自分でつくる自分の仕事、古都で起こる「小商い」ムーブメント|働き方の再編集、京都の小商い
突然ですが、あなたにとって働くことってどんなことでしょうか?
生活の糧を稼ぐ手段、ライフワーク、はたまた家族を支えるための方法、きっと人それぞれに働く目的があるのだと思います。
働く目的や職種と同様に、「働き方」もここ5年間でさまざまな選択肢が出てきました。未来住まい方会議の読者の方ならば、会社のオフィスから離れた場所で働くリモートワークや、複数の仕事を掛け持つデュアルワークという働き方をご存知の方もいるはずです。
2016年の4月には大手企業のロート製薬が正社員を対象に副業を認める制度を開始し、今後この動きはますます加速していきそうです。
未来住まい方会議では、人それぞれに最適な住まい方があるはず、と考え、スモールハウスやトレーラーハウスなど、未来の新しい住まい方を紹介してきました。住まい方は生きることと強く関係しています。人それぞれの価値観から理想の暮らしが生まれ、それを追求しようとすれば、働き方を再編集する必要が出てくるかもしれません。
その流れの中で、未来住まい方会議がご紹介してきた働き方のひとつが「小商い」です。
小商いとは?自分で仕事を作る働き方
小商いは、「小さな元手で、自分の納得できる大きさや方法で行う商いのこと」とされています。最近では、小商いにまつわるいくつかの書籍が出たり、雑誌の特集にキーワードとして登場することもあり、ポピュラーな言葉になってきました。
未来住まい方会議でも、過去に小商いを行っている方に取材し、その働き方をご紹介してきました。
*以前紹介した小商いを紹介した記事
【インタビュー】なぜ路上でケーキ屋をするのか?POMPON CAKESの立道さんに聞く小商い|ちいさくはじめる小商い
【インタビュー】大事なことは始めること、「やきいも屋・デザイナー」のチョウハシトオルさんに聞く小商い|ちいさくはじめる小商い
そんな小商いのムーブメントが起きている地域のひとつが、京都です。なぜ京都なのか? それは後ほど説明するとして、この連載では、京都で起こっている小商いの事例を紹介して、働き方について改めて考え直してみたいと思います。
小商いに適した、いい意味でユルい街
京都と聞いて、思い浮かぶことはなんでしょうか? 寺社仏閣、伝統工芸や伝統芸能、1000年の歴史を持つ大人の街。そんなイメージが頭に浮かびます。しかし、住んでみると違う京都が見えてくるのです。
実は僕は、京都に2年ほど住んでいたことがあります。大学を卒業してすぐに自転車で日本一周をしていたことがあり、ご縁もあって自転車屋として働きながら京都で暮らすことになったのです。
住んでみた京都は、いい意味でユルい街でした。ギラギラとした消費と経済の街・東京に比べて、せかせかしていなくて、マイペースに好きなことをしている人が多く、学生や海外から来た人など、常に新しい人が入り込んでくる。「足るを知る」と言えばいいのか、「身の丈にあった」と言えばいいのか、多くの人がマイペースだから自分もあくせくしないでいい。そんな居心地の良さが京都にはありました。
そのせいか、この街には、経済的な成長より、個人の生きがいや、心地よい働き方を優先し、小商い的に自分で仕事を作って生活している方々が数多くいます。
この連載で紹介するのは、25歳で銭湯を受け継いで運営している湊三次郎さんや、ウェブ制作会社ロフトワークでサラリーマンとして働きながら「泊まれる雑貨屋」を運営している岩崎達也さんなど、自分の理想とする生き方や価値観に基づいて、働き方を再編集しながら働いている方たちです。
その方々に共通していたのが、「仕事と趣味を同じ方向に向ける」という働き方でした。
仕事は、生活の糧を稼ぐための「ライスワーク」と、生きがいに通じる「ライフワーク」という二つの種類に分けることもできます。社会に出ると「仕事と趣味は別の方向に向けた方がいい」という意見を聞くことが多いと思いますが、同じ生きている時間ならば、ライスワークもワイフワークも同じ方向に向けることができたら、人生はより豊かになっていくのではないでしょうか。
25歳の銭湯運営者と、文化を育てるシェアハウス
最後に、次回に紹介する方々の働き方を簡単にご紹介して連載第1回を終わろうと思います。
次回は、25歳で銭湯「サウナの梅湯」を運営する湊三次郎さんと、工房付きのシェアハウス「REDIY」を運営する株式会社めいの代表、扇沢友樹さんをご紹介します。
湊三次郎さんはNHKのTV番組「U-29」や、ブルータスなどの雑誌からも取材された銭湯の番頭さんです。学生時代から全国600箇所の銭湯を回る銭湯マニアだった湊さんが廃業しかけていた銭湯を受け継ぐまでのストーリーをご紹介します。
木工だけでなく鉄鋼も可能な工房付きのシェアハウス「REDIY」を運営する株式会社めいは、現在京都に10棟のシェアハウスを運営する一方で、京都の文化を育てることを優先して事業を続けています。シェアハウス事業のはじまりや、本屋+シェアハウス、工房+シェアハウスなど、代表の扇沢さんが構想している、仕事一体型の住居についてご紹介します。
住まい方と同様に、働き方を再編集することで、もっと生きやすくなる人は増えるはず。この連載が、「どのような働き方が幸せで、納得できて、長く続けていけるのか?」という問いを考え直すきっかけになれば幸いです。
次回もお楽しみに!
「京都の小商い 〜就職しない生き方ガイド〜」発売中!
この連載は、5月28日に三栄書房から出版された「京都の小商い 〜就職しない生き方ガイド〜」という本の内容を一部抜粋・再編集した内容になっています。
この連載でご紹介している方を含め、京都で初めて古民家カフェを開いたカフェのオーナーや、染色作家さん、骨董屋さん、アクセサリー作家さん、ゲストハウスのスタッフなど、12名の方々に、働き方や商いの始め方をインタビューして一冊の本としてまとめました。
巻末には「ナリワイ」の伊藤洋志さんのインタビューも掲載しています。
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