【インタビュー】持ち込める物は108個。あえて不便を楽しむための小屋、丸腰不動産のマイクロハウス|日本発・タイニーハウス販売中!

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「便利なことはいいことだ」というけれど、本当にそうだろうか?

僕たちYADOKARIは30代前後のメンバーが中心になって活動している。
生まれた頃からテレビやエアコンがあるの当たり前だったし、ゲーム機やパソコンが家にあり、高校生ぐらいの歳から携帯電話が普及してひとり1台は当たり前、という青春時代を過ごしてきた。

僕たちの世代に共通しているのは、青臭い言い方かも知れないけれど、「生きがい」と言っていい強烈な目標がないことだと思う。
さしあたり餓えることは無いし、命の危険を感じることもない、物があるから、便利で快適な生活はある程度約束されている。

それらの便利さを一度手放して「本当に自分に必要なものは何か?」と動きはじめたのが、最近の断捨離やミニマリストブームの根っこにある部分だろう。

贅沢な悩みかもしれないけれど、一度丸腰になって、「なぜ僕たちはここにいるのか」を見つめなおしてみたいのだ。

カラクリワークス株式会社 代表取締役 後原 宏行
後原 宏行
カラクリワークス株式会社 代表取締役。2005年5月にカラクリワークスの屋号でWebデザイナーとして独立。以降Webサイト制作を中心に活動、現在に至る。日替わりでマスターが変わるSharingBar「UNDERBAR」、一坪ポップアップショップ「人三化七」、志賀島活性化プロジェクトの拠点「シカシマサイクル」の運営等を行う。2015年よりペチャクチャナイト福岡の公式オーガナイザーとなり、定期的にイベントを開催中。

小屋のサイズは108個のものを持ち込めるサイズ?

「物を持たない(=丸腰な)生活に適したサイズ」をコンセプトにしたマイクロハウスは、九州の福岡を拠点にする「丸腰不動産」が設計・販売している家だ。
家の大きさは、物が108個まで持ち込めるサイズを目指したそうだ。108は仏教で人の煩悩の数を表す数、シャレが効いていて面白い。

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YADOKARIが向かった先は、福岡県の入り江に面した小さな島。ここにガルバリウム合金張りの小さな家が建っている。

丸腰不動産のマイクロハウスは、床面積9.93㎡(6畳)、高さ4200mmの平屋で、開口部は1面、アクリルの大きな窓と引き戸が付いていて、家の中は明るい。
小さく見えるが、中に入ると天井も高い。風呂やトイレ、水回りは無いが、1〜2人が過ごすのに十分な広さだと感じた。

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なぜ丸腰不動産で小屋をつくったのか、代表者の後原宏行(せどはらひろゆき)さんにお話を伺った。

マイクロハウスが生まれるまで

── ウェブ制作の会社が家をつくったことはYADOKARIとも似ていますよね。僕たちも元々ウェブ制作会社のデザイナーとプランナーで建築の素人だったんですが、INSPIRATIONというタイニーハウスを企画・販売しています。丸腰不動産ではどのような経緯があったんでしょうか?

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後原宏行さん(以下、後原) 「僕、27歳の時に断捨離をしたことがあって。それがきっかけで物がない生活が気持ちいいなと感じたんですよね。デザインの仕事もしていたので、海外メディアでタイニーハウスを知って、あぁ、これいいな、と。物を持たずに過ごすための家を建てたいなと思っていたんです」

── 最近は断捨離される方も増えていますよね。後原さんはどれくらい物を持っていたんですか?

後原 「それがすごく多くて、6ヶ月くらい持ってる物を売って生活できたくらい。CDや本を大量に溜め込んでいました(笑)」

── 6ヶ月ですか!?長いですね。

後原 「僕はすごく物を溜め込む人だったんです。読んでない本やCDも家にたくさんあって。でも、今思うと『サブカルに詳しい俺、すごい』って思うために溜め込んでいた状態だったと思います」

── 物を持つことで安心していたのかもしれないですね。

後原 「今思うとそうかもしれない。それがきれいさっぱり無くなると心の闇が晴れるというか、気持ち良かったんです。小屋の話に戻ると、動き出す前に鴨長明の本を読んだんですよ。現代でいう約3メートル四方の『方丈の暮らし』をあらためて知って、『僕もこういう家を持ちたいな』と考えたのが決定打になりました」

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画像提供:丸腰不動産

── それから家を設計しだしたんですね。

後原 「そう、僕は寅年生まれで、同い年生まれの『虎会』っていう集まりがあるんですけど。そこで繋がりのある設計士さんに設計をお願いして、マイクロハウスの設計がスタートしました。当時から(マイクロハウスが建っている)この島は借りていましたし、時々キャンプもしていたのです。タイミングよく点が集まって、事が動き出しました」

── この島にマイクロハウスが建ってから1年。小さな家で後原さんはどのように過ごしているのでしょうか?

小さな小屋で過ごす時間

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── この島はすごく気持ちいい場所ですね。近くに海もあるし、人がいないからプライベートビーチみたいで。

後原 「ここに家ができてから、仕事は持っていかずに、金土日と月曜日はずっとここで過ごすつもりだったんです。子供がいるから、さすがに難しくてできていないんですが、家族と来たり、ひとりで来たりもしますよ」

── ここは海が近いですけど釣りもできそうですよね。

後原 「あ、しますします。ここはカニが穫れるんです。島を一周するのに10分くらいなんですけど、一周すると10匹は穫れるかな、それをみそ汁に入れて食べると旨いんですよ。魚も捕れます。網ですくった方が早いぐらいで」

── いい環境ですね、アウトドアはお好きなんですか?

後原 「自然が多い場所が好きですね。現実的には福岡市内に暮らさないといけない、けどアウトドアも味わいたい。老後にしたらいいって言う人もいますけど、僕は待ちきれなくて、だから5年くらい前から多拠点居住をしています。福岡市内と、ここと、あとは糸島にも拠点を持とうと思っていて」

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── 住む場所に求めるものって土地によって「これがしやすいけど、これはやりづらい」という風に色んな要素があるじゃないですか。自然を楽しみに行く場所、仕事をする場所、生活の拠点にする場所……。ちょっとずついいとこ取りするように暮らしてもいいはず。

後原 「そうですよね。この家を建てる時、多拠点居住の拠点としても利用したいと思っていたんです。ロシアに『ダーチャ』って週末を過ごすための家がありますよね?ああいう感じで、生活の拠点は糸島、博多は仕事をする場所、ここは趣味やプライベートの時間を過ごすための場所。福岡に借りるアパートは、使ってない時はairbnbで貸し出せば家賃が安くなる。いまはそういうこともできます」

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画像提供:丸腰不動産

スタンスが”丸腰”

丸腰不動産のマイクロハウスは、九州圏内限定で販売しているそうだ。
価格は一坪あたり30万円から。工場で木材をプレカットしてから建てるので、8日間ほどで完成する。
同じ工法で建てた介護施設のレクリエーションスペースや、今は糸島の空き地に建設予定だそう。

後原 「販売はしているんですが、ほぼ原価でやってます。僕は多拠点居住や、物を持たない生活とか、ライフスタイルを提案したいだけ。丸腰不動産は会社としての厚みを持たせるためにやっているので、反響が来るだけで嬉しいです」

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後原さんは、終止にこやかで、肩の力が抜けていた。きっとスタンスや価値観そのものが「丸腰」なのだろう。

「自分が好きだから、やる」。皮膚感覚に根ざした暮らしや生き方は、潔くて気持ちいい。
九州で始まっている小さな暮らしが、今後どのような展開を見せるのか?これからが楽しみだ。

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