ここは北欧・スカンジナビア半島の一番西側の国、フィンランド。
森の中を分け入り、木の板でできた歩道をしばらく歩いて行くと、池のほとりにこじんまりと佇むスモールハウスが現れる。
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ここはヨーロッパ、北欧のノルウェー。
北欧神話が息づき、サマーハウスなど古くからスモールハウスやミニマリズム的な価値観が根付く国だ。
この人里離れた丘、いや、崖の上にポツンと置かれているのが「Birdbox(バードボックス)」。
ノルウェーの建築会社「Livit(リビット)」の共同創設者であるTorstein(トルステイン)によってデザインされたスモールハウスだ。
世界と自分を一度切り離して、一人きりの夜を過ごせる空間を
キュービックな四角フォルムの真ん中に丸い鏡のような大きな窓が取り付けられ、非常に近未来的なデザインという印象を受ける。
そのような近未来的なデザインをしている一方、設計方法としてプレハブ形式という伝統的な方法で現地で組み立てることなく運ばれてくる。
このBirdboxは2タイプあり、7.6平方メートルのMiniと12平方メートルのMediがある。
サイズも小さく、簡単に運搬が可能なため、このような僻地にも置くことができる。
今回のケースではヘリコプターを使用し、運搬したようだ。
コンセプトは、「世界と自分を一度、切り離して、一人きりの夜を過ごせる空間を」というもの。
こう聞くと少し寂しいようにも聞こえるが、現代においては誰ともとつながっていない状況を作る方が難しく、大自然を身近に感じられていない人々が多い中、このようなスモールハウスとその経験全体は非常に貴重なものだ。
絶景、そして災害と共にあるBirdbox
ご存知の通り、ノルウェーは気温が低い。
そのため、Birdboxは断熱材をふんだんに使用し、雪が降ろうとも、強風に晒されようとも、天候に左右されない頑丈なフィルターとしても利用ができるそうだ。
また、大自然の変わりやすい気象条件から守るため、防水パネルを採用しており、非常に堅牢で、構造もシンプルなため、メンテナンスに驚くほど手間がかからない。
外から見える円窓を中から覗くとこのような景色を楽しめる。
正面と側面に大きな円窓があり、そして、それがフレームとなり外のノルウェーの大自然を丸く切り取っている。
ノルウェーのフィヨルドの絶景を独り占め。
これ以上の贅沢は他にないだろう。
この小屋は地面に基礎などを作りその上に建設しているわけではなく、細長い鉄柱を足として、その上に水平になるように固定するという方法をとっている。
これにより、周りの自然に与える影響を最小限にして、それだけで自然に優しい家となる。
また、ソーラーパネルを取り付け、そこから電力供給をしているため、オフグリッドハウスとして機能し、環境にも優しい。
だからこそこのような僻地であっても、住める環境を作り出せるのだ。
トイレやシャワーなど洗面所はオプションとして写真の細長いボックスのように付けられる。
一人の時間をもっと濃密なものにするために
現在はノルウェー、北ノルウェーのFauske(ファウスケ)とLangeland(ラングランド)にこのBirdboxがあり、LivitのCEOであるAsbjørn Reksten Stigedal(アスビョーン・レクステン・スティゲダル)によれば、今後ノルウェー各地にこのような小屋を設置し、もっと多くの人にこの小さな空間と共にある特別な時間を体験してもらいたいというビジョンがあるそうだ。
在宅ワークを行う中で、人と出会い、交流する機会が少なくなっていることに戸惑っている人もいるのではないだろうか。
さらに、コロナ下において、なかなか外に出ることができず、辛い思いをした経験のある人も少なくないだろう。
しかし、このようなスモールハウスは、たとえ他人と会うことが出来なくても、密を避けなくてはならなくても、一人でいる時間を、非常に濃密なものへと変えることが出来る。
一度このような体験をすれば、自分が本当に何を望んでいるのか、どんな時間を過ごすことに心地よさを感じるのか、ということも見えてくるかもしれない。
「精神と時の部屋」のような修行とまではいかないまでも、現在の状況を逆手にとって、環境を変えてみるのもいいかもしれない。それが近くにあるノルウェーの人たちを羨ましく思う。
via:
https://www.dwell.com/
カナダのオンタリオ州に位置する人口の少ない都市、グエルフ。
活気に満ちた豊かな文化、生活水準の高さ、犯罪率の低さから、カナダで最も住みやすい都市の一つに挙げられている。都市から少し離れたグエルフ近郊は自然が豊かで、都市の喧騒から離れてリフレッシュするのにぴったりな環境だ。
そんなグエルフ近郊に位置するアルパカ牧場「ブレイ・リッジ・ファーム&サンクチュアリ(Brae Ridge Farm & Sanctuary)」の中に、小さなキャビン「Meadowlark Hut」がある。静かなカエデの森と緑豊かな牧草地に囲まれた、居心地のいい小さな隠れ家だ。
Meadowlark Hutの正面はほとんどがガラスでできており、自然光が入る造りになっている。フレームと壁は濃い木炭色で仕上げられ、屋根は赤く塗られている。
中に一歩足を踏み入れると、快適さとリラクゼーションを優先したデザインのリビングが広がっており、快適な居住環境が用意されている。

via: tinyhousetown.net
この小さなキャビンはソーラーパネルで駆動されているため、電力を消費する必要がない。さらに、利便性のためにEGOネクサス発電所が提供されており、小屋は限られた水で運営されているのだそう。オフグリッドなこの住まいは、そんな環境に優しいライフスタイルを送ることができる。コンパクトな簡易キッチンにはフットポンプ給水所があり、後片付けが簡単。手間をかけずに居心地の良い雰囲気の中でくつろぐことに集中できるそう。
ソーラーパネルやその他オフグリッドのための設備を想像すると、管理やメンテナンスの難しさなど住みやすさとは乖離した側面を想像してしまう人もいるかもしれない。
しかし管理のしやすさを重視した上での設備の選定、そして設置がなされたeadowlark Hutは、、環境へのやさしさと住みやすさ、その両方を実現している住まいだといえるだろう。
リビングには、座り心地の良さそうなソファ、興味をそそるアルパカのおもしろい事実を知ることのできる小説や本のコレクションがあり、読書を楽しむのに最適な場所かもしれない。またテーブルには、屋内で楽しめるボードゲームもそろっている。

via: tinyhousetown.net
「環境にやさしい」と聞くと、設備を整えることに精一杯で、その中でどのように人が快適に豊かな暮らしを実現できるのか、ということにはなかなか焦点が当てられないイメージがあるかもしれない。
しかしMeadowlark Hutは、人にも環境にもやさしくありたいという想いが込められたタイニーハウス。厳選されたインテリアや、ストレスの少ない設備の設置、日常生活の喧騒から離れることの出来る落ち着いた室内、そして屋外環境を兼ね備えた人にも環境にもやさしい住まいだと言えるだろう。
「人と自然がどのように共存できるのか」という問いは近年考え続けられている。環境にやさしい暮らしは、人にやさしい暮らしになりうるかもしれない。そんなことを思わせてくれるのが、Meadowlark Hutだ。
via:
tinyhousetown.net
homecrux.com
braeridgefarm.com
ここはチェコ共和国。
Zen houseが手掛けたちょっとユニークなこの建物は、写真のように2つに分かれユニークな構造をしている。
1つは住むための建物で、1つは仕事場として建てられたものだ。
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オランダのノールデルパークの奥深く、静かな木立の中にひっそりと佇むキャビン「Thoreau’s Cabin」。草原には立ち枯れた草が風になびき、遠くから聞こえるのは羊の穏やかな鳴き声だけ。そのキャビンは、草むらから突然姿を現すかのように、静かに森の中に馴染んでいる。
アムステルダムの建築事務所「cc-studio」が手掛けたこのキャビン。
注目のポイントは自然の中に溶け込むこの緑の外観と、室内に差し込む光を調節できる2つの大きな引き戸。木々の間から差し込む光が引き戸を照らし、大きな扉がゆっくりと開かれると、中からほのかな暖かみが漂い出す。夜になり扉を閉めると、暖炉の炎が明るく燃え、その熱気が部屋中に満ちていく。
水道も電気もないこのキャビンでは、地元の薪を使ってキッチンと暖炉を燃やし、食事や暖をとる。動物や植物とともに時を過ごす大自然の中では、暖炉の炎でさえも、踊りながら舞う生き物のように見えるのだとか。

via: archdaily.com
その周りには、小さなテーブルと椅子が配置され、荷物を置くための収納スペースもある。隅には洗面所とキッチンがあり、地元の薪で料理をするための準備が整っている。
「Thoreau’s Cabin」は、まるで別世界への扉のように、訪れる人々を魅了する。
大自然の中にひっそりと佇むこのキャビンの中でなら、子どもに戻ったような気持ちになれるのだとか。外の草原からは、遠くから聞こえる鳥のさえずりが聞こえる。風が木々を揺らし、そよそよと心地よい音を奏でる。キャビンの外には、青々とした木々と草花が広がり、遠くには山々が連なっている。せわしない日々の中で忘れてしまった自然に見入る感性「センスオブワンダー」を再度呼び起こすことができるのかもしれない。
住む場所や住居が、あなたの人となりや養われる感性に大きく影響するのだとしたら・・・。
あなたはどんな暮らしを築くだろう。
「自分の理想の姿」をヒントに住む場所や住居を選んでみたら、あなた自身も知らないあなたにとっての「豊かな暮らし」にぐっと近づくのかもしれない。
via: archdaily.com
ここは、自然豊かなカナダ・ブリティッシュコロンビア州にあるバンクーバーの湖畔。大自然に溶け込むように立っているスモールハウス、古びた鉄錆びの外観が印象的で、名前は「site shack ( サイトシャック )」。
カナダを代表する都市バンクーバを拠点にしている、powers construction (パワーコンストラクション) というカスタムホーム建築会社によって設計された。約9.2平方メートルという非常に小さくコンパクトなスモールハウスだ。
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アメリカ合衆国・ネバタ州のヘンダーソンに住むJilan Wise (ジラン・ワイス) とその夫Josh Farley (ジョッシュ・ファーレイ) が、20,000USD (約200万円)以下の予算で、必要最小限の暮らしを実現した。
この「Blue Baloo Tiny House (ブルーバルータイニーハウス)」と名付けたタイニーハウスの総面積は、18.5平方メートルほどでかなりコンパクト、そこに、夫婦と子ども2人の4人家族と犬2匹が一緒に暮らしている。
彼らの以前の家が、232.2平方メートルだったことから考えると、かなり大胆なダウンサイジングに踏み切ったことがわかる。
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建築会社Dom Arquitecturaによって建てられたこの家は、バルセロナから電車で30分ほど北部サン・クガの丘、南斜面に建てられている。 (さらに…)

想像力は時に、私たちの目を見開かせる力を持っている。見えている景色の中に、自身の想像を超える物体が現れた時、我々はどんな感情をいただくのだろうか。
チェコの森の中に現れた見たこともないような形の建物に、私たちの心は踊るだろう。
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暮らしの実践者に問いかけ、生きかたのヒントを探究する「Life is beautiful」。今回は2023年4月にYADOKARIを飛び出し、世界を旅するアーティストになったYUKIさんを訪れました。
YUKIさんは人生のターニングポイントとなる2度の旅を経て、2024年3月に個展を開催。個展に合わせ、旅で感じたさまざまな愛を詰め込んだ本の出版も行いました。自分らしく生き生きと人生を歩む彼女にとっての「Life is beautiful」とは。そのインタビューの様子をお伝えします。
ーー旅人、そしてアーティストとして世界を歩くYUKIさんですが、子どもの頃から旅や海外への憧れがあったのですか?
実は大学に入るまで、旅や海外には全く興味がなかったんです。海外に興味を持ったのは大学1年生の時、アメリカに留学した友人とビデオ通話をしたのがきっかけでした。身近な人が海外にいることに衝撃を受け、そこで初めて「自分も行ってみたい」と海外に目覚めました。翌年の夏休みに短期留学でインドネシアへ、大学4年生になる前には休学をしてオランダに半年、ドイツに半年の計1年間留学をしました。
ーー海外に憧れを抱いたのは大学生になってからだったのですね。それ以前のYUKIさんはどんな学生時代を過ごしていましたか?
生徒会に所属するような真面目な学生でした。人の目を気にするし、とにかく周りに気を遣っていて。今思えば、きっと親や周りの人に褒められたかったんだと思います。
考え方が変わったのは、大学で出会った親友の影響が大きいです。「こんなに自分らしく生きている人に出会ったのは人生で初めて」と思うくらいまっすぐに生きている彼女と出会い、一緒にヒッチハイク日本一周をしたりと濃密な時間を過ごすなかで、「自分らしく生きる人を増やしたい」という自分の軸のようなものが作られていきました。

ヒッチハイク日本一周をする大学時代のYUKIさん(写真右)
ーーそういった学生時代を経て、大学卒業後の進路にYADOKARIを選んだのはなぜですか?
会社員として働いてみたい気持ちがあり、大学在学中に就職活動をしました。自分らしく生きる人を増やすためにどうすべきかを考えたときに、オランダ留学中に感じていた「暮らしの余白」が鍵になるのではと思ったんです。YADOKARIは「世界を変える、暮らしをつくる」というビジョンを掲げており、私のやりたいことや世界観にマッチしていると思いエントリーしました。
ーーYUKIさんの軸とYADOKARIのビジョンがマッチしていたんですね。YADOKARIに入社してからはどのような日々を過ごしていましたか?
YADOKARIでは好きなことややりたい仕事がたくさんできて、doingがとても満たされていました。言い換えれば、doingが先行していたんだと思います。仕事は楽しかったし、社内には尊敬できるすごい人ばかりだったので、「自分も期待されたい、誰かの役に立ちたい」という思いでがむしゃらに頑張っていました。

YADOKARI入社当時の集合写真
ーー社会人2年目の2023年当時は、YUKIさんがプロジェクトマネージャーを務めた共創型コリビング「ニューヤンキーノタムロバ」(以下、タムロバ)にご自身も入居していましたよね。
私はプライベートと仕事の境目がない人間で、自分が面白いと思えるように企画を作っていたら、自然とタムロバに住みたいと思うようになりました。1年間の集大成として「ゼロフェス」というイベントを行うタムロバと仕事の両立は大変でしたが、何より楽しかったです。住人との会話を通して「自分はどう生きたいのか」を見つめ直すこともあり、戦友のような関係を築けたのはタムロバに住んで良かったことの一つです。

ゼロフェス当日のYUKIさん
ーー充実した生活を送るなかで、転職を考えるようになったのはなぜだったのでしょう?
2023年9月から3ヶ月間受講していた環境問題に関する講座で、beingとdoingの話を聞いたことが影響していると思います。日本では、子どもの頃は将来の夢としてなりたい職業を聞かれるし、就活では会社に入ってやりたいことを聞かれる。子どもの頃からずっと「何をしたいか」を問われ続けるけれど、「どうありたいか」というbeingは問われないですよね。
私は自分のありたい姿とYADOKARIのビジョンが共鳴して入社し、やりたい仕事を楽しくやれていたけれど、この頃から「今の自分はありたい自分じゃないかもしれない」と違和感を覚えるようになりました。
ーー忙しい毎日のなかで「ありたい自分じゃないかもしれない」と立ち止まるのは、なかなか難しいことのように思います。
そうですよね。私はたまたま講座で話を聞いたので、違和感に気付くことができたのだと思います。その年の秋には、店長をしていたTinys Yokohama Hinodecho(カフェ、ホステル、イベントスペース等を有する高架下複合施設)で、日々の業務に追われてベストな接客をできなかったことがありました。お客さんにとってはたった1度の貴重な滞在なのに、そんな自分が許せなくて「これは私がありたい私じゃない」と強く感じました。明確に転職を意識するようになったのはその頃だったと思います。
ーーその後はどういった軸で転職活動をしましたか?
どこでも働けること、時間に縛られないこと、環境問題や暮らし方にアプローチする事業を展開していること。この3つを軸に転職活動をしました。振り返ると、この時も自分のdoingが満たされることを優先していたのだと思います。最終的には、学生時代から関心を持っている環境問題に対して、面白い切り口でアプローチしている福岡県の会社に転職を決めました。
ーーYADOKARIを退職してから次の会社に入社するまでの期間は、どのように過ごしていましたか?
「仕事を辞めたらインドでしょ」と思い、2週間インドで一人旅をしました。よく耳にする「インドに行くと人生が変わる」、「ガンジス川で泳いだら病気になる」というのが本当かどうか確かめたい好奇心もありましたね。友人のいない土地で長期の一人旅をするのは初めてでしたが、「ガンジス川で泳ぐ」以外はノープランで出発しました。

旅の様子を発信するYUKIさんのインスタグラム。2024年4月時点でフォロワーは2.9万人。
ーー初めての一人旅でインドというのはかなり挑戦的ですね。
一人旅なので、食べるもの、泊まる場所、次の行き先など、ありとあらゆることを自分の心に聞いて、自分と会話して決める。それを続けていたら、自分の心と自分自身が”コネクト”し、この旅で初めて自分の直観がアライブした感覚になりました。インドは危険も多く、第六感を働かせていないと命を落とす可能性のある国。だから人を疑わずにはいられないけれど、直観に従って信じる気持ちを持ってみたら、どんどん旅が面白くなっていきました。
ーー自分の直観を呼び起こす旅になったのですね。「インドに行くと人生が変わる」という言葉に対する、YUKIさんとしての答えはいかがでしょう?
訪れた人たちがそれぞれの変わり方をしているのだと思います。第六感が働かない国だと「旅」ではなく「旅行」になっていたと思うので、旅先がインドだったことによって私の人生もきっと変わった部分があるのだと思います。

YUKIさんが撮影したガンジス川
ーーインドから帰国した後は、福岡で新生活をスタートしていましたね。
地元・長崎と同じ九州の福岡県で、新しい会社に通う日々が始まりました。将来的には社員が好きな場所で働くことを目指している会社でしたが、当時は毎日オフィスへ出社しなけれななりませんでした。オフィスと家を往復する日々のなか、「これだと前と同じで、自分がありたい自分でいられないかも」と呟くと、その時一緒にいた友人に「YUKIって海外にいる方が楽しそう」と言われたんです。本当にその通りだなと思い、その週に社長さんに退職したい旨をお伝えしました。
ーー入社2週間目で退職の意向を伝えたのですね。
はい。すぐに決断できたのは、インド一人旅の影響が大きいと思います。インドで直観がアライブしたから違和感にすぐ気付けたし、友人のシンプルな一言をスッと受け取れたんだと思います。結果的に2ヶ月間働かせていただき、2つ目の会社を退職しました。
ーー退職後はどんな風に暮らしていましたか?
退職後は祖母と一緒に暮らそうと考えていましたが、いつも大事なタイミングで連絡をくれるスペイン人の友人から久しぶりに連絡がきて、スペイン巡礼を勧められたんです。渡航費や参加費のことを考えて少し迷いましたが、思い切って片道分だけ航空券を取り、出発地であるバルセロナに向かいました。
ーー片道分だけ航空券を取って出発したのですね。
スタート地点のバルセロナからミサが行われるポルトガルに向けて、12日間巡礼をしました。私は貯金残高が6000円しかなく帰りの飛行機のチケットを買えなかったので、共に歩いたメンバーを見送り、私は1人で解散地点のマドリードに残りました。
ーー貯金残高6000円で、たった1人でマドリードに残るのは不安ではなかったですか?
前職で働いた分のお給料が1ヶ月後に入ってくる予定だったので、それまでなんとか生き延びようという気持ちでした。1ヶ月どう過ごすかはノープランでしたが、習字でどうにかなるかもしれないという思いもありました。

個展で展示されたYUKIさんの書
ーー習字というと?
子どもの頃に書道を習っていて、字を書くのが得意なんです。スペイン巡礼に行く半月ほど前に友人の依頼を受けて、結婚式の前撮りに使う文字を書いたことがありました。できた書を渡したら友人がとても喜んでくれて、「YUKI、書道や文字でお金を稼いでる人たちもいるんだよ」と言われたんです。そのときに初めて「文字って需要あるんだ、書道で喜んでくれる人がいるんだ」と気が付きました。その言葉があったので、1人でマドリードに残った後もどうにか書道で生活できるかもしれないと思っていました。
ーー実際にこの旅では、書道をYUKIさんならではのアートとして販売し、その様子を発信されていました。
マドリードでみんなと別れてから、全財産の6000円で1泊分のホステルを予約しました。2泊目のお金はなかったので、翌日、書いた文字をiPadで印刷して販売してみました。すると買ってくれる人がいたんです。3時間で15ユーロ、2500円くらい稼ぐことができたので、11ユーロの宿を見つけて泊まりました。それ以降は、その日に稼いだお金でその日の宿代を払ったり、アートを買ってくれた人に泊めてもらったりしていました。
売り場のレイアウトや見せ方、出店する時間や場所などを研究して工夫を重ねると、右肩上がりで売上が増えていったんです。旅の終盤はありがたいことに3時間で2万円以上を売り上げられるようになっていたので、躊躇わずに飛行機のチケットを購入して移動することができました。

旅中にアートを販売する様子
ーー帰りのチケット代が買えるようになってからも旅を続けていたのはなぜですか?
友人の結婚式に招待されていたアルメニアに向かい、そこからインドなどを経由して日本に帰ろうと思っていました。ですが旅があまりに楽しく、生き延びれることにも気が付き、結果的に4ヶ月間、乗り換えの国も入れたら10か国の旅になりました。アートの販売以外にも、ボランティアをすれば寝る場所と食べ物をもらえるWorkaway(ワーカウェイ)、交流したい人をつなぎ無料でホームステイできるCouch Surfing(カウチサーフィン)など、海外のいろいろなサービスを駆使していましたね。
アートを売りながら旅を続けられたのは、お客さんに出会うのが楽しかったからです。自分の書いた文字を気に入ってくれて、自分にしか作れないもので幸せになってくれる人がいる。そういう姿を目の前で見て、アートってすごいなと思いました。お金を頂いているのに、こちらが幸せにしてもらっている感覚でしたね。旅人や日本に興味持っているお客さんと仲良くなって、ご飯に連れて行ってもらったり家に泊まらせてもらったり、そういう出会いも面白かったです。
ーー4ヶ月の旅の間は、YUKIさんがありたい自分でいることはできましたか?
めちゃめちゃできていたと思います。この旅で自分のことを大好きになって帰ってきました。愛読書である『アルケミスト 夢を旅した少年』( パウロ・コエーリョ)に書かれているように、自分の心と自分が一緒にいたから、全てが味方してくれていろいろな奇跡が起きた旅でした。
今思えば子どもの頃にテスト勉強や生徒会を頑張ったり、社会人になって誰かに頼りにされたいと一生懸命になったりしていたのは、自分で自分のことを認められなかったからだと思います。他人の評価で自分を満たそうとしていたんでしょうね。でも自分を好きになれた今は他人の目が気にならなくなったし、自分で自分を満たせるようになりました。

個展で展示されたYUKIさんの作品
ーー4ヶ月間の旅でとても素敵な時間を過ごせたのですね。旅での体験を踏まえて、YUKIさんが今後の人生で大切にしたいことがあれば教えてください。
今回の旅では、自分から愛が溢れ出るのを感じていました。そうすると周囲で良い循環が生まれていったんです。上手く言葉にできないのですが、自分から出た愛が、地球上の愛の循環の一部になっていくような感覚でした。だから「愛を広げたい」というのが今のモットーです。
愛を広げている自分が好きだから、愛を広げる私でありたいし、やりたいことは愛を広げること。今はbeingとdoingが一緒になった感じです。もう少し具体的に言うと、私はやっぱり旅が好きだから、今は旅をしながら愛を広げていきたいと思っています。
ーー最後に、YUKIさんにとっての「Life is Beautiful」をお聞かせください。
国籍、性別、年齢、肩書きなどに関係なく、この地球上に存在している全員が尊くて、1人1人の人生が美しいと思います。もう既に、この世界は美しい。私はそう信じています。
ありたい自分と成し遂げたいことが合致したYUKIさんは、2024年5月から再び旅に出る。期間は決めず、愛を広げながら世界を歩く予定だという彼女の行く先にはどんな景色が待っているのだろうか。
いつか帰国した彼女から「やっぱり世界は美しかったよ」と聞ける日を楽しみに、私も彼女から受け取った愛を伝え続けていきたい。
▽YUKI Instagram
https://www.instagram.com/yu__1231

※共創型コリビング「ニューヤンキーノタムロバ」では、2024年4月以降の入居希望者を募集しています(一般住人のみ)
※2024年度のコミュニティビルダーの募集は終了いたしました

西ヨーロッパ最高峰、モンブランの南東麓の地、クールマイユール。冬にはスキー客が、夏には登山客が訪れるイタリア有数の山岳リゾート地だ。アルプスにそびえるモンブランの陰に開かれるスキースクール「Scuola Sci e Snowboard Courmayeur」はフランスとイタリアの国境の東南を活動拠点のひとつにしている。 (さらに…)
ここは南米、あの細長い形が印象的なチリ。
今回の舞台は首都のサンティアゴから南西に150km、2時間半ほど車で走った海岸像の街、Navidad(ナビダッド)のMatanzas(マタンザス)だ。
南米は非常に独創的でユニークな建築物がたくさんあり、多くのスモールハウスが作られてきているのだという。
今回ご紹介するのは、海辺に面した傾斜の強い丘の上にたつ2棟のキャビン。
それぞれのキャビンの名前はLa Loica(ラ・ロシア) とLa Tagua(ラ・タグア)だ。
どちらもその土地固有の鳥の名前から付けられている。
La Loicaは20平方メートルほど、La Taguaは25平方メートルほどの大きさだ。
建築したのはチリの首都であるサンティアゴを拠点としている「Croxatto and Opazo Architects(クロサット・アンド・オパゾ・アーキテクツ)」という建築会社。
ホリデーホーム、つまり休日をゆっくりと過ごすための宿泊施設として作られた。
傾斜の上に建設するにあたり、なるべくベース部分の面積を減らす必要があった。そんな課題を乗り越え、美しい住まいを作るべく、縦長のデザインが採用されたのだそう。
縦長のデザインが採用されたことにより、建物自体の目線が高くなり、より景色を楽しめる設計となっている。
傾斜からビーチまでを遮るものが何もなく、距離も近いため、広大な太平洋の海の景色をそのままありありと享受できる。
また、構造としてCroxatto and Opazo Architects独自の秘伝メソッド圧力飽和を木材にさせているようだ。
建築材として使われたのはリクレーム(返品)を受けたオークの木。オークの木はそのままなら潮風にさらされて劣化してしまうが、石油オイルを防腐剤として使用しているので、劣化を気にせず美しい外観を維持できる。
通常ならもう使われることのない素材を再利用しているという点で非常に環境にも優しい。
また、景観に非常にマッチした、違和感のない、有機的なデザインとなった。
基本的な建物の形としてはキューブを積み重ねたフォルムをとっている。
海の天気というのは非常に変わりやすく、また海辺の潮風はほぼすべての物体を劣化させ、腐らせていく。間に遮るものがなければ、なおさらそのダメージを大きく受けることになる。
そのため、なるべくその影響を受けにくいようにシンプルなキューブのコンクリートを上部に持ってきて、環境からのダメージを最小限にしているという仕組みだ。
内装もリサイクルしたマツ木材を利用し、非常に温かみのある、過ごしやすい空間設計がなされている。
その温かみと過ごしやすさから、実際のスペースよりも少し大きく見える。
マツ自体が断熱材としての役割を果たす上、Osmoというものをその上からコーティングし、太陽やほこりからのダメージをも防ぐようにしている。
入り口の扉を大きく開けば、外のテラスと中のリビングが一体となり、スペースを開放的に広々と使うことができる。
正面に取り付けられた大きな窓から、80メートル下の海やLobera(ロベラ)といった海から突き出した大きな岩を見下ろすことができる。
その他、ダイニングルーム、洗面所、キッチンが一階部分にある。
はしごをつたって2階部分に行けばベッドのある寝室にたどり着く。
この2階部分も前、横ともに壁がガラス窓となっており、高い位置から大パノラマを望むことができる。
また、朝は朝日が窓から自然に差し込むため、バイオリズムに沿って自然に目を覚ますことができる。
雄大な自然をどちらも諦めることなく、山も海も、両取りできる。
そのような土地に建物を建築するのは往々にして困難をともなうが、このようなスモールハウスならそれが楽に、そして非常に豊かな暮らしが実現できるのだ。
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