多世代と繋がり、学び・助け合いの網を広げていく / 山崎団地自治会長 佐藤 禮子さん
【インタビュー】多世代と繋がり、学び・助け合いの網を広げていく / 山崎団地自治会長 佐藤 禮子(さとうれいこ)さん
町田山崎団地を舞台に、団地に住まう人とまちの人とが入り混じり、団地ならではの豊かな暮らしや心地いい日常の景色を共に創り・発信していく取り組み、「まちやまプロジェクト」。
そのプロジェクトの一環として、団地や町田にまつわる取り組みをしている方のインタビューを発信していきます。
二人目となる今回は、町田山崎団地(以下、山崎団地)自治会の会長として、近隣施設との積極的なコミュニケーション、高齢化する居住者の健康や、新しい世代との交流など、精力的に向き合う佐藤禮子さんです。
町田が大好きだと語る佐藤さんに、自治会長に就任された背景や現在の活動、山崎団地へかける思いについてお話を伺いました。
団地のことを知るために、入居時から始めた自治会の活動
ーまずはじめに、佐藤さんは山崎団地に入居されてからどのくらいになるのでしょうか?
佐藤さん 私が山崎団地に引っ越してきたのは、仕事を定年退職したタイミングでした。元々町田市に住んでいましたが、勤務先の移転でやむを得ず、都心部へ移り住むことに。町田市への愛着が強かったので、退職後すぐに戻ってきたんです。
広々とした自然の中で暮らしたいと思い、この団地を選びました。もうすぐ22年目になりますね。
この団地のことをよく知りたくて、入居してすぐに自治会でお手伝いを始めました。様々な部署を回った後、自治会の事務局員として数年勤めて、現在は会長の仕事をしています。
インタビューを受ける佐藤さん
ー自治会の会長を引き受ける決断された背景は何だったのでしょうか?
佐藤さん 2021年に前会長が急病で退任されて、自治会の会員のみなさまから後任の要請を受けました。2ヶ月ほどじっくりと考えましたが、会長の不在は様々な支障をきたすと思ったので、お引き受けしました。現在は会長として3年目です。
また、都内で仕事をしていた頃から、40年以上ボランティア活動も続けています。こちらに戻ってからは町田市でのボランティアに携わり、市役所、学校、高齢者支援センターなど、様々な場所でお手伝いをしています。
このボランティア活動で広がったご縁も活かしながら、私なりの自治会長の仕事に取り組んでいます。
団地暮らしの「楽しみ」を増やし、健康を見守る工夫
ー自治会では主にどのような活動をされていますか?
佐藤さん 日々の活動は、市役所やUR都市機構(以下、UR)との連携、近隣団地と情報共有をする会議への参加などがあります。また、山崎団地は75歳〜85歳の高齢者が多くいらっしゃるため、高齢者の支援センターとの関わりも密接です。
町田山崎団地の風景
居住者の方の相談に日々向き合っていますが、自治会で対応できることと、支援センターと連携して対応すべきことを見極めながら、適切なコミュニケーションを取ることも重要な役割です。ボランティア活動の頃から、支援センターとの関わりは21年間続いているので、連携やお互いの理解は深まっていると思います。
特に女性の方からは、同性だと相談がしやすいというお声もあり、自分だからこそ広げられる支援も増やしていきたいですね。
ー山崎団地の自治会の活動において、特徴的だと感じる点はありますか?
佐藤さん 規模の大きさは特徴的ですよね。全部で116の居住棟が埋まった場合は、3,920世帯になります。現在住んでいるのは約3,100世帯で、自治会費を納めて協力いただいているのは、全体の約1/3にあたる1,100世帯ほどです。
紙や印刷代も上がっているので正直厳しい状況ではありますが、毎月の新聞発行など、最低限みなさまに情報をお届けできるように工夫しています。
山崎団地で配布している自治会新聞
あとは、URの方々の協力も得ながら、防災をテーマにした「団地キャラバン」や、夏休み恒例の「ちゃおちゃおまつり」、ハロウィンなどのイベント開催も行っていますね。今年のクリスマスには素敵なキャンドルのイベントも計画中です。これらのイベントには、毎回想像を超える人数にお集まりいただきます。
ちゃおちゃおまつりの様子
多くの人が集まり活気のあるイベントが実現できることも、山崎団地の特徴の一つかもしれません。今年から新しく始まる「まちやま まるごと スコーレ」も、回数を重ねていくことで、たくさんの方に楽しんでいただけるイベントに育っていくと思いますよ。
ー自治会の活動において、佐藤さんが特に力を入れていることは何ですか?
佐藤さん 高齢者が多いので、その点の支援は必要不可欠ですね。お一人住まいの方は特に、外に出ないとすぐに認知症になってしまうので注意が必要なんです。
対策として、いかに部屋から外へ出かけていただけるかのアイデアを日々考えています。会長になる前から取り組んでいる、町田市考案の「町トレ(町田を元気にするトレーニング)」を、住民の皆さんと集まって行う企画はもう5、6年続いています。
体操の後は、みんなでコーヒーを飲んで雑談をしたり、手仕事をする人がいたりと、一つの楽しみにしていただけたらと思っています。春には必ずお花見をしていて、体操の時には普段出てこない表情の人となりをお互いに知れる機会も大切にしています。
町田山崎団地名店街
可能であれば秋頃から、コロナ禍で止まっていたお食事会も再開したいですね。昔、調理の仕事をしていて必要な免許も持っているので、お食事も私が担当いたします。
お一人住まいの方にとって、一番大事なことが「食」だと思うので。そのため、お食事会でも日々お家で作れる料理を選んで、ご希望があればレシピもお伝えしていました。「これ美味しいから作ってみたい」と言っていただけると、私自身も嬉しいですしね。会話も盛り上がりますし、それだけで身体にとっていいことなんです。
私も今年で83歳、立派な高齢者です。そのため、自分の体のことも気にしつつ、やりたいことはまだまだいっぱいあります。
些細なやり取りも大切に、繋がりを持つことで助け合える
ー山崎団地のように、新しい取り組みにどんどん参加されている自治会は珍しいと思います。そういった姿勢の背景にはどのような思いがあるのでしょうか。
佐藤さん やっぱり地域の方々との繋がりを大切に、普段からコミュニケーションを取ることで、いざという時にお互い助け合えるんですよね。例えば、近くに桜美林大学ができた時も、事務局の方がすぐにご挨拶に来てくださったり、山崎高校も校長先生が変わる時にはお話をしたり、何かしら”とっかかり”は持っていた方がいいと思っています。
インタビューを受ける佐藤さん
ここ数年で名店会との交流も増えました。以前は自治会と名店会の間での情報共有や話し合いが不足していましたが、現在はよく連携を取っていて、名店会の会長の綾野さんとも「何かあったらお互いに相談しましょうね」とお話しています。
近年は自治会と名店会の連携が活発に
最近では山崎高校の校長先生からご依頼を受けて、高校生の”探究学習”のお手伝いをしています。この活動は、高校生たちが山崎団地について学び、団地内で活動できることを目指すものです。
この活動を通じて、高校生たちが定期的に団地を訪れるようになり、私たち自治会役員も一緒に活動する中で様々な学びがあります。やっぱり実際にお話をすることで、「今の高校生はこういうことを考えているんだ」と気がつく場面も多く、大人だって知らないことがたくさんあると感じますね。いくつになっても日々勉強です。
「修学旅行に行くのでお土産を買ってきます!」と言ってくれる学生さんもいて驚きましたが、みなさん素直に接してくれるのが嬉しいです。
ー佐藤さんは自治会やボランティア活動を通して、様々な世代や団体と交流されていますが、最近はどのような動きがありますか?
佐藤さん この団地内や近隣施設でも、色々な企画が立ち上がっていますよ。
例えば、団地内の正和幼稚園を中心に進められている「多世代が集う、山崎団地冒険遊び場プロジェクト」では、団地商店街の裏山をプレイパークとして開放する「冒険遊び場」や食材を持ち寄ってBBQを楽しむ「持ち寄りBBQ」が昨年から始まりました。
これは団地を活用した子どもたちの第三の居場所づくりを中心に、多様な世代が交わる機会に繋げていこうという活動です。
持ち寄りBBQの様子
山崎団地の自治会も運営委員会に入っているので、色々な話をお聞きしながら、協力できる部分をお手伝いしています。山崎高校の学生さんも勉強の一環で参加していて、盛り上がってきていますね。
また、桜美林大学のみなさんとも交流することが多く、団地の中で演奏会や落語会の開催や、絵画の展示など、団地を活気づけてくれます。今日もこの部屋に飾ってある絵を描いてくれた学生さんが、週末のイベントに向けた打ち合わせに来てくれる予定です。
自治会のイベントでもよく利用されるスペースには、桜美林大学の学生が描いた絵が飾られている
桜美林大学の学生によるライブパフォーマンス
広々とした自然の中で、思いのままに暮らせる豊かさ
ー最後に、佐藤さんの思う山崎団地の魅力についてお聞かせください。
佐藤さん ぜひ、私の山崎団地に対する思いを聞いてください。この団地を選んだ理由は、都会にはない緑や綺麗な空気、小鳥のさえずり、季節の花々と出会えるからです。
団地の周りにも素敵なところがたくさんあります。歩いて行ける距離にもリス園、ダリア園、菖蒲園、梅林、牡丹園など。蓮池はちょうど今の夏の時期、早朝に見にいくと見事ですよ。地元の野菜を売っている場所や、思いのまま歩き回れる広場もありますしね。
佐藤さんの思う山崎団地の最大の魅力は、豊かな自然があるところ
気持ちが荒んでいる時でも、この広々とした場所で心を開放して楽しめば、悩みも忘れてしまいます。お気に入りの場所を見つけて読書をしてみる、ゆっくりと手仕事をするのもいいかもしれません。
町田市は半分都会で半分田舎のような、両方の良さを持ち合わせているところが魅力かなと思います。もちろん都心ほど便利ではないですが、この豊かな緑と綺麗な空気はここでしか味わえないものですから。
編集後記
今回のインタビューでは、町田山崎団地の自治会長である佐藤禮子さんのお話を通じて、団地という場所が持つ特有のコミュニティの奥深さに、改めて気づかされました。
佐藤さんは、自治会長という立場でありながら、その肩書きにとらわれることなく、柔らかな眼差しでこの団地の人々と接しています。
「些細なやり取りも大切に、繋がりを持つことで助け合える」という言葉は、何気ない日常の中に潜んでいる、ささやかな幸せを見逃さないためのヒントのような気がしました。団地という空間が持つ、時間の流れや人々の距離感、それらが醸し出す独特の温もりを感じました。
桜美林大学や山崎高校との連携プロジェクトも印象的でした。未来の世代と現在の世代が、同じ空間の中で交わり、共に成長していく。そのプロセスにこそ豊かなコミュニティを築いていくヒントが隠されているのかもしれません。
佐藤さんの語る言葉一つ一つに、町田山崎団地の豊かさと、それを支える人々の静かな誇りが感じられました。この団地には、日々の生活の中で自然に生まれる、ささやかな幸せが溢れているようです。
今回の取材を通じて、町田山崎団地の魅力や可能性を少しでも感じていただけたなら嬉しいです。
次回もまた、どうぞお楽しみに!