旅もDIYもノープラン。70万円の中古バンを経験なしでコンバージョン、車上暮らしをエイッとはじめたスペイン人カップルがいます。“なんとかなるさ!”のラテンスピリットで、旅を続けながら、オンラインショップやバンの改造で生活費を稼ぐたくましさ。自由を愛する2人のライフスタイルは、ちょっとまぶしい。
(さらに…)
カナダ・ケベック州の高原にあるモントランブランの森の中、世捨て人が建てたような小さなキャビンがあります。中には水道もシャワーもありません。それでもAirbnbでは、静寂の中で2人きりで過ごしたいカップルに大人気。雪と森と孤独が何よりの贅沢、と考える人々がカナダには少なくないようです。
(さらに…)
タイニーハウスの実際の建築は、建築を学ぶ学生にとって非常に有益な体験です。コロラド州リードヴィルの標高3,000メートルの深い森で、学生たちは2年に渡って21棟のキャビンを設計して、自分たちの手で建設しました。自然のランドスケープを壊すことなく、プレファブ建築、マイクロハウジング、耐寒・耐雪設計を学び実現したワークショップ・プロジェクトを見ていくことにしましょう。
(さらに…)
https://www.facebook.com/yadokari.mobi/videos/1321241284645835/
▲ Facebook動画が閲覧できない場合は「Youtube動画(クリック)」でも視聴できます。
\YADOKARIタイニーハウス複合施設 イメージムービー/
「その日をその町で暮らす Tinys Yokohama Hinodecho」
まちは眠りから目覚め、新しい朝がやってくる。
京急線の始発がリズムを奏でる。大岡川に朝日が反射する。
高架下のタイニーハウスは、淹れたてのコーヒーの香りに包まれる。
今日の散歩は桜の咲く川の上だ。流されていくのは心地よい。
まちの呼吸を感じ、自分の体を浸す。
日が暮れるのを見送り、同じ場所で日の出を迎える。
それはたった一度の日暮れと日の出かもしれない。
でも、小さな家での短い暮らしは、自分に必要なものを教えてくれるはずだ。
大きくて広くて、たくさんの物に囲まれている暮らしだけが豊かさじゃない。
▼ Tinys Yokohama Hinodecho
⇒ http://yokohama.tinys.life/

目的を「ぼんやり」させたまま、起こることを自然体で面白がる。
そんなスタイルを、小屋暮らしの実践者から教えてもらった、
11月27日のトークイベントをレポートします。
人は、「どんな」小屋を、「なぜ」求めているのか?
そんな「問い」で研究と連載をすすめる「都市を科学する〜小屋編〜」は、三浦半島に週末用の小屋をつくり、東京と二拠点で生活している印部里菜子さんをゲストに、トークイベントを開きました。「手に追えるサイズ感が心地よい」「小屋がいとおしいですね」。実践者の実感のこもった言葉に、さまざまな発見がありました。
イベントは「人はなぜ小屋に惹かれるのか?〜まちの中の小さな居場所を紐解く」というテーマで、YADOKARI運営の「Tinys Yokohama Hinodecho」にて開きました。YADOKARIからさわだいっせいさん、ウエスギセイタさん、アーバン・サイエンス・ラボから西田司さんと谷明洋さんが登壇。印部さんが小屋をつくり、小屋生活を楽しむ様子を聞きながら、さまざまな考察をしたイベントの様子をレポートします。

小屋について語る印部さん
小屋との出会い
印部さん夫妻はふたりとも、平日は東京のアパートから会社に通ういわゆる「サラリーマン」。週末になると「よほどのことがない限り」京急電車で三浦半島に建てた小屋に向かい、何もないようでいて色々ある「暮らし」を楽しんでいます。

印部さんが週末を過ごす小屋
最初から小屋に憧れを抱いていたわけではありませんでした。30代に差し掛かるころ、同世代と人たちと同じように家のことを考えてはみたものの、ローンを組んで広い家を建てたり、マンションを買ったりすることに、全くリアリティが持てなかったそうです。
「とにかく楽しく暮らしたい」
そのために探したのは、好きな「自然」と近い逗子や横須賀の「こぢんまりした古家」。不動産屋で見つかる中古住宅は、小さくても40平米前後と自分たちにとっては大きすぎるものばかり。「もっと小さな家を」と探し続けると、 見かねた不動産屋に「印部さん、もう小屋にでも住んだらどうですか?」と言われてYADOKARIのことを教えてもらったそうです。「小屋」という言葉にピンときて、YADOKARI運営の「未来住まい方会議(現YADOKARI)」などでさっそく情報収集。土地を探し、三浦市で小屋作りをはじめることにしました。
建築関係の会社に勤めているものの、DIYの経験がほとんどなかった印部さん。まず、三浦半島で宿づくりのリノベーションの手伝いに参加し、友達を増やしながら技術を習得。週末ごとに三浦半島に通い、約11平米の小屋を1年ほどかけて自作しました。難しいところをプロに任せる「ハーフビルド」方式としましたが、DIYが楽しくなり、当初の予想以上に多くの部分を自分たちでやりました。真冬の外壁貼りこそ寒くて辛かったものの、今となっては良い思い出。自分たちで張った床に寝転んだ時の感動は、とても大きなものでした。
「いとおしい」小屋
イベントでは印部さんからそんな話を聞いているうちに、「いとおしさ」「ゆっくりつくる」というキーワードが浮かび上がってきました。

印部さんと語り合う(左から)ウエスギさん、さわださん
西田 「民藝の鞍田先生という方と対談したのですが、民藝では『インティマシー(intimacy)=いとおしさ』という概念が大事なんだそうです。美しさは一瞬で見てわかるけれど、いとおしさは時間をかけて関わり続けることで得られる概念です」
さわだ 「小屋ってハードを扱うことだと思っていたけど、もしかしたらソフトなのかもしれないと思ってきましたね」
ウエスギ 「印部さんは小屋に愛着湧いてきていますか?」
印部 「小屋いとおしいですね(笑)。小屋大好きです。小屋のいろんな部分に、作るときに手伝ってくれた人や、材料を持ってきてくれた人の顔を思い出すこともあります。急いで作ることもできたんですけれど、ひとつずつゆっくり作りたいなと思っていて。今もちょっとずつアレンジしています」
印部さんは、小屋を手に入れることよりも、そのプロセスそのものを大事にしているように感じました。最短の工期でコストを抑えて早く使えるようにする通常の建設とは、対極のやり方。「育てる」感覚にも通ずるところがありそうです。
「手に負える」サイズ感
もう一つ印象的だったのが、「小屋は自分たちの手に負える」という言葉。11平米って6畳ちょっとくらい。その中にキッチン、トイレ、シャワーがあるのですから、ワンルームマンションなんかよりも全然小さいといえます。

(左から)印部さん、西田さん、谷さん
印部 「小屋に住む前、大きい物件も見に行ったんですが、私達の手には負えないなって思っていました。小屋をつくってからは、小屋はもちろん、三浦というまちのサイズ感にも居心地の良さを感じています。道もお店も分かるし、車運転していても知り合いとすれ違ったりするような『手に負える感じ』が小屋とマッチしているなと思っています」
谷 「手に負えるサイズ感は、『等身大』とも言いかえられそうです。今の時代は、仕事にしてもプライベートにしても、とても大きな社会、たくさんの人たちと繋がれるようになりました。結果として、その揺り戻しで手に負えるサイズ感に落ち着きとかを感じる人が増えているんじゃないでしょうか」
ウエスギ 「YADOKARIは小屋とかを考えるときに江戸時代の長屋を分析することが多いんですけれど、長屋って四畳半の部屋に家族5人寝てて、ちゃぶ台出すと食卓になって、、という最小単位なんだけど、井戸端会議が井戸の周りで起こって、銭湯がコミュニティスペースになってという小屋の暮らし方に近いなと思っていました。印部さんも地域の方とつながっていたりと、長屋ぐらしと共通するところがありそうですね」
印部さんは小屋を持ったことで、「もし食いっぱぐれても、『小屋あるし』と思える」ようになったといいます。自分たちでつくることができ、暮らすにも大きすぎない「サイズ感」。衣食住の「住」を自分たちの手でなんとかできるという実感が、心の余裕や自信につながっているのでしょうか。
インスタグラムで小屋ぐらしの様子を発信している印部さん。@bonyariweekendというアカウントからにじむ「週末は小屋でぼんやりーー」というスタイルが、とても贅沢に感じられました。
予想外の価値を楽しむ小屋
「都市を科学する〜小屋編〜」は、「人は、どんな小屋を、なぜ求めているのか?」という問いから、事例を分析して考察しています。しかし、印部さんの話を聞いていると、「明確な理由や目的は、必ずしも必要ないのかも」という気がしてきました。

小屋について語る印部さんは、本当に楽しそうでした
工期も目的も「ぼんやり」としたまま始めて、起こることを楽しんでみる。
効率やPDCAを考えがちな仕事とは、異なるスタイルで時間を過ごしてみる。
結果として、「いとおしさ」だったり、「等身大で過ごす時間」だったり、「『小屋あるし』という心の余裕」だったり、「作り続ける余白」だったり、「手伝いに来てくれる仲間」だったり、「野菜を分けてくれる地元の人」だったり、「二拠点効果で楽しくなった平日のサラリーマン生活」だったり、がやってくる。
思いもしなかった価値が生まれる可能性や期待感こそ、小屋の大きな魅力のひとつかもしれません。
(了)
| 【都市科学メモ】 |
小屋の魅力
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予想外の価値が生まれる |
生きる特性
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取っ掛かりやすさ、余白、マイペースへの寛容さ |
結果(得られるもの)
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いとおしさ、等身大で過ごす時間、「小屋あるし」という心の余裕、作り続ける楽しさ、手伝いに来てくれる仲間、野菜を分けてくれる地元の人、二拠点効果で楽しくなる日常、家族やペットがイキイキする時間 |
手段、方法、プロセスなど
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「ぼんやり」はじめてみる
「なんか楽しそうだ」と思ったら、目的や工期は「ぼんやり」したままでも、とにかく始めてみたら良いんじゃなかろうか。DIYのワークショップに参加したり、土地を探してみたり。効率やPDCAを忘れ、できることから、マイペースで。まずは、印部さんのインスタグラムをぼんやり眺めるのも良さそうだ。 |
起こることを楽しむ
目的や工期が「ぼんやり」しているのだから、「タスク」も「ノルマ」もない。ならば、起こることのひとつひとつを面白がってみよう。小屋を手に入れることが大事なのではなく、「つくる」「過ごす」を味わい尽くすのだ。
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【ゲスト】
印部 里菜子(いんべ・りなこ)
北海道出身、上京してもうすぐ9年の会社員。夫婦で、平日は東京のアパート、週末は三浦半島の小屋という二地域居住で暮らす。焙煎、イラスト、いももち屋など、こまごました好きなことをほそぼそと行っている。最近、三浦三崎の宿bed&breakfast ichi をお借りして、不定期のカフェを始めました。 三浦や小屋でのできごとを、インスタグラムにてイラストで公開中。
【参考・関連サイト】
@bonyariweekend (印部さんのインスタグラム)
YADOKARIサポーターの“小屋づくり”実践編|Case.2 Imbe Rinako
「都市を科学する」の「小屋編」は、横浜市の建築設計事務所「オンデザイン」内で都市を科学する「アーバン・サイエンス・ラボ」と、「住」の視点から新たな豊かさを考え、実践し、発信するメディア「YADOKARI」の共同企画。人や社会が「どんな」小屋を「なぜ」求めているのか、調査・分析・考察しながら連載します。
「都市を科学する〜小屋編〜」記事一覧
ポートランドのDIYカルチャーは、タイニーハウス作りにもそのユニークな個性を伝播しています。ここに紹介するのは、デジタルドキュメントにまとめられたトレーラー・タイニーハウスのデザインパッケージ。元ビルダーの経験とひらめきがギュッと詰まっています。タイニーハウスデザインにヒントとなりそうな、気になるものをいくつかピックアップしてみました。
以前はタイニーハウス専門の建築会社だった、オレゴン州ポートランドに本拠を置くシェルターワイズ (Shelter Wise) 。現在は、75平方メートル以下の居住空間を対象に、エネルギー効率にフォーカスした独創的で高品質なタイニーハウスのDIYプランを開発・販売しています。
2段ボックスという意味のバンクボックス (Bunk Box) は、インダストリアル・シックをテーマにしたデザイン。壁のフレームを石膏ボードや木製パネルで覆わずにそのまま残し、電気配線や配管を露出させた、いわば「むきだしのデザイン」です。ハウスフレームの覆いを除くことで、室内の有効スペースが18センチ拡張します。インダストリアルなインテリアが好みなら、スペースも節約できる一石二鳥のデザインというわけです。
バンクボックスは、16フィート(4.9メートル)シャシーのトレーラー向けで、メインフロアの床面積は125平方フィート(12平方メートル)、寝室用のロフトは72平方フィート(7平方メートル)の広さがあります。フラットな屋根のむきだしのフレームにより、ロフトには114cmの天井高を確保できます。2つの大きな天窓が、豊かな自然光や夜の星空を室内に引き入れます。
オプションのガラス張りのドアを追加することで、6つの窓と共に、自然光とランドスケープ、新鮮な空気をリビングスペースにもたらします。
バスルームやキッチンには、ステンレススチール製のシンプルな商業用プロダクトを採用。インダストリアル・シックというテーマが納得です。提供されるDIYプランには、シンク、シャワー、タンクレス温水器、バス換気扇、コンポストトイレなどの該当製品の詳細も掲載されているので、購入も簡単。
照明はもちろんエジソンバルブ。
バンクボックスは壁のフレームがむきだしなので、5センチ厚の独立気泡断熱材で壁全体を断熱しています。熱損失のほとんどを防除でき、従来の断熱材パッケージよりも優れた性能を発揮するとのこと。フロア構造部もスチール製のトレーラーから隔離・断熱されており、標準的な断熱では防げない冬の底冷えも感じることがありません。「まるで品質の高い魔法瓶のように、暖かい空間は暖かく、冷たい空間を冷たく保ちます」と謳われています。
写真で示されているプランでは、焼杉材によるサイディングが用いられていますが、どんなサイディング素材でも自由に使用可能です。バンクボックスのむき出しのインダストリアル・スタイルは、インテリアもエクステリアも、マテリアル自体がデザインのキーとなります。DIY作業者がタイニーハウスに、オリジナルのルック&フィールを簡単に反映できるデザインパッケージとなっています。
バンクボックスは、一人暮らしに最適なタイニーハウスですが、カップルや家族向けに、20フィート(6.1メートル)から28フィート(8.5メートル)シャシーにも、デザインを修正することが可能です。ゲストルームやオフィススペースとしても活用できそうな印象です。
ヒカリボックス (Hikari Box) は、シンプルな建築プロセスで建てることができる、明るく開放的なモダンデザインのタイニーハウス。
24フィート(7.3メートル)シャシー用では、1階部分が184平方フィート(17平方メートル)あり、クイーンベッド用の79平方フィート(7平方メートル)のロフトと、収納用かツインベッドが置ける23平方フィート(2平方メートル)の2つのロフトがあります。
14箇所の窓と2つの天窓が、日本語で「光」を意味するタイニーハウス・ヒカリボックス(Hikari Box)を、エネルギー効率を犠牲にすることなく室内を明るい光でいっぱいに満たします。
メインロフトにつながる階段の下には、日本のタンス収納にインスパイアされた収納ボックスが格納されています。
シェルターワイズはヒカリボックスを、今までに手がけた中でもっとも簡単に作れるタイニーハウスと言っています。取り付け式のメタルルーフは、切妻や湾曲した屋根によく見られる複雑なディテールから作業者を解放します。すべての配管は、家のあちこちに走らせる必要がないよう1つのコーナーに集められ、タンクレス給湯器は壁の中に埋め込まれています。
サイダーボックス (Cider Box) は、2重ルーフのファサードのデザインが特徴的。この構造によりスペースを拡張し、計画的に配置された採光窓やオプションの天窓、全面ガラスドアを通して光が流れ込みます。
20フィート(6.1メートル)と24フィート(7.3メートル)のシャシーに対応し、2つの独立した寝室、フルキッチン、ランドリースペースを設置できるスペースがあり、カップルや小家族向けのタイニーハウスです。
メインロフトは、梯子ではなく収納コンパートメントになっている階段でアクセス。キッチンには、4バーナーストーブとバーシートのあるカウンタースペースがあります。
ZINEカルチャーが盛んなポートランドから、タイニーハウスのデザイン参考書がデジタル販売されているのは意外なような当然のような。たしかに個人のDIYerには、シェルターワイズの手頃な価格の資料はたいへん価値のあるものでしょう。アメリカでタイニーハウス・ムーブメントが浸透している現実を実感します。
Via:
padtinyhouses.com/books-plans
shelterwise.com
(提供:#casa)


今やこのワードで検索されない日はないほど関心を集めている「平屋」「小屋」「タイニーハウス」。インスタでハッシュタグを付ければ数万〜数十万の画像がヒットします。人口が減少し、新築や大きい家へのニーズが減っている今、これらは未来に向けた住まいの現実的な選択肢になりつつあるのでしょうか?
そんな「実際の所」を知りたい国内のビルダーが2018年11月13日、Tinysに集結。平屋・小屋・タイニーハウスをめぐる最新動向と、これらに先駆的に取り組んでいるビルダーの実例をシェアした「平屋・小屋・タイニーハウス ブランディング戦略報告会」の様子をレポートします!

ミニマムな住まいの最新ニーズや市場動向、それらを活用した取り組みの実例を知るため、車輪付きの宿泊施設兼コミュニティスペースである「Tinys Yokohama Hinodecho」に日本各地からビルダーたちが集まった。
住まいニーズの最新動向と「平屋元年」
はじめに、最新の時流と住まい手の価値観、平屋へのニーズについて、窪田国司さん(株式会社COTO UNIT代表取締役 主席クリエイター)に教えていただきました。

窪田国司氏/株式会社COTO UNIT 代表取締役 主席クリエイター。ハウスメーカーや工務店の視点に立って、ミニマムなコンセプトハウス、民泊、移住を視野に地方創生企画住宅、まちづくりをプロデュースしている。
窪田さんによると、今年は投資型民泊のニーズに対応している住宅会社が利益を大きく伸ばしているそうです。
「理由は『都心リスクヘッジ』。ここ数年増えている地震、洪水、台風といった自然災害の影響で、都心部に暮らす人々が『別の地域にも家族の居場所を持つ』必要を感じ始めており、それが投資型民泊も視野に入れたコンパクトな平屋へのニーズという潮流を生んでいるんです」
震災を経た30代の住まいの価値観

1980年代〜2000年初頭に生まれたミレニアル世代は、今までとは異なる新しい住まい方・働き方の価値観を持っており、現在、住宅適齢期を迎えている。
多感な時期に東日本大震災を体験した30代前後の世代は「家族で過ごすこと」を重要視しており、住まいを自分らしいライフスタイル実現の場と考えています。今年はそんな彼らが、21〜27坪くらいの平屋を現実的な住居として望み始めた「平屋元年」だと窪田さんは言います。
「2拠点居住といっても従来の『本宅+別荘』的な考え方ではなく、セキュリティとしての志向。そのため災害地区を避け、新幹線や空港からのアクセスの良い場所・立地が選ばれます。インターネットを使えば出勤せずに仕事ができる今、この志向はむしろ合理的なんですね」
暮らし慣れたマンションが感覚の基準

casa projectが開発を手がけた平屋の規格住宅「casa cago」の室内。
しかし、そこでなぜ「平屋」が好まれるのでしょう? それは都心でのマンション生活を基準に考えてみると容易に納得できます。
「そもそもマンションの部屋のつくりは床がフラットな『平屋』、広さも70㎡(2LDK)あれば十分で、実際に最も多く売れているのがそのサイズ。つまり、彼らが体感でしっくりくる生活の場の構造と規模感が『平屋70㎡』なんです」
最近はマンションでタバコを吸えないケースも多く、「自分の物なのに言うことをきかない家」になっていることも。愛煙家でなくとも、せっかく都心ではない地域に2拠点目を持つなら、自由度の高い一戸建てをと望む気持ちも理解できます。
ゼロ金利時代の終焉

大自然の中にポツンと建つタイニーハウスは、ミレニアル世代にとっての新しい豊かさを具現している。(Via:Airbnb)
一方でお金の話もシビアです。2018年の夏以降、金利が上昇し始め、ゼロ金利時代は終わりを迎えました。今や3000万、4000万といった額の住宅ローンは借りられない、借りたとしても返せない、という状況に変わっています。
「そうなるとやはり『建てられるとしたらコンパクトな平屋じゃない?』になって来るんですよね」
「平屋+α」が人気、共同所有や投資型所有も

地面に近い平屋では外とつながるライフスタイル、アウトドアリビングも人気が高い。「casa cago」外観一部。
窪田さんのお話によると、その平屋においても、いくつかの顕著なトレンドがあるようです。
まず住まいの機能として「平屋+α」であること。小屋裏のあるロフトハウスや、デッキ・庭を居住空間の一部として楽しむアウトドアリビングは特に人気が高く、他にはガレージ付きの平屋やリゾートにあるようなコテージ感覚の平屋も。好まれるインテリアも、一時の西海岸やブルックリンといったやんちゃなテイストではなく、成熟した自然志向であるミッドセンチュリーモダン系へと移っているそうです。
また、所有についての価値観も変わってきていて、独占することよりも仲間とのタイムシェアや共同所有、あるいは民泊などで収入を生みながら必要な時には自分も使うといった投資型所有の方が、少ない負担で大きな豊かさを得られる賢い方法だと考えられています。
ユニット単位で段階的に建築していく

台湾ではミニマルなユニットをつなぎ合わせていく規格住宅「行動木屋」の人気が高まっている。(Via:famwood.com)
そしてもう一つ見逃せないトレンドが、「段階建築」という家の建て方だそうです。
台湾で今、月に100棟近く建設されているのが「行動木屋」というユニット式のミニマムな平屋。リビングやキッチン、ベッドルーム、バスルーム、ワークスペースといった生活の場をユニット状に分け、自分に最も必要な場から段階的に建てていくという考え方の規格住宅です。価格はローンなしでも購入できる手頃なもので、ライフスタイルや家族の人数の変化に応じて建て増ししていくケースが多く、年間で1000棟以上も建築されているとのこと。先が読みにくい時代において、建物全体を付加したり削ったりできる家は、住まい手にとって非常に使い勝手が良さそうですね。
こうした可変性のある住まいからさらに発展して、もはや「不動産を持たなくてもいい。空き地にコンテナハウスを置けば十分、別の場所に移る時にはコンテナごと引っ越せばいい」といった「住み移ること」を前提とした住まいを考える人も増えてきているようです。
小屋フェスから始まった新たな出会い

2015年9月に長野県茅野市で開催した「小屋フェス」では、日本各地のビルダーによる20棟の小屋を展示。これを機に小屋ブームはいっそう加速した。(Via:SuMiKa)
さて、続いて「小屋」の動向について、9日間で14000人の来場者を記録した「小屋フェス」の仕掛け人であるSuMiKaの名取良樹さん(株式会社カヤックLIVING パートナーマーケティングマネージャー)にお話ししていただきました。

名取良樹氏/株式会社カヤックLIVING パートナーマーケティングマネージャー。自分らしい家づくりをしたいユーザーと住宅事業者とのマッチングサービス「SuMiKa」を運営。同サイト内で規格住宅のオンラインマーケット「SMARTMADE」も展開している。
「その人らしい住まい方を実現してほしいので、『SuMiKa』では家づくりのいろんな形を提示しています。建築家と一緒に家をつくることから離脱した人たちの今までの選択肢はハウスメーカーだったわけですが、その間を私たちは提供したいと思っています。そんな中でSNS上でリーチ数が伸びるのは、やはり『小屋』や『平屋』の投稿。なので、『小屋』というキーワードを取りに行ったというのが小屋フェスのもう一つの狙いだったんです」
家づくりのフックはいろいろあっていい

小屋フェスでも展示された天城カントリー工房による小屋「KIBAKO」。平屋と同じく、ロフト付き、デッキでのアウトドアリビングの潮流がここにも見られる。
「家づくりや住宅販売に取り組む中で私たちが感じているのは、住宅を購入するお客さんにとって、何がフックでも良いんじゃないかということです。なので私たちは、小屋をマーケティング商材の一つ、お客さんとの出会いをつくるものと位置づけています。小屋フェスに来た人も、実際小屋を買ったかというと傾向としてはそうではない。でもそこでお客さんが工務店を知り、小屋ではなく他の物を一緒につくったり、後日家の相談に来たりするケースはあります」
ユーザーは小屋に何を求めているのか?

「SuMiKa」内にある「小屋市場」にはさまざまな工務店の小屋が並ぶ。これをきっかけに工務店と知り合い、他の物(家など)を一緒につくっていることが多いという。
では、小屋に惹かれて来る人は、小屋に何を期待しているのでしょうか?
地方と人材のマッチングサービス「SMOUT(スマウト)」も手がける名取さんの見解は次のようなものです。
「地方や地域に目が向いている若者が多くなった今、暮らし方や仕事の仕方が非常に多角化しています。それに伴い、東京の家に住み地方にゴージャスな別荘を持つという従来のスタイルとは違い、東京の住まいもミニマム、もう1つの拠点もミニマム、両方合わせてどういう生活をするか、という価値観が生まれている。だから2拠点目、3拠点目は小屋でいいんじゃないかという発想です。
特に男性なら分かると思いますが、小屋を持ちたいと思う入り口は『小屋の中で何する?』というワクワク感です。しかし現実的にはスペースや予算、建築基準法などの理由で、都心の敷地には建たないことが多い。そういう中で実際に小屋が建つ状況というのは、ある程度絞り込まれるんじゃないかと思います」
小屋を建てている施主の実態
ここで月に5〜6棟の小屋を施工しているという岡山県の植田板金店に、お客さまの実態ついて教えていただきました。

岡山県で板金業を営む株式会社 植田板金店 代表取締役の植田博幸氏。実際に小屋を建てている自社顧客の動機や状況について自らの経験をシェアしていただいた。
「やはり趣味で建てたいと思って小屋を見に来るお客さんのほとんどが、奥さんを説得できないんですよ(笑)若い人だと、趣味のために100万円以上する小屋を買うより車や他の物を買わなくちゃならないし、お金のある50代60代の人だと『2階空いとるやん』と奥さんに言われてしまう(笑)ですから、うちが小屋をやり始めた初期は、ほとんどがネイルサロンなど女性のビジネスのニーズでしたね。店舗の初期投資としては安いですから。でも1年ぐらいやっていたら趣味で建てたいというご夫婦が現れ、今は少しずつそういうお客さんも増えています。需要のない所からコツコツと喚起してそうなってきたという感じです」
「動く家」のムーブメント

Tinys Yokohama Hinodechoもタイヤがついている「可動産」つまり「車」。車両型にすることで場の可能性が広がるケースもある。
「平屋」「小屋」についての状況が分かった所で、YADOKARIのウエスギからは「タイニーハウス」、特に「モバイルハウス」の動向について紹介させていただきました。

ウエスギセイタ/YADOKARI株式会社 共同代表取締役。平屋・小屋・タイニーハウスの最新動向を、世界の事例、異業種の動きも合わせて解説。
「世界では自然災害と金融危機をきっかけに、住まい方や可処分所得の使い方を再編集する動きが同時多発的に始まっています。
アメリカのタイニーハウスムーブメントは、サブプライムローンの破綻によるリーマンショック後に2008年から起こった文化で、タイヤ付きのシャーシで家を引っ張って住宅ローンに縛られない暮らしをしようというミレニアル世代(1980年代〜2000年代初頭に生まれた世代)の動き。これが面白いのは、設計図がインターネットで誰でもダウンロードできるオープンソースになっている点や、それをみんなで作ろうというコミュニティ型のプロセスがあるという点で、住まい方や豊かさを考え直そうという意識がよく表れています」
車を改造して、移動を住処に

スクールバスを家族でDIYしモバイルホームに仕立て直した「スクーリー」。白く輝く車両の中には、一家でくつろげるリビングや水回り、子ども部屋も備えている。(Via:dwell.com)
「この流れでミレニアル世代にもう一つ生まれてきたカルチャーが『Van Life (バンライフ)』。中古の車をリノベーションしてその中で住んだり仕事をしたりするムーブメントで、これが今アメリカではファッション化しています。昔のヒッピー的な意味合いではなく、カジュアルな暮らし方の一つとして行われているんですね。インターネットによってラップトップ一つあればどこでも仕事ができるようになり、場所に縛られない職種が増え始めたことで『移動する暮らし方』や『多拠点居住』も現実のものになってきています」

レトロなワーゲンバスを改造して住まいにしている彼の職業は、契約金2億円のメジャーリーガー。彼にとっての豊かさとは豪邸に住むことではなく、移動しながら海でのサーフィンや森でのキャンプを日常として暮らすこと(Via:Daniel Norris)
不動産から可動産へ
「国内市場でも、実は過去20年間でキャンピングカーが今年いちばん売れています。購入しているのはいわゆるアクティブシニア層(2007年以降に定年を迎えた団塊の世代)で、良い主屋も別荘も持っているんだけど、定年退職した奥様と一緒に温泉のある道の駅を転々とキャンピングカーで回るみたいな時流が出てきていて、しかもそのキャンピングカーの空いている期間を再レンタルする企業が伸びていたりするんですね。
つまりは、不動産がカジュアルになってきている。そういう人が多数派になってきているという意味ではなく、時代と共に豊かさの価値観が変容してきているのを感じていただけたら」
自動運転技術の発展、住宅と車が双方から歩み寄る

2018年9月にボルボ・カーズが発表した自動運転のコンセプトカー「360c」。運転席のない車内には、4つの異なるインテリアが施され、自動運転がもたらす移動するリビングスペースの未来を予期させる。(Via:cardesigntv.com)
「国内の自動車メーカー各社でも、自動運転技術の発展・モビリティ時代の到来を見越して、仕事ができるバンや家とドッキングする車など新しいタイプのモビリティを開発している一方で、設計事務所や大手ディベロッパーなど建築分野の企業も車のリノベーションを手がけ始めています。両方の側から、移動・可働を含んだライフスタイルへのアプローチが進んでいるのが興味深いですね。この先10年くらいで、モビリティと平屋が連動した家づくりのムーブメントが来そうな予感がします」
「地域マルシェ」×「トレーラーハウス」を自社のブランディングに活用

神奈川県茅ヶ崎市の建設会社 松尾建設株式会社の敷地で奇数月の第1土曜に定期開催している「茅ヶ崎ストーリーマルシェ」。回を重ねるごとに出店希望者が増え、地域に賑わいの場を創出している。
さて、報告会の後半は、すでに小屋、平屋、タイニーハウスを活用した取り組みを始めているビルダーの代表に、事例をシェアしていただきました。
神奈川県茅ヶ崎市で、自社の敷地内にトレーラーハウス(キッチン仕様)を設置し、マルシェなどのさまざまなイベントに活用している青木隆一さん(松尾建設株式会社 代表取締役)に、具体的な活動内容とその効果についてお話しいただきました。

青木隆一氏/松尾建設株式会社 代表取締役。「ストーリーのある家づくり」を目指し、注文住宅を主軸とするビルダー。早くからタイニーハウスムーブメントに着目し、トレーラーハウスをコミュニティ作りに活用。
「2013年から会社の駐車場敷地を利用してマルシェを始めたんです。5年やり続けて、参加してくれる店舗は20店を超え、出店希望を多く頂くようになってきました。2018年1月には中古コンテナを改装したトレーラーキッチンを作りました。キッチンがあることでマルシェやイベントのリピーターが増えましたし、いっそう人が集まりやすくなりましたね。みんなで楽しむ良い受け皿になっています。」
YADOKARIともコラボレーションして盛り上げているこの場所を夜も活用しようと、夏には映画上映や、花火、マルシェの常連さんたちとの飲み会も開催。地域に対しては、地元の商店街の飲食店を集めて合同BBQも行いました。お店同士が知り合うことで、お互いに口コミし、お客さんや地域同士の繋がりや循環を生むのが目的です。

冷蔵コンテナを改装しキッチンをつくったことで活動の幅が広がった。「冷蔵庫だから断熱も要らなくて工事は楽だったよ」と青木さん。

日中のマルシェが終わると、夜からは茅ヶ崎の皆さんとまちづくりを考えるイベントも開催。まさに地域のコミュニティハブ、コモンスペースとして賑わいをみせている。
新しい価値観の建築会社として認知される
こうした活動は、会社としてどのような成果につながっているのでしょうか?
「マルシェをやっていると、『あそこでおもしろいことやり始めたよね』と興味を持って見に来てくれる人が増えました。松尾建設を知ってもらえる一つの機会になっています。最近は車の改造の依頼まで受けていて、車検場と往復しながら俺は何屋だ?と思った瞬間もありましたが(笑)、でもこういうことをやっていると新しい価値観を持った建築会社だと認知してもらえます」
地域密着型だからこそ、自社を地域へ開いていく

イベントだけでなく、飲食店を始めたい人のトライアルの場としても活用して行きたいと青木さんは考えている。地域活性・地域貢献にもつながる試みだ。
「今後はトレーラーキッチンを、店舗を出したい人のトライアルの場として貸し出していこうと思っています。自分で飲食業を始めたい人がいたとしても、いきなり店舗を持つのは大変でしょう。その一歩を踏み出せるきっかけになれば。同様にアーティストの活動を支援するライブや、地元飲食店のコラボイベント、施主さんたちを集めてのBBQなど、地域の中の良いイメージの場所にしていきたい。災害時には炊き出しの場としても役に立てるかもしれません」
地域密着型のビルダーのこれからの在り方として、自分たちの会社を地域に開き、コモンスペース、コミュニティ・ハブとしての役割を果たしていくことが鍵になりそうです。
▼ 松尾建設 青木社長の手がける「茅ヶ崎ストーリーマルシェ」特集インタビューはこちら
http://www.matsuo-story.com/report/213/
タイニーハウスのワクワク感が、家づくりにつながる

先代はゼネコンとの仕事を事業の柱にしていた。青木さんが会社を継いでから、注文住宅事業やタイニーハウスを活用した事業を展開。元々の社屋の前に新しく加わった平屋の事務所やマルシェのスペースがその歴史を物語っている。
「マルシェも30回以上やって、それだけを見ると正直持ち出しもあるんですが、めぐりめぐってうちを選んでくれる人がいるのも事実。小屋やタイニーハウスに惹かれてくる人はワクワク感に魅力を感じているんです。そのワクワクを家づくりへ持っていくこともできるんですよね」
厳しくなっていく市場のどこで勝っていくのか。自然素材やデザイン性などいろんな要素はありますが、「ワクワク感」も重要な要素かもしれませんね。
カスタマイズできる平屋がもたらしたもの

CINCAがcasa projectと共に開発した平屋の規格住宅「casa cago」。日本人の空間の体感値の基本になっている6畳を1ユニットとして組み合わせ、自分好みの住まいをつくることができる。
最後は、2017年に誕生した、6畳1ユニットを自由につなげて住まいをつくることができる平屋の規格住宅「casa cago」を、カーサプロジェクト株式会社との協業で手がけた愛知県高浜市のビルダー畠孝二郎さん(株式会社シンカ 代表取締役)に、「平屋」での事業の広がりについて伺いました。

畠孝二郎氏/CINCA 代表取締役。かかわる人の幸せづくりをミッションに、愛知県高浜市で注文住宅や規格住宅を手がけるビルダー。平屋・小屋を切り口に新しい事業展開を開始
「私たちは愛知県で2番目に小さな町で、車で30分圏内をメインに家づくりをしているビルダーです。日頃の仕事のほとんどは地域からの紹介によるもの。そんな中で、このcasa cagoを始めてから私たちの会社に起こった大きな変化と言えば、『平屋を建てたい』というお客さまがものすごく増えたことです。
私たち地域の工務店がこれから生き残っていくためにキーとなるのは、お客さま一人一人の人生観、いわゆるライフスタイルを大事にすることだと思います。私たちが提供するのは家という『モノ』ではなく、お客さまが人生を過ごしていくのにどういう住まい方をしたいかという『コト』。それをお客さまと話す機会が最近とても増えました」
新しい豊かさの価値観を持つ施主と出会うために

平屋を自社のインスタグラムに投稿したところ、ふだんの10倍以上の「いいね!」が寄せられ、畠さんは思わず「事件だ!」と叫んだそう。
「例えばメガ企業に勤めていて年収も非常に高く、1年の3分の1くらい休日があるというお客さまもいますが、彼らがそのお金や時間をどう使うのかというと、過ごしたいライフスタイルを実現するために平屋を求めていたりするんです。
ひと昔前は平屋と言えば年配者の終の住処みたいなイメージでしたが、最近は若い人が口コミやネットから『平屋』というキーワードで驚くほどたくさん来てくれます。坪単価の高い土地柄なので、平屋の場合は、土地から購入して…というよりも、ご両親が持っていた土地に建てることになるケースが実際は多いのですが、問い合わせの数から見ると可能性は非常に感じます」

ル・コルビュジエのカップ・マルタンの休暇小屋を彷彿とさせるミニマムなデザインは、飽きることなく長く愛用できそう。規格化されていることで良質な資材を使った家をリーズナブルに手に入れられるのも施主には大きなメリット。
平屋+外構のニーズも多い
「来年は自社の駐車場として確保していた200坪の土地に、平屋+外構のモデルハウスをつくろうと計画しています。平屋はプラス庭のニーズが多いんですよ」と畠さん。
平屋独特の地面との近さから、庭と一続きになったアウトドアリビングや自然に包まれる暮らしへの志向が加わるのもうなずけます。
「casa cago」はcasa projectの提携工務店でも取り扱える規格住宅です。実物は愛知県蒲郡市にある泊まれる住宅展示場「SHARES ラグーナ蒲郡」で宿泊して体感することもできます。
▼「casa cago」公式サイトはこちら
https://www.casacago.com/
▼ 展示施設「SHARES ラグーナ蒲郡」の詳細はこちら
https://www.shares-gamagori.com/

広々とした敷地に建つコンパクトな平屋は、リゾートに暮らすようなのびやかな暮らしをもたらしてくれそうだ。
報告会参加者の声
「平屋」「小屋」「タイニーハウス」ムーブメントの背景にあるお客さまの豊かさの価値観の変容、そして実際に自社の魅力づくり・顧客づくりの戦略としてこれらを取り入れているビルダーの成果を知ることができたこの報告会。参加者の方々に会場で感想を聞いてみました。

熊本の住宅会社で広報を務める女性も参加。「自社でも小屋商品を展開しており、参考になるお話がたくさん聞けました」とのこと。
横浜の設計事務所から参加した女性は、
「大きい家が好まれなくなって来ているのを感じ、お客さんはどこへ行っているんだ?というのを知りたくて参加しました。最近のお客さんのニーズが知れて良かったです。ここから設計事務所としてどうしていくかを考えたい」
栃木県で地域密着型の工務店を営む経営者の男性は、
「日本の社会が縮小していく中で、若い世代が家を持とうと思わなくなって来ています。地域の過疎化も進む中で、何か人を呼べるものがほしいと参加しました。Tinysのような動産を使った宿泊施設は魅力的。ぜひ知見やノウハウを今後も勉強していきたい」
熊本が本社の住宅会社の女性は、
「今までは2000万円代くらいの新築を建てるお客様が多かったのですが、時代は変化しています。自社にも小屋商品があるので、今日の戦略を参考に、違うニーズを捕まえたい」

報告会の後は全国から集まったビルダーさんたちが一緒にテーブルを囲んでBBQ。リアルな情報交換ができ、互いに刺激し合える貴重な機会となった。
それぞれ地域は違っても、家づくりでお客さまに喜んでもらいたいという気持ちは参加したビルダーの誰もが同じ。反対に家を購入する側も、住まいの価値観を齟齬なく理解し、自分らしいライフスタイルを実現してくれるビルダーを心から求めているはずです。「平屋」「小屋」「タイニーハウス」の存在が、その幸せな出会いの一角になれば良いですね。
ブランディング戦略報告会の後は、Tinys恒例のBBQにみんなで舌鼓を打ち、寒さに負けないホットな夜は幕を閉じました。
関連企業
カーサ・プロジェクト株式会社
https://www.casa-p.com/
casa cago
https://www.casacago.com/
松尾建設株式会社
https://www.matsuokensetsu.co.jp/
CINCA
http://www.cinca.co.jp/
株式会社植田板金店
http://uedabk.jp/
株式会社カヤックLiving
https://www.kayac-living.com/
YADOKARI株式会社
https://yadokari.net/wp/
企業の戦略には、「デザイン思考」や「アート思考」が重要だと指摘されている昨今ですが、果たしてクリエイティブなセンスって一朝一夕に習得できるものなんでしょうか?ニューヨークを本拠に、コワーキングスペースをグローバルに提供するWeWorkは、幼少時の教育のあり方に注目。起業家マインドを育てる新しいスクール「WeGrow」を、マンハッタン・チェルシー地区の本社近くにオープンさせました。
(さらに…)
ここはイタリアの北東、Malborghetto Valbruna (マルボールゲット・バルブーナ)地方。アルプス山脈の中のJulian Alps (ジュリアン・アルプス)という部分から、1,250メートル上がった地点の間にあるUgovizza (ウゴビッツァ)というオーストリアの国境沿いにある長閑で小さな村。
この村に、Architetto Beltrame Claudio(アーキテット・ベルトレイム・クラウディオ)という建築会社の、DomusGaia (ドムス・ガイア)によって建設された持続可能なエコB&Bがある。
(さらに…)
海抜が低いため、「低い土地の国」と言われているオランダ。運河や風車がよく整備された美しい景観で「水と風車の国」というイメージが強いが、今回のスモールハウスは、そんなイメージとは少し違ったオランダの森の深くにひっそりと佇んでいる。
Woonpioniers (ウーン・パイオニア)という建築会社のDaniel Venneman (ダニエル・ベネマン)という人物が中心となって建築した、このスモールハウスIndigo Atelierwoning (インディゴ・アトリエワーキング)は、論理的に製品を作っていくオランダらしいアイデアが詰まっている。
(さらに…)

イラスト:千代田彩華
小屋を媒介にして、仲間やコミュニティができる事例を探してみた。
「つかう」「つくる」「あつまる」。いろいろなシーンが見えてきた。
小屋をみんなで「つかう」
仲間やコミュニティは、何かを共有することで生まれ、関係が深まる。
小屋ならば、一番シンプルなのは小屋そのものを共有することだ。
共同で手に入れて、みんなで楽しめば、仲間との思い出が増えていく。
地域のみんなが活用する「コミュニティスペース」という発想もある。
人が立ち寄って日常を共有する、カフェのような役割を果たしたり、
子どもたちが集まって遊ぶ公園代わりになったりするだろう。
協力して「つくる」
小屋を「つかう」のではなく、みんなで「つくる」のも良い。
それなりに大きなものを作るから、協力して進める作業が多いのだ。

みんなで協力してDIY
デザインやDIY技術、現場の仕切りなど、いろんな人の”得意なこと”が活きる。
熟練者が、興味のある人に技術を伝授する場面なんかもあるだろう。

子どもにも仕事が
こうして一つの「小屋」を完成させ、思い出や達成感をともにする。
2018年の夏、10人以上が集まった1週間の泊まり込みのワークショップで、モバイルハウスをつくって手に入れた松永さんが、次のように話してくれた。
「一人でつくるのは、技術的にも精神的にも難しかったと思います。みんなで楽しくやるのが、完成させる一番のコツだったんじゃないかな」

制作途中に記念写真。中央から黒い手袋で手を振っているのが松永さん。このモバイルハウスで、仲間を訪ねる旅に出るという(龍本さん提供)
小屋をつくることで仲間ができ、仲間がいるから小屋もできるのだ。
極論すれば、必ずしも小屋でなくても良いだろうけれど。
モノ自体ではなく、そのプロセスである「つくる」を共有する。
みんなでDIYをするのに、小屋はちょうどよい規模感だ。
小屋同士が時間や思い出を共有する「あつまる」
小屋は小さいから、「あつまる」ことにも向いている。
小さな家で暮らす人たちは、価値観が通ずる部分もあるだろう。
屋外スペースを共有して暮らせば、けっこう距離が近い”ご近所さん”になる。
移動可能な小屋であれば、日時を決めてどこかに集まるのも楽しい。

30台以上のモバイルハウスが大集合した「キャンパーフェス2018in安曇野」
実践者同士だからこそ、語り合えることもあるだろう。

モバイルハウスの工夫をお互いに紹介して情報交換
都市の”部活動”としての小屋
何かを共有して、仲間を増やしたり、つながりを深めたりする。
そんな”部活動”のような機会が、都市に求められているのかもしれない。
小屋を「つかう」時間、
小屋を「つくる」体験、
小屋で「あつまる」空間。
小屋は、いろいろなシーンを誰かと共有するのに絶妙なスケール感だ。
(了)
| 【都市科学メモ】 |
小屋の魅力
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仲間やコミュニティをつくるツールになる |
生きる特性
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共有しやすさ、適度なDIY難度、機動力、価値観が似た人を集める力 |
結果(得られるもの)
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仲間・コミュニティ、思い出や時間の共有、協力体験、小屋を完成させる活力 |
手段、方法、プロセスなど
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ひとつの小屋を共同でつかう
すでにある仲間やコミュニティで小屋を手に入れれば、そこで過ごす時間を共有できるようになる。 |
イベントに参加する
「つくる」仲間を気軽に探したい人向け。小屋が自分のモノにならないかもしれないが、ネットワーク、思い出、充足感は得やすい。経験豊富な人から知恵を得られる可能性も。SNSなどを通じてイベントを探すのも有効。いきなり「つくる」イベントではなく、まずは小屋をテーマに交流するような場に出かけても良い。下記は具体例
YADOKARI小屋部
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複数の小屋が集まる
自分の小屋がある前提。タイニーハウスビレッジのような場所に住んだり、モバイルハウスでイベントに参加したりする。小屋を持つ者同士、価値観に通ずるところがあるはず。小さい小屋だからこそ、広くないスペースにたくさん集まれるし、専有するものが少ないからこそ、シェアや助け合いが生まれやすい。 |
| 【Theory and Feeling(研究後記)】 |
| 前回記事のここで書いた「旅する星空案内小屋」みたいなの、どこかでみんなでつくってしまうという方法があるなぁ、と書きながら妄想が膨らんできたりしました。
その勢いで11月上旬、「キャンパーフェス2018in安曇野」にお邪魔して情報を集めてきたわけですが、その話はまたどこかで。(たに) |
「都市を科学する」の「小屋編」は、横浜市の建築設計事務所「オンデザイン」内で都市を科学する「アーバン・サイエンス・ラボ」と、「住」の視点から新たな豊かさを考え、実践し、発信するメディア「YADOKARI」の共同企画です。下記の4人で調査、研究、連載いたします。

人口750人の小さな村が「タイニーハウスの村」として国内外から注目を集めています。そんなきっかけとなったタイニーハウスデザインコンテスト開催も今年で3回目。
応募者不問、未来の住まい方を一緒に創り、地域課題の解決に寄り添いませんか?今年もたくさんのご応募お待ちしています!
応募者不問!「タイニーハウス デザインコンテスト2019 小菅村×YADOKARI」開催!
日本初「タイニーハウス デザインコンテスト2019 小菅村×YADOKARI」開催!(応募登録2019/2/28 作品提出3/31 まで)
⇒ http://kosuge.yadokari.net/
小菅村×YADOKARIで、第3回目となる「タイニーハウスデザインコンテスト」を開催します!官民協働で行われるこのコンテストの素晴らしいところは、受賞作品が実際に建設され、村の試住・移住の拠点となり、さらに販売も行っていくという実践活用に重きを置いているところ。絵に描いた餅では終わりません。
受賞作品が実際に村に建設され、村の課題解決に向けた活用を行う
第1、2回(2017、18年)は累計応募も世界中から450組を超え、優秀作品に選ばれた6作品が実際に小菅村に建設されることとなりました、今回も優秀作品が実際に建設・販売・活用される予定です!
【第2回:2018年】タイニーハウスデザインコンテスト審査会のレポート(クリックで記事にジャンプ)
【第1回:2017年】タイニーハウスデザインコンテスト授賞式をレポート(クリックで記事にジャンプ)

未来の住まい方を一緒に創り、地域課題の解決に寄り添いませんか?
タイニーハウスや小さな暮らしのムーブメントは、自然災害や金融危機が大きなキッカケとなり日本だけではなく、欧米・欧州・北欧などの先進国を中心に同時多発的に始まっています。
またこれらの動きは、消費文化へのカウンターとしても機能し、人間関係、物との距離、働き方、産業サービス、経済システム、コミュニティのあり方など、あらゆることを再編集するきっかけになることでしょう。
このコンテストを通して「本当の豊かさとは?」を皆で考え、議論し、未来の豊かな暮らしの選択肢を一緒に創っていきましょう。たくさんのご応募をお待ちしております!
コンテストの詳細・応募申込はこちら
⇒ http://kosuge.yadokari.net/
