• この記事をつぶやく
  • この記事をシェアする

【対談】ナリワイの伊藤洋志さん×YADOKARI小屋部 住まいは自分でつくる時代!?全国にコミュニティビルドを広げるためには?

IMG_6431
左側:伊藤洋志氏 右側:唐品知浩氏

新しい住まいとの関わり方として、「コミュニティビルド」という方法が広まりつつあります。
コミュニティビルドとは、住まいを建てる時に、従来のように施工のプロに建築を頼むのでなく、家に住まう本人を中心に、目的を共有した仲間で建物を建てる方法です。

未来住まい方会議でもご紹介している「YADOKARI小屋部」が実践するコミュニティビルドには2つの意味があります。

・1つ目は「コミュ二ティを作って建築(ビルド)する」という意味。
DIY好きから小屋を建ててみたいという人たちをSNSで繋げ、近くでプロジェクトがあると、ボランティアで手伝いに行く。そこでスキルを学んで、今度自分で建てる時には、そこに手伝いに来てもらう。

・2つ目は、「コミュニティを建築(ビルド)していく」という意味。
小屋を製作する過程でできるコミュニティの輪は、近所や地域に波及していき更に大きくなっていきます。どちらも孤独になりがちなセルフビルドの責任を1人で背負うのではなく、仲間や地域とリスクと成果をシェアしていく方法です。

年々注目度が高まっている「コミュニティビルド」ですが、まだ実践する人は多くありません。

今回は、「やればやるほど健康になり技が身につき、仲間が増える仕事」を作り出す「ナリワイ」という活動を実践し、
和歌山の古民家をコミュニティビルドで改装した伊藤洋志さんと、施工の初心者を集め小屋を作る「YADOKARI小屋部」の活動を行う唐品知浩さんに、新しい住まい方や働き方のヒントをお聞きします。 READ MORE

対談者プロフィール

伊藤洋志氏

1979年生まれ香川県出身。京都大学森林科学専攻修士課程修了。零細ベンチャーの立ち上げメンバー、農業ウェブマガジンの編集長を経て現在に至る。シェアアトリエや貸別荘の運営、床張り講座やモンゴル武者修行などワークショップの企画運営や、収穫販売を担当する遊撃的農家、木造校舎でのウェディングサポートなど、大小様々な仕事を考案し生計の建て方を実践研究するナリワイメーカー。 著書には「ナリワイをつくる」(単著 東京書籍 2012)「フルサトをつくる」(phaと共著 東京書籍 2014)など。HP:ナリワイナリワイ Facebookページナリワイ tumblr

唐品知浩氏

㈱リゾートノート取締役、YADOKARI小屋部部長。〇〇を面白がる会主催。リクルートを2012年5月退社後、㈱リゾートノートを設立し、別荘専門のポータルサイト「別荘リゾートnet」を運営。YADOKARI小屋部の部長としても活動し、虎ノ門で開かれた日本初の「小屋展示場」に建てた小屋をはじめ、2014年5月から12月現在までに7棟の小屋を手がける。HP:別荘リゾート.net

小屋作りと床張り、ユニークな活動のきっかけとは?

── 床張りと小屋作り、お二人には共通して「住まう場所を自分で手がける」という共通の活動があります。活動を始めるきっかけは何ですか?

唐品知浩氏(以下、唐品)唐品 YADOKARIで紹介している「小さな住まい方」のような家は、デザイン性も高く、需要も多いと思うのですが、日本で建てるとなると建築コストが高くなってしまいます。建築費が高いままでは、いつまでも実際に手に入れられる人が少ない。それでは、新しい住まい方をする人が生まれてこないと言う問題意識があったんです。

私は別荘を紹介する不動産サイトを運営しているのですが、全国に手頃な価格の土地は数多くあるんです。家の建築コストさえ下がれば、「新しい住まい方」は実現できると感じていました。

それで、もともと交流が有ったYADOKARI代表のさわださん、ウエスギさんにサイトで紹介されているような小屋を自分たちの手で作ってみたいと話したら、部活動という形で活動を始めることになりました。

伊藤洋志氏(以下、伊藤) 私の場合は、「床さえ貼れれば家には困らない」というキャッチコピーで「全国床張り協会」という団体を立ち上げて、床を中心にリノベーションをしているのですが、この活動は偶然始まりました。

活動のきっかけは、知人の和歌山のパン屋さんです。そこで、ナリワイのサービスでパンの作り方や田舎での物件の借り方を合宿で学ぶ、「田舎で土窯パン屋を開く」という生活体験型ワークショップをやっていました。
震災の年の2012年に、和歌山でも大水害が起きたんですが、そのパン屋さんも被害に遭われてしまい、建物が天井まで浸水。合板だった廊下の床が全部ダメになりました。
家の面積は100㎡もあって、業者さんは災害で足りてないし費用も高額になるしで、修理をしたいけど、なんとかならないかと連絡が来たんです。

「この際、人を集めて床張りを身につけるワークショップできないか」というパン屋さん思いつきを、床張りの先生をスカウトして講座にして、ダメもとで集めてみたら予想に反して10名の人が集まってくれました。それが活動のきっかけです。

床張り協会も最初は「人が来るかな?」と思っていたんですが、唐品さんも最初はそんなことを思いました?

唐品 私の方も同じです。最初は人が集まるとは思ってなかったけれど、意外と参加してくれる人が多くて驚きました。
[protected]
── 床張りや小屋の施工はどのように依頼が来るのですか?

IMG_6422
伊藤 私の場合は依頼が来ればやる、という形を取っています。一応「床張り協会」なので、基本的には床張りのみ行いますが、たまに壁塗りなども行います。

唐品 YADOKARI小屋部も、施主さんからの依頼が有った場合に施工を手がけます。
その際、小屋の設計責任者と現場監督は、プロの方にお願いしています。
その際大切にしていることは、YADOKARIに掲載されていてもおかしくないようなデザイン性のある小屋を建てるということと、参加者がちゃんとしたD.I.Y.技術を学べるということ。それが参加者のモチベーションになっています。

試行錯誤ができる、という価値

── 伊藤さんの著書「フルサトをつくる」で紹介されている和歌山の古民家をセルフリノベーションするプロジェクトや、唐品さんの「YADOKARI小屋部」の活動では、人を集め、コミュニティを作って施工を行っています。ある意味、すごく非効率で時間もかかる方法を選んでいるわけですが、なぜそういう方法をとっているのですか?

IMG_6415
伊藤 自分の理想のものができる、というのが理由のひとつです。
普通家を建てる時には大工さん達に頼むと思うのですが、大工さん達は効率の良い作業をしたがります。そのため、実験的な作業は非効率になるため嫌がられるんです。

その点、自分達で作れば、時間はかかりますが、実験的な工法なども試せます。同様に、建築家の藤森照信さんも、手間のかかる作業は、自分たちで施工していますよね。

唐品 YADOKARI小屋部の場合は、小屋を媒介にして人と人が繋がるのが面白いからですね。
小屋を建てていると、地元の人が興味を持って集まってきてくれるんです。普通、地元の人とは何を話していいか分からないじゃないですか、でも作業をしていると「何をしているの?」とか話しかけてくれたり、「ここはこうした方がいい。」とか施工に参加してくれる人もいます。小屋が人と人の橋渡しになる。

加えて、単純にみんなでやるのが楽しいです。基本的に参加者は施工の素人ですから、なんでも試行錯誤になるわけです。その中で小屋が組み上がっていくのが面白いんです。

コミュニティビルドは「大人の遊び」

── 活動の中では、予想外の面白さや価値が生まれることもあると思うのですが、そんなエピソードはありますか?

伊藤 床張りの現場ではみんなの立場がフラットになるのが面白いですね。みんなで一緒に作業をしていると肩書きがなくなって、そこに小さいコミュニティが作られるんです。

唐品 たしかに、そういう面白さはありますね。僕の方は最初はあまり人が来ない時も有ったんです、現場監督と僕で作業してたりとか。
でも最近ではたくさんの人が来てくれて。その日に会ったばかりでも、施工を進めているうちに、会話が生まれて参加者同士がどんどん仲良くなっています。

伊藤 何棟か建てると技術も上達しますよね。ビスの打ち方とか、工具の扱い方とか、だんだんと上手くなってくる。セルフリノベーションや小屋を建てることは、大人が本気でやる「遊び」に近いかもしれません。
普通の家よりコストも少なく、工期も短くできるから、経験を詰めるという意味では、小屋は良いですよね。

唐品 「大人の遊び」という点では、最近手がけている小屋が面白いんです。
SuMiKaさんという会社とYADOKARIがコラボして手がけているキャンペーンの当選者さんと建てている小屋なんですが、設計を担当して頂いている建築家さんが、せっかく小屋を設計するなら今までやったことない工法を試したいということで、3Dプリンタで接合金具を作っています。
大きな建造物やプロジェクトだとあまり実験的なことはできないですよね。でも小屋ならば、今まで試したことがないような施工方法にも挑戦できるんです。

伊藤 なるほど、規模が小さいからこそ試せることがありますね。建築業の方は、設計とかプレゼンで忙しそうですが、色々なことが試せて、かつ体も動かせるから健康的じゃないかと思います。

「セミプロ」という強み

── いま、若い人の間で、道具や食べ物などの生活に必要なものを、楽しみながら自分でつくる動きが広まりつつあります。作る側と消費する側の境界線を飛び越えようとする人が増えてきているわけですが、この動きは今後どのように変化していくと思いますか?

IMG_6414
唐品 消費者と生産者の境目がなくなってきている、とは思いますね。
YADOKARI小屋部の場合は、今回のSuMiKaさんとのコラボもそうですし、有名企業からの協力依頼もいくつか出てきています。小屋部のように、プロではない人達が行う「部活」が起業になりうる、そういう仕事の方法が出てくるかもしれません。

伊藤 起業というとお金を借りて、ほとんど休みもとらないぐらいに働いて、というイメージが一般的だと思うんですが、ナリワイやYADOKARI小屋部のように、最初は楽しくやっていることが仕事になることもある。そのような選択肢が増えると、起業を行いやすくなると思うんです。
私も「全国床張り協会」は、名前を思いついて、サイトだけつくっておいたら依頼が来るようになって仕事になりました。半分冗談みたいなことでも、受け皿を用意しておくと仕事になったりします。

唐品 セミプロだからできることもあると思います。
例えば、私は小屋部の他に「面白がる会」というものを主催しています。「不動産」とか「アート」とか、毎回違ったテーマを持ってきて、その業界に関わる人もそうでない人もフラットに話し合う場です。
同じ業界にいると利害関係やタブーが見えてくるじゃないですか。それで同じ業界の人が集まっても話が進まないことがある。でも、そこに全く違う業界の人が入り込むと、前向きな新しいアイデアが生まれることがあるんです。

伊藤 激しい利害関係のない人間関係は、アイデアを生む際に大きなメリットになりますね。

唐品 そうなんです、なかなか会社や同じ業界の中で言えない過激なことも言える。
イギリスの民主主義の基礎になった「コーヒーハウス」(※1)のように、歴史的にもそういう集まりが何かを変えた例は多いと思っています。
※1.17世紀半ばから18世紀にかけてイギリスで流行した喫茶店で、情報収集や社交の場として機能し、世論を形成する重要な空間になっていた。そのため、イギリス民主主義の基盤として機能したといわれる。

間口を広げること、選択肢を増やすこと

IMG_6417
── 最後に、お二人が描く、豊かな働き方・住まい方のビジョンはどのようなものでしょうか?
また、コミュニティビルドという住まいとの関わり方は、どのようにすれば人々に広がっていくのでしょうか?

伊藤 活動に誰でも気軽に参加できるのが大事ではないかと思います。
家を建てることは、敷居が高く思われがちですが、実際に施工に参加してみると「意外と難易度が高くないこと」と、「素人では難しいこと」の両方が分かるはず。その感覚を味わってもらうためにも、間口は広くしておくことが大事なのではないでしょうか。

唐品 それに、うまい役割分担の仕組みができれば良いなと感じています。小屋の製作すべてに携わる人もいれば、
左官が得意な人、床貼りが得意な人など、それぞれが持つ得意な分野の知識と技術を活かして、プロボノ的に係わっていく。その技術や、道具を共有できるような仕組みも必要ですね。
加えて、建物を作る人はいますが、建物を利用することができる人は少ないと感じています。
作るだけでなく、どうやって利用するかまで考えるのがコミュニティビルドではないでしょうか。

伊藤 小屋を建てた後にどう活用するかは大きなテーマですね。せっかく建てた小屋も活用する人がいないと宝の持ち腐れです。
建てるだけでなく、継続的に人に関わってもらわないと……。

唐品 旗を立てて、何かを始めることは簡単かもしれません。でもそこに継続的に人が集まるようにするのはなかなか難しい。
そのヒントは旗を立てた人が活動を楽しんでいるか?にかかっていると思います。「YADOKARI小屋部」や「面白がる会」の経験を通して、活動が楽しそうなら、自然と人が集まるような気がしています。

伊藤 話は変わりますが、自身で和歌山のシェアハウスの施工を行ってみて、構造、外装、内装、ドアノブや小道具など、家には色んな要素があると知りました。
特にリノベーションでは建築家だけでなく、イラストレーターやテキスタイルデザイナー、エネルギーエンジニアなどがメインで関与する家が増えても良いかもしれないと思います。家に意識的に関わる人が増えてその興味関心が多方面に渡れば、おそらく住まうことに対する多様性や質の向上につながるだろうと思います。

唐品 今の若い世代の間には「新築がかっこわるい」という風潮が増えてきている気がしています。
新築でなくて、中古物件を買って、自分でリノベーションする「ハーフビルド」のような形を実現したいと考えている人は多いのではないでしょうか。そんな風に、住まいに対する価値観は年々変化しています。
YADOKARI小屋部の活動は、今という時代に合わせた、新しい住まい方を実現するためのロールモデルになれば良いなと考えています。

伊藤 私はナリワイを「やればやるほど頭と体が鍛えられて技が身につき、仲間が増える仕事」と定義しています。
今回お話をして、住まいを自分たちの手で修理したり建てることは、ナリワイの基礎かもしれないと感じました。体を動かす中で頭が働き、自分に適した住まい方や働き方を考える力になるはずですから。
何しろ床張りをやりはじめてから、どこにいっても床を観察できるようになって、普通に生活してるだけで日々勉強できるようになりました。これは、体を使って床張りするようになったおかげです。床張りは色んな意味でお得ですよ!

少しだけ、理想に近づいてみる

「住まいも仕事も自分たちで作り出ってみる。」という暮らし方は、少し飛躍しすぎていると感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、新しいライフスタイルを実践するお二人の話からは、理想の住まい方・働き方を実現するためのヒントを感じることができたのではないでしょうか。
「新しい住まい方」を手に入れる方法は、少し、また少しと実現しつつあるのです。

IMG_6443

JOURNAL 関連記事

【タイニーハウス住人インタビュー】住宅難もなんのその!NZのタイニーハウス
【タイニーハウスに行ってみた】子供時代を育む「Tiny Village Kleinhuizen」(後編)
【タイニーハウスに行ってみた】子供時代を育む「Tiny Village Kleinhuizen」(前編)