オランダのデザインスタジオ Blade-Made は、退役した風力発電用タービンをタイニーハウスに生まれ変わらせた。設計を手がけたのは、ロッテルダムの建築事務所 Superuse の建築家ヨス・デ・クリエガー。彼は2023年にBlade-Madeを共同設立し、寿命を迎えた風車の新しい使い方を探る活動を続けている。
今回利用されたのは「ナセル」と呼ばれる部分。発電機やギアなど風車の中枢を収める空間で、長さ約10メートル、幅4メートルと居住にちょうどよいサイズだった。そこから着想を得て、この小屋は「Nestle(寄り添う、という意味)」と名づけられた。部品の再利用かつ、再生可能エネルギーを使用をも実現したこのタイニーハウスの中を、覗いてみよう。
風車とは思えない空間の心地よさ
外観は昔の風車の姿をそのまま残しているが、一歩中に入ると、ゆったりとくつろげるモダンな空間が広がっている。浴室やキッチンなどの設備をまとめて配置することで配線や配管をすっきりと整理し、その分リビングエリアを広々と確保した。オープンプランの空間にはソファやダイニングテーブルを置くだけでなく、展示やオフィス、会議スペースとしても柔軟に使える。
内装は地元の家具工房 Woodwave が手がけ、明るい合板やリサイクルPETフェルトを使うことで温かみと快適さ、さらに音響性にも配慮されている。デザインはできるだけシンプルにまとめ、誰にとっても居心地の良い空間となっている。
再生可能エネルギーで暮らす
屋根には4枚のソーラーパネルを設置し、室内の電力や電気自動車の充電に利用できる。温水はソーラーボイラーで供給され、空気熱交換式ヒートポンプが室内の快適な温度を保つ。断熱性も高く、気密性の高い構造と三重ガラスの窓で居心地をさらに高めている。
今回のナセルは、オーストリアのゴルスで使用されていたVestas V80型風車から供給された。世界には同様に寿命を迎えた風車が1万基以上あるとされ、今後もその再利用方法を模索し続けているという。
「Nestle」は、退役した巨大な機械の可能性を暮らしに変えた象徴的な例。産業の遺産に新しい命を吹き込み、持続可能な未来を描くタイニーハウスとして、森の中で静かにその存在感を示している。
via: dezeen.com