
1月22日(木)、相鉄本線の星川駅・天王町駅を結ぶ高架下施設「星天qlay」にあるYADOKARIのオフィス・qlaytion galleryにて、「未来サンカク会議」が開催されました。
6回目の開催となった今回のテーマは、『現在進行形の団地で、さとやま文化を育む!?』。ゲストに、UR都市機構で町田山崎団地のストック活用に取り組む坂田辰男さんをお迎えし、UR都市機構とYADOKARIがタッグを組んで取り組む「まちやまプロジェクト」を軸にお話を伺いました。
トークとワークショップの2部構成で行われた当日の様子をお伝えします!
アイスブレイクから“ネオ残業”へ

まずは近くの方と簡単な自己紹介を行うアイスブレイクからスタート。お隣の方と、今日呼ばれたい名前や住んでみたい場所、サンカク会議参画のきっかけなどを共有しました。
現地の参加者は12名。神奈川・東京・千葉など近隣の方だけでなく、お仕事の出張ついでに広島からご参加くださった方の姿も。
各テーブルでは、団地との関わりや普段のお仕事の話に自然と脱線しながらも、気づけば深い議論に。「ネオ残業っていいよね」「こういう場があることがありがたい」といった声も上がり、開始直後から会場は和気あいあいとした熱量に包まれていました。

ゲストトーク:団地を「住む場所」から「暮らしの舞台」へ
お互いのことが少しわかり、肩の力がふっと抜けたところで、トークセッションがスタート。
ゲストは、UR都市機構で団地のストック活用に取り組み、リノベーション事業などにも携わられてきた坂田さん。社内の若手がチャレンジできる場としての「ABC-Project」の立ち上げにも関わり、現在は顧問として伴走されています。
今回のファシリテーターを務めたのは、YADOKARIの姜(かん)さん。銀行員からキャリアをスタートし、その後まちづくりの領域へ。現在は地域の活性化やコミュニティビルディングなどのプロジェクトに携わっています。
YADOKARIがUR都市機構とともに取り組む「未来団地会議」(2024年夏〜)など、団地を舞台にした共創も広がっています。その取り組みのひとつが、今回のテーマにもつながる「まちやまプロジェクト」です。
まちやまプロジェクトとは、緑があふれ、遊歩道や公園が点在する、のびやかな暮らしの広がる町田山崎団地を舞台に、団地に暮らす人とまちの人、大人と子どもが一緒になって心地よい日常をつくり出していく取り組みです。
“住宅供給”の象徴として多くの暮らしを支えてきた団地は、いま高齢化や空室化といった課題を抱えながらも、大きな転換期を迎えています。
一方で、整備された住宅地でありながら、共用の広場や緑地、活用可能な空間が点在する団地には、「人と人」「人と地域」の新しい関係が芽吹く余白もある。
そうした視点から、団地が“暮らしの文化を育む場”として再評価され始めています。
団地を管理するUR都市機構という立場で、なぜ既存の価値を更新する挑戦に踏み出したのでしょうか。

「団地なんて…」の先にある、本当のポテンシャル
坂田さんからはまず、「町田山崎団地ってどんな場所?」という説明から。
坂田さん(以下敬称略):
「JR・小田急の町田駅からバスで20分、横浜線の古淵からもアクセスできる“郊外バス圏団地”で、多摩エリア最大規模。『古い、大きい、高齢者が多い』と見られがちですが、実際は多摩丘陵に建っていて高低差や緑が残り、自然がとても豊かな場所なんです。
団地の中にスーパー、集会所、幼稚園・保育園があって、近くに小学校、中学校、高校もある。子育てもしやすくて、言ってみれば“ゆりかごから墓場まで”が揃っているようなエリアですよね。」
周辺では、桜美林大学ひなたやまキャンパスの開校や、医療・福祉・看護・介護の複合施設「グランハート町田」の開業など新しい動きも進み、乳幼児の転入も多い。 「団地自体は古いけれど、周りは活気づき新しい」。そんな状況が、いまこの場所を面白くしてくれているのだと言います。

団地は“暮らしの舞台”?
まちやまプロジェクトの根底にあるのは、「団地を住民だけのための場所にとどめず、“暮らしの舞台”として再定義したら、もっといろんなことができるのでは?」という仮説でした。
坂田:
「URの人間は、舞台裏をやる人という認識です。この場所をどう使ってもらえたらいいか、ここで活動してくれる“アクター”が活躍できる舞台を整えていく。そうしてエリアの価値向上につなげていきたいと思っています。私たちは、仮説を立てて検証している状態です。」
これまで、団地のコミュニティは“住民自治”のもと自治体に任せることが多かったUR都市機構が取り組む理由について、坂田さんは「良い人間関係が、人を健康にも幸福にもする」という視点を共有しながら、新たなフェーズに舵を切ったと語ります。

具体的に何をしている? “日常風景”を育てる3つの取り組み

坂田さんからは、まちやまプロジェクトに関連する取り組みがいくつか紹介されました。

① 団地キャラバン
ABC-Projectの若手メンバーが中心となって2015年から続く取り組みで、昨年10周年を迎えました。良品計画と連携しながら、テントで昔ながらの遊びをしたり、防災に関するイベントを行ったり。少しずつ輪が広がり、地域内外の関係者も巻き込む場へと変化しています。

② まちやま まるごとスコーレ
年に1回の“打ち上げ花火”のようなイベント開催にとどまらず、日常風景をつくるようにという思いから年数回実施しています。地域の方や商店街の方とも協力しながら、団地内で長年活用されていなかった場所を使ったイベントを開催するなど、暮らしの延長にある余暇の時間をひらいていく試みです。
③ 冒険あそび場
地域の世和幼稚園や商店街が主体となって取り組む冒険あそび場。多様な地域プレイヤーが場をつくり、続けていくことで、商店街に新しいお店が生まれたり、賑わいが戻ってくる変化も起きていると言います。
そして今年からは、団地の“みどり空間”の活用をテーマにした新しい取り組み「まちやま みのり“農”のある暮らしプロジェクト」も始動。野菜を植えたり、四半期に一度「みのりの教室」としてレクチャーの機会を設けたりと、屋外空間を地域にひらきながら、次のコミュニティ形成へとつなげていく構想が共有されました。
トークセッション:「余白」をどうひらき、文化を育てていく?

トークセッションでは、姜さんが坂田さんに問いかけながら、「団地をどう捉え直し、変化を生んでいけるのか」をさまざまな角度から深くお聞きしました。ここでは、その一部をご紹介します。
姜さん(以下敬称略):
「活動が小さく始まって、だんだん広がっていった町田山崎団地の様子がすごく印象的でした。団地の役割やその捉え方の変化について、もう少し詳しく教えていただけますか?」
坂田:
「団地って、もともとは『住まいが足りないから、とにかく供給しよう』という目的でつくられたものなんです。だから当時は、若いご夫婦がいて、子どもがいて……すごく華やかでした。いま“高齢者が多い”って言われるけれど、最初からそうだったわけじゃなくて。いい場所だから住み続けた結果、年齢が重なっていった。その点については、マスコミではなかなか取り上げられないんですよね。
そしていまは、人口減少や建物の老朽化のなかで『この先どうする?』を考えるフェーズに入っている。『壊しちゃえばいい』という声もあるけど、それが答えじゃないんじゃないかと思っていて。まさに過渡期というか、転換点なんだと思います。」
姜:
「なるほど…。でも、変わらないものもあったりするのでしょうか? 団地ならではの空気感ってある気がして。坂田さんが感じる“団地の良さ”って、どんなところですか?」

坂田:
「“余白”かなと思います。今の新築って、オートロックで部外者は入れないのが当たり前で、集合住宅もクローズドになりがちじゃないですか。でも団地は、もともと“まちをつくる”という考えで設計されていて、パブリックなエリアがたくさんある。それが余白になっていると思うんです。
ただ一方で、管理の面ではどんどんクローズになってきて、禁止事項も増えている。余白はあるのに、うまく使えていない。住んでいる人も、訪れる人も心地よく過ごすための“塩梅”を、ちゃんと考えないといけないと思っています。」
姜:
「小さなお子さんから、長く住まれている高齢の方まで、さまざまな世代が入り混じって暮らしている場所ですよね。いろんな人にとっての“まちの中庭”のような存在になったら素敵だなと思うのですが、こうした開かれた営みは、どのように育てていくことができるのでしょうか。」
坂田:
「そこが一番難しいところですね。イベントを開催すると、『うるさい』と言われてしまったり、普段通っている道を塞いでしまったりすることもあります。世代が自然に交わっていくといいなとは思うのですが、それを実現するのはなかなか難しい。
だからこそ、一度きりで終わるのではなく、続けていくことが大切だと思っています。活動が“地域の風景”として定着するまで続けていく。『今日はイベントがある日なんだね』と自然に受け止めてもらえるようになるまで、認知が変わる時間をかけて取り組み続けることが必要なのではないかと。」

姜:
「取り組みの継続から“文化”へとつながっていくためには、どのようなことが大切だと思われますか。」
坂田:
「文化というのは、つくろうと思ってすぐにつくれるものではないと思うんです。時間もかかりますし、住む人が変わり、世代が入れ替わっていく。その積み重ねのなかで、初めて文化や歴史になっていくものだと思います。
スクラップアンドビルドでまちをつくっていく時代は、もう古いのではないでしょうか。まちに暮らす人たちの営みに向き合いながら、少しずつ積み重ねていく。そのプロセスのなかで、何世代か先に文化として根づいていくのではないかと思っています。」
団地の余白をどうひらき、日常の風景として根づかせていくのか。
坂田さんの言葉からは、成果を急ぐのではなく、時間をかけて“育てていく”姿勢が伝わってきました。
町田山崎団地で続くこうした試みが、これからどんな風景を生み出していくのか。そんな期待を感じさせる時間となりました。

サンカクワークショップ:団地から生まれる“ひらかれた営み”を考える

トークセッション後は、未来サンカク会議恒例のサンカクワークショップへ。
未来サンカク会議では、会社や組織の枠を超えて未来を創る「ネオ残業」を掲げています。そのため、普段の肩書きや立場を脱ぎ捨て、役(アクター)になりきるロールプレイング形式で進行します。
今回は、団地の自治会長や、SNSに強い大学生、旅するカメラマンなどの個性的なアクターが登場。団地を盛り上げたい有志の皆さんとして、団地を舞台にどんな“ひらかれた営み”をつくれるかを考えていきました。
①ステージカードで「舞台」をイメージ
まずグループごとに、「ステージカード」が配布され、団地に点在する魅力ある場所を、カードの情報から読み取り、舞台として捉え直します。

②アクターになり、ギフトをリストアップ
それぞれがアクターになりきり、「これならみんなにあげられる」「これ、使ってもいいよ」という“ギフト”を持ち寄ります。
カメラマン、SNSに強い大学生、旅するカメラマンなど、役割も得意なこともさまざま。

③ギフトを掛け合わせて、やりたいことを立ち上げる
「ぶっ飛びアイディアをたくさん出してください!」という姜さんの一声で、会場の熱量がさらに上がります。
例えば…
「カメラマンが3人いてSNSに強い大学生もいるなら、商店街の“撮影&発信”が回り出して、バズる商店街がつくれるかもしれない。」
「旅するカメラマン×まちのお医者さんなら、“体にいい世界の食べ物屋さん”だってあり得る。」
「遺影を撮ってくれるカメラマンがいたらいい」という発想も飛び出し、「団地にはおじいちゃんおばあちゃんも多いから、実はリアルにニーズがあるかも」と頷きが広がる場面もありました。
アクターになりきることで、普段の自分では出てこない視点が生まれる。
「それ、たしかに!」「面白い!」と目を輝かせながら、アイディアが連鎖していく時間は、まさに未来サンカク会議らしい“共創の場”となりました。
懇親会:ロールを脱いだ先で、新しいつながりを育む

ワークショップ後の懇親会では、隣のチームのアイディアを聞き合ったり、「来て良かった!」という言葉があちこちから聞こえてきたりと、会場は終始和やかな雰囲気に包まれていました。
ロールプレイングから解き放たれた参加者の皆さんは、今度は“それぞれの本当のロール”で、まちでの取り組みや印象的なエピソードを語り合います。名刺交換をする姿も見られ、今日をきっかけに新たなつながりや動きが生まれていきそうな予感も。
今回“サンカク”いただいたみなさん、ご参加いただきありがとうございました。
団地という舞台を通して、さまざまな視点が交差し、新しいアイディアが生まれた今回の未来サンカク会議。ここからどんな営みやつながりが育っていくのか、その続きが楽しみです。
それでは、また次回のサンカク会議でお会いしましょう!