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ここは無数の島々から成り立つインドネシアのバリ島。
「バリ」と言えば、サーファーにとっては聖地のような場所である。
もちろん、そうでない方も、インドネシア随一の超有名観光スポットで世界中にその名が知れ渡り、非常に独特な文化と建築も魅力的だ。
もちろん、ナシゴレンやミーゴレンなどに代表されるように美食も盛りだくさん。
誰に聞いても憧れの地として語られる場所だ。
赤道に程近く、「常夏の楽園」という冠詞がふさわしいこの島はしかし、あまりにも多くの観光客が訪れ、それに対応するために乱開発が進み、コンクリートでしっかりと固められた頑丈な高層ビルが立ち並ぶようになり、ひと昔前の素朴さは失われてしまった。
そのようなバリの現状を受け、そのアンチテーゼとして今回紹介するツリーハウスが建てられた。

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建築家の名前は「alexis dornier(アレクシス・ドルニエ)」。
そのツリーハウス群をLIFT treetop boutique hotel(LIFTツリートップ・ブティック・ホテル)という名前のリゾートホテルとした。
持続可能性、サステイナビリティを目指し、より軽量な設計にこだわって建築した。
結果として、完成したのはコスパが高く、周りの環境になるべく害を及ぼさないものとなった。

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このツリーハウスはバリの豊かな南国の自然と一体化するように、まるで前からそこにあったかのように、何の違和感もなくそこにある。
周りに高い木々があるおかげで、木陰が自然にいくつもでき、赤道に近いバリの強い日差しにさらされることから守ってくれる。
そこから自然とこの場所全体の温度も下げる効果がある。
電気など使わなくても、原始的な方法で私たちはその場所を冷却できるのだと改めて気付かされる。
ツリーハウスの一つにスポットライトを当ててみよう。

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第一印象としてバリらしい、南国のトロピカルな雰囲気が漂うが、ただそれだけではない。
その雰囲気を損なわずに、産業的、構造的でモダンなデザインを採用することに成功している。
結果として、開放的な南国建築と産業的なモダン建築を融合させた唯一無二のツリーハウスとなった。
全ての棟の屋根はわらぶき屋根となっており、バリの南国風かつ牧歌的な雰囲気を醸し出す。
その下でわらぶき屋根を支えているのが鉄のフレームでできた、モダンで産業的なデザインだ。
ツリーハウスへのアクセスは螺旋階段からで、一棟一棟が宿泊者専用の棟となっている。

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鉄のフレームで使われた下層階部分は寝室、トイレ、シャワーなど、生活空間となっている。
鉄のフレームと言いつつも、その間を埋める内装に使われているのはバリを代表する竹材や彫刻の掘られた木材をふんだんに使用し、ここがバリであることを忘れさせない。
最上階のわらぶき屋根の下の部分はオープンスペースのリビングとなっている。
開放的な雰囲気で、バリの自然に囲まれながら宿泊者はここでリラックスしながら、そのゆっくり流れる時間を楽しむことができる。

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このリゾートにはプールやバー、ちいさなサウナにレクリエーションエリアそして、ツリーハウスと同じ構造を使ったヨガデッキまで何でも揃っている。
バリ伝統の竹材をベースに彫刻入の木材をインテリアに使用し、オープンスペースを活用した建築はバリ独自の魅力があり、安価であり、それ自体素晴らしいものである。
しかし、蚊などの虫の多さや地震の多発地帯であることなど、考えるとそれらは必ずしもメリットだらけではない。

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このように、クローズドスペースやフレームの強度などを使って、その弱点を補い、また、逆に補われながら、伝統と現代が美しく融合したツリーハウスがこのLIFT treetop boutique hotelと言えるだろう。
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最近、自然の風を感じながら、眠った記憶はありますか?
日中はとてもとても元気に鳴いていたセミの音や車の音も静かになる夜。最初は少し暑くて寝苦しくても、徐々に気温がおちてくるとかすかに涼しくなってきた夜風が開け放した窓から入ってきます。その風を感じながら、自然に眠りにつく。朝は、鳥の声と陽の光、そして輝くような一日を予感させる爽やかで穏やかな朝風で目覚める。贅沢ですね。そんな素敵な体験をしてみたくありませんか。
もちろん、日本国内にもそんな素敵な体験ができる場所はたくさんあるとは思いますが、今回お勧めしたいのがインドネシア・バリにある高床式の別荘です。バリ在住の建築家Alex Dornierが展開している自然にプレハブ工法で建てられている自然に優しいStilt Studios (高床式のステューディオ)と名付けられたこのプロジェクトは、変わった形の場所や難しい地形の建設予定地でも、建築ができることを体験できる空間を産み出す試みです。
17,500以上の島々から成り立っている国、インドネシア。この国ではすべてが建築向きの場所とは、言い難い状態です。Dornier はこの建物であれば、遠く人里離れた場所でも素早く建てられると提案しています。この建設方法こそ、地域の皆さんが待ち望んでいた経済発展の後押しになるでしょう。

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Dornierは、吊るした伸張性のある構造に様々な変化を加えています。そして、別荘の正面デザインはそれぞれに趣きが異なり、デザインと素材に関してはカスタマイズもできる様にもしました。
「僕達はマルチレベルソリューションや大きさが違う別荘を建築することに取り組んでいる。このプロジェクトのコンセプトは増築したり、別棟を建てたり、拡張可能であることだから。また、別荘に共通していることは小さいということとコンパクトであるということ。地面から離れるという体験を提供するために最小限のスペースに減らす必要があったから。」と彼は説明をしてくれました。確かにベットルーム、キッチン、そしてバスルームもコンパクトでミニマルです。

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風を感じながら、眠れるシンプルなベッドルーム。でもよく見ると、脱いだ衣類をいったん入れておけるスペースや服をかけるスペースもあります。洗った服をかけておいて、乾いたら着る。すこし汗ばんだときは、すぐには洗わず、服をここにかけて、風で乾かしてまた着る。そんなエコで効率がよい暮らしもできますね。

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食事やお茶、仕事をするテーブル。ここでも風を感じながら、暮らすことができるようにしてあります。また、その横にはクローゼットも用意されています。最小限のものしか入らないクローゼット。ここに入れる荷物は厳選されたお気に入りのものだけにしましょう。スペースがないことが、ここで過ごす時間をシンプルかつ豊かにしてくれるはずです。

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天然資源の使用量を最小限にする仕組みに加えて、他にもサスティナブルな工夫があります。例えば、建物の中で直射日光による太陽熱の影響を減らすために屋根は大きく突き出しています。雨水は貯めて使えるようにしてあります。風は、風上から入り、風下へと、建物の中に風が吹き抜けるシステム。電気はソーラパネルを活用しています。そして、この高い場所にある別荘では、建物を包み込むような緑の草木の下で、植物や食べ物が育つことができるようにと気配りがされています。素敵ですね。この別荘に1週間滞在してみると、いままでの人生観が変わるかもしれません。
Dornierはいつか彼の事務所をこのStilt Studioに移動させたいと考えています。その時はこの森から木を一本も減らすことなく建築する予定です。
彼はこれらの別荘のほかに、外観に竹と草をふんだんに使ったビーガンレストラン、再利用した木で建てた家、そしてトラックのタイヤをリサイクルした天蓋があるレストランなどのプロジェクトをバリで取り組んでいます。こちらも併せてぜひ訪れてみたいですね。
project info:
name: stilt studios location: bali, indonesia function: prefabricated villas design: alexis dornier instagram: @stiltstudios, @stiltstudios.designs, @alexisdornier
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◎「願いの塔 横浜マリンタワー」プロジェクトについて
横浜マリンタワーは、横浜市民の願いにより、横浜開港100周年記念事業に合わせ、港に期待と希望をもたらす、横浜港のシンボルとして1961年に建設されました。修繕工事を実施するため、2019年3月31日(日)より、2022年3月末(予定)までは休館となります。修繕工事中も横浜マリンタワーを活用し、横浜の港を元気にするための取り組みを段階的に行います。
◎第二弾コンセプト「あなたの願いは光になる」
第二弾では、週ごとに変わるお題に応じた「願い」を集める参加型のライトアップを実施します。特設Webサイト上に、新型コロナウイルスが落ち着いた後、横浜港周辺エリアで「やりたいこと」、「行きたいお店」など、横浜に根ざした事業者、団体など様々な方から出題されるお題とライトアップの色が週ごとに設定されます。参加者は、Webサイトから、お題に対する「願い」を入力することができます。「願い」の数が増えるほど、光り方が変化し、願いの数が一定数以上になった場合は、特別演出が行われます。

集まった「願い」の数や内容は、特設Webサイト上で公開され、Webカメラを通じてライトアップの様子を鑑賞できるため、自宅にいながら、リアルタイムでの参加が可能です。Webサイトで公開されるのは一部ですが、参加者の横浜への期待が込められた「願い」は、関連する団体や事業者へ今後の励みのエールとなることを祈って届ける予定です。

▼第一弾の内容はこちらから
https://yadokari.net/wp/special-feature/68836/
◎実施期間
実施期間:2020年8月3日(月)〜2022年3月末(予定)
ライトアップ時間:18時~24時
※新型コロナウイルスの状況により、実施内容は変更する可能性があります。
企画詳細、参加は特設Webサイトにて。
特設WebサイトURL:https://negainotou.marinetower.city.yokohama.lg.jp
お題とライトアップの色の予定
日程:8月3日(月)〜9日(日)
お題:これから行きたい横浜のお気に入りの場所は?
ライトアップの色:青
日程:8月10日(月)〜16日(日)
お題:これから行きたい横浜のおすすめ夜景スポットは?
ライトアップの色:青
※8月17日(月)以降のお題については、特設Webサイトにて順次発表します。
「願いの塔 横浜マリンタワー」プロジェクトでは、今後も、横浜をさらに元気にするための企画を実施してまいります。
つぎはぎだらけの4本足のサウナが、古いドックが並ぶ港のなかに屹然と立っている。これは、スウェーデン・ヨーテボリの荒廃した港湾エリアを、新しく蘇らせるプロジェクトの一環。トタンやリサイクルボトルを利用した、産業遺物のような建物の建設には、地元の住民たちが参加したという。そこには、みんなで「一緒につくる」ことで、サウナを地域コミュニティのハブにしようという狙いが込められているという。
日本では若い世代も巻き込んだ、空前のサウナブームが到来し、リフレッシュや趣味の一環として利用している人も多いだろう。タナカカツキ原作のテレビドラマ「サ道」や、商業施設でのサウナをテーマとした企画展の実施などが話題を呼び、ブームを後押しした。
この無料の公衆サウナは、スウェーデンの港湾都市、ヨーテボリの再開発記念公園にある。スウェーデンで2番目に大きい都市のヨーテボリの造船業は、1980年のオイルショックで大きな打撃を受け、港湾施設は荒廃したという。
ヨーテボリでは、2021年の400周年記念に向けて、フリーハムネンのウォーターフロントを再開発する「港湾都市開発計画」を策定。2014年から、市民が無料で利用できる公共施設のプロトタイプ建築に着手した。再開発では、多くのオフィス、ホテル、幼稚園や学校、1,000のアパートが建設されたようだ。
東北地方の「ぼろ布」のようなつぎはぎサウナタワーは、ドイツの建築家集団であるRaumlabor Berlinがデザイン。コミュニティベースのサステナブルなプロジェクトとして高い評価を得て、スウェーデンSAVG Architecture Award 2015を受賞している。
サウナ施設のほとんどは、リサイクルされた素材で構成されている。サウナタワーの錆びたエクステリアは、トタン波板をリサイクル使用。見る角度によってその表情を変える、複雑な多面体構造になっている。
サウナの更衣室の壁は、12,000個のリサイクルガラスボトルから構成されている。
着替えたビジターは、無数の丸いガラスから日差しがきらめく円形のシャワールームで体を清め、木造の遊歩道を歩いて細い桟橋を通ってサウナータワーの階段を登っていく。エントランス前から、ビジター同士の“裸の交流”がはじまる。
サウナルームの有機的なデザインのインテリアには、薄いカラマツの羽目板が張られており、温度と湿度の変化に反応してその形状が微妙に変化するという。
Raumlabor Berlinは、ベルリンで培ったコミュニティ開発の手法をスウェーデンに持ち込んだ。地元のフリーハムネンで土地特有の素材を発見し、それらを使用することに取り組んだという。
出会いのためのコミュニティスペースとしてサウナを機能させるため、プロジェクトではワークショップが開かれ、地域住民が建設作業に参加した。
「都市の自分たちの場所を『一緒につくる』ことは、異なる社会階級や民族的背景を持つ人々を結びつけ、有意義な体験をする機会となる。普段は決してしない体験とアイデアを共有することで、コミュニティの構成員が、自発的に都市生活を拡張することにつながります」とRaumlabor Berlinは述べた。
「サウナは、人々に会い、一緒に時間を過ごし、人生について話し合うための交流スペースだと考えています。サウナは、競争や消費を離れ、ただ水の恵みを楽しんで、空間と思考を共有できるピュアな体験をもたらしてくれます。」
日本では、減少を続ける町の銭湯が、かつては地域コミュニティの交流に貢献していた。サウナブームの日本にも、コミュニティのための公衆サウナが増えていけばいい。本場北欧のサウナのように、自然の水辺のロケーションを利用した施設なら、心からの交流も高まりそうだ。
Via:
raumlabor.net
detail.de
timecenter.se
dezeen.com

工事中の塔体等を活用し、平穏な日常生活を取り戻し、横浜の経済が再び元気になるようエールを送るライトアップを行います。
第一弾として、7月7日からブルーライトアップを行います。
8月以降は、光の色の種類を増やし、動きのある演出も加えたライトアップを実施していく予定です。
1.事業目的
横浜マリンタワーは、開港100周年にあわせ、市民の発意でみなと横浜のシンボルとして1961年に建設され、長く市民に親しまれてきましたが、塔体塗装等の修繕工事を令和4年3月末(予定)まで実施するため、横浜マリンタワーはその間休館しています。
工事中も都心臨海部エリアの景観に配慮し、さらに若い世代にも横浜港のシンボルとしての横浜マリンタワーの存在を再度認知いただくため、塔体等を活用した空間演出を実施します。
なお、自宅からでもライトアップを鑑賞できるよう、7月7日よりウェブカメラで動画を配信します。
2.実施期間
令和2年7月7日(火)以降
18:00~24:00 ※7月7日は19:30開始
3.演出内容
平穏な日常生活を取り戻し、横浜の経済が再び元気になるよう、医療従事者、飲食や観光等の事業者等の皆様に対するエールを送るライトアップを行います。
<第一弾>
7月7日(七夕)からは、第一弾として、新型コロナウィルスの対応に奔走されている医療従事者の皆様に感謝の気持ちとエールを送る、ブルーライトアップを行います。
<第二弾>
外出自粛緩和の移行期間の終了が見込まれている8月以降は、光の色の種類を増やし、動きのある演出も加えたライトアップを実施していく予定です。
4.特設ウェブサイト
6月30日(火)より、本プロジェクトの特設ウェブサイトを開設しました。
https://negainotou.marinetower.city.yokohama.lg.jp
5.施設情報
横浜マリンタワーは、昭和36(1961)年に横浜開港100周年記念事業として、横浜展望塔株式会社(当時)により、市民の皆様のご協力のもと建設されました。以来、横浜港のシンボルとして長く市民に親しまれていましたが、入場者数が年々減少し、存続が困難な状況に至りました。そこで、市民の皆様から保存・活用について要望を受けたことから、横浜開港150周年に向けて、横浜市が取得し、耐震補強等の再整備を行い、平成21年5月にリニューアルオープンしました。
現在は塔体塗装等の修繕工事を行っており、令和4年4月以降に再開業する予定です。
【本件に関するお問合せ先】
横浜市文化観光局観光振興課 菅野
電話:0456713652
メールアドレス:bk-shisetsu@city.yokohama.jp
FAX:0456636540

ここは世界を代表する経済都市で、近年動乱の最中にある香港。
その北東部の海岸沿いにある屯門区は経済都市の香港らしく、高層ビルが立ち並びつつも、比較的自然の緑が多く見られるこの地域にキュービックなコンテナを連結させたこじんまりとしながらもお洒落なオフィスが誕生した。
work of substance(ワーク・オブ・サブスタンス)というデザイン会社がgoodman westlink(グッドマン・ウエストリンク)というロジスティクス系の会社のためにこのコンテナハウスを設計した。

作りとしては単純で、3つのコンテナを使い連結させて1階部分とし、3つのコンテナの中心のコンテナにもう一段コンテナを乗せてそれを2階部分とした。
全部で使用したコンテナは4つではあるが、アウトドアスペースを含め、スペースとしては6つの異なる空間を作り出している。
このような空間設計ができるのはコンテナハウスならではだ。
コンテナの正面と背面をガラス張りにし、建物自体の見通しを良くしている。

近代的でお洒落なオフィスに、最近採用されやすいデザインだが、単に見た目だけではなく、室内に自然光をふんだんに取り入れることができるため、日中電気を使わずに済むだけでなく、暖かな雰囲気に包まれながら、ここでの作業を進めていくことができる。
「コンテナハウス」と聞くとメタリックで無機質な印象を持つが、中を見れば、内装の壁に木材をメインに使用している。

ガラス材とのコンビネーションでスタイリッシュながらも暖かく居心地のよい空間作りに成功している。
1階部分の2ブロックは大広間として、集まって会議などができるようにに設計してある。
会議室さながら重厚な雰囲気がありながらも、周りの緑が見えるため、堅苦しすぎない空間となった。

2ブロックを使った会議室はもう一つの1ブロックのコンテナと仕切られており、スライド式の扉を開けると階段がある。
その階段のスペースに簡単な給湯スペースもあるため、簡単にお茶を作って参加者や来訪者にお茶出しが可能だ。
このようにスペースを無駄にしない設計を取ることが全体としてこのコンテナハウスのコンパクトさにつながっている。
階段を上がれば2階のスペースに。

上がった先のスペースはコンテナ部分ではなく天井まで全面ガラス張りの非常に開放的な空間となっている。
また、2階の奥の部分はベランダ、テラススペースとなっており、会議や仕事の休憩時間として、緑に囲まれ、外の空気を吸いたい時に最適だ。
全体をとおして、まるで高級ホテルかのように、「コンテナハウス」ということを感じさせないことが特徴と言えるだろう。

コンテナ自体が安価ではあるものの、このようなデザインを取れば、全く安っぽさは出ずに、むしろ高級感を出すことができるのだ。
コンテナハウス自体はスモールハウスとしてよく使われ、元々運搬用の素材なのでモビリティとう観点でも良好で、モバイルハウスとしてもよく使われる。
今回は4つのコンテナを使用しているが、それを応用して組み合わせ、今回のように小さなコンテナを連結させれば、拡張性が高まり、必要なスペースを好きなだけ増やしたり減らしたりすることができる。
また、今回のようにたまにコンテナを抜いたりしてオープンスペースを作れば、その可能性はさらに広がる。
加えて、解体する時も、コンテナを切り離して撤去するのみなので、撤去コストもそれほどかからず、周りの自然にも悪影響を与えない。

香港に今起こっている混乱を抜きにしても、都会での生活や仕事というのは気をそらされることが多く、ストレスを抱えながら生きていかなくてはならないことが多くなるだろう。
このように、僻地に簡単にすばやく、オフィスを立てることができたなら、様々な選択肢ができ、外の情勢に惑わされずに自分の仕事に集中できる環境を作れるのかもしれない。
via:
https://www.archdaily.com/
https://www.designboom.com/
▼ライブ動画を全視聴できます。お楽しみ下さい。
https://www.facebook.com/141357895967519/videos/1087179428331996/
Facebook動画で視聴できない方はYoutube動画(こちらをクリック)も視聴可能です。
2011年3月11日、濁流に飲み込まれる家の映像に衝撃を受け、その日からYADOKARIとしての活動を始めた創業者のさわだいっせいとウエスギセイタ。「一生をかけて高額な家を買うことが、本当に幸せな住まいの在り方なのだろうか?」そんな疑問から「未来の豊かな住まい方」を探究し始め、タイニーハウス、移動する暮らしなどの新たなライフスタイルを世界中から紹介するメディアとして、YADOKARIは少しずつ歩みを進めてきました。
2013年に法人化し、タイニーハウスによる駐車場を活用したコミュニティプレイス&飲食施設「BETTARA STAND 日本橋」や、同じくタイニーハウスを用いた京急電鉄高架下のホテル&飲食施設「Tinys Yokohama Hinodecho」などの場づくり・地域活性の事業展開を経て、創業7年目を迎えた今、YADOKARIはさまざまな自治体や企業との大規模なプロジェクトにも参画させていただくようになりました。
そんな今を、さわだとウエスギは「YADOKARIの第2創業期」と捉え、会社のVision・Mission・Valueを一新。原点に立ち戻り「リビングコスト・ゼロの住まい」を、仲間たちと本気で実現しようとしています。YADOKARIの新たな世界観とこれから向かいたい未来について、2人が想いを語りました。
YADOKARI第2創業期にあたり、進化するVision

YADOKARI株式会社 共同代表取締役 ウエスギセイタ(左)・さわだいっせい(右)
ウエスギ: 7年目にして、実は1月の終わりくらいから会社の新しいVision・Mission・Valueをずっと考えていたんですよね。もともと最初のビジョンメッセージや理念も3ヶ月くらいかけて2人で考えましたよね。
さわだ: そうですね、小林武史さんがプロデュースしている代々木VILLAGEに行って。
ウエスギ: さわだとそこに入り浸って、ああでもないこうでもないと。モバイルハウスやタイニーハウスの構想はもともとあったので、代々木VILLAGEの動くコンテナみたいなものを見ながら実際にインスピレーションを感じて言語化していって、何度も何度も書き直したのが、YADOKARI.netの「ABOUT」の言葉。この時、テーマにしていたタイニーハウスや多拠点居住は今だからこそメジャーですけど、これを書いた2012年は、こんなこと「?」が付いている時代でしたよね。
さわだ: 普通になりましたね。
ウエスギ: この「ABOUT」にもある「場所、時間、お金に縛られない」というのも重要ですよね。でも今回のコロナで、場所や時間には縛られなくなってきたかもしれない。東京にいる意味も薄くなってきましたね。
さわだ: 確かに。こうやってリモートで仕事ができるようになっちゃうと、場所と時間の自由はもう実現できている人もいるかもしれない。あとはお金だね。
ウエスギ: そこだけだよね。この時は、「これからの豊かさ」の実現に向けてYADOKARIというメディアを深めていくにあたって、「自分の中で豊かな暮らしってどんなのだろう?」というのをお互いコラージュで持って来て、そこから言語化したんだよね。3.11とも重なって、僕らも自分たちなりのマニフェストを提言として書こうと思った。これを読んで連絡してきてくれた人、たくさんいましたよね。
さわだ: 僕らのスタンスが出ていたし、ここに共感してくださった人たちが多かったんだろうね。
ウエスギ: この当時はまだ会社化は考えていなくて、ただ自分たちのやりたいことを一生懸命言語化しようとしてた。今まさに、こういうことをやっておいて良かったなと思います。これが今から約8年前に書いたもので、スタッフも増えてきて、2020年1月くらいから第2創業期だという意識もあったので、Vision・Mission・Valueを改変しようということになった。さわだと一緒にまた3ヶ月くらい産みの苦しみで考えて、かなりアップデートしたんです。
Vision(YADOKARIの使命)/「世界を変える、暮らしを創る」Change the world, Create a life

ウエスギ: このフレーズが出て来た時、2日間くらいテンション上がっちゃいました。
さわだ: 久しぶりにブルブルッと、自分たちの中に来たんですよね。
ウエスギ: 今までは「住」という視点で、タイニーハウスとか多拠点居住とか、ツールも明確にしていましたよね。それを、自分たちがやって来た活動を棚卸した時に、もう少し次の世界へ行けるように、年末にうちの会社のメンバーみんなで真剣に話したんですよね。それを受けて僕らももう一度Visionをアップデートしようと。「暮らし」という領域から「世界を変える」。かなり引き上がりましたよね。
さわだ: 相当大きいよね。ずっとモバイルハウス、タイニーハウス、コンテナハウスに固執していたというか、今でももちろんその事業もやっていて、暮らしを変える一つの選択肢ではある。でも、それだけが人々を幸せにするわけでもないし、もっと選択肢がないとダメだよねということで、壮大なことにチャレンジしてみたいんですよね。
ウエスギ: この「世界を変える」というのは、さわだはもともと「世界」が頭にありますよね。
さわだ: YADOKARIの可能性はこんなもんじゃないだろうって所に、いつもチャレンジしたいんだよね。もちろん毎日小さなことから丁寧に活動を進めて行かなきゃいけないんだけど、視野は大きく広げたい。
ウエスギ: これは僕らの著書をきっかけに、中国に講演に呼んでいただいたのが大きかったなと。中国と韓国でYADOKARIの本が翻訳されて出ているんですけど、「中国の新しい暮らし」というテーマで登壇させていただいた時に、「小さな暮らしってどう?」って聞いたら、中国の若者が「いや、3億円のマンションに住みたいし」みたいなこと言ったりして、めちゃくちゃ面白いなって。日本の中だけじゃない、同世代だけど価値観は多様なんだなと。そうなって来ると、僕たちのフィールドというか、価値観をアップデートすることにおいて、まだまだたくさんの人たちと切磋琢磨できそうだなと思いましたよね。だから「住」から「暮らし」、そして「暮らし」から「世界」へ。みなさんどう思いますかね? 共感してくださる方は、ぜひ一緒にこの船に乗ってほしいなと思います。
さわだ: うん。自分たちだけだと難しいことだし、ハードルは高いと思うから。
Mission(YADOKARIのありたい姿)/「暮らしの美意識を体現し、新たなカルチャーを創造する」Multi creative society of life. Creating a new culture.

ウエスギ: Visionの「世界を変える、暮らしをつくる」を達成するための、僕らのあるべき姿ですよね。さわだは、これはどうですか?
さわだ: 暮らしの美意識というものの定義は人それぞれだけど、僕らの中では、日常の暮らしの中にも自分なりの丁寧さや美意識をしっかり持って、それを自分たちで実際に体験・体現していくことが重要だよね、と言っているんです。表層だけじゃなく自分たちが行動で表していく。それが積み重なって、いろんな人に影響を与えたりして新たなカルチャーになっていく、その流れが大事なんじゃないかと。
ウエスギ: 小さな暮らしやミニマリストも、一つの暮らしの美意識ですよね。あれを「合理的な暮らし」みたいに表現した時に、「HOUSE VISION」のプランナーの土谷貞雄さんに「いや、君たちのやっていることは合理的ではなくて、美意識だよ」って教えてもらったのがきっかけだった。日常ではない美意識のことを「演劇的な暮らし」などと僕らは表現するんですが、例えば彼女の誕生日に横浜のみなとみらいのホテルを予約してシャンパンを飲んで観覧車に乗る、みたいな、それも素敵な暮らしだけど、それは演劇的な暮らしであって日常ではない。僕らが描いているのは、日常の中でこの1杯のお茶をどうクリエイティブにつくろうかという所作や暮らし方ですよね。そういう所の美意識が整ってくると豊かになるなぁという実感があったので、そんな人が増えていくとまた新たなカルチャーができそうだなって。

ウエスギ: アフターコロナでは地方移住が加速するんじゃないか、みたいな議論も社内ではしているんですが、仕事があるから首都圏を離れられない場合もありますよね。過去に無印良品さんとそういうアンケートを2万人くらいに取った時に「働き方を変えないと、暮らし方を変えられない」というご意見をたくさんいただいて。でも、このコロナで働き方も暮らし方も大きく変わりそうなので、改めてどんな暮らしをしたいか考えたいですよね。こうなってくると家の居心地の良さはけっこう大事。さわだはどうですか? 海の近くに住んでるけど。
さわだ: うちはもう震災の時に一念発起で逗子に引っ越して、築50年の古い平屋に住みながら、家や庭を少しずつきれいにしながら、時には朝、海へ散歩に行きながら、みたいな暮らし方にシフトしたんです。今このコロナの状況下でも同じ暮らしを続けられていて、何の不満もない。
ウエスギ: 夜遅くまで働いて、寝に帰るだけの家に暮らしている人はしんどそうですよね。
さわだ: 今まで家の中に「居場所」をつくってきた人たちは、この状況になっても幸せに家での時間を過ごせるんだけど、そこに居場所がない人はけっこうしんどいんだよねぇ。ずっとバリバリ仕事し続けてきた人とか、顧みずにやってきた人とか。だから良いきっかけになるかもしれないですよね。住みたい所に住みつつ仕事ができる環境が整えられるようになったから、この機会にもっとストイックになればいいんだよね、本当に自分が気持ちいい場所へ。
Value(YADOKARIの行動指針・価値基準)

ウエスギ: まあ、ずっと言ってきたことですよね。でもなんかちょっと中2病みたいな所が良いですよね。
さわだ: 中2病なんだよねぇ、基本。うちの社員には一人一人、ビジョンミーティングをしたんですよ。メッセージに向き合ってもらって「これを聞いてどう思う? こういう生き方できてる?」とかね。
ウエスギ: これはもともとのメッセージビジョンから抽出した、さわだ・ウエスギが事業をやる上で、いつも案件一つにおいても立ち返る7つのバリューですよね。
さわだ: 人生のスタンスみたいな所でもあるよね。そこと仕事を交わらせたい。仕事だって人生だし、そこをミックスするとぶれない。本気でそれをやり続ければ良い人生を送ることができるよね、という所を書き出した感じかな。
1. 今を生きる/過去を悔やみ、未来に怯えることは不毛。今という一瞬に集中して生きることでまだ見ぬ可能性を引き出し、人生を成長させる。

ウエスギ: 大抵の人は、悩んでいることが今のことじゃないんですよ。過去の自分を悔やんでいたり、そんな自分だからできないんだと思っていたり、行き先が見えない、お金どうしようみたいなことだったり。これからのことと過去のことで悩んでいて、今日何を一生懸命頑張ってやっているのかを忘れちゃったりする。
さわだ: これからずっと死ぬまで頑張って、まだ見ぬ可能性を見たいなっていう所まで頑張るわけじゃないですか。その中でも足元の幸せ、今幸せかどうかはとても重要だと思っていて、僕は誰一人として、今自分が幸せじゃないと思って付いて来ていたら絶対ダメだと思っていて。YADOKARIで働いている人たちがみんな、今幸せであってほしいなということなんです。
ウエスギ: それで今、素敵な関係性や仲間たちが少しずつ増え始めてるということは、自分の中で自信を持って言えることです。
2. 好奇心に従う勇気/好奇心と恐れは表裏一体。静寂の中で湧き上がる魂の声を勇気を持って選択する。

ウエスギ: 好奇心は勇気がないと選択できないですよね。
さわだ: 僕はけっこうナチュラルに選択できちゃうんだけど。人生とっくに捨ててきたんで。そこはポリシーとして頑張ってやってきた気がする。
ウエスギ: 「好奇心」と「恐れ」は、僕は表裏一体だと思ってるんですよ。みんなワクワクしてることは多少あるんだけど、それを選択する時は、お金のことや家族のことなどいろんな恐れもありますよね。守りたいプライドみたいなものがあるのかもしれない。僕もそうだったから。前回もさわだの話に出ていたんだけど「何者でもない自分を認める所から自分は始まる」という話にもつながる。さわだは、好奇心はシンプルにやってますね。
さわだ: もう中学校ぐらいでレールを外れた時から、そうやって生きた方が楽しいなって(笑)。ウエスギを見てると、やはり「長く続けることが正義だ」って感じじゃないですか。僕は打ち上げ花火で、思いっきりでっかい花火をぶち上げる、創造と破壊みたいなのが正義だと思ってるから。
ウエスギ: でも「世界を変える、暮らしを創る」は、その破壊と継続の両方がないとできないと思う。だから僕は最近、お互いそれをやれたらいいなと思ってます。
3. 固定観念や慣習に囚われない/創造性は無限大。合理性を一旦傍に置いて本質を捉え、新たな価値を生むクリエイティブを考え抜く。

さわだ: これはみんなにしょっちゅう言ってるね。固定観念や慣習は、コミュニティや環境や国や時代などで全然違うものになっていくから、そこには本質が隠れていないような気がしていて。そこをまずフラットに見られる目を持つ方が、良いクリエイティブにつながる気がします。
ウエスギ: 固定観念をぶち壊すって、できるようで、できる人って少ないと思うんですが、さわだはなぜこういうことがベースにあるんですか?
さわだ: 無いものをつくりたいんじゃないでしょうかね。面白いじゃないですか、無いものをつくった方が。
ウエスギ: 確かに。YADOKARIとしては、市場がないと言われている所をずっとやってきたので、そこはすごく大事なことですよね。こんな小さな会社だけどいろんな人たちに目を掛けていただけるのは、ここだと思っているんです。
4. 仲間を信じる/一人では世界を変えることはできない。仲間を信じ、プロフェッショナルとして己の役割を全うする。

ウエスギ: この仲間を信じるっていう感じ、僕はもともと成果主義の会社が多かったから、チームでやるのはYADOKARIが実は初。
さわだ: 僕は夢ばっかりでかいからね(笑)。弱い人間だし、できないことばっかりだから。ここだけはできるということ以外は、本当にみんなに手伝ってもらうしかないなぁという感覚ですよね。みんなそれぞれ自分ができること・できないことがあるはずだから、それがYADOKARIでマッチしていって、1つのチームとして世界を変えられるような大きなことができれば良いんじゃないかな。だから自分の弱さもちゃんと認めて、強さも知って、みんなが補い合うのが大事だろうなって。
僕は個性を大事にしたいんですよね。雇う側と雇われる側じゃなくて、それぞれがちゃんと自分らしさを発揮できる会社が良い。別に株式会社じゃなくても良いんだけど。YADOKARIの、株式会社という枠組みに関しても、これからどんどんチャレンジして壊していきたいと思ってる。
ウエスギ: 「みんな役員」みたいな可能性もありそうですよね。みんながこの会社の社長みたいな感覚。コロナをきっかけに、株式会社みたいなものも分解されるかもしれない。その形態である必要性が無くなってくるかもしれないですよね。
5. やり抜く価値/やりたいことがあるなら、やるべきことを全うし、時代の流れを掴む。

さわだ: 仕事って短距離走じゃないから、結局、永続的に会社も続いていくものでないとダメだと思うし、打ち上げ花火を上げて終わっちゃうとそれだけなんだよね。そこでどれだけしぶとくやり続けられるか。やり続けることで次のチャンスがまた降ってくるのかもしれないですね。
ウエスギ: 「人事を尽くして天命を待つ」という言葉があるけど、YADOKARIは人事を尽くして、その後にまた時代の流れを掴む、みたいな感じ。やり抜いたら天に任せるんじゃなく、やり抜いた後も時代を見に行こう、みたいな、やり抜いているからこそ見極めようという所はありますよね。
6. 地球と共に育む/地球と生き、自然を愛し、全ての生き物と共に育む。

ウエスギ: ここはお互いに少し弱い所だから、自分たちに課した感じもあるよね。
さわだ: 自分たちがつくり出すプロダクトが、安いのを理由に地球に良くない部材を使って、それでできた物をお客さんに提供すること自体が本当に良いのか?という話で。自分たちの活動も作り出す物も全て、一貫して責任を持つのが大事じゃないですか。これからの時代の会社は、これが当たり前にないとダメだから。
ウエスギ: 若い子たちの方が、エシカル、ホリスティック、持続可能みたいなことが既にベースにあったりしますよね。YADOKARIで紹介してきた、自然の中でスモールハウスで暮らすのが気持ちいい、みたいな感覚と通じる所がありますよね。ここはみなさんと一緒に「地球と育む」企画を考えていきたいです。生かされているということを、自分で感じ取れる人たちが増えていきそうですよね。
7. 愛を伝え続ける/生かされていることに感謝し、関わる全ての人々へ愛を伝えることを怠らない。

ウエスギ: さわださんは愛、伝えてるんですか? パートナーシップもそうだし、会社もそうだし。伝え方はいろいろあるけど。
さわだ: 僕は前の会社をクビになった時に、やっぱり愛を感じられなかったというか、自分の会社をつくるんだったら絶対に愛のある会社をつくるぞって思ったんだよね。
ウエスギ: その愛って何なんですか?
さわだ: それはまだ分からない。一緒に働くメンバーを一生幸せにするとか、一生面倒を見る気概で対峙するとか。とはいえ優しくするだけが愛ではないし、時には厳しいことも言う。君が本当にそれで死ぬ時に後悔しないかなって。そういうことに気づいた時に、実は前の会社も愛がない会社だったとは思わなくなったんだよね。
ウエスギ: へぇー! そうなんですか。
さわだ: あの時、僕はクビになったけど、結局そうしてもらったことによって今ここにいるわけだから。
ウエスギ: それは愛だったって受け取れるってこと?
さわだ: そういう愛もあるなぁって。確かに僕はあそこで自分の最善を尽くして仕事をしていたかというと、多少は怠けてた部分もあったかもしれないし、今となっては前の会社の経営者の気持ちはすごく分かる。
ウエスギ: すごいこと言いますね!
さわだ: うん。やっとそこで単純に優しくするだけが愛じゃないと思ったんだよね。愛のある会社をつくろうと思ったのは間違いなくて、ただそれをどう伝えるかは、僕も口下手な所があるから難しいなと思うけど、努力はしたいと思ってます。
ウエスギ: でもさわだのその愛を感じて周りに人がいるのは事実ですよね。だから伝えなくても伝わるものなのかもしれないです。奥さんに愛を伝え続けるって、どんな感じなんですか?(笑)
さわだ: それはね、ちゃんと言葉で伝えた方が良いと思うんだよね、行動で示すとか。しっかり分かりやすい形で示した方が良いよね、ものすごく家事をやるとか、時々花を買って帰るとか、「いつもありがとう」って感謝の言葉を伝えるとか、とにかく分かりやすい方がいいね(笑)。
ウエスギ: さすがですね。うらやましいなぁ、俺も頑張ります(笑)。
住居費ゼロの世界へ

ウエスギ: こんな感じで3ヶ月間悩み抜いて、第2創業期にYADOKARIのVision、Mission、Valueを設定しました。これは僕らのことというよりも、意外に人生を生きる上での指針としても役立つフレーズかもしれない。
さわだ: それで今、中銀カプセルタワーの新しい形、現代版の中銀カプセルタワーをつくろうとしてるんだよね。僕らは3〜4年前に中銀カプセルタワーの保全の一環で、10㎡の1カプセルを創業期の初めてのオフィスとして借りていたんです。建築家の黒川紀章さんはミニマリズムの先駆者で、1960〜70年代からこういうことを考えていたなんて本当にすごいなと感銘を受けて。で、現代にあれを蘇らせるならどんな機能が必要かと考えた時、まず思ったのは、やはりコミュニティだよね。それぞれのカプセルが独立して完結しすぎているから、カプセル同士の交流があまりない。そこでコミュニティスペースやコワーキングスペース、リラクゼーションスペース、温浴施設みたいなものがあることが重要じゃないかと思って、いま僕らがつくろうとしてます。それがYADOKARIのクリエイティブレジデンス。
ウエスギ: それをきっかけに、さわだがまた創業期のビジョンを取り戻したこともあって、だから「リビングコストをゼロにする」という原点に立ち返りましたよね。
さわだ: 新たなVisionの中で、「世界を変える、暮らしを創る」ことに伴って、以前のVisionが「お金と場所と時間に縛られない暮らし方をつくっていく」ことだったんだけど、お金に縛られない暮らし方は、まだ僕らは実現できていないなぁと思う。
ウエスギ: 世界中がまだできていないですよね。
さわだ: このコロナ禍で、スペインなどはベーシックインカムを始めると言っているけど、日本はまだまだ先だろうと思います。でも僕は、民間がいろんなインフラ系のサービスをフリーミアムでどんどん提供してくるとは思っていて、次第にお金は使わなくても生きられるような世の中になると思っている。その枠組みの中でYADOKARIも挑戦したくて、僕らがいちばん強い所で、「スモールハウス=極小の小さな家」を何らかの形で無償で提供していけないかと今考えている所です。
ウエスギ: ぶっ飛んでるよねぇ! ほとんどお金って住居ですよ。年収の3分の1から多い人だと2分の1くらい住居費だから。それがゼロになった時にみんなは可処分所得をどうするんですかね。
さわだ: 僕はやはり創造欲求みたいな所に立ち帰るんじゃないかと思ってる。結局ものづくりしたりとか、何かを表現したくなると思っていて。だから第1弾として、クリエイターとかアーティストとか「クリエイティブクラス」と呼ばれる方々に向けてのレジデンスをつくって、それを住居として無償で提供していく仕組みをやっていこうと。
ウエスギ: それを今、進めています。住んでもらえる人を全国から公募します。
さわだ: そのお金を集めるために奔走してます。大きなお金を僕らが資金調達して再分配していく形かもしれないし、ある個人が足長おじさん的にアーティストを支援することもできると思うし。その仕組みとプラットフォームと住む場所、小屋みたいな「HOUSE in HUT」を開発していて、ハード(建物)と、お金の仕組みと、コミュニティをつくろうとしています。
ウエスギ: YADOKARIは、これからお金が回ってきたとしても、クリエイティブなお金の使い方をしたいですよね。リビングコストゼロ。それによって人間のクリエイティビティや美意識が引き上がり、もっともっと豊かになると思うんです。
さわだ: だからもう本当に、みんなお金のために生きるのはやめようということですよ。「世界を変える、暮らしを創る」という中で、僕たちは次の取り組みとして、世界中のリビングコストをゼロにしていく壮大なプロジェクトに邁進します。僕らは人生をかけるテーマが見つかったと思っているから、これをずっとやっていくので、ぜひ何かしらお力を貸してくださる方がいたらご一緒したいと思っています。
電柱の上に見張り塔のような部屋があるインダストリアルな建築物。実はこれ、中国にある茶室なのだという。日本における茶室のアップデートといえば、世界的デザイナー&アーティストの吉岡徳仁がデザインした「ガラスの茶室 – 光庵」が有名。ご存知の方もいらっしゃるのではないだろうか。
さて、お隣のお茶の本家、中国でも新しい世代向けに茶室文化がアップデートされているという。日本とは異なる中国のアプローチを覗いてみよう。
高床式の茶室は、浙江省金華市の金華建築芸術公園にある17の展示作品の一つ。作品のキュレーターは、中国を代表する現代美術家・建築家であるアイ・ウェイウェイだ。金華建築芸術公園はダムの下流の低地にあり、ツリーハウスのような高い茶室では、お茶を飲みながら広い川のランドスケープやそよ風を楽しむことができるという。
この茶室の特徴は、ありきたりの公共インフラの建設材料を使ってデザインされていること。構造を支える支柱には電柱を使用して、0.88平方メートルのフットプリントの上に載っているという。手すりには給水管が使われ、茶室のための水を供給している。ドアは重力で自動的に閉まる仕組みで、トイレは引き戸の後ろに隠れている。
茶室の精神性は、インダストリアルな環境のなかで成り立つのか。孤立して空間に浮かび、風を感じることで、訪れる人のマインドを変える試みかもしれない。
こちらの上海の小さな庭にある茶室は、近隣のオフィスにつながる2つの階段の間の殺風景な空間をリノベーションしたもの。茶室の床面積は19平方メートルで、2つの庭からなる敷地40平方メートルのスペースに建設されている。
中庭の後ろのコンクリートの壁に沿って建てられた茶室は、直径90cmの高い桐の木の立つエリアをL字型にカットして、小さな裏庭を追加。
茶室と庭を自然につなげるために、高さの異なる3つの水平カンチレバーが、段差を生むように設けられている。一番下の高さ45cmのカンチレバーは、建物を囲むベンチとして機能し、高さ1.8mのカンチレバーは、内部空間を中庭に拡張する小さな庇の役目を果たす。最後のカンチレバーは、厚さ8mmのスチールボード屋根の張り出しだ。
フレームの60mmの黒い正方形スチールがインテリアの引き締まったアクセントになり、透明ガラスと波ガラスを効果的に使い分けてデザインされている。ベッドスペースを庭として再利用するためにつくられた茶室は、日本の都心でも利用できそうなアイデア。
中国の茶室文化は、自然を愛でる気持ちやおもてなしの心という点では、日本の茶室と共通しているようにもみえる。一方で若い世代へお茶をアピールするために、革新を恐れないアップデートの大胆さも感じられる。伝統を尊重する日本人の繊細さと、中国の茶室文化に見られる大胆さ、どちらも魅力的だ。
Via:
divisare.com
divisare.com
frameweb.com
(提供:#casa)

▼動画で簡単レビューが視聴できます
https://www.facebook.com/yadokari.mobi/videos/857979764698165/
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YADOKARIが紹介する世界の新しい暮らし事例を、簡単レビューする動画コーナー未来住まい方会議。今回は「多世代シェア」がテーマです。
ご紹介した事例を含む参考記事
▼シェアハウスの増加によって変わる家族観(前編・後編)
https://house.muji.com/life/clmn/small-life/small_190226/
https://house.muji.com/life/clmn/small-life/small_190326/
▼多世代シェアハウスが体現する豊かな暮らし(前編・後編)
https://house.muji.com/life/clmn/small-life/small_181225/
https://house.muji.com/life/clmn/small-life/small_190129/
▼古きよき長屋のライフスタイル|豊かな長屋の暮らしを考える
https://yadokari.net/wp/nagaya-yadokari-3/20667/
▼ポートランド・独居シニアと養護施設の児童が家族のように暮らすコミュニティ。社会問題に取り組む「Bridge Meadows」
https://yadokari.net/wp/minimal-life/56261/
▼オランダ発・非営利在宅ケア「Buutzorg(ビュートゾルフ)」に学ぶ新しい働き方
https://yadokari.net/wp/enjoy-work/67981/

“Made in Germany”。欧州モーターホームの最高峰HYMER(ハイマー)と、150年の歴史を持つ世界最大の総合化学メーカーBASFがコラボ。2025年のバンライフのビジョンを表現した、キャンピングカーコンセプト「VisionVenture」を発表しています。3Dプリントや新素材満載のラグジュアリーなデザインに、世界中のブロガーが注目しました。
独HYMERは、2025年のバンライフのコンセプト「VisionVenture」を2019年9月に公開。「European Innovation Award 2020」で、インテリアデザイン、エクステリアデザイン、ブロガー部門で三冠を達成しました。メルセデス・ベンツ スプリンターを大胆にカスタマイズした革新的なコンセプトには、製品化を希望する声が数多く寄せられています。
「VisionVenture」のエクステリアは、メルセデス・ベンツ スプリンターのフロントガラスを再設計してさらに前方にシフト。ピラー、ボンネット、ルーフライトも再デザインされています。3Dプリントパーツ、赤外線反射塗料、空気圧式ポップトップルーフや、BBQコンポーネントを備えたリアテラスなど、BASFの20を超える革新的な素材が採用されています。オフロードで使用するための四輪駆動も装備。
「VisionVenture」プロジェクトは、実際のキャンピングカーコミュニティの声からインスピレーションを受けて設計され、デザイン、自給自足、軽量化にフォーカス。ホイールパネルとボディパーツのいくつかは3Dプリントを使用し、非常に堅牢でゴムのような品質を実現しています。
エクステリアのダークグリーンには、BASFの温度調整とエネルギー効率の高いChromacoolテクノロジーによる新しい超弾性ペイントを採用。これにより、車両の表面温度を20°C低下させ、内部の表面温度を最大4°C低下させます。デザイン的にも、ホワイト以外の個性的なボディカラーが可能になります。
「VisionVenture」では、メルセデス・ベンツ スプリンターのコンパクトなボディサイズの中に、多機能でオープンなフロアプランを使用。タイニーハウスのような省スペースのアイデアを詰め込んで、ラグジュアリーで余裕の室内空間を実現しています。
上下にオープンする後部ドアは、ルーフトップとテールゲートに、ランドスケープを望める小さなプライベートデッキスペースを提供します。
空気圧で作動するポップアップトップには、2人用のベッドがあります。後部に向かって開くことができる膨張式のスリーピングルーフは、厚さ約7cmのハニカム構造のおかげで、非常に優れた断熱性能を実現します。フレームに取り付けられたソーラー発電システムにより、旅行中の自給率を高めることができます。
インテリアには、温かみのある竹やグレーのフェルト、高級感のあるレザーを採用。リビングは室内の後部にあり、2つの白いソファと折りたたみ式テーブルでダイニングスペースを形成します。パノラマ式の大きなサイドウィンドウが屋外に向かって開き、開放感を高めます。
キッチンは、ユニークな階段構造でスペースを節約。ベッドルームに通じる大きな階段はLEDで照明され、内部には収納スペースや、ヨットの構造からインスピレーションを得た引き出し式冷蔵庫があります。
バスルームは可変でコンパクトになるように設計され、ローリングウォールは広げることができます。洗面台は横に折りたたみ可能で、レインシャワーを備えた広いシャワールームを完備。
壁材には、天然石の薄いレイヤーとプラスチックを組み合わせた、BASFのVeneoSlate®を使用しています。わずか1ミリの薄さのため軽量で曲げることができ、自然素材の豪華な風合いを実現しています。
「VisionVenture」コンセプトは、その反響が非常に大きかったため、HYMERが実際にプロトタイプを製作する可能性はあるかと思います。2025年のバンライフのトレンドが、自給自足と快適な居住性から大きく変化することはないでしょう。ただし、消費者はよりサステナブルな素材の採用を希望するかもしれません。
Via:
hymer.com

IROHA CRAFTの千葉健司さんに、山梨県韮崎市の空きビル再生プロジェクトについてうかがった公開インタビュー後編をお届けする。前編はこちらからご覧ください。

Profile
千葉健司さん
韮崎の隣町出身。韮崎高校卒業。京都で建築を学び、地元である山梨に戻りハウスメーカーや設計事務所等で勤務ののち独立。現在は自身がリノベーションを手がけたアメリカヤの4階に事務所を構え、住宅や店舗などの物件探しや資金計画、設計から施工までを手がけている。
インタビュー担当:
YADOKARI 川口直人、松倉和可
地元の支援を力に、さらなる展開も
ところで気になるのは地域の反応。長年地元で愛されてきたアメリカヤを復活させるにあたり、協力は得られたのだろうか。
千葉 韮崎市からは多大な応援をいただきました。従来の改修費の補助金は、建物のサイズに関わらず50万円が上限だったところ、担当の方が「制度を変えよう」と申し出てくださって、200平米以上の建物については200万円まで補助していただけることになったんです。さらに、韮崎市内で起業する人のための補助金制度も拡充されました。今までは韮崎在住者限定だったのが、市外の方も対象になったんです。アメリカヤを訪れるために市外から韮崎にやってくる方が増えたことがきっかけだそうです。
こうした支援を得られることになった背景には、アメリカヤのオーナーである星野三男さんの尽力も大きかったそうだ。
千葉 BEEK(山梨を拠点に活動するデザイングループ。現在、アメリカヤの5階にオフィスを構えている)の土屋誠さんにも協力していただきました。アメリカヤを借りられることになり、最初にビル内部を下見した時に土屋さんに「面白いから見に行こう」と声をかけ、それ以降、3階の入居者探しや、SNSで紹介してくれたりと、一緒に盛り上げてくれました。
さらに、若い世代も動いてくれた。
千葉 アメリカヤの駐車場を会場に2019年から始まった「にらさき夜市」というお祭りは、韮崎の若い人たちによる実行委員会が主催しています。
2020年5月現在、新型コロナの影響で休止中だが、多くの人が再開を楽しみにしている。

にらさき夜市。初回は500人が集まった。
「アメリカヤ横丁」から、夜間経済の活性化も始まる
次に千葉さんが手がけたのが「アメリカヤ横丁」だ。アメリカヤの向かいにある築70年の長屋をリノベーションして生まれた飲食店街だ。
千葉 近所の長屋が取り壊されるという噂を聞いて見に行ったら、昭和の雰囲気のままのおもしろい建物で、これは壊すのがもったいないな、と。そこで大家さんに直談判して、貸してもらうことになりました。
トイレは汲み取り式、耐震設備も古いままという、文字通り昭和の遺物といっても過言ではない建物。当初オーナーは取り壊すしかないと考えていたが、千葉さんの熱心な説得で考えを変えた。そして、アメリカヤのオープンから1年半を経た2019年9月、アメリカヤ横丁が誕生した。


昭和の雰囲気を残してリノベーション。

日本酒酒場「コワン」。

ラーメン酒場「藤桜」。
一から探して誘致するつもりだったテナントは、実際にはSNSでの拡散、アメリカヤの住人や知人などからの紹介ですぐに5店舗が決まった。

横丁のオープン日。中央左の黒いポロシャツ姿の内藤久夫・韮崎市長、その右隣が大村智博士、そして千葉さん。
千葉 横丁のオープン日には、韮崎市長さんや、ノーベル賞生理学医学賞を受賞された大村智先生がお祝いに来てくださいました。お二方とも韮崎高校で、私の先輩にあたります。みなさんすごく応援してくださって、本当に心強いです。
最後に紹介するのが、2019年12月に開業したゲストハウスchAho(ちゃほ)だ。
日中楽しめるアメリカヤと、よい酒場が集まるアメリカヤ横丁があれば、宿泊のニーズもあるはず。そこで、増加する一方だった空き家空き店舗を活用して宿泊施設を作ろうと有志が立ち上がった。
千葉 もともと韮崎は鳳凰三山の玄関口で、登山のために前泊する人も多かったので、山に特化したゲストハウスにしよう、と。そして、アメリカヤの6軒隣にあるお茶屋さんだったビルをリノベーションしました。元は「茶舗」というビルなので、そこからいただいて「chAho」という名前になりました。総合プロデュースは、韮崎出身で世界的トレイルランナーである山本健一さん。私にとって高校の一個上の先輩でもあります。運営は、甲府のゲストハウス、バッカスを営む野田寛さんが担当しています。



お茶屋さんだったビルを改装したゲストハウスchAho。
古い建物ならではの魅力を引き出し、使い続けたい
千葉さんが韮崎市内や近隣で空き家・空きビルの利活用に取り組む最大の理由は「地元への恩返し」だという。
千葉 高校生の頃通った韮崎を、誇れるまちにしたいという思いがあります。建物だけでなくエリアのリノベーションにも興味を持っているので、半径200m範囲に面白いものをどんどん作って、いろいろな方が関心を持って県外からも見にきてもらえる地域にしたくて。
川口 千葉さんにとって古い建物の魅力とはなんですか?
千葉 お金で買えない古きよき価値がありますよね。例えば、古い建物の木や鉄の窓には、メーカー製の大量生産のサッシにはない、昔の職人による手仕事ならではの温もりが感じられます。できるならばなるべく壊さず、補強して使い続けていきたいと思います。
平成30年の国勢調査では、山梨県の空き家率は21.3%。前回25年の調査から引き続き全国ワーストだ。だからこそ千葉さんのやる気も掻き立てられる。
千葉 空き家をまとめて集合住宅に生まれ変わらせたい。名前は「アメリカヤ村」。空き家で村を作るんです。
持て余しがちな空き物件も、やり方次第で魅力的に再生できるし、地域のハブになる可能性も秘めている。アメリカヤは、そんな大いなる希望を示してくれた。

甲府市から車で北西へ約30分ほどの距離にある韮崎市の商店街に、「アメリカヤ」というビルがある。長く商店街のシンボルとして愛されてきたが、廃業後約15年間、空きビルとなっていた。それが今、生まれ変わって街のランドマークとなっているのだ。
この再生プロジェクトの立役者となったのは、建築事務所IROHA CRAFTの代表・千葉健司さん。先日、千葉さんをゲストに迎え、「なぜ再生しようと思ったのか」「どうやって・どんなふうに生まれ変わったか」等、気になるあれこれについて公開インタビューを実施した。そのレポートを前後編に分けてお届けする。

Profile
千葉健司さん
韮崎の隣町出身。韮崎高校卒業。京都で建築を学び、地元である山梨に戻りハウスメーカーや設計事務所等で勤務ののち独立。現在は自身がリノベーションを手がけたアメリカヤの4階に事務所を構え、住宅や店舗などの物件探しや資金計画、設計から施工までを手がけている。
インタビュー担当:
YADOKARI 川口直人、松倉和可

今回のインタビューはzoomで行った。
廃墟同然のビルは、高度成長期、地域のシンボルだった
1967年にオープンしたアメリカヤは、1階に土産物店と食堂が入り、2階が喫茶店、3階はオーナーの住まいで、4、5階が旅館。韮崎駅前の商店街のシンボル的存在だった。

1960年代、新築当時のアメリカヤ。

アメリカヤの前身は「星野スーベニアショップ」という平屋の店舗だった。
千葉 創業者は星野貢さんという方で、もともと色々な事業を手がけていたそうです。そのうちの一つが井戸を掘ったこと。韮崎の商店街もにぎわっていた時代だったので、温泉を掘り当てればさらに人を呼べるだろうという思いだったそうです。温泉は出ませんでしたが、水温22度の鉱泉を掘り当てたそうです。星野さんはその水に「延命の水」と名付け、味を付けて凍らせた「ポンポンキャンディ」という商品を売り出しました。それが空前のヒット商品となり、建てたビルがアメリカヤ。いわばアイスキャンディ御殿です(笑)。

地域の祭りや各種行事にはボンボンキャンディの屋台が出現。カラフルなゴム風船(写真の中ほど)に入れて販売していた。
星野さん自身はカリスマ経営者として知られており、ベンチや時計を寄贈したり、駅への近道となる階段を作ったりと、利益を地域に還元していた。星野さんは2003年に96歳で亡くなり、アメリカヤも店を閉めることになった。
閉店から15年を経て、復活プロジェクトいよいよ始動
千葉さんは韮崎高校に電車で通っており、アメリカヤは駅からもよく見えたという。
千葉 ずっと気になる建物でした。何度か食事にきたこともあります。進学のため地元を離れ、社会人になって戻ってきたら、思い出の建物が廃墟と化していることを寂しく感じました。IROHA CRAFTではリノベーションに力を入れていたので、アメリカヤを復活できたら面白いだろうなあと、事あるごとに話していたんです。
やがて、アメリカヤを再生させたいという千葉さんの思いは、創業者である星野貢さんのご子息である星野三男さんも知るところとなった。
千葉 三男さんとお会いする機会に恵まれ、自分の思いを伝えたところ、三男さんも困っていらしたということでした。建物の損傷は激しいし、管理を続けるのは大変だけど取り壊すにも莫大な資金が必要だから、と。「僕は建築屋だから補修もするし、建物管理もするので貸していただきたい」とお願いしたところ、すごく喜んでくださると同時に、心配もされていました。大金を投資してビルを復活させたところで、その後の経営は本当に大丈夫なの?と。でも最終的には応援すると言ってくださいました。
鍵を借りた千葉さんは一人でアメリカヤを訪ねて内部を確認し、改めて手応えを感じた。
千葉 錆びついたシャッターを開けたらお化け屋敷のようで怖かったんですが(笑)。屋上に上がってみたら看板はインスタ映えするし「これはおもしろいな」と感じました。

千葉さんが借り受けた当初のアメリカヤはこんな状態だった。こちらは1階。


改装前の2階(上)と3階。

改装前の4階。現在IROHA CRAFTが入っている。

5階には街を一望できる風呂があった。
着工前、まずは清祓いをして、高圧洗浄をかけて防水加工した。インパクト抜群でビルの歴史を伝える「アメリカヤ」の看板はそのまま残した。

できるところは自分たちでも手を入れた。2階のショップ「AMERICAYA」の内装はスタッフによるDIY。5階の塗装は、SNSで地域に呼びかけてイベントとして実施した。


実は、アメリカヤ誕生のきっかけとなった「延命の水」はまだ湧き続けている。
千葉 普通、地下水はモーターなどで汲みあげるんですが、延命の水は今も勢いよく自噴しています。この水をどうしても使いたくて水質検査をしたところ、非常に良質な軟水だとわかりました。飲んでもおいしいですよ。新築当初からアメリカヤビルは水道を引いていなかったんですが、今回も引いていません。トイレでさえ延命の水を流しているという贅沢な状況です(笑)。


2017年11月に着工したアメリカヤは、5ヶ月後の2018年4月、グランドオープンを迎えた。
千葉 工事中からたくさんの方がSNSに上げてくれていましたし、地元の新聞やテレビ局も取材してくださって、注目していただいているのはわかっていましたが、想像以上の人出があって感動しました。

2018年4月、オープン当日のアメリカヤ。
インテリアもテナントも魅力的 新たなアメリカヤ
朽ち果てた廃墟のようだった1階には、ボンシイクという喫茶店が入った。都内から山梨にUターンした夫婦が始めた店で、ハンバーグやカレー、ミートソースなど親しみやすいメニューがそろう。

1階の喫茶店、ボンシイク。器や什器も夫妻こだわりの品々を使っている。
2階はIROHA CRAFTが営むDIYショップが入る。古材、植栽、照明器具、アイアン塗料、黒板塗料など、一般的なホームセンターでは扱っていないDIYグッズを販売している。

2階のDIYショップ、AMERICAYA。取材した2020年4月の段階ではリニューアル閉店中。
3階は、かつて住居だった当時の細かい部屋割りを生かし、店舗やギャラリーとして貸している。
千葉 IROHA CRAFTによるアメリカヤの運営方針に共感してくださった、魅力的なクリエイターやショップが入居してくれました。それから約2年を経て入居者はだいぶ入れ替わりましたが、また面白い人たちが集まりました。


3階の店舗やギャラリー。
4階が、IROHA CRAFTのオフィス。
千葉 初めてビル内部を見に来た時すでに、オフィスの場所は決めていました。決め手は4階だけバルコニーがあったこと。バルコニーがある事務所に憧れていたんです(笑)


4階のIROHA CRAFT。写真下は千葉さん自慢のバルコニー。

イベントが開催されることもある5階のコミュニティスペース。
5階はコミュニティスペース。弁当を食べたりハンモックに揺られて昼寝したり、誰でも自由に使える空間となっている。半日単位で貸し切りにできるので(要予約)、各種イベントを開催することもできる。これまでフリーマーケットやW杯のパブリックビューイング等のイベントが開催されてきた。
千葉 ちなみに、星野三男さんがレコード好きということで、アメリカヤを盛り上げるために月1回「昭和のレコード鑑賞会」を開催してくださっています。オープンリールデッキなど古い機材を使い、当時の音楽を当時の音で再生するんです。

現オーナー・星野三男さん主催のイベント「昭和のレコード鑑賞会」。
多くの地方都市がそうであるように、高齢化や人口減少に伴って韮崎の商店街も元気がなくなっていた。しかしアメリカヤのリニューアルオープン後、市外はもちろん県外から多くの人が訪れるようになった。
千葉 やっぱり、オープンできた時は感動しました。三男さんも喜んでくださったし、「親父も喜んでくれているよ」と言っていただけたのが嬉しかったですね。
川口 思いがつながったんですね。それこそ空き家や空きビルをリノベする価値だと思います。
インタビューの時点で、5階のコミュニティスペースは新型コロナウイルス感染拡大防止のため閉鎖中だったが、緊急事態宣言の解除を受けて6月1日から再開した。きっとまた、以前と同じようなにぎわいが戻ってくるだろう。
後編では、アメリカヤの次に千葉さんが手がけたプロジェクトをご紹介します。