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空飛ぶタイルの家「Casa de las Tejas Voladoras」

2019.12.30

Daniel Moreno Flores (ダニエル・モレノ・フローレス)という建築家が、イラストレーターEmilia Andrade (エミリア・アンドラデ )のために建築した、非常に個性的なスモールハウス、名前は「Casa de las Tejas Voladoras (カザ・デ・ラス・テハス・ボラドーラス) 」。英訳すれば、「House of Flying Tiles (ハウス・オブ・フライング・タイルス)」、日本語に訳すとすれば、「空飛ぶタイルの家」となる。

場所は赤道直下の国、南米・エクアドルの首都キトの郊外に位置するのPifo (ピフォ)という町。

とても空を飛ぶようには思えないが、家の周りにぶら下がる無数のタイルはインパクトがある。金属製のワイヤーに吊るされているタイルをよく見ると、鳥の羽のようでもあり、確かに宙に浮いている。

タイルの素材は同じだが、タイルの年齢は様々、新しいタイルと古いタイルを使い列ごとに組み合わせている。
この空飛ぶタイルの壁は、家の南側と東側に張られていてタイルの角度も意図的に変えている。その理由は室内に入ると分かる。

基本的にこの家は全面ガラス張りになっていて、開放的な反面、家の中に強烈な赤道直下の日差しが差し込むのだ。
遮光カーテンを取り入れるのも一つの手だが、それではあまりにも味気ないと思った。そこで苛めいたのがこのタイルの壁。
このタイルの壁を東側と南側に張り巡らせることで、適度な遮光と断熱効果も得られる。

遮光や断熱効果以外に、日の出から日没まで太陽の動きに合わせて自然光の様々なコントラストを楽しむことができ、その1秒1秒を特別な瞬間にすることができるのだ。

via: https://www.dezeen.com/

このスモールハウスの材料の木材は、エクアドルでは非常に一般的な建築資材であるユーカリを使用している。その柔軟性と価格の安さから重宝されている木材である。

キッチンはオープンスタイプでリビングのど真ん中にある。
シンクと調理台が、コンロ・オーブンと対面式になっていて、収納棚がその側面に設置されている。キッチンデザインとして、斬新であり、スモールハウスで共同で調理するには確実に合理的な設計かもしれない。なるほど、こんなレイアウトもあったのかと驚かされる。学ぶべきところが多いスモールハウスである。

見ての通り、この家は全面窓ガラスの吹き抜けのワンルームのような作りになっていて、非常に開放的になっている。

キッチンの収納棚の上がオープンな中二階になっているが、そこへアクセスする階段がユニークだ。上り下りするときの左右の足の動きに合わせたようなハンドメイドの木製階段は、無駄なスペースをなくすためでもあるがデザイン性を感じる。

壁も無くオープンになっている中二階は、イラストレーターの作業スペースになっている。家の高い位置から外の景色を一望しながら作業できるというわけだ。イラストレーターのようにインスピレーションを必要とするクリエイティブな仕事には理想的な環境だ。

こちらの寝室は、仕事場である中二階の下にある。どこから入るかというと、先ほどのユニークな階段の脇の扉。地下室のようだが、正面は北向きの全面ガラス張りになっているので閉鎖的で薄暗いイメージは全くない。寝室を北側に配置することで、赤道直下の厳しい日差しと暑さを避けて快適な睡眠を得ることができる。

寝室のある北側から家の全形を眺めると、屋根は厳しい日差しを避ける為ひさしを長くして、勾配をつけた片流れになっている。それには理由があり、角度をつけた屋根をつたってできるだけ多くの雨水を効率的に貯めることができるからだ。雨季と乾季がはっきりしているキトにおいては非常に合理的なアイデアだ。

建築社のDaniel Moreno Floresは、ローマ時代の「インプルウィウム」という貯水システムを持った家が好きで、そこから発想を得たという。

個性的で独特な作りの家だと思うが、そこには、建築家がこの土地の気象風土に適合した住みやすい家を作りたいという思いが詰まっている。手作り感もありながら、非常に理にかなっていて、機能的にデザインされて味があり見た目も美しい。
お金をかければ住みよい暮らしが手に入るわけではない。豊かなアイデアが理想的なライフスタイルを作り上げるのだ。

via:

https://www.dezeen.com/

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