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【インタビュー】集うことが、強さになる。団地の防災イベント「DANCHI caravan」に込めた思いとは | 良品計画 石川さん

町田山崎団地を舞台に、団地に住まう人とまちの人とが入り混じり、団地ならではの豊かな暮らしや心地いい日常の景色を共に創り・発信していく取り組み、「まちやまプロジェクト」。

そのプロジェクトの一環として、団地や町田にまつわる取り組みをしている方のインタビューを発信していきます。

5回目となる今回は、町田山崎団地(以下、山崎団地)を舞台に、2015年から行われているUR都市機構(以下、UR)と株式会社良品計画(以下、良品計画)による防災イベント「DANCHI caravan」のお話です。団地という場所と防災の関係性や、イベントが果たす役割について、株式会社良品計画ソーシャルグッド事業部の石川さんにお話を伺いました。

いつもの広場がキャンプ場に、もしもの時には避難所に?

ーまずは、石川さんの簡単なプロフィールをお聞かせください。

1996年に良品計画に入社し、その頃からキャンプ場運営に携わり、2005年〜2022年までキャンプ事業のマネージャーを務めます。その後、ソーシャルグッド事業部に異動してからは、新潟県や千葉県を中心に地域の人たちと関わる仕事が増えていきました。

防災に関わり始めたのは2011年の東日本大震災後、無印良品から「いつものもしも」という言葉が生まれた頃です。無印良品は1996年から新潟県津南町で「無印良品キャンプ場」を運営しています。30年間のキャンプ場運営からアウトドア(外あそび)には、防災との親和性があるのではないかと思っていました。

ーキャンプの文脈から、防災に関わっていかれたんですね。

そうですね。無印良品店舗でも防災用品コーナーなどが立ち上がりましたが、2、3年経つと少しずつ世の中の防災意識は薄れていきました。やっぱり、ネガティブなことってずっとは考えたくないですからね。

防災商品ですよって言っても、震災がない以上使わないものという印象になるので、なかなか売れない。売れないから棚からも遠ざかっていくという具合で、世の中から「いつものもしも」という防災の考え方が薄れていく中、URの若手のみなさんからお話をいただいたんです。

「団地でキャンプがしたい」という提案は面白い視点でした。ただ団地の空きスペースでキャンプをするだけではなく、防災、避難所などの観点も視野に入れ一緒に企画を練ることに。山崎団地のように、団地は屋外空間が豊富な場合も多いので、災害時に避難所に入れない人たちを受け入れる場所にもなるのではないかと話が膨らんでいきました。

”いつも”の場所でキャンプをすることで、”もしも”の時の備えになるんじゃないかということで、防災をテーマにしたイベントで方向性が決まりました。そして、2015年3月に第一回目の「DANCHI caravan」が行われます。

地域の防災で大事なことは、人が集まりつながること

ーどのような経緯で自治会や商店会も一緒に開催するようになったのですか?

2、3年かけてDANCHI caravanが盛り上がってきた頃から、山崎団地全体を巻き込んで開催したいという話になりました。当時は山崎団地にある自治会や商店会、コミュニティセンター同士各々で活動されているのがもったいないと感じていたんです。

DANCHI caravanとコミュニティセンターのお祭りがちょうど同じ時期で、お互いにかなりの参加者がいるので、「一緒に開催できれば、それぞれの参加者が相互に関わり合い、より多くのコミュニケーションが生まれます」とお伝えして話を聞いてもらいました。

そして、4年目でDANCHI caravanとコミュニティセンターのお祭りの合同開催が実現したのですが、ものすごい人が集まったんです。その頃から、商店会も自治会もみんな一緒にやりましょうと話をして、少しずつ輪が広がっていきましたね。今は外部で関わっている企業も70社ぐらいまで増えました。

ー防災イベントを作る上で、大切にされていることは何ですか?

地域の防災で一番大事なことって、コミュニケーションだと思っています。やっぱり、知らない人は助けられないので。隣に住んでる人が誰なのか分からなかったら、助けようがないんですよ。一人暮らしなのか、家族暮らしなのか、赤ちゃんがいるのか。知っていれば、いざ震災が起きた時に協力し合えるけど、住んでいることすら知らなかったら絶対に助けられない。本当に原則だと思いますね。

昔は近場の商店街がコミュニケーションの場所だったけど、今は文化も変わってきているので、代わりに集まれる機会が必要なんだと思います。だから、定期的にイベントが開催されることで、「先月も会いましたよね」とか、「あの人最近見ないね」みたいな話から、様子を見に行くことにつながっていく。

これが防災を地域イベントとして行う役割なんじゃないかって。コミュニケーションをどう取るかということ。だから、集まる理由になれば内容は何でもよくて、楽しいことと結びつけるのが大切ですね。

ー近くに住んでいる人を知るという意味でも、防災イベントの会場として団地は相性が良さそうですね。

そうですね。あと、山崎団地は自由度の高い広場がたくさんあるので、そういう意味でもイベントに使いやすいと思います。災害時、わざわざ遠くへ移動しなくとも、団地の広場を避難所にできると考えています。そういう視点からDANCHI caravanも始まっているので。各々で避難するよりも、この団地内で合同避難が可能になれば、共助がしやすく混乱も抑えられるかもしれません。

ー2015年からスタートし、今年で10年が経ちますが、山崎団地の変化は何か感じられていますか?

自治会や商店街をはじめ、山崎団地に関わる人たちがつながってきたことは大きいですね。それによって、新しい物事に対する抵抗感も下がっている気がします。変化することって面倒で、どんどん腰が重くなるものですが、URをはじめとした若い人たちが一生懸命に頑張っている姿を見ると、自分たちも何か力になりたいなって思いますよね。去年の3月には、初めてお隣の木曽団地も一緒にやりましょうという話になって、合同開催が実現しました。

イベントだけじゃなくて、団地の外側からの人たちが色々な話を持ち込むようになってきているので、それはすごく変わったんじゃないかな。

あとは、近隣の学校との取り組みも増えていて、最近では商店会と幼稚園が中心になって、地域の子供たちを集めた「冒険遊び場」が始まりました山崎団地の広場でバーベキューをしたり、林で遊んだり、誰でも参加できる集まりです。DANCHI caravan以外にも、こういった活動が盛んになるといいですよね。

ハードルは低く、多世代が楽しめる企画づくりを

ー今後のDANCHI caravanに期待することや、やってみたいことはありますか?

まだまだ参加するハードルは下げられると思っていて、気軽に人が集まりやすい工夫は今後も考えていきたいです。

次回やりたいと思っているのは、団地や近隣地域の方々から、昔の団地の写真を集めて、プロジェクションマッピングで商店街に映し出す企画です。まだまだ柔らかいアイデア段階ではありますが。

商店街に「万寿園」という中華料理店があるのですが、店内に昔の写真が貼ってあって、すごくかっこいいんですよね。そこからアイデアをいただきました。

※中華料理店「万寿園」の店内にあるお写真の一部

この企画から、団地の方々が家で写真を探したり、眺めたりするきっかけになればいいなと思っています。昔の写真を見ると、人間の脳って不思議と若返るというか、その頃に戻っていきます。団地も高齢化が進む中で、そういう刺激がすごく大事だと思ったんです。そこから、「久しぶりにあの料理を作ってみようかな」「息子に電話してみようかな」とか、行動につながっていくんじゃないかなと。

当時の様子をプロジェクションマッピングで蘇らせることで、活気を取り戻す契機になればと思っています。

ー当時のレトロな街の様子は、きっと若い人も興味があると思いますし、世代を超えて楽しめそうですね。

イベントの一つのプログラムですが、日常にどう落とし込めるのかを常に考えています。お借りした写真を題材に、アート系の学生に作品制作をしていただいて、展示するアイデアも出ています。そうすれば、団地の方々と大学の接点が生まれるかもしれません。

また、近隣の高校や大学の学生の皆さんとも色々やっていきたいと思っています。例えば、学生の皆さんが、宅急便の集荷場から団地の人たちに荷物を届けるアルバイトだったり、買い物代行をしたりと妄想しています。学生のみなさんには社会勉強になりつつ、団地の方々もコミュニケーションが取れていい取り組みだと思います。

このような様々なアイデアをURの若手スタッフの皆さん、関係各所のみなさんと日々考えています。

防災イベントの作り手が育てば、本当の災害時に動ける人口も増えていく

ーこれから防災イベントを企画したい、興味があるという方にメッセージを送るとしたら?

イベントって当日の参加者数も必要だけど、目的が集客になった瞬間にイベントの中身は薄くなると思います。有名アーティストを呼べば人は集まるかもしれませんが、その場きりですよね。

それよりも、一緒に作っていく人を増やすことが、防災については特に大事です。「成果の8割は、事前準備がどれだけ整ったかによって生み出される」のだと思います。何事にも2:8の原理があって、2割の牽引者(防災イベントの作り手)が汗をかくと8割の人がそれに答えてくれる。

主体的にイベントを作る2割の人たちは、防災意識や知識が身についていくので、本当の非常時に動ける牽引者になれます。だから、イベントが雨で中止になったとしても、準備段階で防災に強い人が育っていることが大切な視点ですね。

イベントを続けているとどうやって広げていくかとか、色々なことを考えますが、焦らずに地道にやっていくしかないですよね。URという大家さんが、団地の人のために一生懸命に汗をかく姿にこそ、住人や地域の方も動かされると思っています。そして、その信頼や安心感で人が繋がっていく、それこそが防災なんです。

私の役割は、関連地域の方々とのコミュニケーションが主になっています。たまたま私は10年間継続で関われているので、各所の関係者の橋渡しのような役割も担っていますね。外部の人間だからこそ、できることなのかなと思っています。

ここで培ったノウハウが、現在では、全国の無印良品店舗で「いつものもしもCARAVAN」という防災イベントを開催しています。

「なんでそこまでやるの?」とよく言われますが、自分の仕事だと胸を張って言えるものにできたら、嬉しいですからね。

残暑も落ち着き始め、秋の訪れを感じる9月の終わり。理由もなく外へ出かけたり、新しいことを始めたくなったりするこの季節に、町田山崎団地を舞台にしたイベント「まちやま まるごと スコーレvol.4」が開催されました。

UR都市機構×YADOKARIが連携し、2024年夏より始動した「まちやま プロジェクト」は、多様なつながりの中で、これからの団地のありたい姿を描くことをコンセプトとした取り組みです。これまでに、地域の町内会、商店会、学校などと協力し、季節ごとのイベントやワークショップなどを開催してきました。

毎日の暮らしのなかでちょっと楽しい体験ができる、そんな「まちのにぎわい」を団地から広げていくことを目指しています。

団地の敷地を使って実施してきた実証実験のイベント第4弾、9月27日(土)に「まちやま まるごと スコーレ vol.4」として、「〜団地の広場でお月見ナイト〜 みんなで楽しむ!秋の野外シネマ」が行われました。

秋といえばお月見&芸術の秋!ということで、団地のセンター広場にある白壁をモニターにした、ナイトシネマが登場!

開演前にも、ワークショップやお買い物を楽しめる「チャレンジテント」や、広場でのヨガ、商店街を巡るスタンプラリーなど、大人も子どもも楽しめる1日となりました。本記事ではそんなイベントの様子をレポートしていきます。

「まちやま まるごと スコーレ」とは?

「スクール(学校)」の語源となった、ギリシャ語の「スコーレ」には “余暇”という意味があると言います。土地に根付いた知恵や、誰かの生きた物語。答えのない問い、余白の時間と対話。人々の暮らしが交差する団地には、学校や仕事場での学びだけではない、人生の大切な気づきがすぐそばにあるのではないかと感じます。

忙しない日々の中で少し立ち止まり、人生の「学び」や「余暇」をテーマに、大人も子どもも入りまじりながら、団地でのこれからの過ごし方を実験するイベントがこの「まちやま まるごと スコーレ」です。

青空を眺めながら、ヨガに挑戦!

ナイトシネマの会場となるセンター広場。秋晴れの心地いい昼下がり、理学療法士・ヨガ講師の大越瑞生さんによる「心と体 まるごとヨガ」が行われました。

せっかくの機会を逃すまいと、私も初めてのヨガに挑戦してみました!野外でじっくりと体を伸ばしていくのは、何とも開放的。

「最近空を眺める余裕がなかったかも」「肌に触れる風が気持ちよくて嬉しいな〜」「今日なに食べよう」などと、自然に聞こえてくる自分の内なる声に耳を傾けます。

講師をしてくださった大越さんは「最後はみんないい表情になっていて、その場が優しい雰囲気で包まれていたのが印象的でしたね。自分の内側を見つめる時間が、他者と関わる上でも大切なことなんです。」とお話してくれました。

質問タイムも設けられ「肩こりはどうすればマシになりますか?」など、体に対する日頃の悩みもシェアできる機会に。少しの間立ち止まって、内観する時間をとる大切さを味わいました。

チャレンジテント企画!あなたの「やってみたい」が、誰かにとっての始まりになる

商店街を進んだ奥にあるぽんぽこ広場には、様々な体験をすることができる「チャレンジテント」が並びました。

こちらは、前回もアートのワークショップで大人気だった桜美林大学の「ぼくらのサークル」のテントです。メンバーそれぞれの”やってみたい!”を原動力に、地域イベントでのワークショップなどを企画しています。

今回は、落ち葉を使って絵を描く”落ち葉アート”を準備してくれました。

特に印象に残っているのが、サークルメンバーのみなさんそれぞれが口にしていた「好きにしていいんだよ」というメッセージ。

絵の具をパレットじゃなく、画用紙にそのまま出そうとしている子を見て「うん、そっちに出したっていいよ!」と声かけをしている場面も。みんなのびのびと楽しそうでした。

描き始めたら止まらない子も多く、そばで見守られていた親御さんは「自宅ではここまで自由にやらせてあげられないので、とてもいい機会でありがたいです。」とお話してくれました。

サークルのメンバーの方からは、「やっぱり子どもたちの絵は爆発力がすごい。学校で上手な絵を描く人はいっぱい見ていますが、それとは全く違ういい絵を描いてくれますよね。次回も新しいワークショップを考えているので、楽しみにしていてください!」と感想を教えてもらいました。

お隣のテントからも楽しそうなおしゃべりが聞こえてきます。「手芸カフェ」のみなさんの手元に伸びる毛糸がだんだんと編まれていく様子は、つい見入ってしまいます。

この「手芸カフェ」は第1金曜日13〜15時に、山崎団地商店街の駄菓子屋兼シェアスペースの「ぐりーんハウス」にて活動しています。

手芸カフェのみなさんが挑戦しようとしているのは、「ヤーンボミング」というニットのストリートアート。編み物を使って、街路樹やベンチなど公共空間に装飾するものです。

モチーフ編みのピースを集めていって、最後につなぎ合わせることを目指しています。

もちろん、自分の今作りたいものを編んでもOK!お教室と違って気軽に入っていけるので、初心者でもマイペースに参加できるのが魅力です。

普段も手芸カフェに通われている参加者の方は、「みんなで作業しながら、雑談をする。すごく癒されますし、こころの健康にもいいと思うんです。自分で進めていて、分からないことがあったらその場にいるみんなで解決する。自然と助け合いが生まれます。」と、にこやかに話してくれました。

この日の数時間でも、こんなにたくさんモチーフ編みが集まりました!山崎団地がカラフルなニットでおめかしする日も近いかもしれません。

商店街にアトリエ兼ショップを構える「キャンドルStudio lepta」は、店頭でキャンドルづくりのワークショップをしてくれました。

もうすぐハロウィンなので、カボチャが添えられたとってもかわいらしいキャンドルです。

実験のような、工作のような。お子さんの中には、このキャンドル作りの体験を忘れないようにと、一生懸命に説明書を書き残す姿も。

また、子どもたちに大人気だったのが、商店街をめぐるスタンプラリーです。各店舗の前にスタンプ台が準備され、全部集め切ると商店街で使える商品券と交換できます。

子どもたちにとってはちょっとした冒険です。「次はあそこ!」と、楽しそうにスタンプを集めていきます。

後ろから見守っている親御さんも、「商店街にどんなお店があるのか意外と知らなかったです。回遊できていいですね。」と感想を教えてくれました。

この日は毎月第4土曜日に開催中の「町田山崎団地冒険遊び場」の活動日で、集まった人たちで協力しながらBBQをしたり、懐かしのベーゴマを一生懸命に回す姿も。

地元の子どもたちのみならず、大人のファンも多い駄菓子屋のぐりーんハウス。射的コーナーや綿菓子が用意され、いつも以上に賑わいを見せていました。

美味しいフードやドリンクを片手に、ナイトシネマが始まります。

夕日が沈み始めた頃、ナイトシネマ会場のセンター広場に2台のキッチンカーが到着しました。食事からスイーツまで楽しめる韓国フードの「et cetera」と、相模原にある卵菓屋さんの“相模の赤玉子”をたっぷり使ったシフォンケーキの「ぽちのひとくちしふぉん」です。

また、商店街にアトリエ兼ショップを構える「キャンドルStudio lepta」にご協力いただき、ホッと一息つける休憩スペース”ちょこっとチル空間”が準備されました。

水に浮かぶものや、空や海のような青色がきれいなものなど、種類豊富なキャンドルを用意してくれました。やさしく揺れる火を見ていると、それだけで気持ちがリラックスしていくのを感じます。

午後6時になり、いよいよ映画の上映が始まります。レジャーシートを広げて、フードやドリンクを用意して、映画が始まるのをワクワクしながら待ちます。外で観れるってなんだか特別です。今回上映したのは「怪盗グルーの月泥棒」という作品。

上映が始まると、グッと集中する子どもたち。大人たちも物語に引き込まれ、一緒に声を出して笑ったり、こころ温まる展開に涙したり。通りがかりの方々も足を止めて、鑑賞している姿が印象的でした。

まとめ

いつもの場所で、少し新しいことや、知らなかったことをやってみる。そんな小さな一歩から、思いもしない驚きや発見、感動が生まれることに気がつけた一日。レポートを書いている私も、初めてのヨガで心身を見つめ、自由な気持ちで絵を描いて、ナイトシネマにときめいて、しっかりと楽しんでいました(笑)

次回のまちやま まるごとスコーレは、11/15(土)・11/16(日)の2日間を予定しています。ぜひお楽しみに!

via: archdaily.com

ニュージーランド・コロマンデル半島にある「Driving Creek Railway and Pottery(DCR)」の敷地に、小さな小屋が建っている。その名は「Picalo Cabin」。建築家Gerard Dombroskiが、現地にある廃材や使われなくなった構造物を集め、1か月という短い期間で仕上げたタイニーハウスだ。

きっかけは、彼がDCRで薪窯の修復作業に参加したことだった。滞在中に「また戻ってきて、何かをつくってみないか」と声をかけられる。ただし条件は厳しい。新しい資材を買うことはできず、敷地内で見つけたものだけを使う。そして制作期間は1か月。建築家としての直感と柔軟さが試される挑戦が始まった。

via: archdaily.com

カヌカの森に建つ、3週間の建築実験

建設地に選んだのは、カヌカの木々が覆う丘の斜面。そこに放置されていた古いスチールフレームを見つけ、かつてジップラインのプラットフォームとして使われていたそれを基礎に据える。ここから「森の天井を見上げる部屋」というコンセプトが生まれる。天窓からは揺れる枝葉と空が広がり、横に視線を向ければ木々のカーテンが包み込む。森の動きをそのまま感じられる空間になった。

via: archdaily.com

小屋の造形には、彼の趣味であるスケートパークの要素も反映されている。曲線的な屋根や流れるようなフォルムは、スケートボウルを思わせる。資材の多くは廃材の再利用であり、地元住民やアーティストから譲り受けたものも少なくない。ひとつひとつの素材に記憶が宿り、それらを編み直して小屋は形になった。

via: archdaily.com

限られた時間と森が導いた小屋

工事は2月初旬に始まり、わずか3週間余りで完成した。朝はカフェでコーヒーを飲み、日暮れまで作業を続ける日々。地域の人々や他の滞在アーティストとの交流も、この小屋に温度を与えた。短期間の実験的建築は、リスクを恐れずに発想をそのまま形にする機会であり、彼にとってかけがえのない時間だった。Picalo Cabinは、その挑戦の証として今も森に佇んでいる。

via: archdaily.com

via: archdaily.com

2025年8月2日(土)、YADOKARの「鏡祭」が開催されました。

「鏡祭」は、せわしなく変化し続ける社会の中で、自分たちが大切にしたいことや目指す姿を見失わないように、自他と向き合うための年に一度の特別なイベントです。

2度目となる今回は、YADOKARIがエリアブランディングを手がける高架下の複合施設「星天qlay」が舞台。YADOKARIのオフィスであるBゾーンの qlaytion galleryから、Cゾーンの芝生広場、Dゾーンの自社運営シェアハウス「YADORESI」 まで、施設全体を使っての開催です。

テーマは “Homomobilitus〜動くことで自由になる〜”

YADOKARIは創業以来、「世界を変える、暮らしを創る」を掲げ、時間や場所に縛られない自由な暮らしを探求してきました。

今回は「移動する人間」を意味する Homo Mobilitas という言葉に注目し、人間本来の「動く性質」から暮らしを見つめ直します。

記事をお届けするのは、YADOKARI.netにてライター・編集を務める鈴木です。普段、お仕事で訪れている星天qlayが、この日はまるごとYADOKARIらしく染まる特別な一日。どんな光景が広がるのか、胸を弾ませながら会場に向かいました。

暑さの中にも爽やかな風が吹き抜ける芝生広場では、5つのトークセッションと多彩な企画が展開。ゲストを迎え、多くのYADOKARIメンバーが登壇し、熱のこもった対話が繰り広げられました。

TALK SESSION 01|YADOKARIの原点と自由な暮らしの未来

最初のトークセッションでは、NPOグリーンズ共同代表の鈴木菜央さんを迎え、YADOKARI共同代表の上杉、さわだと共に、YADOKARIの活動の根源や歩みを振り返りつつ、「お金・場所・時間に縛られない自由な暮らし」の現在地について語り合いました。

鈴木さん:「自由な暮らしは成功者だけのものじゃない。誰にでもできることだと思います。自分でつくれるものが増え、一緒に作る仲間がいて、自分が生きるために必要なものを自然から獲得できる能力があれば、自由度はぐっと上がるんです。すべてがお金で買える時代ですが、お金に頼らず、やりたいことを実現できる能力が、自由の幅を広げるんです。」(トークより抜粋)

お三方の言葉を聞いていると、憧れていた暮らし、そして一緒に日々を紡ぎたい仲間の存在が浮かび上がってきます。まさに、鏡祭の幕開けにふさわしい、静かだけれど確かな高揚を伴う時間でした。

TALK SESSION 02| 動くことで自由になる 〜少数民族「ムラブリ」から学ぶ〜

続いてのトークでは、言語学者の伊藤雄馬さんを迎え、タイやラオスの山岳地帯に暮らす少数民族であり遊動民「ムラブリ」に焦点を当てながら、「移動する暮らし」についてのトークが行われました。

伊藤雄馬さん:「お金があり、動かせる家がある。それだけでは、自由に動く暮らしは実現できないと思っています。

ムラブリは常に危険と隣り合わせです。次の瞬間、何が起きるかわからないからこそ、目の前の出来事を受け、どんな死であろうと受け入れる。その覚悟が、彼らの暮らしをワクワクするものに見せています。一方で私たちは、明日も当然生きていると思い込み、何が起きるかわからないことを忘れてしまいがちです。

日本では、タイニーハウスのようなハードウェアをつくっただけでは自由になれないかもしれません。移動をするためのマインドセットを整えることが必要なのかもしれませんね。ムラブリと日本人、どちらの要素も大切にしながら生まれる第三の選択肢があると思っています。」(トークより抜粋)

ムラブリにとって「移動」とは、距離でもなく、絶えず動き続けることでもないとすると、自分にとっての「移動」とは何だろう?移動することで得られる瞬間に、私は何を感じ、心が動くのだろう?

異なる生活を営む“他者”の暮らしに触れながら、自分の心と向き合う時間は、日常のあたりまえをそぎ落とし、新しい自分に出会える問いを持ち帰らせてくれたように思います。

EXHIBITION|TINY HOUSE ARCHIVES 夢と現場の記録室

タイニーハウスのブースには、YADOKARIオリジナルのタイニーハウス「MIGRA 太陽光パネルモデル」の実物と、実寸大の空間が並びました。来場者は実際にタイニーハウスの中に入り、そこで感じたことを隣の空間に自由に描くことができます。壁一面には、タイニーハウスの開発やセールスを担当するメンバーや、来場者のメッセージが次々と書き込まれていました。

企画担当:セールスプランニングユニット 小川晃輝
「僕たちはそんなに”綺麗”なことをしているわけじゃないので、感動的に飾り立てるのは違和感があって。だからこそ普段の想いや葛藤をそのまま形にしようと考えて、この展示が生まれました。」

来場者はブースの言葉に共感したり、新たなコメントを書き加えたり、互いに「こうしたらどう?」と意見が重ねられていったりと、単なる観賞の場ではなく、共に考え、共につくる時間に。「よいものを一緒につくりたい」という熱量があふれていました。

さらに小川さんは、「建築学生が展示を見て、キラキラした目で『すごいですね』と声をかけてくれて。その瞬間に、これまでの葛藤やしんどかったことが少し報われた気がしました。成績や数字じゃなくても、自分たちの思いが誰かに届く形になって、本当に嬉しかった」と振り返ります。

『YADOKARIでは、もとめられるクリエイティブのレベルが高い』メンバーと話していると、そういった言葉をよく耳にします。

しかし、こうやってありのままをそのままに映し出す姿もまた美しくて、YADOKARIだからこそ作り出せるものを見ることができた気がしました。

続いてのトークセッションを聞きに、YADOKARIが運営するシェアハウス「YADORESI」のブースへ。

(cap:YADORESIの住民たちの「はなれマド」には、それぞれの暮らしが窓越しに表現され、鏡祭に合わせて住民のみなさんのプロフィールが新たに掲示されていました。 )

YADORESIに到着すると、住民のみなさんがウェルカムドリンクを用意して来場者をお出迎え。

手作りのシロップを使った新鮮なフルーツジュース、丁寧に淹れるこだわりのコーヒー、台湾出身の住民による本格タピオカドリンクなど、どれも愛情や個性のこもった特別な一杯。ひとつしか選べないのが惜しくなるほどでした。

星天qlay コミュニティビルダー大越さん
「YADOKARIの晴れ舞台ということもあって、何か恩返しができればという気持ちがあり、心を込めて準備をしました。
入居したばかりの住民が初めて企画を提案してくれたりなど、鏡祭はYADORESIの住民たちにとっても、得意なことや“好き”を表現する良いステージになりました。」

そしてここYADORESIでは、星川・天王町エリアのコミュニティや、まちづくりに関する2つのトークセッションも開催されました。その様子もご紹介します。

TALK SESSION 05|商業施設で探る、社会的インパクトのかたち

最初のトークセッションには、星天qlayを含む保土ケ谷区の開発に携わる株式会社 相鉄アーバンクリエイツの小杉山 祐昌さんと、星天qlayが採用する評価指標「ロジックモデル*」の提案者であるアンドパブリックの桑原 憂貴さんをゲストに迎えました。

商業施設でありながらもまちづくりの拠点でもある星天qlayが、どのような価値や評価基準をもって活動していくべきか。星川qlayのエリアブランディングに携わるYADOKARIコミュニティオペレーションユニットの木村とともに、議論が交わされました。

*事業を通して、売上だけではなく、地域につくりたい価値がどのように実現されるか、社会的・環境的な価値を考え、周辺地域に起こる経済的価値を想像し可視化するための考え方

トークの冒頭では、小杉山さんから星天qlayの開業までの軌跡や込められた思いが語られ、桑原さんへとバトンが渡されます。

桑原さんは、「我々の人生は、売上を上げるためにやっているわけではないですよね。売上を上げた先に何が実現されるのかという問いに答えるのがロジックモデルを書くということです。社会になんとなくある『いいこと』が、具体的にどういいのか?それを示すのもロジックモデルです」と語り、議論はスタート。

会場には地域に住む方々も多く集まりました。自分たちが暮らす施設がどのような思いでつくられ、どのような姿を目指しているのか。真剣な面持ちで耳を傾ける参加者の姿がありました。

そして再び、Cゾーンの芝生広場へ。

企画に合わせて移動する時間も、今回の鏡祭の楽しみのひとつ。誰かと一緒に歩きながらじっくり話すことで、新たな気づきが生まれたり、つながりがより深まったり。YADOKARIメンバーはもちろん、メンバーのご家族や、YADOKARIとかかわりの深い外部パートナーの方々とお話できたことも、心に残る幸せな時間でした。

PERFORMANCE|鶴川よりの使者

芝生広場では、YADOKARIの鶴川団地プロジェクトに関わる二人、「鶴川からの使者」による、今回のテーマ「Homo mobilitus」を体現した身体表現の15分間のパフォーマンスが始まりました。

ヒロシさんが声とパーカッションのリズムを重ね、その音に合わせてコミュニティビルダーの石橋さんが身体で表現。動いたり止まったり、流れるように全身を使う場面もあれば、身体の一部分だけがかすかに動く場面も。

身体の動きが徐々に内面へ向かい、自分自身を見つめる動きへと変化していくかのような姿は、心と身体が一本の軸を持った存在へと変わるかのよう。空気が一変する演出に、自然と引き込まれます。集中してパフォーマンスを見つめる時間は、感動と期待が入り混じり、心を整えられていくような不思議な体験でした。

WORKSHOP|Find your journey by YADOKARI VILLAGE

同じく芝生広場では、YADOKARIが手がけるタイニーハウス型宿泊施設 YADOKARI VILLAGEの企画ブースが登場。

こちらの企画では、風景や言葉がプリントされたカードを手に取りながら、自分は旅に何を求めているのかを考えていきます。カードがヒントとなり、自然と「自分が本当に過ごしたい時間」や「心が求める時間」に意識が向かっていくのが印象的でした。

「次の休みはこんなことをしてみよう」「今はこんな場所に心が向いているのかも」と、小さな気づきが生まれ、これからの週末の過ごし方が変わりそうな予感も。

YADOKARI VILLAGEが大切にしている、「自分の日常を少し変える時間」 を追体験。自分自身の内側へと意識を向けることができました。

企画担当 プロデュースユニット 近藤万緒:
「どんな方が来てくださるのかドキドキしながら当日を迎えました。言葉を丁寧に選びながら、時間をかけてカードを選んでくださる姿がとても嬉しかったです。ブースの中で一人ひとりがじっくり自分と向き合う時間を過ごしてくれていたと思います。これをきっかけに、自分と向き合う時間を過ごしに、ぜひYADOKARI VILLAGEにも来てもらえたら嬉しいですね。」

TALK SESSION 04|オフグリッドのハードとハート

その後は、自然と調和した暮らしを探求するarbol一級建築士事務所の堤 庸策さんを迎えたトークセッションがスタート。実際にオフグリッドの住まいで生活しながら実践と探求を続ける堤さんと共に、「オフグリッドと共にある暮らし」について紐解いていきます。

堤さん:「オフグリッドは、都市生活のままグリッドなしで暮らせるわけではありません。生活そのものをシフトする必要があります。
自分の暮らしに本当に必要なものは何か、どれくらいの電気を使っているか、どれくらいの制限から不自由を感じるのか。それは人それぞれ違いますし、自覚的であることが大切です。オフグリッドに適した家も、一般的な nLDK の家とは違う形で、人それぞれ多様なのだと思います。」(トークより抜粋)

あなたにとって家とは何か——寝床なのか、食卓を囲む場所なのか。求めるものは人それぞれであり、家の形や選択肢ももっと自由で多様でいいのかも。自分にぴったりの家はどんな形で、どこにあって、どんなものが備わっているのか。考えるだけでワクワクします。

TALK SESSION 06|コミュニティビルダー・サミット

続いてYADORESIでは、鶴川団地の鈴木真由さん、星天qlayの大越瑞生さん・日置法男さん、ニューヤンキーノタムロバのダバンティス・ジャンウィルさん、あやセンターぐるぐるのコミュニティビルダーを務めるYADOKARIの君塚が集い、これまでの活動、哲学を共有するコミュニティビルダー・サミットが行われました。

ビルダーたちの言葉をいくつか紹介します。

答えのない問いに向き合いながらも、自らもまちで暮らし、楽しむ姿勢を忘れない。そんな彼らの率直な思いが語られました。

会場には、YADORESIや鶴川団地、タムロバに住む住民たちも来場し、ビルダーたちの姿を温かく見守っていました。

YADOKARIを起点に、さまざまな場所でコミュニティや暮らしが広がっていく様子を垣間見られる、心があたたまる時間でした。

TALK SESSION 04|変わり続ける自分を解放する働き方

最後のトークセッションは、芝生広場にて「日本仕事百貨」のナカムラケンタさんを迎えて。型に縛られず、新たな採用や働き方のカタチを耕し続けるナカムラさんと共に、自分らしい働き方をデザインする力や、それを受けとめる組織のあり方についてのディスカッションが行われました。ナカムラさん自身の失敗談も交えながら、働き方の本質に迫ります。

ナカムラさん:「仕事をほどほどにしたい人もいるんだなって知って、ひとりひとりの気持ちを確認することが大事だと気づいた。だから、働く量や、給料を自分で決められるような組織体制をつくりました。」

「会社を登山に例えると、以前は先頭を歩いていました。今では後ろのほうから、みんなが登っている様子を眺めているようで、とても楽しいです。みんなも生き生きと働いているし、業績も伸びている。大変なこともあるけれど、良い組織に育ってきました。」(トークより抜粋)

共に登壇したYADOKARIメンバーの伊藤・北本からは、

「メンバーが楽しそうにしているところを少し引いたところから見守るときもあれば、どうしてもみんなで高い山を登らなければいけないときもある。そんなとき、経営者やリーダー層はどうしたらいいのでしょうか?」

「ナカムラさんにとって、YADOKARIってどんな組織ですか?」

といった質問も投げかけられ、働き方や組織の在り方を模索し続けるナカムラさんに対して、YADOKARIメンバーが疑問や悩みを赤裸々に相談する、まるで「公開人生相談」のような場に。

芝生広場でその様子を見守るYADOKARIメンバーも、それぞれが自分の働き方や未来を重ね合わせながら、静かに思いを巡らせていたのかもしれません。

最後に、YADOKARIが普段オフィスとして使用している、qlaytion galleryの様子です!

YADOKARI History Exhibition|11年間のヒストリー展示

空間の中央には、YADOKARIのヒストリー展示が。創業前夜の3年間から、12年目を迎える今年までの歩みを示したタイムラインには、YADOKARIの変遷が丁寧に描かれていました。風に揺れるタペストリーは爽やかさを感じさせる一方で、メンバー直筆のありのままの想いや決意、葛藤といったリアルな想いも刻まれ、見ごたえがありました。

ニューヤンキーノアシアト by ニューヤンキーノタムロバ

弘明寺にあるクリエイティブシェアハウス「ニューヤンキーノタムロバ」のブースでは、今年入居した4期生たちの暮らしが紹介されていました。

エンジニア、漫画家、プロデューサー、昨年に続き2年目の滞在になるメンバーなど、多様なバックグラウンドを持つメンバーが、自身の人生や入居の決断について、展示物とともに語ります。

以前、2・3期生の卒業イベント「ゼロフェス」を取材した際の、卒業生たちのエネルギーも思い出され、今回の4期生がどのような姿で卒業していくのか、今から楽しみになるブースでした。

YADOKARI Partners’ Voices|経営パートナーたちの想い

こちらは、株主や経営パートナーの声を集めたコーナーです。YADOKARIを応援し続ける方々が、「YADOKARIに期待していること」や、今回のテーマ「Homo Mobilitus」についての率直な想いを語る特別な機会となりました。

出会った時期や立場が異なるからこそ、多様な視点から語られるYADOKARIの活動への意見は、とても興味深く、刺激的です。

企画担当 コーポレート事業部 郷原かなえ

「普段の仕事や、今後の経営方針を決めていく中で迷うことも多いですが、こうして近くにYADOKARIのことを考えてくださる方がいることが、メンバーにとって大きな支えや糧になるといいなと思い、このブースをつくりました。来場したくださった方にも何かヒントや後押しになれば嬉しいです。」

TINY HOUSE CONTEST EXHIBITION

お向かいのお部屋では、初の自社開催となった「YADOKARI TINY HOUSE CONTEST 2025」で集まった157作品が展示されました。ひとつのタイニーハウスにこだわりを詰め込んだアイデアから、タイニーハウスを複数使ってコミュニティづくりを提案する作品まで、多様な視点が並び、とても見ごたえがありました。

中には、「自分のアイデアが飾られているのを見たい」と、スーツケースを持って遠方から訪れた方の姿も。

「自分だったら、このタイニーハウスをどこに置いてみたいだろう?」「この空間にどんなものを置くだろう?」と想像が膨らみます。世界中から集まったタイニーハウスのアイディアに自分自身が映し出される。たくさんの応募作品を通して、そんな鏡祭らしい体験ができたように思います。

おわりに

YADOKARIが共にお仕事をしている方々や、各コミュニティのコミュニティビルダーやシェアハウスの住民、YADOKARIの卒業生など、多くの方で賑わい、2025年の鏡祭も幕を閉じました。

企画やトークの中には、時にYADOKARIの悩みや葛藤が映し出される場面もありましたが、YADOKARIがこれまでにつくってきたたくさんのつながりや、豊かな暮らしを実践者たちが、彼らの舞台を支え、彩ってくれていたようにも見えました。

YADOKARIが育んできたコミュニティと人のつながりが、一堂に集まった場は、まるで宝箱のよう。

この大きな文化圏が、これからどんな形に広がり、どんな景色を見ることができるのか。未来が待ち遠しくなるイベントでした。

 

取材・文:鈴木 佐榮
写真:藤城 佑弥

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12歳のハンナ・カトラーは、父ジム・カトラーと一緒に、アメリカのワシントン州、ピュージェット湾の島に小さなキャビンを建てた。作業は週末に行われ、約8か月かけて完成。窓から湾の景色を眺め、折りたたみベッドでくつろぐ時間もあるこの小さな空間は、「頭に描けるものは、作れるんだ」という貴重な教訓を、ハンナ、そして子どもたちにそっと教えてくれる住まいだ。

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自然に溶け込むデザイン

80平方フィートのキャビンは、常緑樹サラルの茂みの間にそっと佇み、湾を一望できるパノラマビューを取り込む。既存のツールシェッドの基礎を活かし、周囲の植物をなるべく残す工夫を施した。シダー材の歩道は根を避けて湾曲し、自然との一体感を損なわない設計になっている。

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親子でつくる学びと工夫

ハンナと父ジムは、木材をカットして基礎に運び入れ、ジムが支える間にハンナがパワードライバーで固定する。フレーミングや断熱、コルテン鋼の外壁・屋根施工までほぼ親子だけで行い、唯一大きなガラス窓の設置だけは3人の協力を得た。湾の景色を室内に取り込む大きな窓は、完成後のキャビンの魅力を一層際立たせる。

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家族の多目的な隠れ家に

完成後のキャビンは、父の仕事場、ハンナの友達が泊まるバンクハウス、そして普段は家族の団らんの場としても活用される。
折りたたみベッドはソファに変わり、小さな空間ながら多用途に使えるのが特長だ。ジム自身も「キャリアで設計した中で、この家が自分らしさに最も近い」と語る。小さなキャビンは、親子の協働と自然との調和を通して、ものづくりの喜びと家族の時間をそっと育む空間になった。

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「生きかたを、遊ぶまち」をコンセプトに掲げる、相鉄本線・星川駅〜天王町駅間の高架下施設「星天qlay(ホシテンクレイ)」では、2025年7月19日(土)、夏の夕涼みを楽しむ音楽イベント「宵祭(よいまつり)」を開催しました。

今回の「宵祭」は、心地よい音楽とともに夏のひとときを味わう特別な1日。個性豊かなアーティストたちのライブやパフォーマンスが繰り広げられ、訪れた方々が、音楽に耳を傾けながら涼やかな風を感じたり、おしゃべりに花を咲かせたりと、それぞれの“宵”を楽しんだ、当日の様子をレポートしていきます。

大盛況の星天ライブ&マルシェ

芝生広場では、「星天ライブ&マルシェ」を開催!

トップバッターは、世界的スポーツイベントや各地のフェスでも活躍するカルナバケーションさんです。 開演前からたくさんのお客さんが集まり、サックスの爽やかな音色とともにライブがスタート。空気がふっと切り替わって、高架下はまるで夏フェスのようなにぎわいに包まれました。自然と手拍子が広がり、体が動き出す。会場全体がわくわくした一体感に包まれます。

なかでも、カルナバケーションさんのリードで観客の皆さんが手拍子を合わせるセッションは、大人も子どもも巻き込みながらの大盛り上がり。音楽でつながる、気持ちのいいひとときでした。

カルナバケーションさんのコメント:
「すごく楽しい1日でした!フェスだと音が外に出てしまいがちですが、高架下では響きが返ってきて、ホールで演奏しているような心地よさがありました。お客さんにも、それを感じてもらえたんじゃないかなと思います!」

 

続いて登場したのは、CERTE(セルテ)さん。
トロンボーン、フルアコースティックギター、そして女性ボーカルという、ユニークな編成のユニットです。

さっきまでのにぎわいから一転、ぐっと穏やかな、大人の空気感に。高架下にジャズのゆったりとした音がふわりと響き、風が音楽に乗って流れていくよう。聴いているうちに、自然と体がリズムにのって動き出すような心地の良い時間でした。

その後登場したのは、Yumedori(ユメドリ)さん。
ガットギターとパーカッションを奏でる、おふたりによるユニットです。

演奏のスタートと共におふたりのやわらかく優しい音が、自然の音や風、子どもたちの声など周囲の音とひとつになっていくような不思議な感覚に。日が少しずつ落ちていく時間とともに、心がすっと落ち着いていくのを感じます。

日が沈むなか、子どもたちの声や風を感じながら、ゆったりと豊かな夕暮れを楽しむことができました。

高架下で異文化体験も!マルシェやワークショップも開催

同じく芝生広場では、マルシェやワークショップの開催も。

まずは、AFRICA COLAのチャーリーさん。自身のルーツであるアフリカ原産のスパイスだけを使ったこだわりのクラフトコーラを提供してくださいました。京都から東京まで、コーラを売り歩く旅の途中で星天qlayに出会い、今回の出展をとても楽しみにしていたとか。

スパイスが効いたあっさりとした味わいで、後味は少しピリッとスパイシー。暑い夏でも飲むと元気が湧いてくる、とても爽やかでおいしいクラフトコーラでした。

また、E2C(Project Exchange to Change)さんは、モロッコで買い付けたたくさんの雑貨を販売。普段は、モロッコのツアーやイベント開催、ワークショップ、現地式のお買い物体験などを通じて、日常と世界をつなぐ新しい文化交流をつくっているのだそう。

今回は、モロッコ独特の「書き値」(欲しい商品の金額を紙に書いて提示し、店主と交渉して購入する方法)という買い物文化も体験できる特別な機会のご用意も。日本ではなかなか出会えないユニークなスタイルに、多くの方が新鮮な驚きを感じていました。高架下で異文化に触れられる、貴重な体験でした。

たくさんの子どもたちでにぎわっていたのは、「たまごマラカスづくり」のワークショップ。このワークショップは、同日開催のイベント「Loop」(天王町・星川エリアの飲食・物販・サービス店をチケット制でお得に楽しめる地域回遊型のイベント)の参加店舗として出店。
小さな卵型の容器にビーズやひまわりの種を入れて、オリジナルのマラカスを作るブースです。シールを貼ったり色を塗り、自分だけのデザインをつくることができます。

マラカスを作った子どもたちによる即興のセッションも大盛り上がり。その後のライブでもマラカスを握って音楽を楽しむ子どもたちの姿がありました。

また、クリエイター向け協働制作スタジオ「PILE」さんによるワークショップも、Loopの参加店舗として開催。
ボタニカルアートでうちわをデコレーションするコーナーと、夏にぴったりのフェイス・ボディペイントが体験できるコーナーがありました。

地域で集めた植物やドライフラワーを使って、自分だけのうちわが作れます。

フェイス・ボディペイントは、すいかやひまわりなど夏のお祭りにぴったりのデザインから好きなものを選び、身体に描いてもらえます。特別な日にふさわしい体験で、気分を盛り上げてくれました。

そして、今回のイベントでは、「星天ヒト×コト ホッピング」と題したスタンプラリーも開催。星天qlay内のお店に掲示されたスタッフさんたちの「夏の夜、星天qlayで聴きたい曲」を集めて、Cゾーンの芝生広場へ行くと、素敵なプレゼントがもらえます。会場内を駆け回る子どもたちの元気な姿が、とても印象的でした。

まちの人のステージ、オープンマイクを開催!

Bゾーンでは、今回の星天qlayで初めての試みとなるオープンマイクを開催!開始から多くのパフォーマーが、それぞれの方が想いのこもった演奏をお届け!子ども連れのご家族やご年配の方など、たくさんの方が足を止めて、ふとした夕涼みのひとときを楽しみました。

気軽に音楽に触れられる!音育ワークショップとオープンピアノ

DゾーンのYADORESIでは、親子で楽しめる音育ワークショップが行われました。

段ボールでギターを作るワークショップや、屋外にはオープンピアノも設置され、通りすがりの方々が気軽に立ち寄っては自由に音を奏でていました。

お酒を片手に生演奏を楽しめる、夜のジャズライブ

段々と日が沈み、空がピンク色に染まり始めるころ。 
Eゾーンを舞台に、「星天ライブ」がスタートしました。

夕暮れにぴったりのジャズライブが繰り広げられ、お酒を楽しめる飲食店が多いEゾーンは、しっとりとした大人の雰囲気に。

最初に登場したのは、はっぴーばーすでーズさん。シェアハウス「YADORESI」の住民とそのご近所さんで結成されたアコースティックバンドです。

今回の宵祭ではジャズアレンジに初挑戦。YADORESI住民や顔なじみの方々が応援に駆けつけ、演奏を盛り上げる場面や、友人の誕生日を歌でお祝いする場面もありました。星天エリアとつながりの深い彼らならではの、あたたかく心に残る30分間の演奏でした。

はっぴーばーすでーズさんのコメント:「今回はジャズに初挑戦!いつもとは違う状況ではありましたが、仲間たちが盛り上げてくださり、私たちらしい演奏と雰囲気をつくることができたように思います。とても楽しかったです!」

その後は、芝生広場でも演奏したCERTEさんとYumedoriさんが再び登場。

CERTEの歌声やサウンドと夕暮れの雰囲気がぴったり合い、素敵な演奏で胸がいっぱいに。ピンク色の空とも重なり、とても素敵な空気感に包まれました。

CERTEさんのコメント
「夕方のこんなに心地よい時間に歌うのは初めて。ライブハウスやフェスなどで演奏することは多いですが、こんな開放的で涼しい場所での演奏は珍しく、とても気持ちよく歌わせてもらいました。ぜひまたここで演奏したいです。」

Yumedoriさんが登場する頃には、あたりはもう真っ暗に。静かな夜のまちに響く打楽器の音はまるで木々がそよぐ音のよう。お酒を楽しみながら夜の時間を過ごす方々のそばで、夜の雰囲気を華やかに彩ってくださいました。

Yumedoriさんのコメント
「今回は、ブラジルの音楽を中心にボサノバを演奏させていただきました。野外ライブを思い出し、懐かしい気持ちにもなりました。」

まとめ

暑い夏の夕暮れ、みなさんと涼を楽しむひとときとして開催された宵祭。生演奏に包まれながら、美味しいお酒やごはん、大切な人との特別な時間を楽しめる贅沢な時間となりました。

子どもからご年配の方、この日を楽しみに星天qlayに足を運んでくださった方々、そしてお仕事帰りにふらりと立ち寄ってくださった方や、お散歩の途中に寄ってくださった方も、それぞれのペースで宵の時間を楽しんでいる様子で、多くの方と心地よいひとときをご共有できたことをとても嬉しく思います。

ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました!

取材・文:鈴木 佐榮

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週末の時間をおもいっきり楽しみ、自分を解放するための拠点。それがタイニーハウス「the weekender」だ。朝の日差しが差し込む明るいリビングで、香り立つコーヒーを片手にゆったりと過ごす。少し汗をかいたら肩の高さの扉を開け、外の風と光に包まれながらシャワーを浴びる――小さな家だからこそ生まれる、自由で特別な時間が随所にちりばめられている。

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光あふれるリビングで過ごす時間

北側には大きな開口部とデッキが広がる。晴れた日には日光や風を感じながらリビングでくつろぎ、雨の日には室内からしっとりとした自然の景色を眺める。屋内と屋外がシームレスにつながる設計が、開放感あふれる居心地をもたらす。

そして寝室奥のシャワールームには外に向かって開ける小さな扉が設けられているという。景色を感じながら浴びる水の心地よさは、日常では味わえない非日常体験。プライバシーは守られつつ、光と風を全身で感じる瞬間が、短い滞在をより贅沢なものに変える。

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変幻自在の小さな拠点

明るく広々としたリビングやキッチンは、快適な滞在を支えるだけでなく、内部をオープンに使えばスタジオやギャラリー、オフィスとしても活用できる。週末だけでなく、長期滞在や定住にも対応する柔軟な小さな拠点だ。
「the weekender」は、コンパクトでありながらも光と開放感にあふれ、自然とつながる体験を提供する住まい。小さな空間に込められた工夫が、短い週末を忘れがたい時間へと変えてくれるはずだ。

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ブラジル・サンパウロで開催された展示「Janelas CASACOR 2020」で公開された「Elo Studio」は、建築家ティシアーネ・リマが手がけた15㎡のコンテナハウスだ。

真鍮と吹きガラスを組み合わせ、空虚さと支え合いを象徴するその表現を、住まいという空間に重ね合わせている。ガラスの繊細さを「家」に見立て、コロナ禍で家が避難所となった状況を示唆するように、住まいを「 fragile(壊れやすい)けれど互いに支え合う場所」として再定義した。

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最小限で最大の心地よさ

内部はキッチン、オフィス、バスルーム、寝室、そして屋上へとつながる構成を持ち、限られた15㎡を巧みに使い切っている。スカンジナビアデザインを基調に、自然素材を活かした明るい空間が広がる。家具は最小限に抑えつつも多機能性を備え、持続可能な木材「Grano」を取り入れることで、軽やかで温かみのある雰囲気を生み出した。小さいからこそ必要なものだけが厳選され、日常に寄り添う余白を感じさせる空間だ。

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都市に浮かぶ小さなオアシス

Elo Studioの大きな魅力は、都市のただ中で自然とつながる仕掛けを備えていることだ。キッチンや寝室の窓から風や光を取り込み、屋上にはランドスケープデザイナー、フラヴィオ・アビリオによるグリーンルーフを設置。さらに、リラックスできるテラスを併設し、都市生活にいながら自然と触れ合える環境をつくり出している。太陽光パネルによる発電と柔らかな採光も相まって、明るく健やかな空気感が漂う。

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家が問いかける、本当に必要なもの

「Elo Studio」は、単なるコンパクトハウスではない。そこには「人が暮らすうえで、本当に必要なものは何か」という問いが込められている。限られた面積を工夫しながら、安心感や居心地を最大化する設計は、パンデミックを経て価値観が揺らぐ今の時代に、あらためて住まいの本質を考えさせてくれる。小さな巣のような空間に身を委ねることで、住むことの意味、そして家がもつやさしさを深く味わえるのだ。

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今回は、YADOKARIのトレーラーハウスを活用して誕生した宿泊施設「Morinest 北軽井沢」をご紹介します!

Morinest 北軽井沢は、株式会社LIFULLのグループ会社である株式会社LIFULL Financialが手がけた、群馬県吾妻郡嬬恋村・北軽井沢の森の中にひっそりと佇む、露天風呂付きトレーラーハウスホテルです。約20㎡のトレーラーハウスに加え、37㎡もの広々としたウッドデッキを備えたこちらの施設では、自然に囲まれながら日常からふっと解き放たれるような時間をお過ごしいただけます。

“大人の贅沢時間”を楽しめる特別な空間を、少しのぞいてみましょう。

森と調和するトレーラーハウスだからこその体験

広々としたウッドデッキには、ゆったりくつろげる大きなソファと露天風呂が。
木漏れ日の下でBBQや読書を楽しんだり、夜は満天の星空とともに湯に身を委ねながら、四季折々に表情を変える森の景色を眺めれば、まるで「森の特等席」に座っているかのような感覚に。心ほどけるひとときをお過ごしいただけます。

トレーラーハウスの中で過ごす時間も、また格別。大きな窓から差し込む光や木の温もりあふれる空間には、小さいながらも機能性とデザインが詰め込まれています。余計なものをそぎ落としたからこそ、自然や時間そのものに心を向けられる -そんなトレーラーハウスならではの体験を、味わってみてください。

おすすめの過ごし方

チェックイン後は、まずウッドデッキでBBQを楽しむのがおすすめ。その後はハンモックに揺られて森の風を感じたり、夕暮れ時には森の音をBGMに露天風呂で深呼吸したり。夜が更ければ、静寂に包まれながら星空を観察するのも格別です。

まとめ

Morinest 北軽井沢は、静かな自然に身を置き、心身をリセットしたい方にぴったりの宿泊施設です。カップルでの記念日ステイや、友人との贅沢な時間にもおすすめ。また、ペット不可のため「大人だけの隠れ家」として利用できるのもポイントです。
ここで過ごすひとときが、みなさまの心をやさしくほどき、忘れられない特別な思い出となりますように。

▼施設の詳細はこちら
https://stay.lifull.jp/

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ニュージーランド・バンクス半島アカロア。町を囲むカヌカ林の一角に、ひっそりと佇む小さな小屋がある。「Nightlight Shed」と名づけられたこの建物は、一時的な住まいと道具置き場を兼ねつつ、夜には光の彫刻として森をやさしく照らし出す存在だ。将来的にオーナーがこの地に永住の家を建てたときにも、風景に溶け込みながら輝きを添えるように設計されている。

光と影がつくる彫刻的な佇まい

外観を包むのは、周囲のカヌカの幹を思わせる格子状の木材。昼は控えめで簡素な小屋に見えるが、夜になるとスリットから光が漏れ、森の中に浮かぶランタンのような姿を現す。格子の間から漏れるやわらかな光は、暗闇の林に温もりをもたらし、まるで森自体が呼吸しているかのようす。単なる機能小屋を超え、光の演出によって風景を豊かに変える建築となっている。

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日本的感性を受け継ぐデザイン

この建物には、クライストチャーチの建築に見られる日本的な工夫が息づいている。接合部や金物は隠さず表し、構造そのものを美として提示。障子を思わせるポリカーボネートの外皮は、外の自然を柔らかく透過させながらも、必要なときにはプライバシーを確保する。内部と外部の境界を曖昧にし、常に林とのつながりを感じさせる設計だ。格子やスリットの配置は緻密に計算され、夜の光が均質に広がるよう調整されている。

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森と呼吸する素材選び

素材には木材が優先して使われ、環境負荷を抑えつつ心地よさを追求している。デッキには地元産のマクロカーパ材、スリットには熱処理を施したパイン材を採用。これらは時を経てシルバーグレーへと変色し、周囲のカヌカの幹と調和する。内部では温かみのある木の色合いが残され、外部との対比が小屋に豊かな表情を与える。オーナー自身の手によって仕上げられたコンクリート基礎や可動式スクリーンなどのディテールも、この小屋を土地と深く結びつけている。

「Nightlight Shed」は仮設でありながらも、森に寄り添い、光をまとい、やがて建つ永住の家と共にこの地にあり続ける。夜にほのかに灯るその姿は、自然と共生する建築の可能性を静かに語りかけている。

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ニュージーランド西海岸、深い森の中にそっと佇む「Biv(ビヴ)」は心と体をととのえるための特別な場所。かつてこの地で金鉱を求めて暮らしていた人々の小屋を、現代の感性で再解釈し、居心地よく、そして美しく仕上げられたこのキャビンは、Fabricによる設計で生まれた。

目指したのは、華美すぎず、過不足ない豊かさ。自然と調和しながら、静かに五感をひらく宿泊体験だ。

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金鉱小屋をヒントに、最小限で最大限の心地よさを

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建物のかたちは、金鉱時代の外付け煙突から着想を得たユニークなシルエット。屋内の天窓は煙突の上部を思わせ、空をまっすぐに見上げる開放感をもたらす。

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大きな窓やガラス張りの壁が森の景色を余すことなく取り込み、自然とのつながりを常に感じさせてくれる。内部はクロスラミネーテッドティンバー(CLT)による木の空間。シンプルで無駄がなく、それでいて手ざわりも温もりもある、特別な「ちょうどよさ」に満ちている。

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地面に接する面積は最小限に抑えられ、頑丈なコンクリート床が数本の杭で支えられている。造成や外構もあえて行わず、森に溶け込むようなたたずまいに。環境への負荷を減らしながらも、長く快適に使える構造を選び抜いた。

火と影と星空と。静寂を味わうためのしかけ

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Bivの内部には、夜を落ち着いて過ごすためのしかけがいくつも用意されている。控えめな照明が灯りの輪郭をやわらかく浮かび上がらせ、中心には揺らめく薪ストーブ。ペンダントライトの光が木漏れ日のように壁に影を映し出し、日中の森の情景が夜にもそっと残る。中二階からは、星空や雨の降る様子をゆったりと眺めることができる。

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森の色や影がそのまま室内に映り込み、まるで木々がキャビンの中に入り込んできたかのような錯覚すら覚える。すべてのディテールは、外と内の境界をあいまいにし、この土地の自然をより深く味わうためにある。

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コンパクトでありながら、高い快適性と環境配慮を両立させた「Biv」は、まさに西海岸という場所に根ざした体験そのものだ。ここで過ごすひとときが、きっと心の奥に静かに残っていく。

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トレーラーの形をしたその建物は、一見するとどこか無機質で静かな存在だ。けれど一度設置すれば、その姿は大きく変わる。両側のウィングがパタリと展開し、円形のデッキが広がると、その上にふわりとエアードームが膨らみ、空間は一気に拡張する。これは、ルクセンブルク発のモバイルスリーピングハット「E22SSPIU!」。動かせる、変形する、そして空気で“ふくらむ”-そんな驚きと発見に満ちた、新しい暮らしのかたちだ。

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トレーラーから円形デッキへ、そしてドームへ

「E22SSPIU!」は、建築ユニット“2001”によって設計されたモバイル居住ユニットで、ルクセンブルク南西部のエシュ=シュル=アルゼットを拠点に開発された。
移動時はステンレス製のトレーラーとしてコンパクトにまとまっているが、設置後は大変身。両サイドのウィングが展開して直径9メートルの円形プラットフォームを形成し、その上にダブルシェル構造のエアードームがふくらむ構造だ。床材にはコルクが用いられており、足触りのやさしさと環境負荷の低さが両立されている。

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ドーム内は、最大6人が就寝できる快適な空間。気候変化にも柔軟に対応できる設計で、都市部や自然環境を問わず、さまざまなロケーションにフィットする仕様となっている。

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住まいが問いかける、建築と資源のこれから

このプロジェクトの背景には、建築が自然資源(特に土、水、エネルギー)にどれほど依存しているかという問いがある。

E22SSPIU!は、極限まで資源の使用を減らしながらも、豊かな居住体験を可能にする実験的な住まいだ。移動可能で、必要なときに展開し、不要になれば元の形に戻せる。そんな柔軟さが、未来の建築の在り方を示している。
都市の文化や環境を移動しながら体験することができるこの“動く住まい”は、まるで都市を旅する宇宙船のようだ。日常を少しだけ拡張してくれる、未来型の暮らしの選択肢が、ここにある。

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designboom.com
urdesignmag.com

TINY HOUSE JOURNALタイニーハウスの“現在”を知る

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