第5回:違う島に、同じ気持ちの友達がいる|女子的リアル離島暮らし
YADOKARIをご覧の皆様、こんにちは。小説家の三谷晶子です。第4回では島の人間関係や家を借りる方法についてお話しました。今回は番外編として、私が住む加計呂麻島ではなく、現在、友人が住む伊良部島に滞在した時のお話しをしようと思います。
何も持っていなかった10代の頃の友人と、島で再会する
伊良部島は沖縄県宮古島からフェリーで20分ほどの離島。宮古島から伊良部島には2015年に橋がかかる予定ですが、今はまだフェリーでしか行けません。
その伊良部島に2年前に移住したのが、私の友人、是枝麻紗美。15年ほど前に東京のTHE ROOMというクラブで知り合い、毎日のように遊んでいた友人です。
当時の私たちは10代で学生で、やりたいことはあったけれど、全てが漠然としていました。彼女はファッション業界で何かをしたいと思っていて専門学校に通っていて、私は文章を書きたいと思いながらも誰にもそのことを話せずにいて、けれど、同じクラブに集っては、毎日のように遊んでいました。
その後、私はライターとして編集プロダクションに勤務し、週末しか家に帰れないような激務をすることになり、彼女は彼女でスタイリストとして朝の5時に現場に入り、日付が変わってから戻ってくるような生活をするようになりました。忙しさのせいで疎遠になっていた私たちの再会のきっかけは、LINE。自己紹介欄に「現在、加計呂麻島」と書いていた私に、彼女が「私、伊良部島にいる!」と返信してくれたのが始まりでした。
そこから、Facebookでもつながるようになり、「加計呂麻島にはカツオ祭りって言って、船の上からカツオを投げる祭りがある」と私が書いたら、「こっちにもあるよ。『おおばんまい』って言うの」などの会話をするようになりました。
出会った当初の「今日、○○さんのDJだけど行く?」なんて話からは想像もつかないようなやりとりを経て、私は先日、彼女に会いに行ったんです。
東京での彼女はトップスタイリストとしてあちこちの雑誌で売れっ子で、雑誌でも特集が組まれるほどでした。疎遠になっていた間もふと読んだ雑誌に彼女が載っていて、「すごいな」と思ったことを私は覚えています。 そして、私も紆余曲折しながらもライターとして働き、現在は小説家になっています。
何も持っていなかった10代の頃、若さと時間を持て余しながら、それでも、何かを懸命に探っていた時のことを思い出して、お互い夢を叶えたことを嬉しく思いました。
違う島にいながら、また出会えたことを喜び合う
そして、彼女は今、伊良部島に、私は加計呂麻島に住んでいます。
伊良部島は珊瑚礁が隆起してできた島で、ハブがいない沖縄の島。 加計呂麻島は山が険しくハブがいる奄美諸島の島。 植生や気候は似ているところもありますが、住んでみると大分違いがあります。
伊良部島は人口6500人ほど。加計呂麻島は人口1500人ほど。 平たい島である伊良部島は面積は大きいけれどすぐに回れて、 山が深く海岸線も入り組んでいる加計呂麻島はノンストップで車を走らせても数時間では島を一周はなかなか出来ません。
このように、同じ南の離島でも島によって風土が違い、風土が違うと人の流れや文化、気質も違ってきます。
だけど、きっと、自分が住む島を美しいと思っている気持ちは一緒です。
「晶子が来る期間、天気がいまいちなんだよね。伊良部ブルーの海、見せたいのに」
「今日、ANAのタッチアンドゴーがあるから。海に向かう飛行機、帰る前に見ようよ」
違う島に住んでいる。だけど、自分の住んでいる場所を素敵だと思う、訪れた人にそれを見せたいと思う。 私もそれは一緒です。
「加計呂麻島はね、山がある分、集落ごとの感じがそれぞれ違って面白いんだよ」
「小さな商店しかない何もない島なんだけど全てがあるの」
ついこの前に移住して来た身なのに、そんな風にお国自慢のように話したりしている自分もいて、何だか少しおかしくなったり。
「生まれた場所じゃないのに不思議だね」
そんな風に二人で話したりしていました。
島で生まれたわけじゃない。けれど、島を素敵だと思う。
もてなし上手の彼女は、朝から島の素材をふんだんに使った料理を出してくれました。
そして、そのあとに、伊良部島名物のうずまきパンのトーストまで。
「伊良部島のこれが美味しいんだよね」 と彼女が言えば、 「加計呂麻島にはお正月料理で三献(さんごん)ってあるんだよ」 と私が言ったりして、お互いの島自慢は延々と続くばかり。
私は東京生まれ。彼女は鹿児島の市内の生まれ。自分が今いる島が生まれた場所ではありません。
だけど、今、自分がいる場所を素敵だと思っていることは一緒です。
彼女には伊良部島のタッチアンドゴーのための誘導灯の赤とコントラストをなす伊良部ブルーの海がとても似合う。 そして、私は加計呂麻島の深い山々の緑と、浜ごとに色を変え織り成す薄青やグリーンのグラデーションの海がとても好きです。
違う島に、同じ気持ちの友達がいる。東京で出会ったのに、何故か、15年の時を経て。
15年前と変わらないバカ話を、真っ青な海を眺めながらして、「今度はうちの島にも来てよ」と言えること。
あの頃には思いもよらなかった人生を送る私たちは、「お互い島に住んでるなんて面白すぎ!」なんて話しながら、「ここに住みたい」と思った場所で暮らしています。
写真協力:伊良部島 琉宮、是枝麻紗美