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via: themobymart.com

2019年に中国とシンガポールに登場した2つの無人ストアポッド。小売店のオンライン販売の未来を変えるソリューションかもしれません。無人ストアなんてワタシに関係ない? 遠隔地にオフグリッドコンビニを設置したり、年中無休24時間営業の携帯ショップを展開できたり、使いみちは様々なんです。

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via: https://www.dwell.com/

コンクリート造りの建物の屋上に、Aフレーム型の小さな小屋が建っている。ここは、南米・エクアドル。高い高層ビルなどはないものの、スペイン統治時代からの伝統あるスペイン様式の建築と、コンクリート造りの工業的な建築が共存している南米らしい風景だ。

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via: https://www.archdaily.com/

ここタスマニアは、オーストラリアでもっとも住みやすい都市として有名な、メルボルンのさらに南にあるオーストラリア最南端に位置する島。自然豊かなこの島の、東海岸に位置するColes Bay (コールス・ベイ) 沿いの森の中に黒く、シックで、モダンなスモールハウスが建てられた。

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via: https://www.wptv.com/

最近特に「食べ物系」のスモールハウスやモバイルハウスについてたくさん紹介してきた。そして今回紹介する食べ物系モバイルハウスは、一目で分かる「ホットドッグカー」。名前はweinermobile (ウェイナーモバイル)、8.2メートルほどの長細いモバイルハウスだ。

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ミレニアルズのための住まい方革命

https://villax-cottage.jp/millennials/

「失われた30年」なんて言われる、バブル以降に生まれたミレニアル世代は過去の成功・従来の価値にとらわれない感性を秘めている。これから加速する社会や経済の変化の波に乗って生きていかねばならない、この世代にとっての居心地のよい場所とはどのようなものだろうか。

ミレニアルズにとっての“HOME”のありかたについて、既存の考え方を取っ払って縦横無尽に考察していく。

そんな次世代のライフスタイルを考える特設サイト「ミレニアルズのための住まい方革命 – Millennials」がオープンしました!

横浜市日ノ出町の京急電鉄高架下にあるタイニーハウスを用いた複合施設「Tinys Yokohama Hinodecho」にて、2019年のbud brandブランディング戦略報告会が開催され、全国各地からこのプロジェクトに注目する、デザイン・ものづくり関係者が集まった。

今年で4年目の実施となる「bud brand(バッドブランド)」in ミラノ。

bud brandとは、才能あふれる次世代の日本人クリエイターが、世界でひと花咲かせるためのプロジェクトです。毎年、日本の若手クリエイター達の作品をbud brandの傘下に束ねて、世界最大級のインテリアデザイン見本市である「ミラノサローネ・ミラノデザインウィーク」に出展しており、一般社団法人 日本デザインバンクがこのプロジェクトを運営しています。

2019年4月の出展を経て、今年の成果を振り返る「bud brandブランディング戦略報告会」が、昨年に引き続き横浜市日ノ出町のTinysにて6/19に行われました。その様子をレポートします!

日本のデザインを世界に発信し、世界のデザインを肌で感じる

今年のミラノデザインウィークのbud brandブースを飾った作品「ai-fuji」は、“日本への入り口”をイメージした暖簾。和紙の製法で作られた特殊な紙を天然の藍で染めてあり、時を経て生まれるシワや色の変化さえ味わいになる。日本の美意識から生まれた技法や素材を用いた作品。(デザイナー:木谷勇也/FANFARE、ナオロン:株式会社大直、藍染:藍の館)

「bud(つぼみ)+brand(綺麗に咲かせる)」という名のこのプロジェクトには、2つの目的があります。

1つは、インターネットの普及によって大量の情報を簡単に入手できるようになった現代において、逆に埋もれがちな、若く優れたクリエイターのデザインやアイデアを、リアルな場で世界にダイレクトに発信すること。

そしてもう1つは、世界のデザインを肌で感じる機会をつくり、次なるクリエイティブに生かしていくこと。

その舞台が、世界中からデザインを求めて人々が集まる「ミラノデザインウィーク」というわけです。

若手クリエイター達の制作・出展を企業が支援

ミラノデザインウィークとなると、どんなに才能があっても若いクリエイターが独力で出展するのは非常に困難です。そこで彼らのデザインやアイデアを、素材・技術を持った企業や職人、資金面の支援をしてくれるスポンサーとつないで、皆で出展させようというのがbud brandの取り組みです。

つくり手として関わる企業や職人にとっては、若いクリエイター達から刺激を受けて進化するチャンスが得られ、また、スポンサーとなる企業にとっても、bud brandは「デザイン志向と若い才能への理解」を示すアイコンとなり、自社の付加価値づくりや人材獲得にも役に立ちます。

このように、関わる皆にプラスの効果を発揮するのが、bud brandプロジェクトです。

今年は初のbud brand単独ブースで出展

bud brandプロジェクトの創始者である梶原清悟さん(一般社団法人 日本デザインバンク代表理事、FANFARE代表)

今年のミラノデザインウィークでは、bud brandは初めて、単独ブースでの出展を果たしました。報告戦略会の初めに、このプロジェクトの創始者であり、運営元の一般社団法人 日本デザインバンクの代表理事でもある梶原清悟さん(FANFARE代表)からご挨拶がありました。

bud brandが始まって今年で4年目になりますが、いろんな方々のご協力があって毎年出展できていると深く感謝しています。今年は今まででいちばん成功した回ではないかと思っていて、ミラノでの展示期間中は毎日1000名前後、のべ約1万人もの人が訪れてくださる場になりました。

デザイン分野での活躍を目指す学生さんにとっては就職活動の材料として、また、企業にとってはデザインを大切にしている会社であることのアピールとして、このbud brandをぜひ活用していただければと思います。この取り組みが、来年も、その先も続いて行くようにしたいと思っています」

日本のデザインや技法への注目度が増している

木谷勇也さんは、今年のbud brandの単独ブースに展示した暖簾「ai-fuji」を作品としてデザインした。

続いてFANFAREのデザイナーであり、bud brandでディレクターも務める木谷さんから、今年のミラノサローネで見られたインテリアデザインの傾向についてお話がありました。

「今年もアウトドア用の家具が目立ちました。アウトドア用家具と言っても、屋外でも室内でも使えるようにブラッシュアップされ、室内外の家具の境目が無くなっているのを感じました。提案はオフィス空間にも及び、ベンチにコンセントやUSBポートがついているとか。働き方のスタイルが広がっていることにも影響を受けた変化だと思います。

アウトドア用家具であっても、今までのような耐候性・耐久性といった機能性だけでなく、インテリアとしても使える細やかなデザイン性や座り心地などが重要視されています。各社、素材やテクスチャーにこだわっている傾向も伺えました。天板は石で、脚は木で作ったテーブルなど、異素材の質感にフォーカスし組み合わせているプロダクトが多かった印象です。

また、ヨーロッパでは、改めて『職人』に目が向いているのを感じました。仕上げは機械ではなく職人の手で行うなど、“人”に光が当たっているなと。

日本的なものも注目されていて、『moooi』というブランドでは“Tokyo Blue”という、デニムとコラボレーションし、張り地にデニムを使用したソファや、ニホンザルの刺繍がされたクッション・壁材がありました。ミラノサローネへの日本企業の出展も、年々増えている状況です」

今年のテーマは「旅」を100倍楽しませるデザイン

ミラノデザインウィークで本会場の次に多くの人が集まる「SUPER DESIGN SHOW」の会場内にbud brandの単独ブースを設置。期間中、このブースに約1万人を超える人々が世界中から来場した。

このように「日本」のデザインや素材・技法などへの注目度が増している中、bud brandが掲げた今年のテーマは“「旅」を100倍楽しませるデザイン”。

このテーマの下、ミラノデザインウィークの会場に展示された13作品の関係者が、プロダクトに込めた想いや出展によって得られた成果などを報告会で発表しました。その一部をご紹介します。

Case 01:Tabisuru Kakuzai/家具

Tabisuru Kakuzai|家具(デザイナー:小林哲治/人の力設計室、制作:入木隆悟、上野晃宏/TIMBER DESiGN 他)

日本人には敷物として昔から馴染み深い「ゴザ」を、より携帯しやすい形にアップデートしました。ゴザを敷いて、靴を脱いで座るだけで、どこでも我が家のようにリラックスできる居場所になり、いつもより低くなる目線が新しい景色を見せてくれます。そんなゴザをラップのように無垢の角材から引き出せる作品です。

制作陣を代表して、鹿児島の家具工房TIMBER DESiGNの入木隆悟さんがプレゼン。

この作品の制作は、福岡市の設計事務所 人の力設計室と、鹿児島県日置市の家具工房 TIMBER DESiGNが共同で行いました。報告会ではTIMBER DESiGN代表の入木隆悟さんがプロジェクトを通して得たことを語りました。

「ふだん私達は主に家具を作っているので、こういう小さい物を今まで作ったことがなかったんです。今回は細かい作業に取り組めたことが職人としての勉強になりました。ミラノでもゴザを角材から引き出すデモンストレーションを行い、“畳”というものに興味を持っていただき、好評価を得ることができました」

日本人には見慣れたゴザや畳も、海外の人の目には「自然素材でできた贅沢なシート、マット」と映るかもしれませんね。

この作品の制作・出展をサポートした鹿児島県霧島市のビルダー 株式会社Life plus homeの代表取締役 藏屋 誠さん

この作品の制作・出展をサポートしたのは、鹿児島県霧島市のビルダー 株式会社Life plus homeです。代表取締役の藏屋 誠さんが想いをお話しくださいました。

「鹿児島は日本の端っこにあって、そこから『世界へ』なんて言うと人は笑う。でも、鹿児島にも世界で活躍したい若い子はいますし、私達も世界のデザインを感じたいが、なかなか行く機会が無い。それがbud brandならトライできる。実際、今回取り組んだことで地元のTV局や新聞などメディアにも取り上げていただき、反響がありました。地域にいろんな事情で残らなきゃいけない若い子に『世界に行ける夢』を与える、地方創生や地域とつながる取り組みだと思います」

Case 02:Moire see/グラス

Moire see|グラス(デザイナー:清水大輔、制作: 椎名隆行/GRASS-LAB )

伝統的な江戸切子の「平切子」という技法と、砂などを吹き付けて表面に装飾を施す「サンドブラスト」という技法を組み合わせた「砂切子」の作品です。細微な意匠まで再現できる職人の高い技術を、デザイナーが生かした好例。グラスを覗き込めば、そこには「海」が広がり、ここにいながらにして旅に出かけたような感覚になります。

プレゼンターは制作を担当したガラス加工の専門家、GLASS-LAB株式会社の椎名隆行さん。1950年創業 椎名硝子加工所の流れを汲む会社だ。

制作を担当したGLASS-LAB株式会社の椎名隆行さんが、今回のチャレンジの反響を教えてくださいました。

「ガラスメーカーから『ミラノに出たんですか?』と問い合わせが来たり、とある大使館から大統領への贈り物にというお話があったり、ミラノへの出展後、予想以上の反応がありました」

長い時間をかけて積み重ねた高い技術を持っていることに加え、ミラノデザインウィークにも通用するデザイン性の高さが認められると、日本の職人やものづくりの可能性は大きく広がりそうです。

制作・出展をサポートした神奈川島県川崎市のビルダー 高山マテリアル株式会社の代表取締役高山正憲さん。

この作品の制作・出展をサポートした、神奈川県川崎市のビルダー 高山マテリアル株式会社 代表取締役の高山正憲さんは、デザイン領域に関する自社のブランディングにおいて、bud brandへの期待を寄せています。

「日頃お客様と接していて、普通の住宅では物足りないお客様が多くなって来ているのを感じています。そんな中で、自社単独ではなかなかミラノや世界のデザインにリーチするのは難しい。bud brandがあるのはありがたいですね」

Case 03:包美/酒器

包美|酒器(スチューデントデザイナー:後藤和樹/専門学校 桑沢デザイン研究所)

この作品は、世界で活躍する優秀なデザイナーを数多く輩出してきた東京の桑沢デザイン研究所の学生だった後藤和樹さんが、卒業制作としてつくったものです。bud brandが、デザインを志す学生達に、チャレンジしがいのあるコンペの一つとして浸透してきた兆しが感じられます。

「包美」は、山梨県(甲州)に400年以上も伝わる皮工芸「印伝」に、山梨の豊かさを象徴する地酒「七賢」を入れたお土産物としてデザインされました。鹿皮に漆で模様付けした印伝になみなみと酒が入り、豊穣を感じさせるたぷんとしたルックスや手触りがチャーミングな作品です。中身の酒を飲んでいくうちに、飲む人も、この酒器もクタッとしていくという経時変化までがデザインされています。

この作品を卒業制作としてデザインした後藤和樹さんは、現在、社会人になり空間デザインの仕事をしている。

作品のデザイナーである後藤和樹さんは、ミラノに自分の作品が出店されるのを、日本からSNSで見守りました。

「周りの友人達から『ミラノに出したの? すごいね!』と反響がありました。展開のスピードが早すぎて、自分の作品が本当にミラノに出たのかと実感がなかなか湧きませんでしたが、自分にとって良い経験になったと思います」

卒業後、空間デザイナーとして社会人になった後藤さん。bud brandから飛び立った若い才能が、世の中のデザインにプロとして携わって行くことは、このプロジェクトとしても意義深いことですね。

支援した東京のウェブ制作会社である株式会社テクト 代表取締役 中谷茂樹さん。

また、この作品の制作・出店を支援したのは、東京のウェブ制作会社である株式会社テクト。昨年まではビルダーや工務店がサポーターになることがほとんどでしたが、bud brandは、理念に共感してくれる企業であれば業種は問わず支援・参加を求めています。

代表取締役の中谷茂樹さんは、ウェブ制作というデジタルな業界に身をおきつつも、全国で聞かれる地場産業の衰退に対して何かできることがあれば嬉しいと語りました。

Case 04:TV cable/靴紐

TV cable|靴紐(スチューデントデザイナー:岩崎由輝/静岡デザイン専門学校)

さまざまな交通手段が発達した現代の旅は、とかく短時間で目的地に着くことが優先されがちですが、自分の足で歩くからこそ見える、かけがえのない旅の風景があるはずです。靴紐が擦り切れるまで歩いた時、劣化した靴紐の中からカラフルな紐が現れることで、旅は新たに蘇生し、さらなる出会いが広がる。「旅」のシーンを哲学的に捉え、表現した作品です。

この作品をデザインした静岡デザイン専門学校の岩崎由輝さん。京都の古本屋で手に取った本の一節からアイデアを着想したそう。

この作品は、静岡デザイン専門学校の岩崎由輝さんがデザインしました。靴紐の劣化というネガティブさを、カラフルな紐が現れることでポジティブに転換するという点にこの作品の面白さがあります。

「今回のことで、ミラノにも出せる物が自分にも作れるんだと自信になりました。今は自分のいちばん好きなものづくりを見たくて、京都に住み、染物の工房に通っています。伝統的なものをどうデザインできるかにチャレンジしていきたい」と岩崎さんは語りました。

「デザイナーの卵に、世界に出られるチャンスを与えてくれる素晴らしいプロジェクト」と、静岡デザイン専門学校 デザイン科 科長の大森仁先生がコメント。

昨年からbud brandを3年生のカリキュラムに取り入れていた静岡デザイン専門学校では、生徒の就職活動の材料としてさらに有効に活用するため、今年から2年生のカリキュラムへと変更したそうです。

昨年も静岡デザイン専門学校のスチューデントデザイナーを支援した、ウィングホーム株式会社の代表取締役 斎藤元志さん。

また、2年目の支援となる静岡のビルダー ウィングホーム株式会社の代表取締役 斎藤元志さんは、「静岡デザイン専門学校出身の優秀な社員に非常に助けられているので、bud brandを支援することでこの学校に恩返しをしつつ、これからもトップクラスの人材に入社してもらえるように、一緒にやっていきたい」とお話しくださいました。

地元の専門学校と企業が一緒に人材を育て、採用し、デザインとビジネスで地域に貢献していくという良い循環が生まれています。

今回の報告会に出席した株式会社LIXIL住宅研究所 常務取締役・マーケティング本部長の山中哲也さん(写真左)から、スチューデントデザイナーの岩崎さん(写真中)にLIXIL賞が手渡された。

報告会には、今年のbud brandのメインスポンサーである株式会社LIXIL住宅研究所 常務取締役・マーケティング本部長の山中哲也さんも参加し、LIXIL賞として、岩崎さんの作品「TV cable」を表彰、次のようにコメントしました。

「岩崎さんの発想に感動しています。旅で長い時間を過ごした時の洞察が良かった。パッと見て派手なものではないけれど、その思想に和む。例えば新しいブランドを立ち上げる時に、こういうふうにやらなきゃダメだと気づかされました」

今回のbud brandの出展でも、次世代を担う学生や若手クリエイター、職人、そして支援した企業にとっても、それぞれ手応えがあったことが伺えます。昨年よりも確実にこのプロジェクトの輪が広がり、良い循環を生み出しつつあるのが感じられました。

2020年のテーマは「日本をアップデート」、9月末まで応募受付中

さて、bud brandの2020年のテーマは「日本をアップデート −体感と共有−」です。新元号やミレニアル世代の成人、東京オリンピックなど、2020年は日本の今までとこれからを考える機会になりそうな1年。来日する外国人も一層多くなる見込みです。たくさんの人が日本を訪れ、モノやコトを“体感”し、母国に帰って「日本はこんな国だったよ」と“共有”するはずです。

この“体感”と“共有”をつなぐプロダクトのアイデアを、2019年7月〜9月まで募集しています。
同時に、クリエイターたちの制作活動や出展をサポートする企業側にも、学生支援、クリエイター支援、地域支援といった支援方法や、もっと気軽に参加できるサポーター制度が用意されています。

また、企業自らプロダクトを開発し、一般公募枠で応募することも可能です。

▼bud brandへの作品応募や支援の詳細は公式サイトから
https://www.bud-brand.com/

ブランディング戦略報告会に参加した方の声

戦略報告会の後は、Tinysで参加者同士の交流会が行われた。普段は直接触れ合う機会が少ない若手クリエイターや学生さんと企業との貴重な接点に。

戦略報告会の後、参加者の方々に感想を伺いました。
2019年のスポンサー企業のスタッフの方は、

「デザイナーや他の企業の方と知り合える良い取り組みだと思いました。日頃、特に学生と企業が直接つながれる機会はなかなかないので貴重です」

bud brand立ち上げの頃から協賛しているという企業の方は、

「若いクリエイターや学生さんたちの夢が叶えられるというのは本当に良いことだと思います。ミラノサローネ出展となると一社ではなかなかできることではないので、こうして皆で日本の才能を伸ばしていけるというのが良いですね」

戦略報告会の会場となったTinysのある地元横浜の工務店のご経営者は、

「こういうことはやっていかなきゃいけないと思いますが、私たちは新進のデザイナーと出会う機会がない。でも会社としては、そういう子たちと出会っていかなきゃいけないし、変化していかなきゃいけないと思っています。自分の所の職人たちもだんだんと歳をとって固まっていくので、新しいことを感じ取っていかないとと思います」

bud brandは日本のデザインと若い才能を、皆で育てる試み

今年で4年目を迎えたbud brandは、運営元として一般社団法人 日本デザインバンクを設立。自治体や学校法人との取り組みが次第に増える中で、より公共性・普遍性の高いプロジェクトとして存続させていくため、このような運営形態へと進化しました。

“世界に通用する、日本の若い才能を育てる。”

夢のある話であると共に、人口が減少していく日本の未来にとって実は非常に重要な話でありながら、個人や一企業ではなかなか成し得ないこのミッションを、皆で取り組むことで実現させるbud brand。今後もたくさんの若い才能の花が咲くことを願い、大切に守り育てて行きたいプロジェクトではないでしょうか。

bud brand 公式サイト
https://www.bud-brand.com/

(取材執筆:角舞子)

2017年からタイニーハウスの取り組みを進めている小菅村は、山梨県にある人口730人の小さな村です。首都圏の水源である多摩川源流部に位置し、村の総面積の約95%を森林が占め、山あいに点在する8つの集落からなります。

小菅村は秩父多摩国立公園内に位置する、東西14km、南北7kmの小さな山村。多摩川と相模川の源流部にあり、首都圏の水源として100年以上に渡りブナやミズナラの森を守ってきた。東京からのアクセスも2時間と比較的良く、2拠点生活者や移住者も増え続けている。

そんな小菅村は、温泉や道の駅を整備してバイカーや観光客を呼び寄せたり、源流親子留学など都心部の子育て世代を対象にした取り組みを長年に渡って行なっており、その成果があって、移住者が増加しています。

直近では、元公民館だった建物を改修した「小菅村YLO会館」に、最新のデジタルファブリケーション設備(デジファブ)を導入してものづくり工房「小菅つくる座」をオープン。移住してきた若いアーティスト達が講師やスタッフとなって、村民達と家具などのものづくりを始めています。

地域おこし協力隊として小菅村に移住した若手アーティストのお2人。小菅村YLO会館の工房「小菅つくる座」で、デジタルファブリケーションを使ったものづくりに取り組む。右/酒井厚志さん 左/折出裕也さん

その小菅村で、若い移住者たちへの住宅供給と、昔からの地域資源である森林の活用、村の賑わいづくりなどを目的として行われているのが、タイニーハウスデザインコンテストです。

プロアマ問わず参加でき、受賞作が村内にリアルに建築されるこのコンテストは、年を追うごとに応募者数が伸びつつあります。自然災害や金融危機をきっかけにタイニーハウスへの関心は世界的に広まっていることもあり、海外からの応募も増えてきました。

小菅村の一画にできつつあるタイニーハウス群。右の建物は、建物面積約13坪で、酒井さん家族が3人で居住中。左手前の八角形のタイニーハウス(2017年のコンテスト受賞作)は約6坪で、建築家の和田隆男さんが2拠点目の住まいとして利用。奥のタイニーハウス(約6坪)には、折出さんが居住している。

2019年のタイニーハウスデザインコンテストのテーマは「小さくても楽しい家」。そこには、いつの間にか富の象徴や投機の対象になり、高額ローンを組んで子どもを預けて夜遅くまで働きながら、一生をかけて求める物になってしまった「家」の、本来の在り方を問い直そうという、デザインコンテスト主催者の舩木小菅村長と村在住の建築家 和田隆男さんの想いが込められています。

今年の応募申込数は756組(提出260作品)で、昨年の約2.5倍もの数が集まりました。そのうち、いわゆる建築家や設計事務所などの建築のプロが35%、主婦層を含めた一般人が15%、中高生を含む学生や大学院生の応募が50%という割合でした。台湾や中国などから日本に留学して建築を学んでいる若者達からの応募も目立ちました。建築の専門家ではない方や若い世代が、自分なりに「楽しい家」を解釈した、自由度の高い個性豊かな作品が多数見られました。

コンテストの審査会場となった小菅村YLO会館3階の多目的スペースには、審査を待つ全260作品がびっしりと並べられた。

小菅村のタイニーハウスプロジェクトの発起人であり、現在は村内のタイニーハウスと甲府で2拠点生活をしながら、このコンテストやデジファブなどの取り組みに尽力している和田さんに、今年のテーマである「小さくても楽しい家」について、お話を伺いました。

小菅つくる座のデジファブ設備を使って制作した椅子に腰掛ける和田さん。ロッキングチェアにもなり、上下を返すと固定したスツールにもなる。小菅つくる座では、今後このようなプロダクトを村民達と積極的に生み出していく予定だ。

和田さん:「本来、家に決まった形はないんですよ。でも、いつの間にか固定観念で、家はこうでなくちゃ、という形に陥っているんですね。それを打ち破るところに家づくりの『楽しさ』があります。建物の間取りではなく、『どういう住まい方をしたら楽しいか』を考えることが重要です。今回の応募テーマ『小さくても楽しい家』は応募者にとっても審査員にとっても、その『楽しさ』はさまざまでしたが、間取りを考えただけでは家にはなりません。家をどう使うか考えることが大事だと思います。

住まい方で言えば、欧米人の方が部屋をディスプレイして楽しむことが上手ですね。海外の若者の部屋はキチッと整理されてセンスが良い。日本の若者は住まい方の経験が少ないから、なんだか物置に住んでいるみたいになる人が多い気がします」日本人の家に対する考えの表れではないでしょうか。

折出さん(左手前)が住むタイニーハウスに皆で入ってみた。右のデッキから、さらに屋外の大自然に空間がつながっていく「広がり」が、タイニーハウスの醍醐味。折出さん自身は一人暮らしの空間として狭さは感じないと言う。

和田さん:「日本には茶室という文化があったのに、機能性重視で、床の間や花、掛け軸、雪見障子などが消えてしまいました。楽しい仕掛けですよね。日本の建築家は最近まで欧米を追っていた傾向がありましたが、今は、日本の最前線の建築家は“和”を意識している人が多いです。それが日本人のアイデンティティであると気がついたのかもしれません。“和”の木造建築は、日本の木工技術の集大成とも言えます。付随する焼き物(瓦)や和紙(障子)、土壁などにも日本文化のエッセンスが全て詰まっています。

そういう原点をもう一度日本の家に入れてアップデートして行く際に、現状を壊すためのきっかけになるのがタイニーハウスではないかと思っています。小さいサイズの家を考えることで、『住まい方』から発想することができます。また、小さいからこそいろいろなことを考えないと成り立たないわけです。

より文化的な生活を楽しむための装置が、タイニーハウスなんじゃないでしょうか」

小菅村YLO会館の3階にある村民ためのダイニングスペースで会議。テーブルや椅子などは、小菅村の材木を使って作られている。

そんな想いが込められた「小さくても楽しい家」のデザイン審査は、舩木村長と和田さんを筆頭に、小菅村のデジファブでものづくりと指導にあたる若手のお2人、YADOKARIのさわだ・ウエスギも加わり、例年同様2日間に渡って丁寧に行われました。

ウエスギ:「3年目にして、このコンテストの注目度が上がって来ているのを感じます。いろいろな自治体から小菅村のタイニーハウスデザインコンテストについて聞かれるようになりましたし、『タイニーハウスの村=小菅村』というのが定着してきたように思います」

さわだ:「『楽しい家』というテーマの下で応募作品を見ると、やはり『コミュニケーション』を重要視している作品が多いなと思いました。家なんだけど、1人でこもって楽しむのではなく、どう開いて人とつながるかを考えている人が多いんですね。

それから、遊具の延長のような家もあり、いわゆる『別荘』は大人向けではなく、子どもが遊んで楽しい家でもいいんだという発見もありました」

では、2019年の審査結果を見てみましょう!

【最優秀賞】森を浴びる家

「森を浴びる家」(登録番号:DC9303)/滝川麻友さん。滝川さんはなんと高校3年生。

「森を浴びる家」(登録番号:DC9303)/滝川麻友さん。滝川さんはなんと高校3年生。

●審査員の選評
六角形の基礎に放物線アーチを二重にかけた、2階建てのテントのようなしつらえのタイニーハウスの提案。家の要素は真ん中の浴槽と梯子段のみ。テントのように見えるが十分家である。建築の構造形式から建築素材や生活様式の提案、ダブルスキンによる断熱仕様、アーチの集まった個所を活用した浴槽等、住まいの構成要素をアイデアあふれる提案で表現している。未来の住宅を予感させる傑出した作品である。夜景の写真が楽しくもあり印象的であった。満場一致で最優秀賞に選定された作品である。

【特別賞①】散歩しながら暮らす家

「散歩しながら暮らす家」(登録番号:DC9447)/山内祥吾さん

「散歩しながら暮らす家」(登録番号:DC9447)/山内祥吾さん

●審査員の選評
この作品は部屋をドーナツ状に配置し、真ん中に中庭を取り込んだ案である。自然との融合を考えた案は多数あるが、ほとんどは外とのつながりを意識したアイデアが多い中で、内側に取り込んだ点が評価された。自然の中であってもプライバシーは必要である。また家族同士が向き合うように暮らせる点にも配慮されている。中庭も家の一部として機能し、小さな空間を補完する役目を持っている。小さいながら即実現可能であり、質の高い生活を与えてくれそうな楽しい家であるところが評価された。

【特別賞②】わたしをまとう

「わたしをまとう」(登録番号:DC9217)/馬塲寛子さん&香月弥樹さん 

「わたしをまとう」(登録番号:DC9217)/馬塲寛子さん&香月弥樹さん 

●審査員の選評
楕円形の大屋根の下、家具化されたキッチン、テーブル、ベッド、トイレなどの住宅機能を壁際に沿わせ住居を形づくる半地下の建物は、昔の竪穴式住居を連想させる。竪穴式住居の現代版のような建物である。住まいの原型を感じさせ、機能分化された現代住宅を考えるとこれでも十分ではないかと思わせる。建築と家具の境界を融合させた楽しい提案である。

【小菅村長賞】SA House

「SA House」(登録番号:DC9484)/永田敦さん

「SA House」(登録番号:DC9484)/永田敦さん

●審査員の選評
住空間と設備空間を分離し、住空間の床を自由に配置できるように考案された案。これまでの建築は壁・床・天井など固定された部位で構成されるが、住空間の両側に配置された棚のような構造体が、自由な床の配置をもたらす。用途を変えたり、住む人に合わせたり、状況の変化に自由に対応できる建築であり、フレキシブルな考え方が評価された。空間が変化する家を考えただけでも楽しくなる。タイニーハウスならではの提案である。

【YADOKARI賞】小さな余畳の家

「小さな余畳の家」(登録番号:DC9468)/三輪良恵さん、塚本奏太さん、阿部雄介さん、伊原大樹さん

「小さな余畳の家」(登録番号:DC9468)/三輪良恵さん、塚本奏太さん、阿部雄介さん、伊原大樹さん

●審査員の選評
住空間を畳1畳から1.5畳ほどに設定し、既存の空き家とドッキングすることで住宅としての機能を完結しようとする提案。住空間がカプセルのような小空間と言う設定が、タイニーハウスや未来の住まいを想像させる。住まいが固定された形式だけでなく自由に移動できる形式になったら楽しい生活が送れるのではないか。既存住居をステーションとして余剰の家と合体する発想が評価された。既存の家の一部を借りる、まさにヤドカリのような家の形態である。

【小菅つくる座賞】バケバケハット

「バケバケハット」(登録番号:DC9261)/土佐谷勇太さん 

「バケバケハット」(登録番号:DC9261)/土佐谷勇太さん 

●審査員の選評
大きな空間の中に、住宅の機能を家具化して配置、状況に応じて移動させさまざまな住空間を作りだそうとする提案。家具を移動させることにより、室内がリビングやダイニングや寝室に変化する。このように室内の機能を家具化させた提案は過去にもあったが、可動させたところが評価された。これからの住まいの形態を予感させる提案である。20年後にはこれがふつうの家の形態になっているかもしれない。

【奨励賞】木樽のような十二角形の家で

「木樽のような十二角形の家で」(登録番号:DC9048)/小澤 澪さん

「木樽のような十二角形の家で」(登録番号:DC9048)/小澤 澪さん

●審査員の選評
この案は中学生からの提案である。住まいの共用部を1階に、2階に寝室をシンプルに配した形状。平面形状をあえて円形状にしたところに新鮮さを感じるのと、共用部は一室空間として家族の一体感を促す仕掛けになっている。小さくてもこれだけのことが出来るよと提案しているようだ。どのような動機で応募してくださったかは分からないが、コンテストに勇気をもらった提案である点を評価し選定された。

小菅村では、タイニーハウスとは別に、若い夫婦などの移住者に村営の「若者住宅」も提供。こうした若い世代が住む住宅が各集落に散らばって存在することで、地域の高齢化・過疎化の対策にもなる。

審査会の最後に、舩木村長に今年の総括を伺ってみました。

舩木村長:「応募者の皆さんには、タイニーハウスを自分で建てたいという夢もあるんですね。小菅村が、その夢を叶える架け橋になれたらと思います。今年は建築目線ではなく、アイデア目線での作品も多く、中学生の子も応募してくれて、こういう気持ちや才能を伸ばしてあげたいなぁと思いました。エントリーした人の数が700人を超えているのを見ると、タイニーハウスに興味のある人は世の中に本当にたくさんいて、今、風が吹いているなと感じます。今後もぜひ続けたいですね。

私は小菅村を『村ごとタイニーハウス』にしても面白いんじゃないかと思っています。村内の各所にタイニーハウスを作って、村を一周できる観光や宿泊の拠点にする。現在取り組んでいる小菅村の関係人口・交流人口のスポットとして、これからも力を注いでいきたいと思っています」

酒井さんは奥様と2人で約1年前に小菅村に移住。美大で講師をしていた経験を生かし、工房で村民たちのモノづくりをサポートしながら、村内の宿や施設などから依頼された家具・看板・屋台・グッズなどを制作している。

小菅村YLO会館の「小菅つくる座」で講師と作家活動をしている、若手の地域おこし協力隊の酒井さんと折出さんにも、感想を伺いました。2人は小菅村内のタイニーハウスに実際に住んで生活している実践者でもあります。

酒井さん:「コンテストの応募作の絵を書いている人自身が、これが現実化したら絶対楽しいだろうと確信しているのが伝わってくるものを選びました。小菅村に移住してくる時に、家と仕事がセットになっていることを自分も重視していたので、職住近接をタイニーハウスで叶えたいという発想には強く共感します」

折出さんは大学時代に自らモバイルハウスを自作して暮らした経験を持ち、タイニーハウスでの住まい方をさらに追求してみたいという動機で小菅村の地域おこし協力隊に応募した。

折出さん:「タイニーハウスは、住んでいる人が、住みながら考えて家を変えていくものだと思います。自分自身も経験があるのですが、住んでいるうちに、住まい方のリテラシーが上がっていくと、じゃあここにこれが必要だ、と何かを足したりして形が変わっていく。その変えていくための構造が組み込まれている作品が、興味深かったですね」

タイニーハウス暮らしの実践者のお2人にとっても、刺激と発見の多いコンテストだったようです。

今年の応募作品も中身の濃い提案ばかりで、充実した審査会となった。

小菅村ではタイニーハウスの取り組み以外にも、さまざまな先進的取り組みを行っています。移住者増による定住人口だけでなく、地域外から地域と関わりを深める「関係人口」に着目し、「分数村民」の考え方を導入。村内での買い物や施設利用、村外の加盟店やネットショッピングの利用に応じてポイントが貯まる、1/1村民カード、1/2村民カードを発行したりもしているんですよ。

小菅村の魅力は、豊かな自然環境だけでなく、その一方で、次世代にも共感性の高い未来的な取り組みに、積極的に挑戦・推進していることではないでしょうか。のびのびとした空気と美しい森や川、その中で実現する未来の住まい方を体感しに、ぜひ小菅村を訪れてみましょう。

コンテスト授賞式の様子

7/24から8/4まで開催された「森とタイニーハウスとものづくり展」の中で、タイニーハウスデザインコンテスト2019の表彰式、YADOKARIさわだ・ウエスギよる講演会、タイニーハウスコンテスト作品展示会、タイニーハウスオープンハウス、デジファブ体験など盛り沢山な企画展として多くの方々にご来場を頂きました。

(取材執筆:角舞子)

via: vintagecampertrailers.com

カリフォルニア州サクラメントに置かれた、60年近くの歴史を刻んだヴィンテージトレーラー。銀色のレトロフューチャーなデザインは、アンティーク時計に通じる愛着を呼び起こします。省スペースのアイデアに満ちたインテリアのモダン設備は、オフグリッドで稼働。サイドウォールを開けば、バルコニーが現れアウトドアと一体化します。

(さらに…)

▼イベント動画を全視聴できます。レポートと合わせてお楽しみ下さい。

https://www.facebook.com/yadokari.mobi/videos/390612111491735/
Facebook動画で視聴できない方はYoutube動画(こちらをクリック)も視聴可能です。

新しい「旅」と「宿泊」を提供するクリエイターの方々をゲストにお招きし、トラベル業界が進む方向を見出すきっかけをつくるトークイベント「未来トラベルクリエイターズfile」。今回のゲストは、京都で「泊まれる雑誌 MAGASINN KYOTO(マガザンキョウト)」を運営する岩崎達也さんです。

日本が誇る文化都市 京都において、どのような宿を開くのか。答えは無数にあるでしょうし、普遍の正解はあり得ないのかもしれません。その中でひときわ異彩を放つ「泊まれる雑誌」とはどんなものか? なぜ岩崎さんがそれをつくり、運営する中で何が見えてきたのか、お話ししていただきました。

雑誌への強い憧れと、新規事業立ち上げのキャリア

岩崎達也さんは1985年生まれ、兵庫県三木市出身。2016年、泊まれる雑誌「マガザンキョウト」をクラウドファンディングを活用し起業、編集長を務める。

岩崎さんは、兵庫県の小さな村の、山田錦農家の長男に生まれました。インターネットがなかった幼い頃は情報に飢えて暇でしょうがなく、気づくと雑誌への強い憧れが育まれていたそうです。

大学を卒業してリクルートコミュニケーションズに入社。マーケティングやクリエイティブの部門で経験を積み、転職した楽天ではソーシャルメディア戦略を担当。結婚を機に奥様のご実家のある京都へと移り、株式会社ロフトワークの社員として、ドロップイン型のクリエイティブラウンジ「MTRL KYOTO(マテリアル京都)」を立ち上げた経験があります。2016年に、クラウドファンディングを活用して、泊まれる雑誌「マガザンキョウト」を起業しました。

「新規事業を何でもやる。それが僕のキャリアです。今までの経験からあえて今、肩書きを名乗るとしたら『プロジェクトエディター』。背景と状況を課題・要件定義に落とし込み、戦略立案から成果物納品まで、一気通貫で実現するプロジェクトチーム×マネジメントを編集する。様々な立場で多様な領域や業界の仕事をしてきたことから、強みは、だいたいどんな案件が来ても何となく勘所が分かって、事業を立ち上げ推進までもっていける所です」

今だからこそ、「編集」が価値化する

岩崎さんの言う「豊かなグレーゾーン」とは、例えば公道に置かれた住民の植木のようなもの。住民は日々生きがいを持って育て、通る人はそれを景観として楽しむ。四角四面のルールからははみ出すが、その曖昧さがみんなを幸せにしている。via: pearldistrict.org

そんな岩崎さんは、この時代だからこそ「編集」が価値化する、と言います。インターネットやSNSの普及で情報量が飛躍的に増え続け、把握と整理ができなくなっている今だから、広義の編集がビジネスになっていく。

泊まれる雑誌マガザンキョウトと同時期に設立した岩崎さんの会社 EDIIT Inc.のメッセージは「Edit GRAY. Edit FUTURE」。白黒つけることが正しいわけじゃなく、曖昧なグレーゾーンをどう豊かに育てられるかが今の世の中に大事な考え方じゃないか。これまでいろんな立場や当事者を経験して来た岩崎さんが、自分のアイデンティティや、マガザンキョウトにもつながる考え方だとして、会社のビジョンに据えています。

ホテルをやっている理由

Willはやりたいこと。Canはできること。Mustは求められること。この3つが重なって大きいほどその人の幸福度が大きいという1つの指標。

「ホテルをつくった時に、僕が強烈に思っていたのは、『好きな人と、好きな場所で、好きなことをやりたい。』ということでした。この言葉を辿って京都に行き着いています。

創業前、会社員だった僕はMustとCanでほぼ生きていた。会社から達成すべきことが来て、できないことがあれば自分を鍛えてできるようにして。そうするとまた会社からMustが来て、またCanを鍛えるということをしていたら、いつの間にかWillが置き去りになっていることに気がついたんです。これは日本の会社員によくあるパターンかもしれません。

自分のWillを取り戻すぞ、の先にホテルが来ました」

マガザンキョウトとは何か?

元は牛乳屋さんだった京都の町家を「雑誌」に見立て、さまざまなコンテンツが楽しめる空間に「編集」。1日1組限定の宿泊スペース、ギャラリー、イベントスペース、雑貨の販売スペースがある。

「コンセプトは、もし雑誌が空間になったら、という所です。雑誌は紙で、見る・読むというのが主に提供できる体験価値ですが、もしこれが空間になったら、触るとか、匂いを嗅ぐとか、喋るとか、買うとか、もっと立体的な体験にできるんじゃないかと思い至りました」

ネーミングは、雑誌=マガジンの語源であるフランス語の「マガザン」から。

「マガザンには、お店とか空間という意味もあって、それにINN(宿)を足したらそのままユニークな名前になるなぁと。これはうまくいくぞと思った瞬間でした」

目指すのは、Stay Time Valueの最大化

マガザンキョウトには京都のカルチャーコンテンツが山盛り。「京都に詳しくなりたい、友人知人が欲しいというお客様が多く、そこに応えるサービスとして成立させていきたい」と岩崎さん。

ウェブメディアの運営もして来た岩崎さんの目線で宿泊やホテルを見た時、お客さんの滞在時間が極めて長いサービスだという点が面白かったそうです。

ウェブの世界では数秒〜数分、カフェや本屋でも長くて数時間。ところが宿は1人当たり平均10時間ほど滞在し、タッチポイントも格段に多いのが魅力。岩崎さんは、多店舗展開よりも今は、建物面積77㎡のマガザンキョウトの限られた空間で「Stay Time Valueの最大化」にチャレンジしたいと言います。

「ライフタイムバリューという言葉がありますよね、事業やサービスを考える指標に。それをステイに置き換えてみたんですけど。このたくさんのタッチポイントの中で、いかにお客さんに楽しんでもらいながら、ちゃんとマネタイズするかという所を、もう一度見直せるんじゃないかと思いました」

雑誌をメタファーにホテルを経営

ホテルオープン時に行った特集「本を体験する」は、岩崎さんが好きな東京都駒沢の本屋「SNOW SHOVELING」とのコラボレーション。

雑誌好きの岩崎さんは、そのビジネスモデルを思いきり参考にしてマガザンキョウトの運営を行なっています。例えば「特集」と言う仕組み。2016年5月にオープンして初めて行ったのは、「本を体験する」という特集でした。

「僕が好きな本屋さんと一緒に、共同編集という位置付けで、テーマ別に本や雑貨をセレクトして販売するというのがこの特集のベース。同時に、この本屋さんゆかりの作家 村上春樹の本に登場するおいしそうな食べ物(仕立てのいいハムサンド、ホットケーキのコカコーラがけなど)をシェフにレシピ化してもらい、参加者と本の一節を朗読しながらコース仕立てで召し上がっていただくというイベントも行いました。これが『読む』を超えた本の体験、場所があるからできることかなぁと」

HOTEL SHE龍崎翔子さんや、れもんらいふ千原徹也さんとも「共同編集」

龍崎翔子さんとは「ミレニアル世代の思考回路と表現プロセスを間近で見たくて」HOTEL IN HOTELの特集を。

お客さんの反応から手応えを感じ、その後も次々と特集を実施。渋谷のデザイン事務所「れもんらいふ」の千原徹也さんや、「HOTEL SHE」のプロデューサー龍崎翔子さん、同じ京都市内で「泊まれる展覧会」をコンセプトにしている宿「KYOTO ART HOSTEL Kumagusuku」、関西のメンズファッション誌「カジカジ」とも共同編集で特集を行いました。

「面白かったのが、『宿に小説家がいる』という試み。京都の小説家の方に来ていただいて、マガザンで日々起こることをリアルタイムで小説にしていくんです。マガザンに来たら小説に登場できるかもしれないという体験をお客さんにしていただいて。これ、出版できたらいいんですけど」

ホテルは好きな人に出会うための装置

龍崎翔子さんとコラボレーションした企画「夜遊びパジャマ」は、寝る直前まで外を出歩いて夜遊びできるデザインがコンセプト。

特集は岩崎さんにとって、多様性と創造性にあふれたコミュニティを育むためのエンジンだそうです。

「僕のやっているディレクターとかプロデューサーの立ち回りをする仕事は、どれだけ面白い人と繋がっているかが大事なので、このホテルのコミュニティが自分のプロジェクトワークに直結してくるという位置付けでやっています。言い換えると、好きな人に出会うための装置としてホテルをつくったということですね」

タイアップ広告や純広告、袋綴、グッズ販売も

雑誌の広告の仕組みも経営に取り入れている。壁にスポンサーの名前を掲示する「純広告」は、5万円10枠限定。告知後30分で埋まったという。

雑誌にはタイアップ広告(商品やサービスを紹介するためにクライアント企業とメディアが提携して制作する広告)や純広告(企業がメディアの枠を買い取り掲載する広告)がありますが、マガザンキョウトではその仕組みも取り入れています。

「タイアップでは、パナソニックの開発中の商品の試作品を宿泊者にモニターしてもらい、チェックアウト時にヒアリングしてレポートする取り組みを行いました。純広告では、施設内の壁の一部に看板広告の枠を設ける試みを。看板に興味を持ってくださったお客さんに対して、そのお店や場所に足を運んでみたくなるようなプレゼンテーションをするというのが付加価値です」

もとは牛乳屋の冷蔵庫だった1.5畳ほどの小さなギャラリースペースが「袋綴」。開けてみたくなる衝動を誘う。

「あと、袋綴ありますよね。メインコンテンツじゃないけど、ちょっと見てみたくなるやつ。もともとマガザンは牛乳屋さんだった建物で、冷蔵庫だった1.5畳程のスペースを白く塗って、そのまま『ギャラリー袋綴』として生かしています。ここで特集・トレンドをすることもあれば、レンタルスペースとしてギャラリー貸しすることもあります」

その他、グッズの販売は施設内でもEC(https://magasinn.thebase.in/)でも行なっています。扱っている商品は、旅の便利グッズと、京都のローカルプロダクト、ないしはアーティストの作品など。「泊まれる雑誌」のコンセプトを余すところなくリアルに表現しているんですね。

「つまるところ、泊まれる雑誌はミーハーで飽き性な自分の好奇心と美意識を好き勝手に発散できる場所でもある。今のマガザンは僕にとってそういう存在だと思います」

宿泊業におけるマガザンキョウトのポジショニング

縦軸が価格、横軸がコンテンツの量。マガザンキョウトは、ビジネスホテルよりやや高めの価格帯でコンテンツが充実している。予約システムはAirbnbのみ。

宿泊の目的や気分が細分化している今、無数にある宿泊施設の中で、どのポジションに自らを位置付けるかも重要です。コミュニティの創出を図るなら、なおさらのこと。

「高級ホテルは高くて、ノイジーじゃないくらいの程良いコンテンツやおもてなしの量・質がある。ビジネスホテルは1万円強ぐらいの出張決済が通りやすい価格で、シンプルなサービス。ゲストハウスやエアビーはいろいろありますが、ドミトリーに限っては超シンプルで安い。エアビーはユニークな体験ができるので、コンテンツやや充実で相場より安いことが多いかなと。

マガザンはこの右側ですね。ビジネスホテルより少しお金出しても、京町家1棟貸し切って1組5人まで泊まれる。その中にローカルコンテンツが山盛りあって、いろいろ体験できたり買える、みたいなポジションを目指しています」

マガザンキョウトの予約方法はAirbnbのみ。これも、出会いたいお客さんに的確にリーチし、チャットのコミュニケーションで十分に相互理解・信頼関係を深めて利用していただくための戦略だそうです。

ローカルコミュニティとの関わり

町内会の運動会で大活躍し、今や町内会長を務めている岩崎さん。地域のみんなに認知され、ホテルに対して理解や応援をもらうことができる。

宿泊施設を開く際に気を遣う必要があるのは、やはり地元のコミュニティとの関係性です。住民にとっては、いろんな宿泊客が出入りするとなると不安に思うのは当たり前。それを払拭する信頼関係を築く必要があります。岩崎さんはその課題を、なんと「町内会の運動会でリレーを走る」という方法で解決しました。

「うちの町内会は平均年齢70才オーバーで、日頃ぜんぜん運動していない30才そこそこの僕が行っても大活躍できるんです。リレーはみんなが見てる所を走るので、町内どころかその地区全体の人が知ってくれるんですよ。終わって街を歩いてたら『リレー走ってた人やねぇ』って話しかけてくれたり。ホテルやってるのね、みたいな話になって味方が増える。町内会活動をコストや手間と捉えがちですが、1年目はやり切った方がいいと個人的には思いました」

空き家情報をいち早く把握して街を編集

地蔵盆の会場として町内会でマガザンを使ってもらった際に、アメリカからの宿泊客を地元の人に紹介した所、うち解けて一緒に飲み始めたことも。「こういうことを丁寧にやって行く場所にし続けたい」

リレーを走って町内会にコミットしていたら、町内会長になってしまった岩崎さん。町内会長のいちばんの仕事は、各住戸に紙の配布物を間違いなく届けることですが、量が多く一人では無理なので、会社のスタッフに業務として振り分けているそうです。

「スマホ保有者が少数派なので、もうLINEとか言ってらんないんですよ、一軒一軒訪ねて配る。そうしたら良いこともあって、空き家情報をいち早く把握できるんです。そうすると街の編集ができちゃう。やりたいことがあると言っていた人に、市場に物件が出る前に教えてあげられる。

それでマガザンの裏にクマグスク代表の矢津さんが引っ越してきてアトリエも構えることが最近決まり、これが今年1年、町内会長をやったご褒美かなぁと。繁華街にあるようなものは何もない古い京町家の住宅街なんですが、そこにクリエイションをやっている人たちを呼び込めるのが、良い副作用です」

今後の展望、B(マガザン)to C(ゲスト)to B(クライアント)

事業を始める前に予測していた通り、現在の売上の90%はコンサルティング事業、10%がマガザンキョウトの事業(宿泊・物販・イベント)から成るという。

岩崎さんが会社を始めてからいちばん成長したのは「コンサルティング事業」だそうです。「泊まれる雑誌」の編集長に、自分の宿泊施設の編集について相談したいと思う気持ち、分かりますね。

「ホテルでゲストをお迎えしてコミュニティをつくり、クライアントワークに臨むという、これはホテルの中では新しいモデルかもしれません。

もちろん人材要件とか、さまざまな前提条件が紐付くので、どのホテルでもできるとは思っていませんが、今取り組んでいるホテルのプロデュースやコンサルティングでは、この仕組みを横展開してやってみようというプロジェクトがあります」

小さく始める業務提携

ミレニアル世代に刺さる世界観をHOTEL SHEで表現する龍崎さん、現代美術作家でもあるクマグスクの矢野さん、そして岩崎さんの3人は、泊まるを広める宿泊レーベル「泊博(はくはく)」で業務提携。
Via : https://www.hotelsheosaka.com/ , http://kumagusuku.info/

「ホテルのアライアンスって、買収やM&A以外は滅多に話題にならないと思うんですけど、小さな事業者の中で業務提携をしています。なぜやったかと言うと、3人のバックグラウンドは全く違うんですが、『宿泊をもっと面白くできるんじゃないか』という点は強烈に共有できているから。業務提携の鉄則の一つ、同じビジョンを持った人たちが、違う強みを生かしあって価値を大きくしていく。ビジョンカルチャードリブンの業務提携ですね」

具体的には、京都駅から徒歩1分の東九条というエリアを、京都市と共にアートの力で復興させて行く動きが始まっています。シアターE9という大きな舞台芸術施設と、クマグスクの2号店をつくるという2つのプロジェクトを「泊博」で取り組んでいます。その他、佐賀県の唐津に計画されている宿泊を起点とした複合施設のプロデュース、サービス設計、コンサルティングを、運営主体である第3セクターに対して行っているそうです。

面白い宿を見つけやすくするOTA

面白い企画からホテルを探せるOTAの発想は、龍崎さんが、経営不振だった湯河原のホテルを引き継ぎ、「原稿執筆」に着目した宿泊プランで復活させたことがきっかけとなっている。

今後の展望の一つとして、マガザンキョウトのような特徴のある面白い宿を見つけやすくする新しいOTA(オンライン・トラベル・エージェント)も開発中だそうです。

「今は価格や場所のソートでホテルを探すというのがいちばん手短なルートですけど、企画に尖ったホテルをOTAという仕組みで見つけやすくすることができるんじゃないかと。

龍崎さんが、湯河原のホテルで『卒論執筆パック』や『締め切り前原稿執筆パック』をつくって稼働率を一気に改善した時に、どこでみんなに知れ渡ったかというとツイッターなんです。OTAではないんですよ。じゃあ尖った宿泊プランをSNSの海の中に放り込みやすいOTAをつくったら、最初ニッチかもしれないけど喜ぶ人たちがいるんじゃないか、誰より自分たちが使いやすいぞと。かつそれを情報一極集中ではなく、みんなでデータをシェアしていく形にできたらいいなと思って進めています」

次に描くのはクラフトジン蒸留所

岩崎さんの思い描く、クラフトジン蒸留所。まずはビジュアルから入り、テキストに落とし込んで行くのが岩崎さん流。理論より実践、右脳→左脳、Will→Must→Canの順番で実現に近づけていく。規模拡大よりも自由(選択肢×身動きの取りやすさ)が大切にしていることだそう。

岩崎さんが今後の展望の最後にお話しして下さったのは、将来的に実現したい夢のこと。マガザンキョウトで出会い、面白いと思ってくれた人たちと、さらにいろいろなことを試みて行きたいそうです。

「絵から入るの自分の典型なんですけど、これクラフトジンの蒸留所なんです。その原材料となる畑があって、鴨川の源流みたいな川があって、そこでクラフトジンを作りたい。なぜこんなことを思ってるかというと、山田錦を作っている実家を、僕は長男なので引き継がなきゃいけないんです、そんなに遠くない将来。ど田舎すぎて売ることもできないし、貸すこともできない。ただ寝かせてたら固定資産税を払い続けて負債になってしまうのが淋しいなと。

それをなんとか自分が面白いとか、ワクワクする形に捉え直したいと思った時に、クラフトジンは様々な食材を使って個性を出していけると聞いたんです。山田錦を使ったジンもある。だったらこの山田錦を、農協じゃなくて集落から直接、適正価格で買い取って、京都でクラフトジンを作ってみたいというのが次に考えている所です。そして、旧来の農業を次に繋げていく形として育てていけたらと思っています。

これはまだ絵しかないんですが、もしかしたら今年何か発表できることがあるかもしれませんし、まだ妄想かもしれません。興味を持っていただける方がいたら嬉しいです。

館内にはバーがあって交流できて、裏にオーベルジュがあって泊まれるようになっている。そこで京都の料理やこのお酒を、宿泊滞在でゆっくり体験しながらブランドと共に知ってもらう。そこでマガザンの宿泊をやった経験や人との繋がりが生きてくるかなぁと」

参加者から質問「岩崎さんにこれを聞きたい」

これから宿を始めたいと思っている方や、何か新しいことをやりたいと思っている方からの質問が相次いだ。

イベントの最後は、参加者のみなさんや応募段階で寄せられた岩崎さんへの質問にお答えいただきました。そのいくつかをご紹介します。

Q:「空間において自分らしさが表れるポイント、こだわりは何ですか?」

A:「美意識を感じるものでしょうかね。西陣織の10万円のカバンなどもある中で、芸大性が作った謎の作品もある。でも両方すごいリアリティを感じるし、『こだわって妥協なく作ったんだろうな×京都』みたいな所は選ぶ時に気にするかもしれないですね」

Q:「雑誌というコンセプトを選ぶ前に、他にどんなアイデアがありましたか?」

A:「もともとアイデアの原型は『泊まれる雑貨屋さん』だったんですよね。マガザンをやる前に小さな雑貨屋さんをやっていて。やってみて分かったのが、物は好きだけど、その場所に来てくれる人たちともっとワクワクする、物に捉われない何かが生まれたときに、めっちゃ楽しいなと思ったんです。

じゃあいろんな人と出会う仕組みをどうつくるか。東京の友人が、なかなか京都の雑貨屋めがけて来れないので、泊まれる仕組みをつくったら、遠くから京都へ来るハードルが一つ下がるんじゃないかと。でも雑貨屋って言ってる限りは物が主役なんで、それをなんとか人を主役に変えられないかと考えた時に、雑誌に行き当たった感じですね」

Q:「ヴィジョンをテキストにするにはどうすればいいのか、テキスト化したものをさらに形にするにはどうすればいいのか?」

A:「僕の経験で言うと、コピーライターの仕事をしてたことが非常に大きくて。言語化できる汎用的なテクニックがあるんですよね。例えば2つの言葉を組み合わせる。形容詞と名詞とか、形容動詞と動詞とか。あるいは、いろんな言葉を書き出して、全然関係なさそうなものを組み合わせてみるんですよ。

マガザンで言うと『泊まれる』は普通の言葉で、『雑誌』もみんな知ってる言葉ですが、この2つが組み合わさると『泊まれる雑誌』。日々全然運用されない言葉なので新しく感じる。1つのテクニックとしては使えるんじゃないかなと思います。それを誰かに見てもらう、ですかね。これって面白い?分かる?という感じで。

テキスト化したものをさらに形にするアウトプットでは、何かみんなが見える物質をつくるとか見つけることが一つあるかもしれません。プロジェクトの立ち上げ方で、これは鉄板だなと思うのは、ロゴデザインをまずつくることですね。そこにはつくり手、創業者の想いが確実に込められている。出来上がったシンボルは北極星みたいなもので、そのロゴが輝くシーンをつくれば良い。それってみんなも見れるものなので。

そして有効なのがプロトタイピング。小さくでもいいし、絵にするとか、紙で工作してみるとか。みんなで見えるようにすると、これってこういうこと?って言ってくれたりするんで、そうじゃなくて、とか言語化が育って行く。壁打ちみたいなことですけどね」

Life is Editorial.

「Life is Editorial.」とは、マガザンキョウトの壁に岩崎さんが書いた言葉。

自分の人生を、自分の「好き」を起点に編集していくことで、それは俄然面白いものになります。マガザンキョウト立ち上げのためのクラウドファンディングを告知する時、怖くて体が震えたという岩崎さん。自分主語で、新しいものを面白いと言って世の中に出すことのプレッシャーを乗り越えた先には、想像以上の共感やつながりが広がっていました。

これからの宿泊業にも、「何かやりたい」と思っている人にも、岩崎さんから多くの具体的な示唆をいただいたトークイベントとなりました。

(取材・執筆/角舞子)

◎今回のゲストスピーカー

岩崎達也氏

MAGASINN KYOTO(マガザンキョウト) 編集長/EDIIT Inc. 共同創業者


1985年生、兵庫県三木市出身、山田錦農家の長男。京都市在住。
上京しリクルートコミュニケーションズ、楽天を経て2014年京都へ移住し、ロフトワーク京都に勤務。いずれも新規事業ディレクターとして従事。
2016年、泊まれる雑誌マガザンキョウトをクラウドファンディングを活用し起業、編集長を勤める。雑誌の特集のようにシーズン毎に空間で様々な企画を展開。様々なプロジェクトの受け皿として、2017年EDIIT Inc. を創業。

via: lumetraveler.com

一流ホテルのベッドの上で、満天の星空を眺めながらゆったりと眠りたい。ミニマルなアルミニウム製トレーラーは、テント嫌いのオランダ人アウトドア愛好家がデザインしました。角丸ボックスのオープンルーフをスライドすれば、そこはミリオン星ホテルに早変わり。

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via: https://www.dezeen.com/

ここは芸術と音楽の国オーストリア。首都・ウィーンの道を歩けば様々なアート作品に出会える。森の中を歩いてもユニークな作品に出会うことができる。

Studio Precht ( スタジオ・プレクト )とエコ建築のスタートアップ企業のBaumbau ( バウンバウ ) が、独特な形の遊び心溢れるツリーハウスを作った。このツリーハウスの名前は「Bert 」。周りの木と同化するように、円柱をベースとした枝状のツリーハウスだ。

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via: https://www.dwell.com/

スモールハウスはその名の通り「小さな家」、モバイルハウスは「動かすことのできる家」という意味になる。
「住む場所にとらわれない」で、自由に好きなところに動き回れる点では、モバイルハウスを選択する人が多い。
そんなモバイルハウスの原型とも言えるのがキャンプカーだ。中でも特徴的なキャンプカーの一つといえるのがAirstream(エアストリーム)社のキャンピングトレーラー。

(さらに…)

TINY HOUSE JOURNALタイニーハウスの“現在”を知る

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