先人たちの知恵を、もっと身近に。周囲や自分にやさしくなれる世界のことわざ
言い訳と聞いて、よい印象を抱く人は少ないだろう。「言い訳なんてしていないで…」、「言い訳をする暇があったら…」なんて言葉を聞いたことがある人も少なくないだろう。
大人になったら言い訳をしてはいけない、そんな思い込みにスッと入り込んできたのは、なんと、ことわざだった。記事の執筆を進めていた際にふと目に留まった、「アイスランドのことわざ」というページがきっかけだ。
少し古めかしい、堅苦しいイメージを持っていた私は、アイスランドのことわざの身軽さと面白さに驚いた。
そこで、日常で起こりうる困難に対し、言い訳の代わりに、ことわざ一つでサクッと乗り切るのはどうだろう、そんなアイデアが浮かんだ。
相手や自分自身を怒らせず、なるほど、と言わせるような説得力や、思わず笑ってしまい、相手を許せてしまうようなユーモアのあることわざは、周囲の人との人間関係をもっと豊かに、そして自分自身にもっとやさしくなるための必需品になるかもしれない。そんな視点で、今回は世界のことわざを2つ紹介していく。
相手の言っていることがさっぱりわからないとき。「私、山から来たもので」
私は、誰かと3人でいると、1人で余ってしまうタイプ。
だから、社会人サークルや地域の集まりに顔を出すと、何が悪いわけでもないのに余ってしまう。思い切ってほかの会話に混ざろうと思っても、相手に会話の内容を一から説明してもらう手間を考えて、なかなかトライできない。
説明してもらっても、わからないかもしれないし…なんて、言い訳を作ってはそそくさとその場を後にしてしまうこともある。
自分の知らない話なので、何を話しているのかまったくわからない。それなのに、何か意見を言う事を求められてしまった。そんなときに使えるのが、アイスランドのことわざ「山から来ました」だ。
自分は分からない、知らないということをユーモアを含めて伝えることが出来る万能な言葉。アイスランドでは、言い訳のようではなく、ことわざとして受け入れられているという。
「いや~、私山から来たからさ、そういうの全然わからなくて…!」
そっか、それならしょうがない!そんなユーモアに富んだやさしい返事と共に、ひとつひとつ意味を教えてくれる…そんなシーンを思い描いてしまう(使ったことはないのだが)。その場の人をクスっと笑わせることが出来たなら、たとえ自分が会話の内容についていくことが出来なくても、その場に受け入れられたような、そんな居心地がよさを感じられそうだ。
そして、相手に面と向かって言わなくても、会話が終わった後の自分に投げかけてあげることもできる。
「自分とあの人とでは、バックグラウンドが違うのだから、しょうがないよね」次また頑張ろう!
自信満々で作った料理が大失敗。「ま、最高の料理人でも豆を焦がすときはあるよね」
自宅でできる簡単スイーツといえば、ホットケーキ。「3ステップで簡単」「失敗なし」「お子様とつくれる」そんな宣伝文句がついていれば、料理が苦手な人でも手に取りやすい。なかでも自宅でできる簡単スイーツといえば、ホットケーキ。粉に卵と牛乳を入れ、指定の温度で決まった時間だけ焼けばふわふわのパンケーキが出来上がる。
そんなホットケーキだが、料理に慣れてきて、慢心したころに作ると、大失敗することがある。私も料理嫌いを克服しようと作ったホットケーキが、炭のような仕上がりになったときがある。それも両面。
自分は確実にできるだろう、そう思っていたものが失敗したとき。慰めというよりは、そんなことあるさの精神で言えるのがスペインのことわざ、「最高の料理人でも豆を焦がす」だ。
「最高の料理人」という、はるか上の存在を例に出すことで、自分の失敗をちっぽけなものに思わせてくれるところにやさしさが感じられる。日本語にも似た意味の「弘法も筆の誤り(優れた書人の弘法大師でも字を誤ることがある)」という言葉があるが、最高の料理人~のほうがより親しみやすく、日常で使いやすいのもポイントだといえるだろう。
先人の知恵が詰まったことわざ:失敗を笑い飛ばす「余裕」を生み出す
シリアスに捉えてしまいがちな失敗やミスに対し、その突拍子のなさで笑いに変えてしまう。
ことわざには、そんなのパワーが備わっている。
それも単なる持論ではなく、先人たちの経験と知恵が生み出した言葉なのだから、計り知れないパワーだろう。
情報が増え、失敗しないためにいろいろなものを先回りして学ぶこともできる今の世の中は、昔よりも過度に失敗を恐れる雰囲気があるように感じる。商談や恋愛という大きな枠組みはもちろん、雑談やランチの店選びという小さなレベルでも、実際に失敗をしてしまったときのショックや失望感は大きい。
そんなときこそ、先人の知恵を借りる。
自分を責めたりするのではなく、突拍子のないことわざを投げ込み、シリアスなムードのなかでも「プッ」と笑いそうになる雰囲気を生み出してみよう。
他人と接している時だけでなく、自分自身に対して言うのでもいい。一つの失敗を深く反省することも大事だが、たまには笑い飛ばして忘れてしまうほどの適当さも必要なのかもしれない。
参照サイト:
金井 真紀”おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言った”
https://www.iwanami.co.jp/book/b616712.html
ICELAND MARKET”アイスランドのことわざ”