火星の家をイマジン。「MARS Case」が示唆する住まいの本質

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北京のオリンピックスタジアムの南にある円形の広場に、火星の住居が現れました。このSF的なポッドのプロトタイプは、意外にもヘンリー・デイヴィッド・ソローの『ウォールデン 森の生活』からインスパイアされたもの。私たちが住まいに求める本質とは何かを探る目的がありました。

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「MARS Case」と名付けられたマイクロハウスは、廃棄物ゼロと自給自足の住まいについて考えるためのプロトタイプ。デザイナーの原研哉が主宰する「HOUSE VISION」の北京展で展示されている10棟のプロジェクトの一つです。

HOUSE VISIONは、企業と建築家・クリエイターがコラボして、これまで体験したことのない家のあり方を具体化する試み。2013年と2016年の東京展に続く第3回目となる北京展は、北京国家体育場・通称「鳥の巣」の南広場にて、2018年9月21日〜11月6日まで開催されます。会場構成は隈研吾が担当し、無印良品 x 長谷川豪によるプロジェクトも出展されています。

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MARS Caseは、北京を拠点とする建築事務所 OPENの李虎 (LI Hu)と、スマートフォンを中心にデザインオリエンテッドなプロダクトを展開する、中国メーカーXiaomi (小米科技) によるコラボレーション。人類が火星に移住することを余儀なくされた未来を想像して、リビングスペースの新しい可能性を模索しています。

展示場から見えるスイスの国際的な建築家ユニット、ヘルツォーク&ド・ムーロンによる「鳥の巣スタジアム」のユニークな外観が、ディストピアのようなSF的雰囲気を出すのに一役かっています。

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移送を前提に設計された軽量・コンパクトなMARS Caseは、折りたたむことで2.4m x 2.4m x 2mのサイズに縮小。スーツケースのように壁を開くことでリビングエリアが風船のように膨らみ、居住空間が拡張する仕組みです。モジュールにはキッチン、バスルーム、エアコンユニットが組み込まれています。

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MARS Caseは、天然資源に頼らない自己循環エネルギーと廃棄物ゼロの住宅がテーマとなっています。電子機器で発生した熱・排気・結露などの副産物を再利用し、エネルギー・空気・水を統合されたエコシステムに還元することで、資源の消費を最小限に抑えることを提案しています。

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「今日、消費と環境の危機の世界で生きていく中で、私たちの本質的な欲求とはいったい何でしょう?」と、設計者の李虎は語りかけます。

「必要最小限の必需品しか運ぶことができない状況においては、これまでのライフスタイルの過剰な消費を減らし、リサイクルすることだけが生き残るための唯一の方法です。一滴の水、一かけの食べ物、一回の呼吸に対して新鮮な感謝を感じることで、真にシンプルな生活の自由とは何かを見つけることができるでしょう」。

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MARS Caseは、テクノロジーとプロダクトデザイン、建築をシームレスに組み合わせた住宅です。内部のXiaomiの製品ラインの家電製品は、すべてワイヤレスで接続され、スマートフォンで制御することができます。住宅は、個々の電子機器を1つに統合したプロダクトであり、持ち運び可能な居住のための工業製品として再定義されています。

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過剰な消費と廃棄物があふれる現代のライフスタイルを、「火星の家」を想像することで再考してみる。スマートホームでの「森の生活」は、テクノロジーそのものへの逆説のようにも感じられます。MARS Caseは、HOUSE VISIONという住宅・環境・テクノロジーの未来を考える展覧会にふさわしい、刺激的な示唆に富むコンセプトモデルだと感じました。

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