【インタビュー】団地を舞台に膨らむアイデア、学生たちが地域に寄せる想いとは / 桜美林大学unlimited×地域・社会連携課 松村さん

2025年02月19日

町田山崎団地を舞台に、団地に住まう人とまちの人とが入り混じり、団地ならではの豊かな暮らしや心地いい日常の景色を共に創り・発信していく取り組み、「まちやまプロジェクト」。

そのプロジェクトの一環として、団地や町田にまつわる取り組みをしている方のインタビューを発信していきます。

四回目となる今回は、町田山崎団地(以下、山崎団地)のお隣にある桜美林大学のみなさんです。山崎団地で新しく始まったイベント「まちやままるごとスコーレ」に参加してくださったファッションショーサークルunlimitedの学生のみなさんと、その活動を近くで見守る地域連携課の松村さんにお話を伺いました。

*参加いただいたunlimitedのみなさん:
飯野さん(代表:下段右)、末永さん(副代表:上段左)、吉原さん(モデルチーフ:上段中央)、廣瀬さん(運営チーフ:下段左)

作品や活動の発信から始まった、地域との交わり

ーまず始めに、桜美林大学と山崎団地の地域連携はどのくらい歴史があるのですか?

unlimitedの活動について、学生たちの言葉で聞いてみたかったとお話する松村さん

松村さん: 私は桜美林大学の地域・社会連携課の所属で、5つあるキャンパスの中で町田エリアをメインで担当しています。山崎団地の自治会、UR都市機構と三者の協働は、団地夏祭りに合同参加したところからスタートしています。この取り組みを「町田山崎団地活性化プロジェクト」と称して、2013年から現在も続けてきました。

東京ひなたやまキャンパスは、芸術文化学群の新キャンパスとして2020年に新しくできた場所です。芸術系の学生たちがどのようにコラボレーションできるか模索する中で出てきてくれたのがunlimitedでした。学内でも知名度が高く、今年のオープンキャンパスの時に初めて彼らと話をした時には、既に山崎団地のイベント「まちやままるごとスコーレ」に関わっていたので驚きました。

2020年に設立された、桜美林大学の東京ひなたやまキャンパス

進んで地域に開いていくサークルがあることはすごく嬉しいですし、大学としても支援をしていきたいと思っています。どのような想いで団地のイベントに参加しているのか、私自身も聞いてみたい部分ですね。

ーお話に出てきた通り、unlimitedのみなさんには今年からスタートした山崎団地のイベント「まちやままるごとスコーレ」に参加していただきました。普段の活動と、山崎団地に関わるようになったきっかけを教えてください。

飯野さん: unlimitedは今年で創設3年目のサークルで、ファッションを通してショー作りや様々な表現活動をしています。 「みんなで作り上げる」ということを大切にしていて、色々な手法での制作意欲の高い学生が多いので、衣装の制作や作品撮りはもちろん、ショーの企画から運営、宣伝なども自分達で行っているのは特徴的ですね。

山崎団地と関わらせていただいた最初のきっかけは、今年の夏に参加した「まちやままるごとスコーレ」です。YADOKARIの方から参加のお誘いをいただいて、ちょうど私たちも山崎団地の方々と仲良くなりたいと話をしていたこともあり、お引き受けしました。

オリジナルの衣装を着た学生たちに、団地の方々も声をかけてくだったそう

吉原さん: unlimitedの活動を学校の中だけで完結させてしまうのはもったいないと考えていて、これまでも他大学のイベントでファッションショーをしたり、町田にある旧白洲邸 武相荘とのコラボレーションで撮影と展示をしたり、普段から積極的に学外へ出るようにしています。せっかくたくさんの衣装とモデルがいて、撮影やデザインもできるので、自分たちの表現をもっと幅広い年代の方に見ていただきたいんです。

武相荘とのコラボレーション撮影の様子

ー「まちやままるごとスコーレ」では、unlimitedのみなさんにはトートバック作りのワークショップを開いていただきました。この企画はどのようにして生まれたんですか?

飯野さん: ショーなどで衣装を作る時に余った生地がたくさんあったので、その端材を用いて作ったトートバックに、自由にパッチワークの装飾ができるワークショップをやらせていただきました。バックを作りたいと思っていたのと、余っていた生地を活用したいと考えていたので。
当日は幅広い年代の方が体験しに来てくださって、小さな子どもたちも興味を持って見学してくれました。

まちやままるごとスコーレvol.1のワークショップ中の様子
衣装作りで余った布を活用したワークショップを考えてくれました

吉原さん: ショーで使う衣装を着てビラ配りもさせていただいたことも印象に残っています。山崎団地のみなさんが「ファッションショーも見に行きたい」「衣装すごいね」など、色々なお声がけをしてくださって嬉しかったです。

衣装に身を纏った学生たちが、団地の風景を彩ってくれました

上の世代の方にもファッションショーに興味を持っていただけることを感じて、団地を舞台にショーをやってみたいと思いました。山崎団地の住人の方々も、自治会のみなさんも、すごく温かかったです。

ーひなたやまキャンパスと山崎団地の交流が、 今後もどんどん広がっていくといいですね。

松村さん: 学生たちの話を聞いていて、学外に出ようっていう自分たちの軸や、地域と交流したいという想いを持ってくれていることが素晴らしいなと思いました。大学の学びにもすごくつながっているので。大学のサークルが地域の方と関わることの動機が気になっていましたが、年代関係なく、自分たちの活動を見てもらえる場を模索している姿勢に納得しました。これが後輩たちにもぜひつなげていってほしいなと思います。

学生の表現の場が広がることで生まれる、近隣地域の方々との交わり

ひなたやまキャンパスができると決まった頃、近隣の方からの期待の声もすごく大きかったんです。ただ、大学が何をしているのかは外からだと分かりづらいので、学生たちが学んでいることを発信したり、地域のイベントに学生が参加をしたり、積極的に交流をしていかないと、接点は生まれないと思っています。
ただ近くに存在しているだけでは、大学全体としても、地域の方々にとっても価値につなげていけないと考えていたので、ここ2-3年でunlimitedのような学生が出てきてくれたのは心強いですね。

関心はあっても接点がなかった、イベントで縮まった心の距離

ーunlimitedのみなさんは、イベントに参加してみて山崎団地への印象に変化はありましたか?

吉原さん: 日々通学する中で、そこに暮らしている方々の存在は感じるしすごく近くにいるけど、大学とは別々になっている感じがしていました。でも、今回イベントに参加させていただいて、団地で働く店員さんたちが「イベントに出てくれていたよね」「unlimitedだよね」と気づいて声をかけてくださる場面が増えて、受け入れてもらえている感覚になりました。みなさんの温かさがどんどん伝わってきて、今は山崎団地への親近感があります。

末永さん: 商店街のお店にもよく足を運ぶようになりました。僕の行きつけは「もつ鍋処さくら」で、学校で衣装を作った帰りにご飯を食べていくのが定番になっています。

末永さん、飯野さんの行きつけは「もつ鍋処さくら」

廣瀬さん: 私は元々行きつけの場所があって、駄菓子屋さんのぐりーんハウスには毎週のように通っています。新しく出すメニューが完成する前に「これ美味しかったら、商品として出してみたいから、試食してみて」といただいたドーナツが今は販売されていたりと、気軽にお話できる場所になっています。他の学生たちも知らないだけで、来てみたらお気に入りの場所が見つかると思うので、もっと知られてほしいなって思います。

廣瀬さんが通う「ぐりーんハウス」では、学生に試食をお願いしてくれる場面もあるそう

ー団地がこの地域に開いていくことに対して、どのような印象を持たれますか?

飯野さん: どんどん開いていってほしいと思います。大学や学生との連携も、息をするように当たり前になっていくと僕たちも嬉しいです。こんなに近くて同じ地域にいるのに、関わりが持てないと寂しいし、もったいないなっていう思いがあります。

吉永さん: unlimitedに所属している子たちは、ファッションショー以外にも映像や演技など各々が力を入れている活動もあるので、外との繋がりや発表できる機会が増えるのはお互いにプラスになると思います。

松村さん: 学生たちがやりたいと思ってくれるのであれば、大学側もいくらでもサポートしていきたいです。芸術系のキャンパスなので、なかなか団地とのコラボレーションも演奏や作品展示など限られてしまうと思っていました。そのため、イベントがあった時に「こういうことできます、やりたいです」と一緒に考えてくれる、彼らのようなサークルがあることはすごくありがたいですね。

学生たちの学びの実践が、地域の活気につながる未来へ

ー今後も大学と地域のつながりが生まれ続けるためには、どのようなことが必要だと思いますか?

吉原さん: お互いにイベントがある時はチラシを配布するなど、情報が目につくようにするだけでも結構印象は変わると思います。前回の「まちやままるごとスコーレ」も多分知らない学生がほとんどなので。

末永さん: せっかく多世代が楽しめるイベントなので、どんなことが行われているのかを知ったら学生たちも行きたくなると思います。桜美林大学の学祭にも団地の方々が来やすいように宣伝していきたいです。お互いに行ったり来たりできる状態を作れたらいいなと思います。

ー山崎団地で起こると楽しい変化や、団地を舞台にやってみたいことはありますか?

飯野さん: お祭りがしたいですね。大学と山崎団地の合同祭りみたいな。そうすれば僕たちだけに限らず、色々な学生団体が参加しやすいと思います。

吉原さん: 元々野外でファッションショーがしたいと思っていたので、山崎団地を舞台にやってみたい気持ちはずっとあります。天候など難しい部分もあると思いますが、大学の中だけだと敷地に入るハードルも高く、見ていただける人数も層も限られてきちゃうので。

インタビュー後、まるごとスコーレvol.02で山崎団地でのファッションショーが実現しました

廣瀬さん: 授業で学んでいることを活かして、ポスターなどのデザイン作りで関わってみたいですね。絵画系のゼミに入る予定なので、子どもたちや地域の方に気軽に絵を描いてもらえる企画もできたら楽しいなって思います。

末永さん: 写真とか映像の撮影に使わせていただいて、商店街のお店のPRにも繋がればいいですよね。unlimitedに限らず、モデルや俳優、撮影をやってみたいって人がたくさんいる学校なので、校内で募集をしたらたくさん手が上がると思います。学生としてもポートフォリオに活用できますし。

松村さん: 学生たちのアイデアを聞いて、山崎団地の中にスペースがあれば、学生が自由に使える拠点があるといいなと思いました。気軽に行けて休憩や作業、作品の展示ができるような、学生が過ごせる場所があったらすごく面白そうです。

吉原さん: たしかに、気軽に過ごせるスペースがあったら気分転換で足を運ぶ学生も増えると思います。実際、ちょっとした息抜きとして、授業の空き時間で商店街へ行くことも結構あるんですよ。

ー山崎団地や近隣地域の皆さんへのメッセージ

松村さん: 大学や学生としても地域との交流が学びの場になっているので、地域の方々にも積極的に大学を活用していただきたいですね。
unlimitedをはじめ、しっかりと想いを持った学生たちなので、ただボランティアのような形ではなくて、お互いに高め合えるような関係性を築いていけたら嬉しいです。
地域の方々も学生と一緒になって、学んでいただける環境を作っていけたらと思います。

飯野さん: 今年は山崎団地のみなさんとたくさん関わらせていただいて、本当にありがたい限りです。自治会、商店会の方々もいつも優しく受け入れてくださり感謝しています。地域の方々も温かくて、すっかり居心地が良くなってしまいました。これからもよろしくお願いします。

末永さん: unlimitedのファッションショーや単独公演も、ぜひ山崎団地のみなさんに見に来ていただきたいです!

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