーを20種類くらい研究して、自分好みの二酸化炭素抽出のデカフェも見つけました。僕にとって朝日を見ながらゆっくりコーヒーを淹れてホッとする時間は、「暮らしのシーン」として豊かさを感じるので、そういう取り入れ方をしようと。断食はここ数年やりたいと思いながらもやれていなかったので、できて良かったです。自分が今、ワクワクしているのか、悲しいのか、美しいと思っているのか…自分の感情、オノマトペがクリアに分かる瞬間がありました。「ミニマリスト」というのは「自分の本当に大切なものを大切にできる人」ということなので、断食による体験を通過した後に、自分がどんなものや人を選ぶのかに興味があったのですが、今回は周りの人の温かさを強く感じられるようになる実感がありました。今後も生き急いでいる時は断食をして、メンバーとゆっくり話したいなと思います。

−上杉さんは一人で断食をされた経験はこれまでもあると思いますが、仲間と一緒に行ったのは初めてですか?

上杉: 初めてです。最高でした! やっている時の辛さを共有できるというのは、断食に関わらず人生において大事なことだと改めて思いました。こういう体験や自己探求をメンバーと共有できることが重要だし、それが会社の成長ともリンクしていくのがYADOKARIらしいと再認識しました。

創造的な人生へ向かうために

4人4様の期待から始まった今回の断食だが、7日間を経て全員が自分自身の思い込みや惰性に気づき、苦しみながらもその重力場の外に脱出して、クリアな自分の心身の中心軸と新しい視野を獲得できた体験となったようだ。さらに、「サンガ」的に、これを仲間と共に行えたことの意義も大きいと上杉は語っている。無自覚な摂取や食べることへの囚われから解放され、自分が取り入れるもの=自分をつくるものに対して主体的になるための、このちょっとしたイニシエーションは、日常の中でアレンジして使える手軽で有効な自己調整の手段になる。そして荒島が言うように、惰性を壊した後に新たな暮らしをどのようにつくるのか、その手札を求める過程で、私たちの人生はより豊かになりそうである。

断食明け少し期間を空けて、打ち上げ会の一コマ。お疲れ様でした。

取材・文/森田マイコ