紙のカテドラル(聖堂)、坂茂氏がNZに灯した希望「SHIGERU BAN’S CARDBOARD CATHEDRAL」

2011年2月22日にニュージーランドで発生したカンタベリー地震。185名の尊い命を奪ったこの地震により、クライストチャーチ中心部にあった大聖堂も崩壊しました。

震災後、心身ともに疲れ果てた人々にとって、神の存在を一番必要としている時期に愛すべきカテドラルを心の拠り所にできなかったことは、ひどくショッキングな出来事だったと思われます。これを受け、建築家の坂茂氏が、新たな仮設のカテドラルを設計することになり、無事2013年に完成しました。

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ファサードのカラフルなガラスが印象的なこの教会。幾何学模様に仕切られたトランプタワーのようなデザインは、荘厳さよりも、身近でモダンで、中に入りやすい感じを与えてくれます。

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坂氏は、紙管を資材として使うことで有名な建築家。今回使用したのは、防水処理を施した、長さ20mの不燃性の紙管を実に90本以上。以前の大聖堂の平面と立面のジオメトリーを受け継ぐよう、紙管の角度も調節したそうです。

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半透明のポリカーボネートを使用した屋根からは自然光が差し込むようになっており、室内も明るく開放感のある雰囲気に仕上がりました。700人収容可能で、教会としての機能のほか、イベントやコンサートも行えるそうです。

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教会とは、なにより信仰の場ですが、それ以前に一つのコミュニティであり、共同体です。本当に困った時に、共に集まり、語らう場所。それが教会というものです。災害時に集まれる共同体があることは、人々の救いであり、安心につながるのです。

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坂氏の「紙の建築」は、人の心に寄り添い、微笑みを芽生えさせ、役目を終えた後には再利用され、やがては地に還ってゆく。そうした、ゆるやかな建築といえるでしょう。

時間をデジタルで区切らず、不可逆で直線的なものとも捉えず、ただ、サークル・オブ・ライフとして捉える。それは、サステナビリティというキーワード以上にもっと根源的なもの、すなわち人が生死に向き合う際の、もっとも大切な姿勢の一つといえるのではないでしょうか。

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Via:http://design-milk.com/