サハラの川に浮くモバイルハウス「ponya」
TU delft(ティーユーデルフト)の学生のfrancisca hamilton(フランシア・ハミルトン) nathan ngo(ナザン・ンゴ) と thanat prathnadi(サナット・パラスナッド)によってこのモバイルハウスは発案、制作された。
主に、アフリカのサハラにおいて、災害を受けた際の非常用の船として作られ、その時に利用される。
自然災害から紛争時の避難用のボートとしても、多目的に色々と使用することができる。
この船の構造としては基礎として青いプラスチックの容器を土台とし、その上に竹で作った三角形のフレームを組み立て、タープを貼れば完成。
非常にシンプルで原始的とも言える作りだ。
建物の形としては基本的に三角形のフレームを組み合わせる形で構成されている。

三角形は図形の中でも最もシンプルな図形だが、これを採用することにより、拡張、縮小性が高まる。
ある意味テントと似ており一番ベーシックな形は写真の通り、ベースにプラスチックの樽を正方形に並べ、そこに三角錐のフレームを作る。
算数の幾何学と同じ容量で、この三角形を横に3つ並べれば側面が台形の形をした1つの三角錐の2倍のスペースができる。
フレームを工夫して、三角錐の上部を切り取るようにして、四角い屋根を取り付ければ、開閉可能な天窓を作ることができる。
このようにしてTPO、場所や時と場合によってサイズをすぐに変更することができる。

普段は地面の上に置いて、共用スペースとして使うこともできるが、もちろんしたがプラスチックの容器なので、水で浮くようになっており、その場合はモバイルハウス的な機能も果たす。
また、三角形を組み合わせて、まるでポリゴンのような見た目の建築物はフォルム的に現代アートのようでもあり、シンプルさの美しさがそこにある。
大人数を乗せなければならない時は連結させてなるべく大きな船にし、逆に川などが小さく、小回りをしなければ通れないところなどは、船を素早く小さくして、機敏に対応できる。
組み立て、解体、再構築と一連の作業が重機などを使わずに非常に手軽に、クイックに可能なので、緊急時には非常に頼もしい存在となる。

中は連結させた場合は広大なスペースになるので、プライベートを確保するためには仕切りが必要なため、ePTFEという素材のタープやカーテンを使うことにより中を仕切っている。
ePTFEはWLゴア・アソシエイツ社によって開発された、医療や工業の分野にも応用されている様々な面で非常に機能性の高い素材だ。
耐熱性に強く、アフリカの強い日差しを防ぐことができ、水を通さない防水性はもちろん、内部にいれば全く濡れることはないので、雨が降ってきても全く問題がない。
使用した素材はなるべく現地のものを使い、コスト面を抑え、環境に優しいだけでなく、プロジェクト全体としてのシンプルさが増すため、このプロジェクトの哲学とも非常に合致している。

サハラや難民といった場所で非常に効果を発揮できるのはもちろん、原始的な形からさまざまな発想をしながら組み立てていくプロセスは、まるでレゴブロックで遊んでいるようでもあり、その建設プロセス自体も面白い。
また、必要に合わせて、組み立て方のプリセットみたいなものも提供されており、色々な緊急事態に最適なフォーメーションを瞬時に素早く作り出すことができる。
スモールハウスやモバイルハウスでも建物が一つの役割を果たすのではなく、多機能を持ったユーティリティ性のある家がますます求められてきているように思う。
今回は主に非常事態や緊急事態における設計についてだったが、このようなプリミティブなアイデアが、今後のスモールハウスに活かされ、ミニマルな生活をより楽しめるヒントになるのかもしれない。
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