第12回:生きる芸術「すべての人生がアートになる」|芸術は、生きる技術 

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こんにちは。夫婦でアート活動をする檻之汰鷲(おりのたわし)こと、夫の石渡ノリオです。今日は、芸術、アートについて話します。芸術やアートは何処へ向かっているのか。ましてや、人類は何処へ向かおうとしているのでしょうか。

つくる

アーティストと呼ばれる人は何かを創作しているから、そう名乗り、また呼ばれています。その「つくる」とは何なのでしょうか、ぼくも未だその答えを模索しながら製作していますが、自分の表現が絵や彫刻のようなモノだけでなく、環境も含めて成立したとき、自分が「つくる」実感を手にしていることに気がつきました。

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自然のなかに「つくる」アート作品

毎年、秋に山梨県のマウントピア黒平というキャンプ場で、Camp Off-Toneという音楽フェスティバルが開催されています。ぼくたち夫婦はそこの会場装飾を担当しています。これまで様々なフェスティバルに参加して、ひとつの違和感がありました。大自然のなかに、装置や道具を運んで、組み立てて、また撤去して、スピーカーは例外にしても、極力、自然にあるものでやることはできないのか、と。

理想郷としての音楽フェスティバル

そんな想いを実現させてくれたのがCamp Off-Toneでした。ここで表現するのは庭。まず、掃除をします。落ち葉ひとつ残しません。会場を散策して、材料を探します。石や木や枝や草。それを集めて並べます。美しいカタチを目指して、配列していきます。そうして出来上がるのが、作品「焚火曼荼羅」です。今年は、空き家の改修で出た廃材も並べましました。

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イベントがスタートして人が集まり、日が暮れて夜になれば、いよいよ火を灯します。秋の夜は冷えるので、焚火の周りにひとが集まり、語り、踊りながら夜を明かします。

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大自然のなかに、スピーカーを運んで大音量で鳴らす、その矛盾した光景に太古と未来が一周して繋がるような感動を覚えます。踊るという行為が、いかに人間が太古から繰り返してきた運動か、体験した人は共感してくれるはずです。イベントが終わる頃になると、焚火曼荼羅は灰になり、自然に還ります。

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生きる芸術とは生活芸術。即ち、すべてのひとがアーティスト

ぼくは、芸術が生活のなかで表現されたとき、ひとりひとりの人間が何処から何処へいくのか答えることができる時代になると信じています。つまり、この焚火曼荼羅のように、自分の生活の一切が何処から来て、どうすれば自然に還すことができるのか、それを自らコントロールすることが未来に期待されるライフスタイルだとイメージするのです。

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イメージをカタチにするのが「つくる」の源泉です。作品をつくる行為は、その創作環境を自ら選択し、材料からテーマまで、すべての循環をコントロールする実験場なのです。自分の世界を踏み出し、共感できる仲間と、より大きく実験できる遊び場、それがCamp Off-Toneです。
それは音楽やアートに限りません。社会を変えることはできなくても、ひとりひとりが自分を変えることはできるのです。自分の生活に関する一切のことを選択し、すべての循環のコントロールを試みれば。
その行為が素晴らしければ、身の回りのひとも変わるでしょう。気がつけば、自分の生活環境は、以前よりもずっとよくなった、そんな体験をしている人も多いのではないでしょうか。ぼくは、まだまだ道の途中ですが、その可能性を開くことも芸術やアートのできる仕事だと考えています。

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あなたが変われば、世界が変わる

芸術を生活のなかに見出せば、生活そのものが芸術になります。絵を描くことやカタチをつくることだけでなく、ひとりひとりの人間が、その人生をつくり豊かな暮らし方を手に入れることが、生きる芸術なのです。

*Camp Off-Toneとは
山梨県甲府市の昇仙峡近くのマウントピア黒平にて、DJのMatsusakaDaisukeを中心に毎年秋頃200人限定で開催されるアンビエント野外パーティー。詳細はこちら