カナダ初のファッショントラックに学ぶ小商いの未来

via: instagram.com/fashiontruckcanada

レジなしショップAmazon GOの第1号店のオープンや、ZOZOSUITの話題がファッション業界を超えて話題になる一方、アメリカや日本での小売実店舗の客離れは深刻な状況となっています。セブン-イレブンですら不調に陥り、キャッシュレスやモバイル決済の導入でも世界から取り残されている日本の小売業。ここでは、小商いを成功に導くためのヒントを、カナダ初のファッショントラック「Fashiontruck Canada」から学んでみたいと思います。

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Fashiontruck Canadaは、カナダのトロントにて、エミリーとアシュレイという女性2人によって2014年3月にイヴ(Eve)と名付けられたトラックで営業をスタートさせました。アメリカでブレイクしつつあったファッショントラックのトレンドを、いち早くカナダにインポートしたわけです。

「はじめは、フェスティバルやコンサートへの出店で、高いセールスを上げられるって思っていたの。ところが実際は違った。人々はフードフェスには食べ物を求めに、コンサートには音楽を聴きに行くわけ。中にはわたしたちのショップを見つけて興奮する人もいたけど、ほとんどの人にとっては優先事項じゃなかった。そういうわけで、1回きりのイベントへの出店では、思っていたような成功には結びつかなかったの」とアシュレイは語ります。

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フードトラックと同様に簡単に市の土地の使用許可が得られると考えていた2人でしたが、許可は将来的にも降りる見込みのないことがわかりました。結果として、営業のための駐車場所の確保が大きな課題として残ります。路面での出店の方が利益を生み出すことがわかった彼女たちは、人脈や有料駐車場を利用して、毎週ほぼ同じ場所で同じ時間帯に営業するスタイルに移行します。

「天候と季節は最も大きな要素の一つだった。冬の凍てつくような日に、ヒーターで3時間かけてウォームアップして開店しても、誰もそんな日に着替えをしたいって思わないってこと。夏の暑い時期も同様。試着室はとても高温になってしまうから。今は毎年3月から営業をはじめて、10月から11月には閉店して、出店は天候を見ながら判断しているの」

「店舗内の照明も問題だった。何度もトラックのバッテリーがだめになったので、照明専用のバッテリーを導入したわ。トラックのメンテナンスも予期しない出費になった」

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「トロントでプライベート・ショッピング・パーティーが盛り上がって来たのが大きかったわ。ホーム・リテイラーやベンダー達とパートナーシップを結んで、彼らのイベントに出店していったの。わたしたち自身も、ワインを飲みながら友達とショッピングが楽しめる、女性専用のショッピング・パーティーを開催して好評を得ているわ」

「商品は一点一点手に取り、品質をチェックして仕入れている。在庫の回転率が非常に高いのが特徴で、1週間前とではトラックの品揃えががらりと入れ替わることもある。ほかのショップでは手に入らないアイテムを提供することで、顧客の関心をキープすることができるわ」

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キャッシュレス

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「キャッシュレスのショッピング体験はとても重要ね。MasterCardとパートナーシップを結んだことはとても大きい。MasterCardのロゴをトラックに貼り出すことで、即座に人々の信用を得られる。MasterCardで購入すると顧客は10%の割引が受けられるし、キャッシュレスによるスピーディーで安全な決済は、今のショッピングには欠かせない要素ね」

「キャッシュレスなら、従業員が週に何度も銀行に走る必要もないし、お札やコインを数える手間もいらない。モバイル決済システムを使えば、スマートフォンやタブレットから決済ができるので、トラックなしで出店する際にもとても便利で助かっている」

パーソナル

「ファッショントラックがほかの小売業者と違うユニークな点は、その移動性にある。出店場所によって異なる層の顧客にリーチできるの。若いファミリー層だったり、ビジネスパーソンのエリアだったりね。オンラインショッピングがどんどん盛んになっていく一方、小売業は変革のまっただ中。自分だけのファッションを求める人たちはモールには行かない。彼らが欲しいと思うものを届け、よりパーソナルな環境の中でショッピングを楽しんでもらうことが重要なの」

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「わたしは、ファッショントラックをはじめる前は、スタイリストとして顧客中心のコーディネートを行っていたの。セールス至上の押し付けがましくないアプローチで、お客さんにアドバイスできるのが強みね」

「SNSの活用は最大の顧客呼び込みの手段。出店場所の通知、セールやプロモーション、イベントやパーティーの告知など最大限に活用している。Twitterでファッションのアイデアや出店場所を告知、Facebookでサイズの在庫に対する問い合わせに答えたり、Instagramでは新しいラインナップや次のシーズンのトレンドを伝えているわ。特に、Instagramを利用したセールスは非常に大きいわね」

「SNSを使って、顧客一人一人とコミュニケーションすることが、ビジネスを成長させるために大切。たとえば、一人の少女が、もし閉店の6時までに来店できなかったら、『1時間閉めるのを遅らせてくれたらうれしいんだけど』ってメッセージを送ってきた。そこでわたしたちは彼女一人のために7時まで営業したの」

「個人的に、機械的なマーケティングメールが好きじゃないので、メールを使ったアプローチはあまりしないわね。パーソナルなメッセージの方が有効だと思う。そして、忘れてはいけないのが、“歩き”による出会い。SNSや口コミでリーチできなかった人でも、歩いていて偶然イヴに遭遇するチャンスがあるんだから」

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「イヴをはじめた時の計画では、カナダの主要都市に一台ずつ違った名前のファッショントラックを展開する計画だった。でも、営業許可や駐車場所の問題をクリアすることが大変だとわかってきたの。フランチャイズ展開も、オーストラリアやドバイの人から提案されているけど、自分たち自身でトラックを所有・管理することで、未来に何が起きるのかを見つめる必要があると感じているわ」

「次のステップはオンライン・ストアを考えているわ。Instagramでポストしたアイテムが、トラックに積み込む前に売り切れることもあるので、可能性はあるんじゃないかしら」

アシュレイによるスモールビジネスの秘訣

1. どんな業種に関わらずSNSが最も重要。人々はポストされた写真を見ることが大好きで、何が見られたかによってこちらもインスパイアされる。

2. いつどこにいようと顧客とのオープンな対話を心がける。Facebookのコメント、Instagramのメッセージに常にリプライして、信頼関係を築くことがビジネスの成長につながる。

3. コミュニティの一員となること。チャリティーを行ったり少額でも寄付をして、周りの人たちを助けることは大切。

4. 純粋に顧客のことを想うこと。売上のためではなく、すべての顧客を人として尊重すれば感謝が返ってくる。

5. ハードに働く。スモールビジネスではチャレンジすること、失敗からはい上がることが付きもの。チャンスはつかみ、リスクに備える。「小さく投資して大きく育てる」 ─ これがわたしがイヴから学んだ教訓。

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