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軽トラDIYキャンパーに、今を生きるストーリーを。|キャンパーフェス2017in安曇野開催レポート

11月26日、27日の晴れた土日。キャンパーフェス2017が長野県安曇野市にて開催されました。

「キャンパー」とは、軽トラの荷台に作ったちいさな空間(小屋)のこと。
軽トラは中古なら20万円程度〜手に入るため、比較的安価かつ容易に制作することができます。また、動力付きである(軽トラを運転する)ため、牽引の必要がなく移動が容易というメリットも。

フェスを主催するのは、2017年5月〜11月安曇野で軽トラキャンパー製作ワークショップを開催した「生きる実験家」龍本司運さん。龍本さんは、ご自身も廃油で走る1トントラックキャンパー『ゆんゆん号』をDIYし、現在は夫婦で旅をされています。

龍本さんがキャンパーを製作する目的は、

・住まいの概念を拡張し、生活に必要最小限のインフラ(電気、水、ガス)を自給するとともに、日本全国を旅しながら暮らし、新しいご縁をつなげること
・家を借りるでも買うでもなく、「動く小さな家」をつくること
・小さく暮らす。最小限のミニマムな暮らしを実験すること
・大きな中央集権的なシステムから脱却し、国に依存せず、オフグリッドな生活を実現すること
・旅するように暮らし、暮らすように旅する「現代ノマド遊牧民」として生活することなど

これらの目的に、彼の生き方が凝縮されているように思います。

会場は持続的な暮らしを目指すコミュニティビレッジ「シャロムヒュッテ」。ここではパーマカルチャー講座なども開催されています。

photo:Shiun Tatsumoto

この日は快晴。北は秋田、南は沖縄から22台の手作りのキャンパーが集結しました。

こちらはログハウスの会社に17年間勤めた蓮本さん。
退職後は愛用のDIYキャンパーで全国を巡りながら個人で仕事を請け負っているそうです。使い込まれた仕事道具たちは定位置に収まり、活躍のときを待ちます。

「おしるこ食ってくかあ」という声に惹かれ中に入ると、さっとバーナーを取り出し、鍋をぐつぐつ。あっという間に出来上がったおしるこはやさしい甘さで、体を芯から温めてくれました。

仲間から「軽トラコテージ」と呼ばれている蓮本さんのキャンパーは、日々使いやすいよう進化しており、窓は後から造作したそう。
使いやすいように随時手を加えられることは、DIYキャンパーの利点の一つです。

白が多い軽トラですが、こちらのキャンパーはアクリルペンキで背中の小屋と同じ色に塗装してあります。
後部にちょっと見える黒く出っ張った部分は、スライドするとなんとその分スペースが拡大!空間が限られるキャンパーの弱点を克服した、画期的なアイディアです。

森のエリアでは、キャンパーを使ったお店によるマルシェも開催されていました。

こちらはオーガニックのチョコレートやコーヒーのお店「フェアトレードショップ コブル」。
コーヒーはサイフォン式で、一杯一杯丁寧に淹れられます。

「サイフォンだと、味がはっきり残るんだよ」と教えてもらいながら、目の前で淹れられるコーヒー。やわらかい香りに包まれながら、ぽこぽこと抽出されていく様子についつい見入ってしまいます。

普段はお店を構えていますが、イベントのときなどはこちらのキャンパーで出張出店しているそう。
こんな目を引くキャンパーだったら、つい覗きたくなってしまいますね。


軽トラの荷台にピザ窯を作ってしまったのは「米市農園」
和歌山県紀の川市で自然や環境と調和した農法を行っており、この石窯で焼かれるピザも米市農園で作った自家製小麦を使ったものです。表面はパリパリ、生地はもちもちと甘みがあり、作り手の思いが感じられます。


自家製チャイとコーヒーを提供するなんとも可愛らしいうしいろカフェは、犬の舌が小窓に。店長がちょうど顔を出していました。

森の中をさらに進むと、和風キャンパーを発見。すだれの中を恐る恐るのぞいてみると……。

ここがキャンパーとは思えない、畳敷きの和の空間が……!
小物はけっして多くなく、丁寧に使い込まれているのでしょう。風格のある道具たちが置かれていました。

驚いていると、このキャンパーの主「ためちゃん」は、にっと笑いながら言います。
「知ってるか?貧乏だとなあ、シンプルになるんや。シンプルだとなあ、生きてるだけで、幸せなんやで」

日が暮れ始めるとためちゃんはお茶をたててくれました。畳の上に正座をして、穏やかな光の中でお茶をいただいくひとときに、ここがキャンパーだということを忘れてしまいます。

畳と、ランタンの明かりと、シンプルな道具たち。ためちゃんは人と向き合い、じっくりと話ができるように、この空間をつくったそうです。

こちらは、キャンパー「まいまい2号」と愛犬と一緒に、沖縄から参加したアーリーさん。年に数ヶ月間、この「まいまい2号」で全国を旅しながらキャンパーやパーマカルチャーに関するイベントに参加したり、ご自身も講演を行っています。

大きな三角屋根やカラフルなうろこ貼りの外壁は、アーリーさんこだわりのデザイン。行く先々で子どもたちに大人気だそうです。

photo:Shiun Tatsumoto

アーリーさんは事業で挫折し、人生の「どん底」だった時にパーマカルチャーやその恩師と出会いました。今はキャンパーというツールで生き方を表現するアーリーさんは、こう話します。

「自由に人と出会ったり繋がったりできるのがキャンパーの醍醐味だよね。キャンパーは動く小さな家。自分の家が動くなんて、ぞくぞくしちゃって。しかも、ぼくの好きなものしか乗っていない」

「まいまい2号」の前には常に焚き火がたかれており、自然と人が集まってきます。

夜、焚き火の炎を見つめながら話すのは、いつか旅をした土地のこと、理想の暮らしのこと……。
ふと、「今やりたいと思った。今やらなくちゃ、って」と、誰かがぽつりと言いました。

比較的容易に作れるキャンパーといえども、ある程度の費用と時間、そして覚悟が必要です。今回キャンパーを作った人々の中にも、「今やらないと、と思った」と話している人がいたことが印象的でした。

実践することは自分の恐れと向き合い人生に挑むこと。今と思ったときこそが、やるべきときなのかもしれません。

今回参加していたキャンパーで共通していたのは「そこに想いがあること」。
それぞれの制作背景やデザイン、置かれている物にはストーリーがあり、どこまでも自由で、幸せな時間が流れていました。

まずやってみよう。難しいかもしれないけど大丈夫、なんとかなる。
そんな風に思わせる、これからのキャンパーの可能性を感じた2日間でした。

▼今回フェスを主催した龍本さんもブログを書いていますので、ぜひご覧ください!
http://shiun.hateblo.jp/archive/2017/12

文:相馬由季

11月26日、27日の晴れた土日。キャンパーフェス2017が長野県安曇野市にて開催されました。

「キャンパー」とは、軽トラの荷台に作ったちいさな空間(小屋)のこと。
軽トラは中古なら20万円程度〜手に入るため、比較的安価かつ容易に制作することができます。また、動力付きである(軽トラを運転する)ため、牽引の必要がなく移動が容易というメリットも。

フェスを主催するのは、2017年5月〜11月安曇野で軽トラキャンパー製作ワークショップを開催した「生きる実験家」龍本司運さん。龍本さんは、ご自身も廃油で走る1トントラックキャンパー『ゆんゆん号』をDIYし、現在は夫婦で旅をされています。

龍本さんがキャンパーを製作する目的は、

・住まいの概念を拡張し、生活に必要最小限のインフラ(電気、水、ガス)を自給するとともに、日本全国を旅しながら暮らし、新しいご縁をつなげること
・家を借りるでも買うでもなく、「動く小さな家」をつくること
・小さく暮らす。最小限のミニマムな暮らしを実験すること
・大きな中央集権的なシステムから脱却し、国に依存せず、オフグリッドな生活を実現すること
・旅するように暮らし、暮らすように旅する「現代ノマド遊牧民」として生活することなど

これらの目的に、彼の生き方が凝縮されているように思います。

会場は持続的な暮らしを目指すコミュニティビレッジ「シャロムヒュッテ」。ここではパーマカルチャー講座なども開催されています。

photo:Shiun Tatsumoto

この日は快晴。北は秋田、南は沖縄から22台の手作りのキャンパーが集結しました。

こちらはログハウスの会社に17年間勤めた蓮本さん。
退職後は愛用のDIYキャンパーで全国を巡りながら個人で仕事を請け負っているそうです。使い込まれた仕事道具たちは定位置に収まり、活躍のときを待ちます。

「おしるこ食ってくかあ」という声に惹かれ中に入ると、さっとバーナーを取り出し、鍋をぐつぐつ。あっという間に出来上がったおしるこはやさしい甘さで、体を芯から温めてくれました。

仲間から「軽トラコテージ」と呼ばれている蓮本さんのキャンパーは、日々使いやすいよう進化しており、窓は後から造作したそう。
使いやすいように随時手を加えられることは、DIYキャンパーの利点の一つです。

白が多い軽トラですが、こちらのキャンパーはアクリルペンキで背中の小屋と同じ色に塗装してあります。
後部にちょっと見える黒く出っ張った部分は、スライドするとなんとその分スペースが拡大!空間が限られるキャンパーの弱点を克服した、画期的なアイディアです。

森のエリアでは、キャンパーを使ったお店によるマルシェも開催されていました。

こちらはオーガニックのチョコレートやコーヒーのお店「フェアトレードショップ コブル」。
コーヒーはサイフォン式で、一杯一杯丁寧に淹れられます。

「サイフォンだと、味がはっきり残るんだよ」と教えてもらいながら、目の前で淹れられるコーヒー。やわらかい香りに包まれながら、ぽこぽこと抽出されていく様子についつい見入ってしまいます。

普段はお店を構えていますが、イベントのときなどはこちらのキャンパーで出張出店しているそう。
こんな目を引くキャンパーだったら、つい覗きたくなってしまいますね。


軽トラの荷台にピザ窯を作ってしまったのは「米市農園」
和歌山県紀の川市で自然や環境と調和した農法を行っており、この石窯で焼かれるピザも米市農園で作った自家製小麦を使ったものです。表面はパリパリ、生地はもちもちと甘みがあり、作り手の思いが感じられます。


自家製チャイとコーヒーを提供するなんとも可愛らしいうしいろカフェは、犬の舌が小窓に。店長がちょうど顔を出していました。

森の中をさらに進むと、和風キャンパーを発見。すだれの中を恐る恐るのぞいてみると……。

ここがキャンパーとは思えない、畳敷きの和の空間が……!
小物はけっして多くなく、丁寧に使い込まれているのでしょう。風格のある道具たちが置かれていました。

驚いていると、このキャンパーの主「ためちゃん」は、にっと笑いながら言います。
「知ってるか?貧乏だとなあ、シンプルになるんや。シンプルだとなあ、生きてるだけで、幸せなんやで」

日が暮れ始めるとためちゃんはお茶をたててくれました。畳の上に正座をして、穏やかな光の中でお茶をいただいくひとときに、ここがキャンパーだということを忘れてしまいます。

畳と、ランタンの明かりと、シンプルな道具たち。ためちゃんは人と向き合い、じっくりと話ができるように、この空間をつくったそうです。

こちらは、キャンパー「まいまい2号」と愛犬と一緒に、沖縄から参加したアーリーさん。年に数ヶ月間、この「まいまい2号」で全国を旅しながらキャンパーやパーマカルチャーに関するイベントに参加したり、ご自身も講演を行っています。

大きな三角屋根やカラフルなうろこ貼りの外壁は、アーリーさんこだわりのデザイン。行く先々で子どもたちに大人気だそうです。

photo:Shiun Tatsumoto

アーリーさんは事業で挫折し、人生の「どん底」だった時にパーマカルチャーやその恩師と出会いました。今はキャンパーというツールで生き方を表現するアーリーさんは、こう話します。

「自由に人と出会ったり繋がったりできるのがキャンパーの醍醐味だよね。キャンパーは動く小さな家。自分の家が動くなんて、ぞくぞくしちゃって。しかも、ぼくの好きなものしか乗っていない」

「まいまい2号」の前には常に焚き火がたかれており、自然と人が集まってきます。

夜、焚き火の炎を見つめながら話すのは、いつか旅をした土地のこと、理想の暮らしのこと……。
ふと、「今やりたいと思った。今やらなくちゃ、って」と、誰かがぽつりと言いました。

比較的容易に作れるキャンパーといえども、ある程度の費用と時間、そして覚悟が必要です。今回キャンパーを作った人々の中にも、「今やらないと、と思った」と話している人がいたことが印象的でした。

実践することは自分の恐れと向き合い人生に挑むこと。今と思ったときこそが、やるべきときなのかもしれません。

今回参加していたキャンパーで共通していたのは「そこに想いがあること」。
それぞれの制作背景やデザイン、置かれている物にはストーリーがあり、どこまでも自由で、幸せな時間が流れていました。

まずやってみよう。難しいかもしれないけど大丈夫、なんとかなる。
そんな風に思わせる、これからのキャンパーの可能性を感じた2日間でした。

▼今回フェスを主催した龍本さんもブログを書いていますので、ぜひご覧ください!
http://shiun.hateblo.jp/archive/2017/12

文:相馬由季

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