中国庶民の下町に作られたコミュニティスペース「Micro-Yuan’er(微杂院)」

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中国の首都であり、政治の中心の北京。ここは2018万人がひしめき、広州、上海に次ぐ中国第三の人口を抱える大都市だ。今ではすっかり近代的になってしまったこの街にも昔からの街並みが偲ばれる胡同(路地)がまだ残っている。

胡同には伝統的家屋建築である四合院が建てられている。四合院とは中央の庭を囲むように四方向に家屋を建てた造りの建築物を指す。入り口は一か所だけ門扉となっており、そこから中庭に入る。一家族だけでこの四合院に住むのはごく限られた人だけで、多くの場合、この四合院には複数の家族が住み共存している。

人口過密な都市部ならではの住宅事情がある北京。さらにこの中庭にも所狭しとガラクタで建てられたような家が立ち並び、12家族もが住みついた結果、「大杂院(大雑院)」と呼ばれるようになった。開発が進む北京では、決して衛生的ではないこのスラムのような大杂院は徐々にその姿を消している。

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今回ご紹介するのが、この「大杂院」をモダンなスタイルにして現代に蘇らせた「Micro-Yuan’er (微杂院)」だ。

天安門広場から南に向かって1キロほど行ったところにある、非常に賑やかな地域の大栅栏(Dashilar)。その中でも静かなスポット、茶儿胡同8号院にかつて12家族たちがひしめき合っていた場所にその姿も新たに「微杂院」が建設された。

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これは北京デザインウィーク中に大栅栏地区の歴史保存と活性化を目的とした大栅栏プラットフォーム協会と家具会社のCamerichとの共同プロジェクトとして賑やかな大栅栏地区の憩いの場を作るという目的で始まった。

「Micro-Yuan’er (微杂院)」を手掛けたのが、ZAOスタンダードアーキテクチャだ。この建築事務所は米国のハーバード大学でデザインを学んだ、张轲 (ジャン・クー)氏が2001年に設立した建築事務所だ。北京を拠点に彼らはこの14年の間に様々なプランニング、建築、景観デザイン、製品設計などを手掛けている。

このプロジェクトでは建築家たちは設計し直し改修しつつも、もともと使っている材料を排除するのではなく、生かすことで元の姿をなるべく変えないように配慮した。そうすることにより、しばしば見落とされがちな北京の胡同における近代市民生活を象徴した危機的存在として、重要な市民の歴史を再認識させるように意図した。

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このプロジェクトでは「微杂院」の周りの四合院に住む家族たちが一緒に使えるよう、9㎡の広さのベニヤ板で造った子供用図書館を既存の建物の下に挿入した。外壁、床、天井、壁すべてがベニヤ板が使われ、大きな窓が取り付けられた子ども図書館。室内は大小さまざまな本棚が並び、中にはカラフルな絵本や子供向け図書が置かれている。

暗くなりがちな室内には天窓が取り付けられ、外光が差し込む。本棚が階段状に並んでいるので、子供たちは本棚の横に坐ったり、上に坐ったり、立体的にそれぞれのスペースを確保している。実に遊び心のある子どもにピッタリのスペースになっている。

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かつて台所として使われていた、巨大なトリネコの木の下には、伝統的な青みがかった灰色のブロックで造られた6㎡のミニアートスペースが新たに再設計された。ここで子供たちによる展覧会を開いても良いだろう。アートスペースの外壁は伝統的なブロックが使用され、更に屋根に上れるように同じブロックで階段が造られた。この階段を上るとその上に大きく空に向かってそびえ立つトリネコの木の枝や葉を容易に観察することができる。

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建築家たちは新しいスタイルの「微杂院」を胡同に取り入れることで、地域住民の絆を深め、近隣住民の生活に潤いを与えようと試みた。子供たちは下校時にここに立ち寄り気に入った本を読んだり、屋根を上ったり、木陰で近所のお年寄りと一緒におしゃべりをしたりと両親に迎えに来てもらう前に思い思いの時間を過ごせる。

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中国では誘拐も多いと聞く。子供たちが安心して遊べる懐かしくも新しいコミュニティースペースを作ったことで、現代にマッチした新しい胡同の姿を提案したのではないだろうか。

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