建物の本質を問い直す、繭の形のツリーハウス「Cocoon」
イングランド南西部のドーセットの森の中に、突然巨大な繭が誕生した。ロンドンAA建築スクールの学生が共同制作した、既成概念を覆す形をしたツリーハウスだ。地上からそれほど高くない場所に位置するものの、梯子を登って中に篭れば、ゆったりとした大自然の雰囲気を味わうことが出来る。中に座ってリラックスし、開口部である窓(?)から夕暮れを眺めるのも一興だ。
写真を見て頂ければ分かるように、この繭型の「Cocoon」、実は意外と大きい。中に入れば大の大人も立つことができる程の高さがあり、ゆったりとした居心地を楽しめる。
従来の建物らしからぬ曲線のみを使用した有機的なフォルムにするため、処理の施されていないベニヤ板を巻きつけるような設計をチョイスした。始めは地面からサポートをつけて建設を開始したが、完成後は下台は取り除かれ、周囲の木々の力によって吊るされている状態となっている。ここまでの大きさの建物が吊るされているのをみるのは、やはり圧巻だ。
そもそものインスピレーションは、ドーセットの森の中を歩いている最中に得た、と「Cocoon」をデザインした学生達は語る。森の中に溢れる豊かな自然と光、それらと居住空間を自然素材を使って融合させるのが狙いだった。大自然の中で隠れ家のような場所に入り込み、仲間とひっそり外の気配を楽しむ様子はまるで鳥か動物のそれのよう。人間も自然の中で暮らす動物だということを思い出させてくれる。
ちなみに地上バージョンもある。有機的なフォルムはそのまま、土の中から生き物のように突き出す複数の板がトンネル型の空間を作り出している。日が暮れた後に明かりをともして仲間と集まれば、大きなキャンプのようないでたちだ。シンプルなアイデアながら現代人があまり体験しえないこの自然と空間との関り、ぜひ味わってみたいものである。
(文=杉田真理子)