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YADOKARIメンバーが夜の喫茶店で駄弁っているような、あれやこれやの盗み聞きラジオ「木曜喫茶 〜Discussion like a Radio〜」。

第1回は、「「タイニーハウス」の、概念の先に」。
YADOKARIの原点である「タイニーハウス」とは、そもそも何者なのか。その概念は、私たちの暮らしに何を問いかけるのか。
YADOKARIメンバーがお菓子をつまみながら、ざっくばらんなラジオのように掘り下げています。

タイニーハウスって、なんだろう

みちこ「この間、プロダクトチームで(タイニーハウスを二拠点目として所有できる)オーナーモデルの構想をした時、どういう名称がいいかなって。
「セカンドタイニーハウス」「セカンドタイニーホーム」とか考えたけど結果的に、ハードじゃなくて新しい別荘の持ち方、概念を伝える方が大事だよね、ってなったの。
その考えるプロセス自体が大事で、YADOKARI.netで発信しているのはどちらかというと「ホーム」寄りの概念の部分かもね。」

ゆうひ「用語の定義を決定するプロセスって、難しいね。一個の商品を作るときに、ついスピード感重視になってしまう場面もある。
以前全体定例会議でした、タイニーハウスかトレーラーハウスかの議論も、「みんなイメージしているものが違うんだあ」で終わってしまうと意味がないよね。本当の意味で、YADOKARIにとってのタイニーハウスって何だろう?」

みちこ「さわださんがタイニーハウスを知ったきっかけってなんですか?」

さわだ「俺らは、アメリカのタイニーハウスムーブメントから。カウンターカルチャー、より概念に近いものだった。」

みちこ「私は、simplife(タイニーハウスのドキュメンタリー)の映画を観てから興味を持った。その後、デンマークのタイニーハウスワークショップにも参加したけど、移動式ではなかったし、今思うととても大きい家だったかも。向こうの人にとってのタイニーハウスというか。笑
タイニーハウスの概念って、それを知った経緯にもよるかもしれないね。ゆきさんはタイニーハウスをどう知ったの?」

ゆき「私の経緯は、たまたま海外のタイニーハウスに住む人の記事を読んでだった。
興味を持ったのは、元々家ってローンを組むもの、移動できないもの、自分で作れないもの、という社会の常識があったけど、それを全て覆すもので、そこに可能性を感じて興味を持ったかな。」

ゆうひ「どうして自分で作って、実現しようとまで思ったんですか?」

ゆき「海外で実際に暮らしている人を訪れたとき、そのタイニーハウスの中に入るとその人らしさがわかって。
人の本来性を開花させるきっかけとして、可能性を感じたから。自分自身がそこに住んだ時どういう本来性に出会うか、興味があった。
しかもそれが特定の人じゃなくて、私みたいに不器用で力もない女性が自分で作れたら、一つの希望になるんじゃないかと思った。だから辛かったけど、やり遂げようと思ったかな。」

さわだ「思考停止しないことかもね。工夫しながら、それでいて快適に、ワクワクするか。人生のスケール、自分の心地よさってなんだろうと考えることとか。」

ゆうひ「ミニマリストをテーマに、youtuberでいかにモノを減らすかって動画があるけど、違和感を感じることがあって。」

ゆき「ミニマリスト競争がゴールじゃないよね。」

ゆうひ「そう。選び取れる状態、ミニマリズムを履き違えてはいけないなって思う。」

みちこ「私はついついものが増えちゃうけど・・・。でも、全てのモノの思い出を語れるんだよね。」

ゆき「でもそれって、いいんじゃない。減らすことじゃなくて、自分の本当に大切なもの、ストーリーがそこにあれば、持っていてもいいと思う。」

ゆうひ「タイニーハウスに住むことを実践する人と、しない人の違いって何だと思いますか?」

ゆき「暮らしの価値観を追求することってすごく時間がかかって。私もタイニーハウスに出会ってから実現まで、構想期間、暮らしを見つめ直す期間だけで5、6年かかった。
タイニーハウスの体験も、そこに住んだ時に自分が大切にしたいこだわりとの違いを知る。擦り合わせていく過程で、すごく貴重。だから、すぐ実現しなくていいと思うし、行き着く先が物理的にタイニーハウスに住むことでなくてもいいと思う。
出会って、気づいて、暮らしに向き合って、スタートを切ったこと自体が大切。あと、住んでからもゴールじゃなく常に向き合っている感じがする。」

さわだ「常に自分が鼓舞される感じなのかな。もし鼓舞され続けることが辛ければ、ずっとそこにいるのではなく、時々体験できる場、というのもいいかもね。」

見せる窓、閉じる窓

ゆき「YADORESIは元々、ゆうこさんと設計してる時、この小さい個室でもタイニーハウスの暮らしを疑似体験できるようにという思いがあったんだ。タイニーな空間の中に、どうモノや家具を収めるかの工夫、企画もセットだと思う。じゃないとただの狭い暮らしになって、快適に住めないよね。」

ゆうひ「なるほど。今自分はYADORESIに住んでるけど、空間が小さい中で、まだそこを最大限に活用できていない思いがあって。でもちょっとした価値観があれば、タイニーハウスじゃなくても一軒家でもアパートでも、暮らしの豊かさは表現できるのかもしれないね。」

さわだ「YADORESIも、はなれマドでの表現もできるしね」

みちこ「デンマークって、みんな家がおしゃれで。もてなす文化があって、家は人に見せるもの。リビングはパブリックな空間だから、あえてカーテンが開けっ放しだったりして。」

ゆうひ「外から何が見えるかで配置を決めていたりするよね。外の人のためにおいているというか。日本は優先順位が低いのかな?家がプライベートな領域だと思っているから?」

りおな「日本は、衣食住の住がちょっと後回しになっている気がする。借りれば部屋はあるし、サバイバルみたいなこともなく、家は寝る場所というイメージ。日本はパブリック側が頑張りすぎているかも。ちょっと無機質だけどね。」

さわだ「日本人は、どこかプライベートとパブリックの線引きをしたがるのかもね。閉まってることの聖域があるというか、分けたがる。」

ゆき「昔は縁側もあって、内と外と間の空間だったはずなのに。それって最近になってのことなのかな?」

ゆうひ「ハードがコミュニティを分断するものになりつつあるよね。元々庭は、本来は誰でも入っていい、見せるためのものだったけど、塀で囲われるようになってしまったり。昔は、近所の人のことがわかってるから安心して、オープンにできたのかも。」

みちこ「知るには自分も開けに行かないとだよね。私はこの間、引っ越しのとき、目にみえる家全部に挨拶に行ったよ。そうすると、引っ越しの時もみんな協力体制だった。笑
でも最初、東京に来てすぐは必要がないと思っていたかも。挨拶もしなくて、誰が住んでいるかわからないから怖かった。」

継承すること、不便さを楽しむこと

ゆうひ「りおなはどんな暮らしに興味がある?」

りおな「私は、人を受け止められるスペースが欲しくて。吹き抜けと暖炉があってみんなで場を共有している家がいいな。住み開きしたい。
小さい頃から実家がそうで。近所の誰かが家にいたり、井戸端会議にも使われるし。でも、共働きだとやりづらいかも。うちは専業主婦で、誰かが家にいる状態だから開けたというのもあるかもしれない。あと、家を購入したり、一箇所に定住するイメージもなくて。まだ数年は、色々なところに行ってみたいな。」

さわだ「日本ってどこか、長期休暇が申し訳ない、みたいな空気感があるよね。一定期間海外で仕事した方が良い価値観にできないかな。笑」

みちこ「北欧はサマーハウスがあって、みんな一年のうち数週間休暇を取れるから、サマーハウスを家族や親戚、友人と一緒に使ってる。サマーハウスは長持するし、資産として親から受け継がれていくの。」

ゆき「日本の別荘って次第に空き家になっていって、親から受け継がれるのも迷惑、ということもよくあるよね。」

みちこ「そうだね。日本の働き方的に、継続的に使うのが難しくて使われなくなっちゃうのかな。
今の時代空き家もあるのに、あえて新しいタイニーハウスだったり、ものを作る理由ってなんだろう。」

ゆき「どんな家でもメンテナンスが必須だけど、タイニーハウスは小さいから、自分で手を加えて補修できるメリットもあるよね。」

みちこ「確かに。北欧もDIY、自分で手を加える文化があるから長持することもあるんだよね。」

ゆうひ「日本の原状回復の厳しさってあるよね。建材も、メンテナンス不要、に価値が置かれる。昔はじーちゃんが屋根を塗って、それをみて学んで、とかもあったはずだけど、技術やモノを継承する文化がなくなってきているかも。」

さわだ「それが幸せなことだよね、豊かだよね、というのを伝えることは重要かもね。
制限さ、不便さを楽しむこと。例えば今みたいな(良いディスカッションの)空気感も実際に入ることで感じる、わかることがある。その場に、コミットするのが大事だね。」

振り返り

ゆうひ「みんなの暮らしに対する印象、ルーツが聞けたのがよかったな。プライベートなことに触れられる時間が意外とないから。この人数感もよかったかも。
これから暮らしについて色々なテーマで掘り下げてみてもいいかもね。例えばゆうこさんは窓の研究したいと言っていたからそれを深く聞いたり、縁側、日本の昔の暮らしを掘り下げてみたり。」

りおな「プロデュースの仕事でも思うのが、制限、不便さを楽しむことの重要性。公園など公共空間、所有していない場所を使いづらいけど。でもその世の中のルールに乗りこなしてる感覚って、大事にしたいし挑戦したい。」

みちこ「ゆきさんが言っていた、タイニーハウスが答えじゃない、可能性を広げるもの、ということが今日初めて腑に落ちたかも。
タイミングが来るかも、来ないかもわからないけど、まずスタートに立つことが大切で。YADOKARIのみんなはすでにそれぞれスタートに立っているから、みんなとディスカッションしたり交わることで、自分が想像し得ない結果になっていく面白さがある。個人がそれぞれ、どんな方向に進んでいくのかが楽しみ。」

ゆき「YADOKARIは個性が際立つ集団というけど、それぞれがただ個で活動するだけでなく、こうやってディスカッションしたり交わっていくことで、自分だけで見えない価値観や世界が生まれていく面白さがあるかもね。
例えば窓とか縁側とか全然違うテーマについてディスカッションすることで、結果的にタイニーハウスが持つエッセンスや目指したい世界の解像度が上がることもある気がする。」

ゆうひ「今日スタートに立った感じがするよね。正直この会に参加するか、普段の業務もあるから迷ったけど。だけど、いい時間だった。
こういう余白の大切さを日々の業務で忘れてしまう怖さがあるけど。忘れないでいたい。」

りおなメモ

木や緑の独特な香り、風に揺らされ小枝と葉が触れ合う音、澄んだ空気を身体中に吸収し自然と一体化する。自然とともに呼吸するように生活できる空間が「ツリーハウス」だ。

子どもの頃に秘密基地として慣れ親しんだツリーハウスは今、サステナビリティをコンセプトに抱え、エコフレンドリーな住居やリゾート地として世界で進化を見せている。

自然への影響を最小限に抑えた建築手法と、居心地の良さを追求したデザイン性の高い空間。未来の住空間のアイデアを与えてくれる、世界の「サステナブルツリーハウス」を見ていこう。

沖縄の大自然に佇む「持続可能なリゾート」

via: https://treeful.net/ja/

via: https://treeful.net/ja/

沖縄の大自然を五感で楽しめる『Treeful TreeHouse』は、「サステナブルツリーハウスリゾート」をコンセプトに大きなアカギの木に這うように建てられた。

地面の中に住む微生物やほかの生命体の移動を邪魔しないよう、地上から1.2m以上に位置するツリーハウスの中は、木の温かみが溢れ、心地よさと安らぎを感じる空間に。
ツリーハウスの床は薄い木材をスリット状に配置し、地面に生息する生物や植物に雨や日光が当たるようにという配慮のうえだ。

via: https://treeful.net/ja/

極限まで自然と一体化。「鳥の巣」のようなツリーホテル

via: https://treehotel.se/en/rooms/the-bird-s-nest

スウェーデンの北部に位置する小さな村、ハラッズには、ユニークで冒険心そそられる、木の上に建てられた「ツリーホテル」が複数建ち並ぶ。

なかでも異彩を放つのが、スウェーデンの建築家によって、周囲の環境との一体化を可能な限り実現すべくデザインされた『THE BIRD’S NEST』。

via: https://treehotel.se/en/rooms/the-bird-s-nest

無数の木と木が組み合わさり、森林の中にぼんやり浮かぶその姿は、映画に出てくるような巨大な鳥の巣のよう。

屋内はモダンなデザインでありながら低エネルギーのLED照明を採用。

また、下水道を配置しないなど長期的に持続可能であること、地域の環境への影響を最小限にエコフレンドリーであることを軸に建設されている。

350の鳥の巣箱でできたツリーホテル

Photographed by Mats Engfors

同じくハラッズのツリーホテルには2022年5月にオープンした、思わず画面に顔を近づけて見たくなるような外見のホテルがある。

Photographed by Mats Engfors

デンマークの建築スタジオが手掛けた『Biosphere』は、サステナビリティとネイチャーツーリズムを重視し建てられた。

下降しつつある地域の野鳥群の保護を強化すべく、ファサードには350もの鳥の巣箱を設置。

Photographed by Mats Engfors

地上から伸びる吊り橋を渡り、屋内へ入ると外観からは想像できないモダンな空間。

ダーク調でスタイリッシュなインテリアには有機的な素材が用いられ、自然との調和を意識。ただのオシャレなデザインやスタイルの追求に留まらない。細部にまで宿る環境への配慮と気遣いに、環境への尊敬と保護について改めて考えさせられる。

Photographed by Mats Engfors

窓から外を覗けば、巣箱に集まる野鳥が飛び交う様子やハラッズの豊かな自然が目の前に広がり、まるで森林の一部になったような気分にもなる。

日常における一つひとつの行動、考え方、そして住まいに対して、私たちは環境との共生を意識した選択肢をしていかなければならない。

自然の恵みを享受し、持続可能な暮らしをするーー。

その哲学を具現化し、自然と調和するように建てられたツリーハウスには、これからの住まいの在り方のアイデアが詰まっている。
木々を切り倒すのではなく、活かし、周辺の自然の一部として溶け込むような外観に、内装には、有機的な素材を用いて、自然とのつながりを維持する。

環境への配慮と快適さが備わったサステナブルツリーハウスは、未来の理想の住まいだ。

参考元:TreefulTreehouse, Treehotel

 

 

2023年6月8日(木)に横浜にあるYADOKARIの共同オフィス・qlaytion galleryで開催された「未来サンカク会議 」。

第1回目となる今回は、ゲストにJR東日本スタートアップ株式会社の佐々木純氏をお迎えし、「地域事業創造は”掛け算”で遊ぶ?」をテーマにトークセッションとサンカクワークショップを行いました。はじめまして同士の方も多い中、至る所で笑い声が聞こえる和やかなムードで開催されたイベントの様子をお届けします!
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第3回目「△(リザルトパラダイム)の社会を▽(プロセスパラダイム)にする?ゲスト:影山知明さん」は9月22日(金)19:30〜。現地参加、オンライン参加ともにまだ若干名のお申し込みが可能ですので、この機会にぜひご参加ください!
詳細・お申し込みはこちら!▼
https://peatix.com/event/3693759/view
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未来サンカク会議とは「暮らし」「生き方」「コミュニティ」「まちづくり」といった分野で新しい価値を探求してきたYADOKARI・はじまり商店街と、当日集まった参加者の方と共に、領域を超えて未来を創っていく、誰もが “サンカク” できるオープンな実験場です。

コロナ禍を経て暮らしや働き方が大きく変わり、パラダイム・シフトが進む昨今。一つの組織だけでは解決できない社会課題が山積する時代に、企業単体でのイノベーションを超え、共に新しい価値を創り出す”オープンイノベーション”という手法は欠かせないものとなっています。

特に地域と密着して課題解決を目指す事業においては、領域を超えてどのように繋がり、それぞれの願いをどのように共有して、掛け合わせながら”共創”していくかが鍵となる…!という事で、参加された皆さんと一緒にトークセッション+共創ワークショップを通じて今回のテーマについて探求しました!

冒頭のアイスブレイクでは、近くにいる方とご挨拶!簡単な自己紹介からはじまり、「未来サンカク会議 」”サンカク”のきっかけ、時間を忘れて熱中することについてそれぞれお話しました。


雰囲気が和んだタイミングで続いてはトークセッションの始まりです!初回となる今回のゲストはJR東日本スタートアップ株式会社の佐々木純氏。

地域に密着した鉄道会社の機能を持つスタートアップ支援企業として、地域資源を活かした事業創造支援を続けてきた佐々木氏と「地域共創」のこれからについて、”掛け算”を一つのヒントにお話いただきました。

鉄道ネットワークや駅、SuicaなどのサービスといったJR東日本グループの持つアセットと、スタートアップ企業のアイディアや技術をつなぎ、設立から5年弱で50件以上もの事業を創造しているJR東日本スタートアップ株式会社。トーク中は、JR東日本スタートアップ株式会社の主な事業を参考に、4つの視点で更に深掘り。

「掛け算」 鉄道会社の持つアセットとスタートアップ企業の化学反応
「越境」    領域を超えた繋がりや共創
「遊び」    斬新な切り口と地域との関係性構築
「創造」    社会に実装することへの困難や面白さ

新たな気付きに大きく頷く方や、メモを取って熱心に聞く方も。トークの終わりには、ファシリテーターのYADOKARI・はじまり商店街メンバー、参加者の方からも質問が飛び交いました。そうして、前半のトークセッションの熱気冷めやらぬまま、後半のサンカクワークショップに移ります。

後半に行われた”サンカクワークショップ”では、グループに別れて「地域事業創造は”掛け算”で遊ぶ?」をテーマに、2050年のぶっとび企画案をロールプレイで考えていきます。

まずは、一人ひとりが【スタンスカード】【職業・属性カード】をランダムに選び取り、どんなキャラクターを演じるかを決めていきます。「ひたすらロジカルな/子ども」「ひねくれた/農家」「せっかちな/ギャル」「とにかく明るい/デベロッパー」などと面白い掛け算がここにも。


それぞれの立場を演じながら、25年後の日本がどんな社会になっているのか、ポストイットに書き出していきます。四半世紀後の社会では、何が当たり前でどんな制度や技術が生まれ、どんな課題やアイディアがあるのか、多様な視点から意見が飛び交いました。

しばらくすると、各グループに「広大な遊休地が現れた!」「人口減少が止まらない!」といった地域で解決したい問題が投下されます。それぞれが持つ強みやアイディアを掛け算しながら、その課題の解決につながるぶっとび企画を出し合います。

自由な発想と新たな視点に近づく時間は対話と探求の連続。普段とは違う自分の立場でアイディエーションを行うので、企画が育まれる背景もユーモア溢れるものでした。

全てのグループがぶっとび企画を発表し終え、最後は「サンカクアワード」!ゲストの佐々木さんが一番グッときた企画を選出し、コメントをいただきました。

イベントの最後には飲み物を片手に交流の時間。”サンカクワークショップ” 終わりですっかり温まった場の雰囲気。仕事終わり、少しだけ肩書きから離れ、ぷはーと重力に身を任せる少し前。めまぐるしいスピードで変化していく予測不可能な時代を共に面白がり、会社や組織という枠を超えて、未来を創造していくまさに “ネオ残業” でした。

今回”サンカク”いただいたみなさん、ありがとうございました!
また次回のサンカク会議でお会いしましょう!

 

次回のサンカク会議は、9月21日(金)に開催!

今回は、ゲストにクルミドコーヒー/胡桃堂喫茶店店主の影山知明さんをお迎えして、多様性の中でお互いを活かしあうような”▽(プロセスパラダイム)な社会”をテーマに、トークセッションとワークショップを行うイベントを開催します!

組織やシステムの目的のために人間が手段化される△(リザルトパラダイム)な社会から、一人ひとりがのびのびと自分を発揮し、互いにいかし、いかされる▽(プロセスパラダイム)な社会へひっくり返すことを掲げ、東京都国分寺市を舞台にさまざまな実践をされている影山さん。
“お金”でありメッセージカードでもある地域通貨「ぶんじ」や、みんなで持ち寄ってつくる安心と冒険が同居するまちの寮「ぶんじ寮」をはじめ、これからの社会のあり方に気づきと勇気を与えてくれるような取り組みを軸にお話いただきます。

そして、YADOKARIやはじまり商店街が取り組む、人や暮らしを起点にまちに沁み出していくような場づくりの事業もご紹介しながら、まちに広がる循環や関係性づくりについて集まった皆さんと考えていきたいと思います。

お金や経営、まちづくり、働き方や暮らし方の「あたりまえ」を疑ってみる時間に。
みなさまのご参加を、お待ちしています!

詳細・お申し込みはこちらから!
https://peatix.com/event/3693759/view

 

植物の種は地面に撒いて育てる、海に泳いでいる魚を釣って食べる…これらは、わたしたちが生まれる前からそうなっていた自然の原理にもとづく、ごく自然な行為だ。

一方で、テクノロジーの進化により、これまでには存在しなかった方法で作物や生き物を育てることもできる。土を使わずに育てる水耕栽培や、人工的に管理された環境下で育てる養殖魚などが例に挙げられる。

水耕栽培や養殖魚は十分革新的だが、「土で農作物を育てるのが農業、海で魚を取るのが漁業」という区分は変えてこなかった。そんな「あたりまえの区分」をなくしてしまうかもしれない技術、それがアクアポニックス農法だ。

via:https://silkfamily.jp/30409

農業と漁業の境目をなくすとはいえ、これまでの農業や漁業の価値を奪うわけではない。むしろ、アクアポニックス農法は、作り手と買い手の暮らしをよりよくしてくれる、頼もしい技術といえる。

アクアポニックス農法とは、魚のフンで作物を育てる循環型”農漁業”

via:https://aquaponics.co.jp/

アクアポニックスとは、魚のフンで作物を育てる循環型システムのことを指す。具体的にいうと、以下のような循環型モデルを続けることにより、野菜も魚も育つという農法だ。

  1. 魚がフンをする
  2. フン入りの水槽の水を作物に流す
  3. 魚のフンが肥料代わりになり、作物が育つ
  4. 作物がフンやバクテリアを浄化し、キレイな水になる
  5. キレイな水が水槽に戻る

水槽の汚れは作物の肥料となり、作物が栄養分を吸い取った後のキレイな水は魚の生きる糧になる。このようにして、農業をしながら魚の養殖もできるというわけだ。

無農薬・減農薬野菜を育てやすく、物価高に影響されにくい

アクアポニックス農法は、育てる側の手間が省ける上、物価高の影響を受けにくいというのだから驚きだ。

野菜のなかでも、皮をむかずにそのまま食べる葉物野菜は、表面に付着した農薬や残留農薬が気になるという声も多い。需要があるのなら無農薬・減農薬野菜を作ればよいと思うかもしれないが、無農薬、減農薬栽培は手作業での草取りや虫よけなどたいへんな手間がかかり、収益性に乏しいのが現状だ。

via:https://kakumaru7.jp/peace-of-mind/weeding-tips/

一方のアクアポニックス農法は、室内栽培のため農薬を使用する必要がない。除草や虫よけに手間のかかる無農薬・減農薬と、効率を優先した慣行栽培(註:農薬を用いた栽培のこと)のいいとこどりをしつつ、環境へのダメージを抑えた理想のモデルといえる。

加えて、アクアポニックス農法では魚のフンが有機肥料として機能するため、化学肥料を使う必要もない。ウクライナ危機を機に、輸入成分に頼っていた化学肥料は以前の倍ほどの値段になり、多くの小規模農家が利益減少に困っている。アクアポニックス農法は魚が有機肥料を生み出してくれるので、物価高に左右されず、収益性の高さを維持できるビシネスモデルだ。

副産物の「魚卵」で、農家の所得向上につながる

アクアポニックス農法は、農家の所得を上げるビジネスモデルでもある。有機肥料を生み出す魚として、魚卵を生み出す魚を飼育するのだ。

via:https://urahyoji.com/roe-list/

イクラや筋子のもととなるサケやマス、キャビアのもととなるチョウザメなどを用いれば、農作物に加えて利益の出る商品がひとつ増える。日本で実際に生産に乗り出している企業もあり、天候や作物の出来具合に収入を左右される農家にとって、安定して収穫できるモノがひとつ増えるのは大きな変化だといえるだろう。

環境を守り、農家の暮らしを支えるアクアポニックス農法

アクアポニックス農法は、農業と漁業をシームレスにする。効率化を理由に農薬を使用する必要はなく、農家の人々が手間をかけて草取りや虫よけをする必要もない。副産物でできる魚卵は、農家の所得を底上げしてくれる。

小規模なものであれば、家庭の水槽でも実現可能だ。魚のフンが植物を育て、植物が水を浄化し魚を育てるアクアポニックスセットは通販などで気軽に購入でき、自宅の水槽にはめて使う便利なタイプもある。小さいながらも自然の循環を身近で感じられることだろう。

作る側にも食べる側にもメリットの大きなアクアポニックス農法では、レタスやほうれん草、水菜などさまざまな野菜が作られている。日本では一部地域でしか販売されていないが、見かけたらぜひ手に取ってみたい。食にこだわるあなたと、生産者の暮らし、そして地球環境をも救う第一歩になるはずだ。

参考サイト:

Hearty Harvest FOOD BANK.”How Does Aquaponics Work?”.

https://www.hhfb.org/news/how-does-aquaponics-work/?gclid=CjwKCAjwpayjBhAnEiwA-7ena3uJ2yrPSoex_0F1jP0k-XL8Wh89_hVtnv1MCWMIrvHVjMBZahWQIxoC4I8QAvD_BwE

THE aquaponic SOURCE.”WHAT IS AQUAPONICS?”

https://www.theaquaponicsource.com/what-is-aquaponics/

新型コロナウイルス感染症の流行以降、リモートワークが定着し、多くの人が自宅とオフィスを組み合わせて働いている昨今。働き方や暮らし方について見直す機会も増えてきている。

そんななか、自分の過ごす空間を心地よくするアイデアとして注目したいのが、「ホリスティックインテリア・デザイン」だ。

ホリスティックインテリア・デザインとは?

https://hommes.studio/journal/what-is-holistic-interior-design/

ホリスティックインテリア・デザイン(ウェルビーイングデザイン)とは、心身の健康(ウェルネス)を考えたインテリアデザインのこと。

普段多くの時間を部屋などの「空間」のなかで過ごす私たちにとって、その空間が、たとえば仕事のパフォーマンスを左右したり、リラックスできるかストレスを与えるかに関わったり、生き方に影響を及ぼすこともある。

ホリスティックインテリア・デザインでは、生物学や色彩心理学、人間工学など、学問的な分野もさまざまに組み合わせながら、暮らしの空間を「ホリスティック(全体的)」に整えていく。

ホリスティックインテリア・デザインの哲学に基づいた、心地の良い空間づくりに役立つアイデアをいくつか見ていこう。

 

自分が大切にしている価値観を考える

https://humbleandgrand.com/blogs/news/a-holistic-approach-to-creating-a-space-that-meets-our-needs

ホリスティックインテリア・デザインを取り入れる時に重要なのは、「自分にとって何が大切なのか」を考えること。

たとえば、北欧の家具や木をベースにしたナチュラルなテイストが落ち着くのか、モダンなテイストが好きなのか。どんなカラーが好きなのか。お気に入りの家具があるのなら、その家具を中心にしてみてもよいかもしれない。

https://hommes.studio/journal/what-is-holistic-interior-design/

大切にしたい部分がはっきりしてくると、つくりたい空間の方向性が見えてくる。

シンプルで機能的に

https://www.decorilla.com/online-decorating/wellness-design/

部屋が散らかっていると、集中力が欠けたり、知らず知らずのうちにストレスにさらされることも。これは研究でも明らかになっており、プリンストン大学の神経科学者による2011年の研究では、家の中が散らかっている環境に住んでいると、集中力や情報処理能力を妨げることが報告されている。

そのため、ストレスをなくすには、シンプルかつ機能的な空間づくりが重要になってくる。
たとえば、家の中で移動する時にどういう動線を使うのか。何か欲しいものがある時に、それが本当に必要なのか、ずっと使っていたいものなのか、ゆっくり考えてから買ってみるのもいいかもしれない。

サステナブルな空間づくり

https://hommes.studio/journal/what-is-holistic-interior-design/

https://www.decorilla.com/online-decorating/wellness-design/

ダイニングテーブルやベッドなど、一度買ったらなかなか買い換えないものは、長期的にそばにおいておきたいかどうか考えること。少し大げさかもしれないが、一生使っていても飽きないくらいのものが理想だ。

大きな家具をしっかり決めれば、ライフスタイルが変化してもずっと使うことができる。

心が落ち着く照明

https://www.decorilla.com/online-decorating/wellness-design/

空間づくりの中で欠かせないのが照明。私たちの体が自分で覚醒と睡眠のサイクルを調節するために、光はとても重要な働きを担っている。

日中は太陽の光を最大限に活用し、夜は暖色のライトを利用するなどして、体が健康的なサイクルで生活できるように整えることができる。

自然とつながる

https://www.decorilla.com/online-decorating/wellness-design/

人間は本能的に自然とつながっていたいと感じる欲求がある。イギリスの科学誌Natureによると、人は1週間に120分以上自然のなかにいることで、幸福感を得られたり、健康的になると報告されている。生き生きと過ごすことで、生産性や創造性のアップにもつながるのだ。

植物や日光など自然を取り入れる空間デザインは、バイオフィリックデザインとも呼ばれており、海外でも日本でも積極的に取り入れられている。

https://www.decorilla.com/online-decorating/wellness-design/

太陽光を部屋に取り入れたり、窓の外に広がる自然の風景を借りる昔ながらの「借景」によっても、自然を身近に感じることができるだろう。

また、いつものお部屋に観葉植物を置くのもとても効果的。見ているだけで落ち着いたり、空気を浄化してくれる作用もあるのでおすすめ。

ここで紹介した例はほんの一部だが、居心地の良い空間づくりのヒントにしていただけたら幸いだ。

 

 

記事・画像参考元:

What Is Holistic Interior Design?

A HOLISTIC APPROACH TO CREATING A SPACE THAT MEETS OUR NEEDS.

Holistic Spaces: The power of wellness-inspired interiors

12 Wellness Design Ideas for a Happy and Healthy Home

バイオフィリックデザインのメリットは? 日本・海外企業の具体例を紹介

「パーソナルスペース」を知っているだろうか?パーソナルスペースとは、他人が入って来ると不快感を覚える距離や空間のことで、相手と自分との関係性によって広く成ったり狭くなったりするもの。

via:https://www.scientificamerican.com/article/covid-expanded-the-boundaries-of-personal-space-maybe-for-good1/

例えば電車内で、見ず知らずの人とピッタリ並んで座る。多くの人は、体を縮こめるようにして何としてでも自分と他人の距離を設けようとするだろう。

このように、パーソナルスペースとは「赤の他人vs自分」という図式で語られることが多い。一方で、長年連れ添ってきたパートナーや子どもたちなど「心を赦しているはずの人たち」に対しても、パーソナルスペースを設ける必要があるということは忘れられがちだ。

ウチとソトを区別するひとつの敷居「家」のなかに、一個人のパーソナルなスペースを設ける。今回は、大掛かりな工事やDIYはナシにして、思い立ったらすぐできるようなライフハックをいくつか提案したい。

階段下の物置を片付けて、秘密の部屋に

家の中にある空間のうち、動きがないエリアを探してみよう。例えば、階段下の物置や、今は使っていない小部屋など。使わないものをストックしておくだけのスペースがある場合には、一度モノを整理すると、その部屋のポテンシャルが見えてくる。

階段下の物置スペースであれば、1年以上使っていないものは処分、年に数回使うものやストック品などは隅にまとめれば、1畳分ほどのスペースが生まれる。何もない1畳の空間は寂しいが、そこを自分の好きなモノで埋めてみると途端に「自分だけの小さな王国」が出来上がる。

via:https://www.bobvila.com/slideshow/17-clever-uses-for-the-space-under-the-stairs-46247

やわらかなカーペットを敷き、クッションと小さなライト、スマホスタンドを置いてみよう。すると、これまでの物置は自分だけのミニシアターにもなる。台所であたためたポップコーンを持って、自分だけの小さなご褒美シアターの時間を設けるのもいいだろう。

ひとつの空間に複数の使い道を見出してみる

「ウチに物置なんてないよ」という方は、ひとつの空間に複数の使い道を見出すのがオススメだ。例えば、ダイニングテーブル。食事をとるための場所だが、椅子とテーブルがあるのだから、書き物をするための場所にもできる。バスルームは体を洗う場所だが、アロマキャンドルを置いて本を持ち込めば、自由気ままに過ごせるスパに変身する。トイレだって、好きな観葉植物や絵を掛けておけば、自分だけの空間になる。

via:https://dcranchhomes.com/7-spa-bathroom-ideas-pros/

家の間取りは、その空間の使い道を限定しがちだが、どこで何をすべきと決まっているわけではない。あえていつもとは違う使い道を探ることで、空間のポテンシャルを見出し、間取りにとらわれない家の使い道を見つけることができるのだ。

自分のモノを持って「どこでもパーソナルスペース」を作り出す

パーソナルスペースだと定義するものは何か?間取りや仕切りももちろんそうだが、パーソナルスペースはそれらしき「雰囲気」を醸し出すことでも定義できる。

お気に入りのクッションや、手触りの良いブランケット、読みたかった本などを持って、窓際などの明るい場所に「自分だけのスペース」を作ってみよう。壁やカーテンで仕切られているわけではないものの、その場所は確かにあなただけのスペースになる。

誰かと同居していなくても、悩みやストレスなどの感情があなたのパーソナルスペースを侵害してくることがあるだろう。そんなときに「どこでもパーソナルスペース」を作っておけば、自分の心地よい空間に身を置きながら、モヤモヤ状態から早く抜け出せるはずだ。

via:https://cubicoon.com/2021/10/01/how-to-create-your-own-space-at-home-for-some-me-time/

移動する手間すら惜しいときには、ヘッドフォンや耳栓を使おう。最小限のスペースで、自分だけの空間を作り出せる。

家の中に壁や仕切りで隔たれた空間がなかったとしても、モノで囲むことでパーソナルスペースは作り出せるのだ。

手軽な方法でパーソナルスペースを保ち、心の健康をキープしよう

動きのない空間を片付ける、ひとつの空間に複数の使い道を見出す、モノの雰囲気でスペースを形作る…大がかりな工事やDIYをせずとも、家の中でパーソナルスペースを保つ方法はたくさんある。

家の中でちょっと息苦しいと感じたり、疲れがとれないと感じたとき、一度試してみてはいかがだろうか。

参考記事:

CUBICOON.”How to Create Your Own Space at Home for Some ‘Me’ Time”

https://cubicoon.com/2021/10/01/how-to-create-your-own-space-at-home-for-some-me-time/

モーニングKC.吉本 浩二.”定額制夫のこづかい万歳 月額2万千円の金欠ライフ(5) ”

https://www.amazon.co.jp/dp/4065301866

何かを学びたいと思ったとき、あなたはどんな方法をとるだろうか。
まずはテキストを購入したり、オンラインの講座を受講してみたり、思い切って学校や塾に通ったりと方法はさまざまだ。
しかしどの方法を取るにしてもお金が必要になる。
最近は、Youtubeやアプリなどを使用して「無料」で勉強することも出来るのだが、それらを利用するのにもパソコンやスマートフォンが必要だ。
それでは本当に無料とはいえない。しかし、

「学ぶためには本当にお金が必要なのだろうか。」
そう考えさせられる出来事があった。遠く離れた南アジアの地で。

温かい家族が住むアパートの一室で

空港や観光地が再び賑わい始めた今年のゴールデンウィーク、私はインドを訪れた。
なるべく現地の人と交流できるような旅がしたい。
そう思った私は、現地で出会った家族のもとを毎日訪れていた。日中はお母さんと私の2人で過ごし、夕方になると学校を終えた子供たちが帰ってきた。
そして気づけばその家族の子供たちだけではなく、子供たちの友人らもたくさん訪ねてくるようになり、小さな友人に囲まれて過ごすことがインドでの私の日常になった。

 

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ある日、1人の女の子がノートを私に差し出して
「日本語を教えて」
と言ってきた。

私は学生時代に1年間、ヒンディー語を学んだことがあった。学んだことのほとんどを忘れてしまっていたのだが、幸いにも彼らが使うデーヴァナーガリー文字は覚えている。
私はそのノートに彼女の名前を日本語で書き、デーヴァナーガリー文字を添えたひらがなの表を書いて手渡した。それを見た子供たちは、目をキラキラさせてどこかへ行った。そして各々のノートを持って戻った子供たちは、それを私に差し出して、自分にも書いてほしいと言った。

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学生時代、先生が書いたホワイトボードの文字を写真に取って保存をしたり、ノートを写真にとって友人と共有し合うことが多かった。そのためノートを差し出す彼らを愛らしく思いながらも、
「写真をとってシェアすればいいのに。」
と思ってしまった。しかしここにはコピー機もスマートフォンもない。
「私が書いたこのひらがなの表が彼らにとって、たった一冊の日本語の教科書になるんだ。」
そう思い、はっとした私は身の引き締まる思いで一つ一つのノートにひらがなを書いた。

次の日また子供たちのもとを訪れたときには、子供たちが練習したひらがなを見せてきた。発音が合っているのか確認してほしいと、1から10までの数字を唱え始める子もいた。前日、子供たちは私が帰った後も日本語の勉強をしていたようだ。一晩でこんなにも覚えてしまったのかと子供たちの意欲的な姿に驚いた。

何かを学ぶために必要なものは「お金」じゃなかった

「Life is learning」
滞在中、チャイ屋で出会った地元の人からこの言葉を聞いた。
その言葉を体現しているのが、目の前にいる子供たちであるように思えた。

ある日、日本人が家に来るようになった。彼女は日本語と、ヒンディー語が少し分かる。ならば彼女から日本語を学ぼう。このチャンスを逃したくない。
そういった思いが彼らの姿から感じられ、日常の中にある偶然の機会から存分に学ぶ姿はまさに「Life is learning」だ。

そんな彼女らの熱心な姿と思いに魅了され、気づけば私も毎日彼らの家に通い熱心に日本語を教えていた。
滞在中、私は40℃を超えるインドの暑さにへこたれ、熱や吐き気がある時もあったのだが、
子供たちが熱心に学ぶ姿を頭に浮かべると、会いたくなって、一緒に勉強をしたくて少し無理をしてでも家を訪ねていた。

旅をする前は、まさか自分が子供たちに日本語を教えることになるなんて思っていなかった。
みんなで日本語を学ぶ小さな教室をつくったのは私ではなく子供たちだった。私を、日本語を教える「先生」のような立場にしたのも子供たちだった。彼らの学びたいという意欲に突き動かされ、つくられた空間だった。
この地で何かを学ぶために必要なのは「お金」ではなく、日常の中から何かを学び取ろうという強い「想い」なのだと気づかされた。

常に情報やデバイスがすぐそばにある私は、知りたいことをいつでも知ることが出来る。そして身の回りに学校やオンラインの講座などがあり、学ぶための箱はいくらでもある。
しかしそんな環境にいるからこそ、調べることや学ぶことをつい後回しにしてしまったり、選択肢がたくさんあるからこそ、とりかかるまでにすごく時間がかかってしまう時もある。そんなこんなで、買った本やテキストが結局読まれずに積まれていく、なんてこともしばしば。

一方で、公立学校以外の学ぶことの出来る施設やスマートフォン、お金が手元にない子供たちは、日本語を話す人が今家に来ているという目の前にある事実に目を向けて、日本語を学ぶ環境を、お金を使わず自らつくり、熱心に学んでいた。
学ぶためにはお金が必要だなんて思っていたことが、インターネット環境や本など、周囲にありあまるほど存在する学ぶチャンスを十分に活かせていない自分のことが、なんだか恥ずかしく思えた。

本当に豊かなのは私と子供たちのどちらなのだろう。
何かを学ぼうと思ったとき、まず用意しなくてはならないものはお金や環境だと思っていた。しかしその固定観念が大きく覆されたように思う。
同時に、大人になるにつれ、便利さや速さを求めるにつれ、忘れてしまった大切なものがたくさんあるような気がした。

お金を持っているか、そうでないか。
地方に住んでいるか、都心に住んでいるか。
大学に通っているか、そうでないか。
どんな動機を持って始めるのか。

そんなことはどうでもいいのかもしれない。
いつでも、どこにいても、学びたいという想いがあれば学ぶことが出来るのだろう。

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また、大好きなあの家族に、あの家にいる子供たちに会いに行きたいと思う。そのときには、色鉛筆で絵を描いた手作りの日本語のテキストを持っていくつもりだ。
ひとりひとりにちゃんとした日本語のテキストを買ってプレゼントすることも出来るのだが、それはどうも違う気がする。

なぜならあの場で生きる子供たちに、お金では買うことの出来ない、「想い」を強く持つことの大切さを教えてもらったからだ。

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あなたは「バンブーハウス」をご存じだろうか。
あまり日本では馴染みがないかもしれないが、タイやフィリピンなどの東南アジア諸国やリゾート地でよく目にする「竹の家」である。
この「バンブーハウス」が今、”自然と共存する新しいライフスタイルの可能性”として再注目されている。
今回は「バンブーハウス」の誕生から、なぜ現在になって再注目されているのか、実例をもとにしながら考えていこう。

「バンブーハウス(竹の家)」の発祥

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そもそも「バンブーハウス(竹の家)」は中国の少数民族”ダイ族”の伝統的な住居である。
ダイ族が住む西双版納(シーサンパンナ)地域は、熱帯雨林気候であるため降雨量が多く、湿度も高い場所にあった。
そこでダイ族は、住居の材料として”湿気”を防ぎ”熱”をためない「竹」に目を付けたのである。
竹を使っただけでなく、雨が抜けるような設計にしたり、地面からの湿気を避けるために住人が2階に住む(1階は家畜や倉庫用)構造にしたりするなどの工夫を施したのだ。

彼らは少しずつ、バンブーハウスを実用的で長持ちするような知識と技術を身に付けて行った。
・柱の下を大理石にすることで腐敗から守る
・竹を川や池に浸けて飽和状態にし寄生虫がつかないようにする
・どうしても火には弱かったため、村人同士のルールで”乾季の日中に火を使わない”というルールを作る
など、ダイ族全体で協力しながら時間をかけて作り上げてきたのが「バンブーハウス」なのである。

少しずつでも着実に完成度を高めてきたバンブーハウス。
これが現在に再注目されている理由を探るため、バンブーハウスを建てるメリットから見ていこう。

バンブーハウスを建てるメリット

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バンブーハウスを建てる主なメリットは主に5つある。

・木やコンクリート、レンガと比べると「低コスト」である
・「風通しがいい」ので湿気を防ぐことができる
・「熱の吸収率が高い」ので比較的涼しい環境を維持できる
・種類によっては鋼鉄と同じくらいの「強度がある」
・家具作りにも使えたり、曲線が美しく表現できたりとデザインや設計における「汎用性が高い」
・急速に成長し入手しやすい「再生可能」な竹を使い、メンテナンスしながら住むことで「サステナブル」な住宅になる

近頃”サステナブル”や”SDGs”が叫ばれてきているなか、再生可能で汎用性の高い「竹」が建材として再注目され始めたのである。

世界のバンブーハウス例

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メリットを活かすためには、もちろん入念かつ継続的ななメンテナンスが必要だ。
しかし私たちが促進させてしまった環境問題を解決していく中で、苦労や時間は避けては通れない。
そんな中でおしゃれに楽しめるバンブーハウスが世界で増えてきている。
続いてはどんなバンブーハウスの実例があるか見てみよう。

【タイ】患者をリラックスさせるクリニック

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まずはタイのナコーン・ラーチャシーマー「パクチョン地区」にあるクリニック。
家主はクリニック自体が、患者にとってリラックスでき、気分が明るくなるような場所であるべきだと考えた。
そこで森林地帯である土地を選び、その自然に馴染みやすい竹を使ってバンブーハウスのクリニックを建てたのだ。
風通しだけでなく、日当たりもよく、室内空間を軽くできるのもバンブーハウスの良さである。

【タイ】自然への愛着を持たせる体育館

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タイのチェンマイにある「パンヤデン・インターナショナル・スクール」の体育館。
この学校自体がサステナブルに注力しており、生徒にもその意識や興味を持ってもらいたいと願い建てた竹づくりの校舎になっている。
耐久性も申し分なく、またデザインとして周りの雰囲気だけでなく子供にも優しく馴染みやすいところが良さである。

【バリ島】竹を使ったおしゃれなリゾート地

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続いてはインドネシア「バリ島」のグリーンビレッジ。
これまでは等身大で、自然体なバンブーハウスの例を見てきた。
しかしこの「グリーンビレッジ」は、バンブーハウスに高級感を持たせ、革新的なものにするためのコミュニティだ。
汎用性が高いというメリットから、職人の手を借りることで高度で緻密なデザイン性にすることができる。
そんな付加価値を持った、リゾート地を発展させるになる実例だ。

バンブーハウスで「明るく」「開放的な」「将来性ある」生活へ

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日本には「放置竹林」が多く、他の木々や植物の成長を阻害してしまう問題が起きている。
竹を無駄にしない有効活用の策として、日本ではこれまであまり馴染みのなかった「バンブーハウス」に注目してみるのもいいかもしれない。

日光や風が上手く入る湿気の無い明るさ、自然に馴染む開放的な空間、またコスト的にも環境的にも将来性がある。
そして現代の技術を駆使することで、その可能性を最大限に生かしたデザイン性の高い魅力的な建築物にもなり得る。

住居としてのポテンシャルはもちろんのこと、環境や私達のライフスタイルをもポジティブにしてくれるものなのだ。

主要住宅にするのは今の日本の環境的には非現実的かもしれない。
しかし、小規模なバンブーハウスから始めてみるのはどうだろうか?
都市部から離れたセカンドハウスが欲しい。
田舎生活を自分の手でスタートさせたい。
など、「再生可能でサステナブルなライフスタイルを、少しでも自然と共存できるものにしたい」
そんな考えを持っているあなたは「バンブーハウス」を視野に入れてみてほしい。

ダイ族の偉大な知恵:竹の家
パクチョンの自然に抱かれた竹の家
バンブーハウス
サステナブル建材「竹」の汎用性の高さを示す〈バンブー・ツリーハウス・ビレッジ〉

とある不思議な人の話。

各地の精米店やおむすび屋さんを巡る中、出会った精米店にて修行を開始。土鍋での炊き方からおむすびの握り方のイロハを学ぶ。お米の魅力にどっぷりと浸かった挙句、20種以上の品種を食べ比べ自分でブレンド米を作成し販売。そのブレンド米で握ったおむすびをマルシェにて販売する…。ほんの数行で伝わる異常なほどの米愛のある人物。何を隠そう。これは私のことである。

夜な夜な自前の土鍋と羽釜をセットし、ウキウキして朝を迎える。炊飯の湯けむりが私にとってのおはようの合図…。しかし、そんな私に待ったをかけるかのような真実。実は、こうした家庭内で食される米の消費量が減少。9月から10月にかけての新米時期限定の「季節商品化」している。そんな実態をご存じだろうか。

家庭内で消費されるお米の量は減少している?

そもそも、「コメ」と一口に言っても大きく5つ分類される。今回はコメの中でも特に主食用のコメ。中でも私が日々魂を込めて炊飯し、消費する「家庭内米」について着目する。

参考:論文「日本人はなぜコメを食べなくなったのか?~コメ消費減少の要因分析~」を基に作成

参考:論文「日本人はなぜコメを食べなくなったのか?~コメ消費減少の要因分析~」を基に作成

この、家庭内米。以下の世帯あたりの購入数量を比較した調査から分かるように、年々その数量は減少している。(購入数と消費量は相関性が高いと考えた)

参考:総務省「家計調査」家計収支編 二人以上の世帯を基に作成

2013年から、2019年にかけての6年間での減少量は約13kg。つまり、月々約1kgずつ減少しているという事になる。米好きとして、このグラフ作成に心底胸が苦しくなった。ではなぜ、家庭内米が減少しているのだろうか。その背景を探ってみた。

消費量減少の背景にある2つの要因

2つの要因があると考えられる。1つ目はそもそも国内で主食の消費量が全体的に減少していること。2つ目がパン・麺類といった米以外の主食へのシフトだ。

参考:論文「日本人はなぜコメを食べなくなったのか?~コメ消費減少の要因分析~」を基に作成

まず、主食全体の消費量の変化を見てみる。

参考:総務省「家計調査」家計収支編 二人以上の世帯を基に作成

すると、2013年から2019年にかけての6年間で米・パン・麺類全体の主食購入数量は約14kg減少している。
確かに最強に米好きな私でも、あまりお腹が空いていない時はお米に断りを入れ、焼き魚と納豆で済ませてしまうこともある。近年の糖質制限やカロリー摂取を抑える風潮も理由として挙げられそうだ。

そして、2つ目の要因である、主食の多様化。各年の主食全体に対するパン・麺類(米以外)の割合を抽出した。

参考:総務省「家計調査」家計収支編 二人以上の世帯を基に作成

ゆるやかではあるが、その割合は増加している。2013年の51%から2019年には56%に増加。つまり、主食としてパン・麺類を選択する人の増加が米の消費量減少と関連していると考えられる。料理における時短化の風潮や、世帯人数の減少に伴って手早く1人分の調理ができるパスタやうどんを選択する。あえて炊飯に時間と手間をかけたくない。こうした思惑と関連がありそうだ。

このように、主食をそもそも摂らなかったり、主食の選択肢が多様化したことで家庭内米消費量が減少していると分かる。つまり、「“わざわざ”時間をかけてまで米食を選択する理由がない」ことが家庭内米の消費量減少の背景にあるのではないだろうか。だが、そんな家庭内での米離れが進む中”わざわざ”お米を炊いて食べたい。そんな風に多くの国民が思う時期がある。そう、「新米」の季節だ。

お米は新米時期だけの「季節商品化」している?

月間購入数量の推移に着目すると9月〜10月にかけての時期だけ、購入数量が突出していることが分かる。

参考:総務省「家計調査」家計収支編 二人以上の世帯を基に作成

食欲の秋に新米の季節を迎えるお米。季節を問わず、お米が食べたくなる私だが、10月は特にお米を欲する度合いが増す。2020年の7月と10月の消費量を比較すると、その差は約2.8kg。そしてこの傾向は2020年に限ったことではない。

参考: 総務省「家計調査」家計収支編 二人以上の世帯 /「政府統計の総合窓口」を基に作成

2015年の7月と10月の消費量を比較するとその差は約4kg近い。つまり、普段はお米を食べない・若しくは食べる頻度が少ない人であっても新米の時期になると“わざわざ”お米を食べたくなるのである。このように、おせちやクリスマスケーキとまではいかないものの、お米は「新米の季節のもの」と「季節商品化」していると言えそうである。
普段はそもそも主食を摂らなかったり、主食に「米食」という選択肢を選択しない人々にとっても、新米の季節に限っては「ちょっと米食べっか」とか、「今日、米にしない?」という気持ちになるのかもしれない。

新米の季節でない今の時期こそ、暮らしにお米を取り入れたい

たしかに、新米の季節のお米は美味しい。これはもう揺るぎない事実である。昨年の10月から食べ続けてきた私が胸を張って宣言する。
しかし、日本各地の食卓事情を覗いてみると、新米の季節でない夏本番の今こそ“わざわざ”お米を炊いて美味しく食べる工夫が施されているお米料理が様々ある。夏の食材を取り入れたり、田植え終わりのお祝いの席で食べるお米料理。初めて見るような食べ方。今回はそんな郷土料理の事例を2つご紹介する。

⑴「まご茶漬け」食べるら?

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「まご茶漬け」は静岡県の伊豆地方に由来する郷土料理だ。鮮度のいいアジが出回る夏に、アジを叩いて薬味と共にご飯に乗せ、熱い出汁(若しくはお茶)をかけた一品。「まご茶漬け」の名前は料理が漁の最中に船上で食されていた漁師飯であったことから、「まごまごしないで早く食え」という意味に由来する。魚の水揚げ量が多い駿河湾近郊の地域ならではのお茶漬けである。作り方も、材料も至ってシンプル。

まご茶漬けの材料・レシピ》おおよそ2人前
ご飯…1合分
アジ…既にたたいてあるものでも良し。釣ってくるも良し。
(A)醤油…小さじ2
(A)生姜…すりおろしをお好きな量(約1片分)
(A)いりごま…小さじ1
お好きな薬味(大葉やみょうがなど)…お好きな量
顆粒だし…小さじ2
熱湯…好みの量
①たたいたアジに(A)を混ぜ、炊いたご飯の上の豪快に乗せる(気分は漁師の如く)
②薬味を思う存分乗せたら、顆粒だしと熱湯を回しかけて完成。

実際にまご茶漬けを作って食してみた。

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釣ってくる程の時間をかけられなかった自分を恥じたい気持ちもありつつ、スーパーでなかなか美味しそうなアジを入手出来たのだからもはや後悔はない。
アジに絡んだ生姜醤油が食欲を掻き立てる。胡麻の風味、刻んだ大葉の香り。薬味をこんなにも美味しく感じられるようになったのはいつからだろうか。「まごまごしないで早く食え!」そんなことを言われなくても気付けばお茶碗は空っぽだった。
もはや新米の時期には、なかなか味わえないこの爽やかなお茶漬け。手軽に作れ、漁師気分を疑似体験出来てしまう。ぜひ暑い日の昼ごはんにいかがだろうか?

⑵「こざきねり」食わねが?

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江戸時代から食されていたと言われる「こざきねり」は秋田県横手市を中心とした南部の郷土料理である。お米を用いたスイーツで、お米を砂糖で煮詰めたおかゆに近い食感の料理である。ただ、冷やして食べる点が新感覚かと思う。
「こざき」とは砕けた米の事を指し、玄米を精米しもみ殻を取り除く際に発生する砕け米やくず米を使用していたことに由来する。現在では、もち米が広く使用されることが多い。

人が集まる冠婚葬祭の場でのおもてなし料理・お茶請けの一品として親しまれていた料理であるそう。ちょうど、6-7月にかけて行われる田植え終わりを祝う「早苗饗(さなぶり)」と呼ばれる集まりにて、出されることが多い一品だそう。

こざきねりの材料・レシピおおよそ2人前
もち米…1合分
水…700ml
砂糖…大さじ4
塩…小さじ1
米酢…大さじ3
好きなフルーツやきゅうり…好みの量

①もち米を1時間浸水させたのち、すり鉢やミキサーですり潰す。
②すり潰したもち米を水と共に、鍋に入れて中火にかける。
③砂糖・塩を加えて全体にとろみがつくまでしばし待つ。全体が透明がかる頃、米酢を加えて火を止める。
④粗熱をとり、冷蔵庫で30分ほど冷やしたらきゅうりや季節のフルーツを乗せて完成。

実際にこざきねりを作って食べてみた。

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スイーツ感覚のお粥。作っている間もやや、疑心暗鬼になっていたのはここだけの話。食べてみてその清涼感に驚かされた。かつては冷蔵庫がなく保存料の代わりに酢や砂糖で味付けをしていたそうだが、このほのかな甘みが絶妙に美味しかった。粘り気のある食感も、食欲が落ちている時にも食べやすそうだと感じた。新発見の味わいと、この季節ならではの美味しさに思わずリピートを確信した。

まご茶漬けにこざきねり。どちらも材料や味わいは全く違えど、この時期にピッタリなお米料理だ。確かに、米を炊くのは手間かもしれない。新米の時期にこそ惹かれる食材になってしまっているのかもしれない。しかし“わざわざ”お米をゆっくりと炊いて。新たな米料理を味わってみてはいかがだろうか?きっと、米に憑りつかれて夜な夜な自前の土鍋をセッティングする日が…訪れるかもしれない。

参考文献
なぜ食べない!コメの消費が減り続ける真因 食の多様化の「犠牲」になっている? | 食品 | 東洋経済オンライン
日本人はなぜ コメを食べなくなったのか
1世帯当たり1か月間の購入数量の推移
「米(こめ,稲)」の月間・年間の一般消費動向 | 購入量・支出価額・平均価格 | ジャパンクロップス
まご茶漬けのレシピ・つくり方 | キッコーマン | ホームクッキング
千葉県の「鯵のまご茶漬け」 | クラシル | レシピや暮らしのアイデアをご紹介
まご茶漬け 静岡県 | うちの郷土料理:農林水産省
お米のスイーツ こざきねり|地産DEレシピ|食と農からのまちづくり|秋田県横手市
秋田)農家の知恵が詰まった伝統食 秋田のこざき練り

「移住や農業、自然派な暮らし……、興味はあるけれど、いきなりは勇気がない。知識もつながりもない……」――そんな人も多いのではないだろうか。

内閣府の調査によると、移住への関心は2020年から増加傾向にある(東京圏在住者を対象)。「テレワークによって地方でも同様に働けると感じた」「ライフスタイルを都市部での仕事重視から、地方での生活重視に変えたい」といった理由も多く、コロナ禍で広まった“働きかた”“暮らしかた”の変化が、移住への興味を後押ししたのかもしれない。

一方、懸念点も多い模様。踏み出せない理由の約半分は「仕事や収入」という「働くこと」に関するものだ。さらに、そちらに次ぐ理由も興味深い。2、3番目に多い「買物や公共交通等の利便性」「人間関係や地域コミュニティ」という声は、「その土地での実際の暮らしかた」に不安があるということではないだろうか。

そこでおすすめしたいのが、「お試し移住」。本格的な移住や、地域おこし協力隊などはハードルが高く、なかなか決断できない。しかし、観光や旅行感覚で「ちょこっと移住を体験してみる」というのは、ほんの少しの勇気でできるのではないだろうか。

そんな「ちょこっと移住」にチャレンジできる、3つの例をご紹介。

【食事・宿泊】昭和の面影、自然の恵み、いただきます

via:https://www.hokuto-kanko.jp/guide/oishii_gakkou

富士山や南アルプスにも囲まれた八ヶ岳南麓・津金にある「三代校舎ふれあいの里」は、“元廃校”。明治・大正・昭和という3つの時代の校舎が並び、新たな形で蘇っている。

そのうち、今回注目したいのは「おいしい学校」。こちらは昭和時代の校舎だ。昭和28年に津金中学校として建てられたもので、現在は食をテーマにした複合施設として運営されている。

「おいしい学校の給食」という給食スタイルのレストランでは、かつて授業に使われていた教室と机といすで、子ども時代に戻ったかのような食事の時間を楽しめる。ちなみに食器も、昭和時代に実際に使われていた“アルマイト素材”だ。

他に、和食・和食それぞれのレストラン、パン工房、農産物を扱う販売所などもある。

via:https://www.hokuto-kanko.jp/guide/oishii_gakkou

食材は、津金で採れる季節の野菜や果物、地元産の甲斐サーモンや甲斐牛、富士桜ポーク、信玄鶏など。山梨の自然の恵みを、さまざまな料理で堪能できる。

宿泊棟も、教室の面影が残る温かな空間。ベランダや窓からは、津金の四季折々の景色が楽しめそうだ。

昭和の趣や山梨の自然を肌で感じながら、気軽にのんびりと過ごせる場所だ。

【宿泊・体験】古民家で暮らす、1泊2日

via:https://taraichi.com/

滋賀県高島市にある農家民泊「たらいち邸」。なんと、築150年を誇る古民家なのだとか。

via:https://taraichi.com/about/

歴史あるこの空間を、独り占め。一棟貸し切りで1泊2日を過ごせるのだ。

via:https://taraichi.com/feature/experience/

スタッフも、宿泊準備や手続き、夕食の準備や片付け以外の時間は滞在せず、家族や友人と水いらずの時間を過ごせるという。

しかし、魅力はこうした空間だけではない。プランによってさまざまな設備の利用やアクティビティが楽しめる。

via:https://taraichi.com/room/

かまどで炊くご飯や、囲炉裏で焼く魚や旬野菜は、普段の食事とは違った格別なもの。

via:https://taraichi.com/activity/

またプランの中には、近隣の農家での収穫体験、餅つきや豆腐作りなど、手作りの食を味わうことができる。ここのお日様を浴びて、ここの空気を吸って、地元の人とふれあえる時間になるだろう。

https://taraichi.com/activity/

子ども連れで、さまざまな食の成り立ちを学ぶのにも良さそうだ。

【説明会・ツアー】百聞は一見に如かず。実際の暮らしを見てみよう

「やっぱり、この地域に住みたい」――観光や宿泊でそう感じることができたら、もうワンステップ進んでみてほしい。そう、自治体へ実際にコンタクトをとってみよう。自治体によっては移住を歓迎・斡旋し、短期間のお試し移住や説明会を実施するところも多い。

その1つが、秋田県鹿角市の「お試し移住ツアー」。ここで開かれているのは、あらかじめ定められた日程やプログラムではない。自分に合わせたスケジュールや、知りたいことをベースに、オーダーメイド型のツアーを組むことができるという。

via:https://www.a-iju.jp/c-akita/kazunocity

例えば、「移住して農業を始めたいけれど、うまく行くか不安」ならば、市内の実際の農家で農業体験をさせてもらう。

例えば、「保育園などの子育て環境が気になる」ならば、市内の保育園や保育サポート施設へ。

via:https://kazuno-gurashi.jp/sodateru/kosodate-support

またこのツアーでは、普段買い物できるようなお店もチェックできる。スーパーだけでなく、商店街や直売所など、地元の人たちとふれあえるようなお店にも行けそうだ。

そして、一番に必要な住居の相談もできるようだ。

via:https://www.city.kazuno.akita.jp/shisei_machizukuri/shiikikasseika/2/5226.html

「お試し住宅」を利用できるほか、実際の移住の際には引越し支援や住宅改修支援といった補助金が受けられる。

例として鹿角市を紹介したが、他の地域にもこのような説明会や体験がありそうだ。百聞は一見に如かず。自分の気になっている自治体に赴いて、実際に見てみてはどうだろうか。

「移住」に、心が動いたら。

まずは観光や旅行感覚で、移住をちょこっと体験。そして「やっぱりここで暮らしたい」と思ったら、その地域の情報をどんどん集めてコンタクトをとってみよう。少しずつ、深く入っていこう。

夢見る場所での暮らしを考えはじめたら、納得して大きな一歩を踏み出したい。

参照元:
https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/
http://www.oec-net.ne.jp/
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49894800X10C19A9L83000/
https://www.hokuto-kanko.jp/guide/sandaikosha_hureai
https://www.hokuto-kanko.jp/guide/oishii_gakkou
https://taraichi.com/
https://kazuno-gurashi.jp/kurasu/iju-taiken-tour
https://www.iju-join.jp/feature_cont/file/046/03.html
https://www.city.kazuno.akita.jp/
https://www.a-iju.jp/
https://kazuno-gurashi.jp/

小学校低学年の頃、父とお風呂に入ると必ず父は「いい湯だな、あははん♪」と歌っていた。
「自分で入れた湯やないかい」と小学生らしからぬツッコミをする余裕など当時はなく。幼い私にとってはあまりにも熱すぎる湯にどこが”あははん♪”なのかさっぱり理解が出来なかった。
だが、昨年の一人旅で体験した五右衛門風呂を熱いと思わなくなった自分。普段の設定温度が高いほど心地よいと感じる自分。大人になったのだな、あははん♪とそんなことを思った。

だが、そんな熱い湯好きの私でも最近よく聞く「サウナ」は少し苦手だ。確かに身体を温めることは好きだが、なんだか息苦しくてすぐに出てしまう。おそらく私だけではなく、サウナを息苦しい、あるいは熱すぎると感じたことのある人はいるのではないだろうか。頭だけでも涼しくなれたら…そう何度も思ったことがある。
そして、もちろん好みの温度や耐熱温度は個人差と理解した上だが、サウナに苦手意識を持つ理由に息苦しさを挙げる女性は多い傾向にある。

女性にとってサウナは「熱く」「息苦しい」場所?

サウナを利用したことがある女性だけをターゲットにした調査。それによると、約半数がサウナ好きを確信したい一方、約2割の方は苦手意識を抱いたという。

参考:https://note.com/amaduction/n/n2e082647ed3dを基に作成

苦手意識の理由の多くは”熱すぎる”が6割以上。さらに、息苦しさが理由である割合は半数近くにのぼった。

参考:https://note.com/amaduction/n/n2e082647ed3dを基に作成

いやあ、サウナ熱いよね。と何故かアンケート回答者と肩を組みたくなる気持ちだ。

女性はサウナにさほど高い設定温度を求めない

また、施設ごとに異なるサウナの設定温度。そんなサウナに高温帯と言える、90℃〜100℃を求める割合も女性の割合は男性よりも少ない。下記のように、男女合わせた全体での割合が35%であるのに対し男性の割合は約半数。

参考:au PAY マーケットによる調査:「サウナ利用に関する意識調査」を基に作成

またサウナ室の温度ごとの施設件数を比較した別の調査。視覚的にグレーの棒グラフで示された男性用のサウナ室の方が明らかに高温寄りである。

参考:日本サウナ総研の調査を基に作成

そして女性向けサウナの平均温度は87℃。男性向けの98℃よりは低めだ。だが、それでも90℃〜100℃以上の高温帯のものは一定数存在する。女性が求める温度と設定温度にギャップが存在することもありそうだ。87℃の温風が覆っていると想像するだけで息苦しいのに100℃を超えると思うともう個人的には事件だ。

だが、先ほどのサウナを経験した女性をターゲットにした調査。苦手意識を抱いた2割の人々の苦手理由に着目してきたが、一方でサウナ好きと回答した半数の人々。

参考:https://note.com/amaduction/n/n2e082647ed3dを基に作成

彼女達は皆、サウナ室の設定温度がが単に高温であることを好んでいるのであろうか。それとも高温であること以外にもサウナの魅力があるのだろうか。

女性はサウナに美容効果やリラックス効果を求める

先ほどの女性へのアンケートで、サウナを気に入った方の理由(複数回答可能)

参考:https://note.com/amaduction/n/n2e082647ed3dを基に作成

汗をかく気持ちよさ、とおそらく“熱さ”を求める人が6割と一定数は存在する。だが、7割が美容や健康効果。リラックス効果を求める人が約半数。このように、単なる高温環境である以上に美容やリラックス効果を期待する利用者が多いのではないだろうか。

美容・健康効果やリラックス効果を求めてサウナを好む人々。そして熱さや息苦しさを感じることでサウナを敬遠する苦手意識を持つ人々。
それならば。適度な温度で“美容・健康効果”と”リラックス効果”を息苦しさなく体験することが出来れば。あるいは顔だけが涼しく快適な呼吸ができれば。それは最高の体験ではないだろうか。これぞまさに“あははん♪ “効果を得られるのではないだろうか。

そこで今回紹介したいのが、「日本式」ハマム浴と呼ばれる中東由来のスチームバス(蒸し風呂)だ。

そもそもハマム浴って?

なかなか聞き馴染みのない「ハマム浴」というワード。アラビア語で「熱い湯」や「湯の施される場」という意味を持ち、モロッコやトルコなど中東地域に由来する文化である。

だが、先ほど敢えて「日本式」と付けたように中東における「ハマム浴」と日本での「ハマム浴」は単語は同じでもその形態はまるで異なる。モロッコを始め、中東での「ハマム」は日本でいう大衆的なサウナや岩盤浴のようなもの。対して日本でのハマム浴は個別的なリラクゼーションの性質が強い。今回はそんな両者の違いも含め、日本式ハマム浴の魅力、そして実際に体験した感想について掘り下げていく。

モロッコにおけるハマム浴

https://www.tooistanbul.com/en/istanbul-best-hammams/

トルコにおけるハマム浴は、いわゆる日本でいうサウナや岩盤浴と近い。だが、日本のサウナと異なりケサジと呼ばれる専属スタッフがつく。案内人付き岩盤浴といったところだろう(想像するにちょっと恥ずかしい)
いわゆる岩盤浴のように大理石の上に寝転がり、汗を出す。その後、ケセジによる垢すりとマッサージが行われる。最後に全身くまなく泡で洗ってもらった後にお湯をかけてもらい終了というのが一連の流れだそうだ。

過去に日本だけでなく、世界各国で流行した”テルマエ・ロマエ”と呼ばれる映画。この映画の影響で中東にも”公衆浴場”の認知が拡大したが、宗教上の理由から他人と同じ湯船に浸かる文化が根付かなかった。しかし、一方でサウナの文化のみが根強く残り、結果としてハマム浴と呼ばれる形で文化として残ったそうだ。専属スタッフがついて個別面もあるとはいえ、公衆浴場という性質上、 “大衆”向けであることが特徴だ。日本のサウナと近しいだろう。

日本におけるハマム浴

前述した日本のサウナをもとにしたトルコ式ハマム浴が日本に逆輸入され、じわじわと人気が広まりつつあるのが日本式のハマム浴だ。「葉MAM」と呼ばれるように、竹で出来た葉の形をしたベッドが使用される。

https://img.rurubu.jp/img_srw/andmore/images/0000324680/mGK98RoJWCgyAqcXGAyMSq8XJSgdNRcs1SRV9f5P.jpeg

木の葉型ベッドの下にハーブを焚くハーブスチームバス(蒸し風呂)であり、ベッドの下でハーブと共に温められた蒸気で身体が蒸される。
サウナの身体を温める・リラックスをするという効果に特に焦点を当てたもので”リラクゼーション”として人気が高い。 中東式のハマム浴のように大衆的ではなく個別的であるためその特徴をより感じさせてくれる。

ベッドが葉の形となっていることで、仰向けの姿勢で寝た際に全身にハーブスチームがゆっくりと行き渡る設計になっている。この時、身体全体は毛布で覆われているが顔面は覆われていないのでサウナ特有の熱すぎる、息苦しいといった状態にはならない。仮に熱すぎたとしても、個別であるため温度を調節してくれる点も非常に有難い。

座って身体を温めるリラクゼーションであるよもぎ蒸しに対して、仰向けに寝ながら楽な姿勢で身体を温められることも嬉しい点だ。

サウナでは無念にも白旗を揚げることとなった私。今回の執筆にあたって、実際にハマム浴を体験してみたが、身体だけが温まりリラクゼーション効果を得られるというサウナのいいとこどりをしたようなハマム浴はなんとも心地よい体験であった。

体験して実感した日本式ハマムのメリット

ライター作成

大きく3つある。
①寝たままの姿勢で楽であること
②人目を気にしないこと
③身体だけ温かいこと
まず、よもぎ蒸しのように座り続ける必要はなく大きな葉が私を包み込んでくれる。非常に楽な状態でいられ、リラックス出来たので非常に良かった。次に中東式のハマム浴のサウナのように大衆的でなく個別的であるため、人目を気にする必要がない。また、着衣で施術を受けられるのも気持ち的に楽だった。そして3つ目はやはり、顔だけ出ているという魅力。身体はポカポカ暖かく、顔周りは息苦しさや熱すぎるといった苦行とは無縁である。サウナの息苦しさが苦手な方にぜひ味わっていただきたい感覚だ。

そしてサウナ好きの方でも今以上にリラックス効果を実感できるだろうハーブの心地いい香り。ずっと体験していたいと思わせてくれるほどであるから驚きだ。少し暖かくなってきたこの季節。そんな季節にこそ身体を温めて、心も癒される新たなリラクゼーション「ハマム浴」を体験してみてはいかがだろうか?

(参考文献)
よもぎ蒸しとハマム浴の違いとは?アラサー女性ならば通っておきたい温活サロン
【3月7日「サウナの日」サウナルーティンに関する最新意識調査】
【理由と対策】サウナで息苦しいのはなぜ?「長く入れない」を解決!
サウナの温度って何度が良いの?平均や温度別の入り方を解説
女子大学生にもサウナブームは来るのか? サウナ女子さんと一緒に調査してみた
サウナの男女差 その1 ―サウナ室・水風呂の数と表示温度の違い― 斉藤 みか
寝てるだけで綺麗になれる!「ハマム浴」って知ってる?
トルコの伝統的な公衆浴場「ハマム」を体験してみよう!
10 Best Turkish Bath & Hamam in Istanbul | First-Timers Guide
Turkish hamam etiquette: What to know before you go
THE MOST BEAUTIFUL HAMMAMS OF ISTANBUL
What is Hammam?

言葉に対するイメージは、過去に見聞きした内容や主観にもとづいている。

例えば、「太陽」という誰もが知っている言葉でも、それをオレンジだという人がいれば、赤だという人もいる。イラストにおこすときには、太陽は丸だという人もいれば、丸の周囲に放射線状の線を引くべきという人もいるだろう。

via:https://img.freepik.com/premium-vector/collection-of-line-design-with-sun-editable-vector-illustration-for-website-sticker-tattoo-icon_72039-959.jpg?w=1060

同じことは「結婚」という言葉にもいえる。結婚というと、指輪を交換し、誓いのキスをした後に同じ家に住む。いつか子どもができて、孫たちにも恵まれる…こんな感じだ。

近頃は、結婚しても子どもを持たないことを示す新たな言葉「DINKS(Double Income No Kids:共働きの子なし夫婦)」が出来たように、従来の結婚観からさまざまなピースが取り外されている。

結婚がよりシンプルになろうとしている今、「結婚後の同居」すら必要ないのではないかという人たちがいる。それでいて幸せだというのだから驚きだ。

同じ屋根の下で暮らすためにキャリアを犠牲にする必要はない

ニューヨークタイムズ誌で取り上げられたとあるカップルは、4年間の交際と7か月の結婚を通じて、一度も同居したことがないのだという。

このカップルは互いが大好きなオペラの仕事についており、それぞれが拠点とする都市間は約400キロも離れている。

いわゆる遠距離恋愛のような2人だが、今後とも同居のために仕事を辞めることはないという。一緒に暮らすために、どちらか一方がキャリアを断念するのはフェアではないと感じているためだ。

via:https://www.nytimes.com/2020/05/16/fashion/weddings/coronavirus-some-couples-reconsider-living-apart.html?searchResultPosition=1

実は、結婚と同居はイコールではない-この事実を知り、ハッとした読者もいるかもしれない。それもそのはず、少なくとも日本では「結婚」という言葉には同じソファで肩を並べたり、同じ食卓でご飯を食べる結婚=同居を示す像が強く宣伝されているからだ。

「パートナーの転勤でまた仕事探しをしなくちゃいけない」「パートナーと生活リズムが合わずしんどい」こんな結婚あるあるのお悩みには、「キャリアがあり、年収の高い方のパートナーに照準を合わせた暮らし」が暗黙の了解として透けて見える。

もし結婚後に同居することがマストでなければ、こんな悩みを持たず、うまくいったカップルがいたかもしれない。

そう思うと、結婚後に別々に暮らすという選択肢がグッと身近になるのではないだろうか。

暮らしのリズムが合わない2人の選択肢は「別居婚」だった

結婚に関して保守的といわれる日本でも、別居婚を楽しむカップルがいる。カップルのどちらも神経発達症(いわゆる発達障害)を持ち、お互いの特性上、結婚しても同居しないことを決めた2人だ。

女性はASD(Autism Spectrum Disorder:自閉スペクトラム症)の特性を持ち、なかでも細かいことに気づきやすく、こだわりが強い。男性はADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder:注意欠如・多動症)の特性を持ち、行動力があるが不注意で物を無くしたり忘れたりすることがあった。

こだわりが強く、小さなことに気づけるASDと、アイデアマンのADHD。お互いにない部分を補い合う最高のパートナーにも見えるが、同居してみると「つらさ」が勝った。悪気なく散らかしてしまうADHDと、気づきと改善をやめられないASDとして、お互いがお互いにウンザリするような状況に陥ってしまったのだ。

お互いを傷つけないために、別々の家に住もう-そんな提案をしてから1年後、2人の間にある愛は変わらず、距離だけが変わった夫婦として仲良く過ごしている。

via:https://www.today.com/health/essay/living-apart-together-sharon-hyman-relationship-rcna8781

このように、その人が生まれ持った特性上どうしても一緒に暮らせないということもある。しかし、「結婚=同居」ではないことを知っていたからこそ、例に挙げた2人は一緒にいることができている。

日本では「結婚して同居する」がマジョリティだが、マイノリティである「結婚して同居していない」が幸せでない証拠はどこにもない。

みんながやっているから、そうするのが当たり前。そんな思考はいったん置いておいて、今の自分たちに必要な関係性を探ることが大切だとわかる。

言葉を制限するよりも、拡張していくことで見える「暮らしやすい関係」

結婚という言葉に縛られず、自分たちで意味を付けたし、解釈していく。このような考え方を取り入れることで、従来の結婚ではあり得なかった2人が結ばれることもあるだろう。もし結婚するにあたり、2人の間で大きな問題が置きそうならば、それは結婚をためらう理由になるかどうか、一度考えてみることが大事だ。

via:https://www.iol.co.za/lifestyle/love-sex/why-more-couples-are-choosing-to-live-apart-40144953

結婚する上での課題-お互いがお互いのキャリアを貫きたいと思うこと、生まれ持った特性上どうしても変えられないこと。これらはどちらか一方が折れる以外にも、別居という選択肢をとることで問題を解決できる可能性がある。

2人にとっての結婚とは何なのか-言葉に縛られず、自分たちなりの解釈を生みだすことで、より暮らしやすい関係を築けるかもしれない。

 

参考サイト:

The New York Times”Married but Living Far Apart”.

https://www.nytimes.com/2020/05/16/fashion/weddings/coronavirus-some-couples-reconsider-living-apart.html?searchResultPosition=1

withnews”「絶対に一緒にいてはいけない」ADHD夫、決意の別居で見つけた成長”

https://withnews.jp/article/f0200910001qq000000000000000W0f110801qq000021755A

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