ベジタリアン、ヴィーガン、グルテンフリー。ヘルシー指向とサステナビリティへの関心の高まりと相まって、食材に制限を設ける人たちが欧米で増加しています。幅広いメニューから、様々な食のスタイルに適応した料理を選べるレストランも登場しています。ロサンゼルスのレストラン、コミッサリー(Commissary)では、グリーンハウスのような店内で、野菜とフルーツを使った豊富なメニューからジューシーな肉料理まで、目と舌で楽しむことができます。
(さらに…)

(c)Naoko Kurata
どんな世界でも、前例のない新しいことを始めるパイオニアには、苦労がつきものです。タイニーハウス生活も例外ではありません。前回の記事では、オランダのタイニーハウス・ムーブメントをけん引する女性、マリョレインさんと彼女が設立した住宅協同組合の活躍をお伝えしていました。
一見すると至極順調な彼女たちのタイニーハウス生活ですが、その存続すらあやぶまれる危機に何度も遭遇してきているのです。今回の後編では、彼女たちが乗り越えた危機の一部をご紹介したいと思います。
【危機その1】地元水道局からの訴訟

(c)Naoko Kurata
2018年3月にマリョレインさんと3名の女性たちが設立した住宅協同組合の「Tiny House Alkmaar」。マリョレインさんが既にアルクマールの空き地に2年住んだ実績を踏まえ、アルクマールの自治体は「Tiny House Alkmaar」に対し「最大5名のメンバーが、5年間その場所に住み続けることができる」という許可を下したのです。
けれど、それに対し思わぬ方向から横やりが入りました。それは、マリョレインさんたちのタイニーハウスのすぐ近くにある汚水処理施設からの異議申し立て。施設を管理する水道局(hoogheemraadschap)が、「汚水処理場の近くに人が住むと、その臭いに対してクレームが入るかもしれないから立ち退いてほしい」と、「クレームを未然に防ぐための訴え」を裁判所におこしたのです。見えにくいですが、その汚水処理施設の一部が上の画像のマリョレインさんの家の左奥に写っています。
その訴えに驚いたマリョレインさんたちでしたが、4月に実施された裁判には関係者全員で出席。現地メディアも取材に訪れ、オランダのタイニーハウス・ムーブメントの今後を左右すると言っても過言ではない裁判の行方を見守りました。
結果として、裁判所は水道局の訴えを棄却しました。マリョレインさんが既に2年同じ場所に住み、臭いに対する違和感を覚えていなかったということから、水道局の懸念する事態にはならないと判断されたのです
(私もマリョレインさんの住む場所を2度訪れましたが、異臭は全く感じませんでした)。
この裁判所の判断を得て、「Tiny House Alkmaar」はプロジェクトを継続できることになったのです。その結果を聞いた瞬間、マリョレインさんたちは涙を流して抱き合ったのだとか。
【危機その2】水不足で消防車出動

(c)Naoko Kurata
もうひとつの困難は、ライフラインの確保に関するトラブルでした。「Tiny House Alkmaar」の家たちは、基本的にすべてトレーラーハウスであり、オフグリッド・ハウスです。オフグリッドとは、電力会社が提供する送電網から離れ、主に自然エネルギーを活用し独自に発電をすることを意味しています。

(c)Naoko Kurata

(c)Naoko Kurata
電気のみならず、水に関しても上下水道から独立しているタイニーハウスたち。飲料水や生活用水も独自調達です。そのため、マリョレインさんたちはみんな雨水をろ過して使用しています。形は異なっても、全員が独自の水タンクを所有しているのです。
ところが、2018年春から夏にかけてのオランダは、雨が少なく降水量不足。そんな乾期に引っ越してきてしまったマリヤさんとマールースさんのタンクには、生活を営めるほどの水がなかなか溜まりませんでした。
そんな時に彼女たちの生活を支えてくれたのは、地元の消防団。水は生命維持にもかかわるので、要請があれば出動してくれるのです。心強いですね!
これは、マールースさんの貯水タンクに給水してくれている様子。彼女の家の雨水ろ過装置は家のサイドに収納されていますが、1200リットルの容量のある貯水タンクは床下にあるのです。

(c)Naoko Kurata
消防団のおかげで、とりあえずの生活を営めるだけの水を確保できた「Tiny House Alkmaar」の住人たち。けれど、オランダでは依然として降雨量不足なので、まだシャワーの使用には二の足を踏んでいるのだそう。ご実家や友人の家でシャワーを借りているのだとか。早く彼女たちの水不足が解消されてほしいと思います。

(c)Naoko Kurata
裁判も消防団への出動要請も、なかなか大変な経験ですね。けれど、オランダにおけるタイニーハウス生活のパイオニア的存在の彼女たちの苦労の経験は、「小さな暮らし」を夢見る人々にとってはこの上ない前例です。これから「Tiny House Alkmaar」に引っ越してくる予定の4人目と5人目のメンバーも共に、ぜひ全員で力を合わせて困難を乗り越えていってほしいと切に願います。そして「タイニーハウス・オーケストラ」も、彼女たちの活動を陰ながら応援していきたいと思います。
Via:
marjoleininhetklein.com
tinyhousealkmaar.nl

(c)Naoko Kurata
タイニーハウス・ムーブメントは、アメリカから発生しました。けれど、今やその種火は世界中に伝播し、あらゆる場所で「小さな暮らし」にチャレンジする人々が続出しているのです。ヨーロッパ大陸の北西部に位置するオランダでもそれは例外ではありません。「小さな暮らし」のパイオニアたちが起こしたムーブメントに乗り、今では多くの人がタイニーハウス生活を始めたり、その準備を進めています。そんなオランダにおけるタイニーハウス・ムーブメントの中心地ともいえる場所を見学してきました。
住宅共同組合「Tiny House Alkmaar」

(c)Naoko Kurata
オランダにおけるタイニーハウス・ムーブメントを語るとき、外せないのがこの女性。アルクマールという街で2016年からタイニーハウス暮らしをしているマリョレインさん(Marjolein Jonker)です。以前、「未来住まい方会議」で彼女の素敵な家をご紹介していました。
その後も彼女の快進撃は止まらず、タイニーハウス生活に関する様々な講演を行ったり、タイニーハウス生活のはじめ方に関するオンラインコースを主催しているのです。オンラインコースは、実際の受講者から「よくわからなかった法律面のことがしっかり理解できた」と非常に高いフィードバックを得ているのだとか。

(c)Naoko Kurata
そんな彼女のタイニーハウス生活ですが、3年目を迎える今年、「非常に大きな変化」が起こったのです。その変化を目にするために、1年半ぶりにマリョレインさんのタイニーハウスを訪れました。

(c)Naoko Kurata

(c)Naoko Kurata
相変わらず可愛らしいマリョレインさんのタイニーハウス。一見すると、外装も内装も大きな変化は見られません。では、いったい何が「大きな変化」なのでしょうか。それを見るために、少し離れてみましょう。

(c)Naoko Kurata
そう、実は彼女の住む敷地内に、タイニーハウスが増えたのです!
彼女のタイニーハウスがあるアルクマールという自治体に「自分もマリョレインのようにタイニーハウスに住みたい」「どのようにすればいいのか」という問い合わせが400件も寄せられたため、自治体はマリョレインさんにタイニーハウスに関する組織のオーガナイズを依頼。そこから彼女は数名の熱烈な希望者と協力し、「Tiny House Alkmaar」という住宅共同組合を設立しました。自治体は、この「Tiny House Alkmaar」に「この敷地内に5名が最大5年、(オフグリッド)タイニーハウスに住むことを許可する」と決定したのです。一般人の問い合わせが自治体を動かしたのですね。希望を感じさせます。
太陽光パネルが地面にあるタイニーハウス

(c)Naoko Kurata
2018年3月の組合成立から数か月、既に2名の女性がマリョレインさんのタイニーハウス横に引っ越してきました。ニューフェイス2名の新しいタイニーハウスをご紹介します。

(c)Naoko Kurata
まず、マリョレインさんの家のすぐ横にやってきたのは、マリヤさん(Marja Zwuup)という女性のタイニーハウス。

(c)Naoko Kurata
左奥の、赤い服の女性がマリヤさんです。

(c)Naoko Kurata
2018年4月下旬に引っ越してきましたが、内装の壁の塗装など、まだ手を入れなくてはいけない部分があると語ってくれました。「でも、暮らし心地は最高!」なのだとか。

(c)Naoko Kurata
そしてマリヤさんのタイニーハウスの特徴は、太陽光発電のためのパネルが家の横に設置してあること。何故そのようにしたのか不思議に思って訊いてみると、マリヤさんはいたずらっぽく「予算の都合」と答えてくれました。
なんでも、この家を敷地に設置した時点でもまだ屋根に若干の手入れが必要だったそうで、職人が「とりあえず」と横に置いてくれたのだとか。その段階で予算の限度が見えてきてしまい、屋根に設置するための追加出費に二の足を踏んでいるのだそう。
「でも、パネルがすぐ手の届くところにあると、汚れてもすぐ掃除できるし便利よ」と話してくれました。確かに、何か不調があっても屋根には簡単に登れませんし、地上にあれば転落の心配もありません。敷地に余裕があるからこそできるフォーメーションですが、これはこれで都合が良さそうです。
デッドスペースなし!収納力抜群のタイニーハウス

(c)Naoko Kurata
そして更にその奥にある3軒目の家主は、マールースさん(Marloes van der Gulik)という女性。窓とドアを兼用するタイニーハウスが多い中、彼女の家はしっかりと右側に玄関が設けられています。

(c)Naoko Kurata
ちなみにこの家の右側には、外側からアクセスできる雨水浄化装置と物置兼用のスペースがついています。こういう収納が意外と役に立つんですよね!

(c)Naoko Kurata
室内は、LDKとベッドスペースがすべてすっきりと収まっています。クローゼットがベッドと一体化しているので、収納力も抜群です。

(c)Naoko Kurata
そして角度を変えると、テレビを発見。天井部分にも小引き出しがあり、デッドスペースは皆無です。

(c)Naoko Kurata
マールースさんの家の横には、あと2軒の家を迎え入れるためのスペースが空いています。マリヤさん、マールースさんに続く4人目と5人目の住人も、現在タイニーハウスの準備を進めているそう。早く5軒並んだ光景が見たいですね!
一見すると、順風満帆に感じられる彼女たちのタイニーハウス生活ですが、実は様々な困難を乗り越えたうえで成立しているのです。後編では、そんな彼女たちの知られざる苦労もご紹介したいと思います。
ライター:倉田直子
Via:
marjoleininhetklein.com
tinyhousealkmaar.nl
ロンドンでは、アパートの平均家賃が23万円を超え、毎年の高い上昇率も衰える気配がありません。住宅価格の高騰は、特に若年層にとって深刻な問題。近年、この住宅問題の解決策の一つとして注目を集めているのが、空きビルに宿泊施設を設け、低家賃で貸し出す「不動産ガーディアンシップ」と呼ばれるアプローチです。
(さらに…)
ちょっぴりいそがしかった1週間。そんな週末は、自然に囲まれたミニマルな家で過ごしてみませんか? 「池の別荘」と名づけられたこの小さな家は、アメリカ・ワシントン州のオリンピック半島にあります。池のほとりにある森の牧草地のなかに建てられており、よく目をこらしてみないと見落としてしまうほど、森に溶け込んでいます。この家の持ち主は「別荘」と呼んでいますが、このサイズだと小屋と呼ぶほうがふさわしいかもしれませんね。どちらの名前で呼ぶにしろ、この「池の別荘」は、訪れる人々を自然で包み込み、リラックスをプレゼントしてくれます。
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注目のbud brandに関心を寄せる多くの家づくり・ものづくり関係者が全国からTinysに集まった。
日本のものづくりと住宅の未来を変えるかもしれない重要なプロジェクト「bud brand(バッドブランド)」をご存知でしょうか?
6/27、横浜市日ノ出町の京急電鉄高架下にある動産・タイニーハウスを用いた複合施設 Tinys Yokohama Hinodechoで、「bud brand」のイベントが行われました。
この日のイベントは、毎年4月に開催される世界最大規模のデザインの祭典「Milan Design Week(=ミラノデザインウィーク)」にすでに3年連続の出展を果たしている「bud brand」の、2018年の作品および出展による影響・効果を、このプロジェクトに関わるみんなで共有するのが目的です。
bud brandは2016年から3年連続で世界最大規模のデザインの祭典ミラノデザインウィークに出展している
bud brandとは?
「bud brand」とは、才能あふれる次世代の日本人クリエイターが世界でひと花咲かせるためのプロジェクト。
主宰しているのは、住宅からプロダクト、グラフィック、システムまで豊かなモノコトをデザインするクリエイティブカンパニー「FANFARE」と、日本の住宅の価値・寿命・性能を世界レベルにすべくビルダーや建材メーカーをつないでリソースを共有する会社「casa project」を中心とするチームです。

ミラノデザインウィーク開催期間中はミラノの街全体が会場と化す。「bud brand」はメイン会場の次に来場者数が多いエリアに出展。
このプロジェクトが「つぼみ(bud)+綺麗に咲かせる(brand)」と名づけられた背景には、情報の大量消費時代に発信していても埋もれがちな若手クリエイターのデザインやアイデアを、インターネット上はもとより、情報が精査された“リアル”な環境で世界にアピールできる場を増やしたいとの想いがあります。

日本の若手デザイナーたちの作品がミラノの会場に並ぶ。世界の舞台で自分のデザインへの評価を直接体感できる貴重な機会。
その一環として行なっているのがミラノデザインウィークへの出展。本会場だけで出展企業は約2000社、期間来場者数は約40万人を超え、ミラノデザインウィーク全体では100万人もの来場者が集まるこのイベントは、当然ながら出展するのに多くの費用がかかり、どんなに才能があっても若手クリエイターが1人で出すのはたやすいことではありません。
だからこそ「bud brand」の名の下に優れた作品を束ね、支援者を募って、みんなで出そう!というのがこのプロジェクトの主旨の一つ。
こうして日本産まれのデザインをミラノで発信し、世界中の人々にダイレクトに見てもらうと同時に、クリエイター・支援者も現地で世界のデザインを感じ刺激を受けることによって、日本のデザイン文化の未来をより良いものにしていくことが「bud brand」の意義です。

「家・まちなみ」に直結する地元ビルダーたちが、デザインやクリエイターの価値を理解し大切にする地域には豊かな未来が広がりそうだ。
家づくりに関わる企業がクリエイターを支援
6/27の報告会には、2018年4月のミラノデザインウィークに「bud brand」から出展したクリエイター、職人、技術者、学生らのつくり手と、それぞれの作品の支援者が、日本各地からTinys Yokohama Hinodechoに集まりました。
この支援者というのが、住宅のビルダー・工務店・建材メーカーなど、家づくりの分野で地元に根ざして活躍している企業である点が「bud brand」の大きな特徴です。

満席となった会場でbud brandの梶原清悟さん(FANFARE代表)が開会の挨拶。
ブランディング戦略報告会の様子
さて、Tinys Yokohama Hinodechoでの報告会は「bud brand」の梶原清悟さん(FANFARE代表)のご挨拶からスタート。自らがデザイナーでもある梶原さんには、このプロジェクトに対する、内側から滲み出た強い想いがあります。
「今まで僕らはミラノデザインウィークに行き刺激をインプットして持ち帰る、というだけだったけれど、デザイナー、クリエイターに加え、地場産業や地域のつくり手、学生も一緒に、“世界へ向けて産み出していこう”という動きが『bud brand』です。それぞれが日本に帰ってきた時の広がりが実際にあるからこそ、この先も続けていきたい。今日はその成功事例を発表し、みなさんがこれからどう変われるかのきっかけにしていただければ」

2018年のミラノデザインウィーク出展作品がTinysにも陳列された。テーマは「お祝い」
2018年のテーマは「お祝い」-おめでたいプロダクト-
今年のbud brandの会場となったsuper sutudioのKeyカラーには、「もしかして日本?」を連想させるような朱赤が用いられました。そんな中、「bud brand」の今年の作品テーマは「お祝い –おめでたいプロダクト-」。
四季折々の暮らしの中にある小さなお祝い事から、人生の節目に際した大きなお祝い事まで、祝福の気持ちを託し、贈る方も贈られる方も幸せになれるモノを、各地の家づくり関係者のサポートを受けながら、若手デザイナーや学生、地場産業の職人・技術者らがチームとなって作り上げました。
報告会では、ミラノデザインウィークに出展した13作品のうち7作品の関係者が、取り組みの経緯や根底にある想い、出展によって得られたことなどを熱く発表。その一部をご紹介します!

Case 01:HIBITSUGI/カッティングボード 自然の木のヒビに金継ぎを施し華やかなお祝いの品に。
Case 01:HIBITSUGI(ひびつぎ)/カッティングボード
ふつうなら捨ててしまうヒビの入った木のまな板を、日本古来の「金継ぎ」の技法を用いて華やかな贈り物に仕立てた「HIBITSUGI」という作品。割れや欠けを金を使って継ぐことで、二度と離れない、唯一の美しさを持つ「ご祝儀道具」にアップサイクルしてしまう日本の美意識を、「木」と組み合わせました。
デザイナーはFANFAREに所属する木谷勇也さん。そして職人としてこの作品を成形したのは、鳥取県で自然木の特性を生かした家具やプロダクトを制作している坂口祐貴さん(WONDERWOOD)です。

木肌の美しさが際立つまな板「HIBITSUGI」を手がけたWONDERWOODの坂口さん。
先に世界へ発信し、日本に逆輸入するという可能性
ミラノデザインウィークのブースで多くの外国人にこの作品をアピールしてきた坂口さん、「bud brand」による日本発のデザイン、プロダクトの発信に確かな手応えを感じたようです。
「驚いたのは、まな板というプロダクトをブースを訪れた外国人の7割がご存知で、そのうちの8割が『金継ぎ』という日本の技法のコンセプトを知っていたことです。フランスの方から知人の入居祝いに贈りたいとオーダーが来たり、投資家からも興味を持っていただいたりと、ミラノデザインウィークで世界の人に認めてもらって日本に逆輸入するという発信の仕方に大きな可能性を感じました。出展者同士でも『次はシンガポールで一緒に何かしましょう』といった新たなプロジェクトも始まり、たくさんの方とご縁させていただくことができました」

以前からデザイン性の高い住宅にこだわって提供してきた熊本市のビルダー「Logic Architecture」代表の吉安さん。
ビルダーとして、ミラノの刺激を家のクオリティに生かす
この作品をサポートしたのが、年間180棟ものデザイン性の高い住宅を提供している「Logic Architecture」という熊本市のビルダーです。事務所のテーブルを自然木の一枚板でつくってもらったことがきっかけで坂口さんと知り合ったという、代表の吉安孝幸さんからお話がありました。
「会社を立ち上げてから毎年ミラノデザインウィークへの視察をしています。そこでインプットした最先端のトレンドを、どうやって住宅に生かすか考えて取り組んできた私たちの家づくりが、少しずつお客様に支持されてきたと思います。ミラノデザインウィークに行くたび、いつかここにブースを出したいと思いを募らせつつ、費用は莫大だし、じゃあ何を出す?という壁がありインプットだけに通っていましたが、『bud brand』ならみんなで協力しながら出展できて負荷が少ないので、こんなに嬉しいことはありません。
私たちにとって『bud brand』は、企業としてのブランディングや新卒採用に効果を発揮しています。社員のインプットのためにミラノデザインウィークに連れて行く。若いからダメではなく、若くても行ける風土をつくっています。やはり今は『可能性を感じる会社』というのがアピール力がありますから。
もちろんこうしたことが『bud brand』の目的ではないですが、私たちとしてはしたたかに使っていく。その結果、社員や設計士のクオリティも上がり、つくるもののクオリティも上がる。それが企業の付加価値になっていくと思います」

Case 02菱/酒枡 三州瓦の素材と技術で菱形の枡を制作、組み合わせたり重ねたりする際の精度が問われる。
Case 02:菱/酒枡
愛知県三河地方の伝統産業である「三州瓦」の素材と技術で、古来よりおめでたい形とされる「菱形」の酒枡を仕立てました。単体での使用はもちろん、宴席を囲む人の数だけ組み合わせたり重ねたりして、グラフィカルな模様や建築物のようなフォルムをつくり楽しむことができます。
この酒枡をデザインしたのは、西脇佑さん(LINEs AND ANGELs)と大前洋輔さん。制作したのは、三州瓦の中でも家を災いから守る鬼瓦を手がける「鬼師(おにし)」と呼ばれる職人、加藤佳敬さん(株式会社 丸市)です。

三州瓦はきめ細かな肌質と高い品質に信頼があり、加藤さんが制作した鬼瓦は京都の古刹にも奉納されている。
伝統産業の職人の技術に、デザインをプラスする
近年、瓦を用いた住宅の需要が少なくなる中、鬼瓦の制作からも遠のいていた加藤さんですが、今回の「bud brand」の話を受け、せっかくチャレンジをいただいたのだからやってみよう!と職人魂に火がついたそうです。
「デザイナーがデザインしたものをつくること自体初めてで、つくってみると非常に難しかった。粘土に菱形の型紙を当て1枚1枚切り出して貼り合わせるのですが、くにゃくにゃしますし焼くと10%縮みます。しかも重ねたり組み合わせた時にピタッと来ないといけない。納得のいくものをつくり上げたくて、ミラノに行く当日の朝も窯から出していたほどです。
ミラノでは会場自体が華やかで、そこに自分のつくったものがあるのが夢みたいでした。やはり『デザインがものを言う』と感じました。自分は古いものばかりつくっていたなぁと。このチャレンジを通して自分に新しい技術もつき勉強になりましたし、これからは職人の技術プラス洗練されたデザインにも目を向けていきたい」

瓦の需要が減る中、ポートランドの日本庭園やアパレルの店舗に瓦が使われているのを見て可能性を感じたと言う「CINCA」代表の畠さん。
地域に生かされている者として、地元の産業を進化させる
この作品をサポートしたのは、「瓦の町」とも呼ばれる愛知県高浜市で家づくりを行うビルダー「CINCA」。代表の畠さんは、地元の伝統産業への想いを次のように語りました。
「三州瓦は昔から高い品質で知られて来ましたが、最近は屋根の見えないデザインが主流で、瓦が載らない、鬼瓦を使わない家が多いし、この瓦でなくてはという人もあまりいない。地場産業の廃る中、何かできないかと思っていました。
私たちの会社が続いていくには地域の人に支援してもらわないといけない。そのためには自分たちも地域を支援しないと。地域には必ず残さなきゃいけない伝統文化があるはず。地域に生かされている者として、地元の産業を進化させる役割があると思います。『bud brand』の試みはすぐに結果は出ないかもしれないけれど、長い目で見て、井戸を掘った人間として誇れるように関わっていきたい」

Case 03 : 木花/テーブルウェア 使い込むほどに味の出る木の器は、永く住み継ぐ家のお祝いにふさわしい。
Case 03:木花
多くの人にとって家の新築は一生に一度の重大事。その家で紡がれて行く日々が永らく幸せであるようにと贈る新築祝いの品として、木皿と木匙を重ね合わせた花のようなテーブルウエアを考案しました。家族が過ごす月日の容れ物として思い出と味わいを増していく「家」を、この器が象徴しています。
制作したのは横浜市にある注文家具の工房「HALF MOON FURNITURE」の小栗夫妻、サポートしたのは茅ヶ崎市で78年続く「松尾建設」。代表の青木隆一さんが地元で続けている「茅ヶ崎ストーリーマルシェ」という催しにも、小栗夫妻は長らく出店し続けています。

想いを同じくする地元のつくり手がもっと注目されてほしいと支援した「松尾建設」代表の青木さん。
地元のつくり手の価値を高め、出会いを増やすために
青木さんは、地元の家具職人であるお二人を支援したことについて次のように話しました。
「私たちは家はつくって終わりではなく、家のオーナーに寄り添って一生お付き合いして行くものだと考えています。そのコンセプトが彼らの家具づくりの考え方と同じだったので、彼らが工房を構えた当初から、うちで建てる家に一緒に納めるオーダーメイドの家具などをお願いして来ました。
しかし、せっかく良いモノをつくっていても彼らとエンドのお客さんと出会いがなかなか広がらない。『bud brand』に乗せることで彼らの価値もアップするのではないかと思ったんです。実際、今回出したことで、家の建具から家具まですべて彼らにつくってほしいという案件をいただくことができました」

Case 04 : (左から)LEATHER UMBRELLA/傘、Iroha/おもちゃ 学生によるデザインも出展。
Case 04:LEATHER UMBRELLA/傘、Iroha/おもちゃ
人生の困難から守る意味を持ち、長寿を祝う末広がりの縁起物でもある「傘」を、使うほどに自分に馴染む「革」を用いて制作した作品。また、枝に色とりどりの葉っぱを好きなように付けたり外したりしながら種から木へ、木から種へと循環する様を表現し、遊び継がれることを目指した木のおもちゃ。
これらは「静岡デザイン専門学校」の学生がデザインしました。やがてデザインのプロとして社会に出る彼らが初々しい力をミラノデザインウィークにぶつけたこの経験は、その後の大きな糧となるに違いありません。
この学生たちの作品をサポートしたのは、静岡県菊川市で注文住宅を手がける「Wing Home」です。静岡デザイン専門学校の卒業生も社員として採用しており、「bud brand」に取り組むようになってから入社希望が増えて選考に悩むほどになったとのこと。

地域のビルダーはデザインを学んだ学生にとって大事な進路の一つ。ミラノデザインウィークへの出展を支援していることは大きな魅力に映る。
学生も出展、地元企業の支援が希望につながる
学生の目線から見た「bud brand」の魅力について、静岡デザイン専門学校の保科康浩先生が発表されました。
「学生たちのモチベーションが明らかに高くなりました。高嶺の花であるミラノデザインウィークに学生の身分で参加できる!自分の作品を世界の人に見てもらえる!ということで力の入り方が違います。それを地元の企業が支援してくれるというのも、彼らにとってさらに嬉しいこと。地元に希望を持てるようになります。学生がチャレンジできる場をこれからも与えてほしい」

サイズの大きな図面やプレゼン資料に折り目をつけずに持ち運べるバッグをbud brandオリジナルプロダクトとして開発。
bud brandの今後の展開
ここまでご紹介して来たように戦略報告会の発表から、「bud brand」が若手クリエイターやデザイナーにはもちろんのこと、地域のつくり手や地場産業の職人、次世代を担う学生、そして支援するビルダーにも、それぞれに成果をもたらしていることが見て取れます。
「bud brand」では、ミラノデザインウィークに出展した作品を含むオリジナルの優れたプロダクトを、近くECサイトで販売する計画もあるそう。そこにデザイナーや工房の名前が出ることで、彼らへの注文や新たな仕事の機会が生まれます。
同時に支援している企業にとっては「bud brand=デザインを大切にしている。若手クリエイターを支援している」というアイコンが、自社の付加価値を高め、見える化するのに一役買ってくれます。

bud brandは来年2019年4月にもミラノデザインウィークに出展する準備を進めている。
2019年のテーマは「旅」、支援の仕方は4通り
このような意義ある「bud brand」の活動を、ぜひとも絶やさず続けていってもらいたいものです。
2019年のオブジェクトテーマは、「旅」を100倍楽しませるデザイン。
旅路を、食を、ファッションを、出会いを。旅の中でのあらゆるシーンにおいて楽しさを増幅させるデザインのアイデアを、2018年7月〜9月末まで応募可能です。その中から選ばれた作品が、2019年4月のミラノデザインウィークに出展されます。
同時に制作活動や出展をサポートするビルダー側にも、学生支援・職人支援・クリエイター支援・地域支援という4つの支援方法や、もっと気軽に参加できるサポーター制度が提示されています。
bud brand作品応募や支援の詳細はこちらから
⇒ http://www.bud-brand.com/

各地から集まった家づくり・ものづくりに携わる人たちの話は尽きない。Tinys BBQ自慢のおいしいお肉を頬張りながら満面の笑顔!
ブランディング戦略報告会に参加してみて
戦略報告会の後は、みんなでTinysでのBBQを楽しみました!
終了後、参加した方々に感想を聞いてみると、鹿児島県からいらっしゃったビルダーの代表は、
「以前から梶原さんの取り組みが魅力的だと注目していました。地場のビルダーとして他と同じような事ばかりしていてもダメ、特別な事、デザイン性で突き抜けないとマーケットに応えられない。今日はとても刺激になりました」

イベントに参加して自社のブランディングの方向性がクリアになったという広島県の建築家の女性。
広島県の女性の建築家は、
「自社で通常のラインとは異なるプレミアムな住宅のラインを出し、この先どうブランディングしていこうかヒントを得たくて参加しましたが、今日のイベントで戦略がクリアになりました。『bud brand』を使うことでお客様に分かりやすく伝えていけそう」

ビルダーとクリエイターの良い関係が、日本の家・ものづくりの未来を明るくする。
bud brandが咲かせる日本のものづくりと家の未来
かつてスクラップ&ビルドを繰り返し、半ば耐久消費財と化してしまった向きもある日本の住宅。そして、世界でも有数の文化と技術を誇りながら閉塞感を打ち破れずにいる日本のものづくり。これらが互いを押し上げ、固定化された既存の構造から次の次元へのびのびと進化することができたなら。私たちの暮らす未来は間違いなく、もっと居心地の良い場所になることでしょう。自分や自社のためのみならず、「bud brand」という小さな若木を参加者全員で一緒に育てて行くことで、社会をより良く変えていけるのではないでしょうか。

bud brand オフィシャルサイト
http://www.bud-brand.com/
FANFARE
http://www.at-fanfare.com/
casa project
https://www.casa-p.com/
WONDERWOOD
http://wonderwood.jp/
Logic Architecture
http://www.arc-logic.net/
LINEs AND ANGELs
http://linesandangles.jp/
CINCA
http://www.cinca.co.jp/
丸市
http://www.sansyuu.net/maruichi/index.html
HALF MOON FURNITURE
http://halfmoon-f.com/
松尾建設株式会社
https://www.matsuokensetsu.co.jp/
静岡デザイン専門学校
http://sdc.ac.jp/web/
Wing Home
https://winghome.jp/
福岡デザイン専門学校
https://www.fds.ac.jp
高山マテリアル株式会社
http://www.takayama-mt.co.jp
WOODWORKPLANNING
http://www.woodwork-p.com
株式会社新生ホーム
http://www.shinseihome.jp
アメリカ流のDIYとハイブランドの組み合わせに注目。キャビンのリノベーションを自分たちで行い、限られた予算をモダンリビングの家具やプロダクトの購入にまわす試みです。フィラデルフィアのブティックホテルLokalは、自らのクリエイティビティと感性を進化させるために、郊外にあるAフレーム・キャビンのプロジェクトに取り組みました。
Lokalホテルは、フィラデルフィアに2017年の初めにオープンした「見えないサービス」に焦点を当てたアパートメント型のブティックホテル。歴史的な旧市街に6つのユニットホテルを持ち、アットホームなエスケープの場所を提供しています。ホテルにはフロントデスクがなく、電子エントランスによるシームレスなチェックインが特徴です。伝統的なホテルの多くの余剰を取り除くことで、快適性とおもてなしを犠牲にすることなく、街とユニークに繋がる宿泊体験が得られます。
Lokalの新しい挑戦は、バケーション用レンタルハウスの実験でした。フィラデルフィアから50分の郊外にある荒廃したAフレームの家をリノベーションして、モダンデザインに仕上げるというプロジェクトです。キャビンはカリフォルニア・レッドウッド材を使って1960年代に建てられたもので、オリジナルの所有者の家族から購入しました。
Aフレーム・キャビンは完璧に断熱が施され、ブラック&ホワイトの配色に明るい木肌が映えるスカンジナビア風の現代的なインテリア。室内のすべての設備は、快適さのために最新のスタイルにアップデートされています。ニュージャージー州モーリス・リバーの2.5エーカーの静かな敷地にあり、サウスジャージーの人気のある海岸の街へは20〜30分の距離です。
キャビンには2階と地下室があり、3つの寝室と2つの浴室を備え、最大8名が宿泊可能。2つの家族やグループ向けに最適です。商業用キッチン設備、2つのファイヤーピット、1階の背面の巨大なデッキには薪風呂のホットタブを備え、近くの川沿いには専用のプライベートビーチもあります。

via: staylokal.com
高音質のSonosサラウンドサウンドが、リビングエリアとデッキ、ファイヤーピットの周りに音楽を響かせます。Apple TVを使ってケーブルやストリーミングサービスから、96インチのHDプロジェクターを使って映画鑑賞も可能です。
Aフレームのプロジェクトは、フィラデルフィア市街の最初のブティックホテルと違い、限られた予算と時間のもと、外部のインテリアデザインチームの協力なしで、すべての作業を自分たち自身でやり遂げる必要がありました。
Lokalのチームはキャビンの外に4週間に渡ってキャンプを張り、フルタイムで作業ベルトを巻いて現場でDIYにいそしみました。課題の1つは、10〜12時間以上をリノベーションに費やしている間に、品質を犠牲にすることなく室内にモダンなインテリアデザインを施すこと。街まで出かけて家具を物色する時間がないので、オンライン家具ブランドのArticleとのコラボレーションを採用しました。
Articleのモダンファーニチャーは、Lokalの最初のホテルでも採用しており、インテリアデザイナーが品質とデザイン面で全幅の信頼を寄せていた経緯があります。部屋に置かれていたレザーソファ「SVEN」への称賛のレビューが、Lokalに対する評判を高めていたこともあり、再びArticleの家具を使用するのは自然な流れでした。お互いのブランドに対するリスペクトがあり、デザインとクオリティはもちろん、Articleの必要なものを迅速にデリバーできる能力もプロジェクトにとって重要でした。
Aフレームの家具の飾り付けは、メインのリビングルームと外側の3つのデッキが主な対象です。2倍の高さでガラスが天井まで伸びるファサードに面したリビングは、樹木とハクトウワシの姿の見える景色が彩ります。ゲストが最初に目にする部屋であり、最も長く時間を過ごす場所として、インテリアにスポットを当てる必要がありました。
ArticleはLokalのチームと協力して、ガラスの巨大な壁に面したエリアに、革ソファをアンカーとしたレイアウトを決定。人気のL字型ソファ「NIRVANA」の大きく柔らかいクッションは、ゆったりと沈み込むのに最適です。足元にはAフレームの形とマッチするダイヤパターンの「TAZA 」ラグマットを敷きました。ニュージーランド産の羊毛の長いパイルの座り心地はとても快適。
2つのラウンジチェアには、グレーの「FORMA」を採用。耐久性がありニュートラルなデザインで簡単に動かすことができます。黒いフレームと軽いチーク材の「PO」サイドテーブルは、上部に突き出した丸いハンドルでニーズに応じて部屋の内外に移動させることができます。これらの持ち運び可能な家具が、「NIRVANA」のソファを中心としたリビングに柔軟性を加えてくれました。
ガンメタルのバーベル型「BARBELL」フロアランプが、Aフレームの壁に雰囲気のある間接光を投げかけます。リビングルームでの読書やボードゲームのための追加照明としても役立つ存在です。
この隠れ家キャビンの前後にあった既存のデッキはリノベーションを施し、裏側には新たに巨大なデッキを追加しました。3つのデッキスペースには、「PO」サイドテーブル、籐製の「LUNA」ラウンジチェア、「MALOU」ダイニングチェアといった軽くて温かみのある屋外用家具を配置して、人々が集まったり簡単に移動できるようにしました。上階のベッドルームのリアデッキとリビングルームのサイドテーブルは、モーニングコーヒー用のフロントデッキに簡単に持ち出すことができます。
キッチンにはThermador製の36インチ・ガスレンジを含むハイエンドの商業用設備が備わっています。食事を調理するために必要なものは、スパイスやオイルなどと一緒にストックされています。もっとも大きいサイズのBig Green Egg Grillも備えているので、炭火焼き料理が大人数で味わえます。木炭と台所用品は、レシピや指示書とともに提供されるので、肉をじっくりと燻製にしたり、ステーキを完璧にジューシーに焼き上げることができます。
地元フィラデルフィアのSteap and Grindの紅茶と、RIVAL BROS COFFEEのコーヒーを無料でご用意。CHEMEXのコーヒーメーカー、Fellowのケトルなど美しいアイテムで極上のアロマが楽しめます。
3つのベッドルームには、Casperの快適なマットレスとピロー、PARACHUTEの高品質のリネンとWOOLRICHのブランケットが用意されています。
屋外には、農場の貯蔵タンクからDIYでつくられた薪で沸かすホットタブと、2つのファイヤーピットがあります。モーリス・リバー沿いに小さなプライベートビーチが造成してあり、午前中に川下に棲んでいる2頭のハクトウワシを眺めながらコーヒーを飲み、キャンプファイヤーをしながら日没を楽しむのに最適な場所です。川のすぐ上流にボートがあり、プライベートビーチからカヤックを漕ぎ出すこともできます。
5つ星ホテルとは逆をいく、Lokalホテルの「見えないサービス」。ゲストがハイブランドの家具や設備の快適さに包まれて、自由に思いのままにくつろげる宿泊体験です。ブランド戦略が非常に巧みな、今後も注目したいブティックホテルの一つです。
Via:
staylokal.com
article.com
blessthisstuff.com
hausbest.com
(提供:#casa)


タイニーハウスを活用し、未来のより良い暮らし方や働き方を模索するYADOKARIが、新しいライフスタイルの実践者として注目する池田秀紀(愛称:ジョニー)さん。家族ユニット「暮らしかた冒険家」の活動を経て、「ハイパー車上クリエイター」として活動するジョニーさんの現在についてうかがうインタビューコラム。
後編では、バンを起点とした都市での自由な暮らし方 「バンLDK」のコンセプトについてうかがいます(前編をご覧頂きたい方はこちら)。
▼ 記事本編はこちら
https://house.muji.com/life/clmn/small-life/small_180731/

どんな国に住んでいても、どんな言葉を話していても、健康やフィットネス、そして住まいに関する関心はみんな共通です。それら分野に関する専門家が、英語でお役立ち情報を掲載しているサイト「Jen Review」。この素敵なサイトから、「ぜひタイニーハウス・オーケストラ読者とシェアしたい」というトピックスが届きました。テーマは、「小さな空間をデコレーションする15のアイディア」です。どんな「小さな暮らし」のヒントがあるのか、見てみましょう。
【idea 1】植物を飾りたいなら盆栽!

日本の情報番組でも特集され、いま俄かに注目をあびている盆栽。日本のみならず、世界中で盆栽は「BONSAI」として知られ始めています。欧州の花市場でも「BONSAI」コーナーがあるのは珍しくありません。自然を小さな鉢に凝縮した美が、ミニマリズムのムーブメントと相まって人々に愛されているのです。
大きな観葉植物のポットを置くスペースは無くても、小さめの盆栽ならタイニーハウスにも置けそうですね。ぜひ「小さな暮らし」に盆栽で植物の潤いを加えたいです。
【idea 2】高さを活かした空間づくり

もし、アートや他人に壊されたくない趣味の道具などがあるなら、高い位置に設置するようにしましょう。

(c)Naoko Kurata

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実際にタイニーハウスの住人たちは、楽器を高い壁にハングしたり、狭くても天井近くにロフトを設置したりしています。縦の空間をデッドスペースにせず、上手に使うようにしましょう。
【idea 3】スライディングドアはおすすめ

スライディングドア、いわゆる「引き戸」は、最小限のスペースで空間を仕切ることができます。普通のドアだと扉が開閉するためのスペースを確保しないといけませんが、横にスライドするスライディングドアならその必要もありません。

(c)Naoko Kurata

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実際にオランダのタイニーハウス・メーカーがデザインした「Tiny Loft」という家は、限られたスペースをスライディングドアで上手に区切っていました。
スペースを分けたいときには、真っ先にスライディング・ドアを検討したいですね。
【idea 4】階段の下にスペースを活かす

階段の下のスペースを活かさないのは、もったいない!「Jen Reviews」は、階段の下に衣類や普段使わない食器や靴を収納することをおすすめしています。また、机や椅子を置けばプチ書斎、作業台を置けばワークステーションにも早変わり!

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階段そのものを収納にしてしまうというのもひとつの考えです。上の画像の左側に写っている段は、収納でありロフトに続く階段でもあります。冷蔵庫(を覆うカバー)の上を踏んでいくというアイディアはすごいですよね。

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そしてこちらも、階段のステップがすべて引き出しになっています。見るからに収納力がありそうです。
【idea 5】二段ベッドは、あり!

「Jen Reviews」は二段ベッドを省スペースにうってつけな家具と推奨しています。これは「idea 2」の「高さを活かした空間づくり」に通じる考え方ですが、ひと部屋で何人も寝る場合は最小限の床面積で済みますからね。そして同様に、ベッド下の空間を高くとったロフト式のベッドも省スペースにおすすめなのだそう。ベッド下にデスクや本棚などを収納出来たら、フリースペースが増えるので「小さな暮らし」にはぴったりです。
日本初の高架下タイニーハウスホステル&カフェラウンジ「Tinys Yokohama Hinodecho」でも、2段ベッドを採用しています。子供のころに戻った気分で、ぜひ2段ベッドでの睡眠を楽しみたいです。
【idea 6】収納スペース付きのベッドを選ぶ

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たとえシングルベッドでも、ベッドが占領する床面積はなかなかのもの。そのベッドを、収納として活用しない手はありません。
ベッドの下に引き出しがついていたり、レバー操作でマットレスが上がり収納スペースにできるベッドなど、機能的なデザインも増えてきています。自分のモノの量を見極めて、上手にベッドを選びたいですね。
上の画像は、オランダのタイニーハウス住人のベッドです。天面から上下左右あらゆる方向に収納スペースがあり、これはもうベッドに収納がついているのか、収納家具の中で寝ているのか区別がつきませんね。けれど、「小さな暮らし」の中で心強い収納スペースになっているのは確かです。
【idea 7】収納付き出窓ソファー

「小さな暮らし」では、リビングルームに十分なスペースを確保できないかもしれません。そのため、「Jen Reviews」は多機能家具をすすめています。どのようなことかというと、例えば出窓をソファースペースにしてしまったり。
窓辺がくつろぎスペースになることで、余分な家具の予算もおさえられます。しかもこの出窓スペースの下に収納があったりしたら便利ですね! くつろぎ時間のお供、本や編み物セットなどを収納しておけば、すぐ手に取ることもできるし、時間の節約もできて一石二鳥です。
【idea 8】ソファベッドはグッドアイディア!

ソファーベッドも、「Jen Reviews」のおすすめの多機能家具のひとつ。来客があるときの昼間は楽しいくつろぎの場になり、夜は来客のベッドとして活用できるので、いざという時のために備えておきたいですね。

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タイニーハウスの住人は、ロフトにマットレスを敷いて寝ていることが大半。けれどこういった収納を兼ねたベンチソファを備えていることも多く、ゲストへの対策もしっかり練られているようです。お友達にも自慢のタイニーハウスの暮らし心地を体験して欲しいという、ホスピタリティが感じられます!
【idea 9】ミラーで目の錯覚を

小さな空間は狭苦しかったり、実際より暗く感じることがあります。けれどそういった狭い空間でも、部屋に鏡を置くことで、より広く演出することができるようになるんです。「Jen Reviews」のおすすめは、自然光が入ってくる場所の反対側にミラーを設置すること。光を反射させることで、より明るく広々とした印象を与えてくれるのだとか。
【idea 10】省スペースできるテーブルを選ぶ

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少ないスペースを有効に使うため、テーブルも機能的なものを選びましょう。上の画像は一見するとチェストですが、両サイドのプレートを広げると、広々としたテーブルになります。
「Jen Reviews」のおすすめは、少しずつサイズの異なるテーブルを重ねて収納できる「ネストテーブル」(Nest Table)。こちらも使用していないときは、必要な床面積は1つのテーブル分だけ。ぜひ覚えておきたいですね。
【idea 11】重ねて収納できるお皿が優秀

「小さな暮らし」では、必然的にキッチンの収納スペースも最小限になってしまいますよね。ですので、購入する食器のかたちは慎重に検討しましょう。
「Jen Reviews」のおすすめは、「ネスト・キッチンディッシュ」(Nest Kitchen Dishes)と呼ばれる、入れ子にして収納できる食器たち。重ねて積み重ねることができるので、効率よくスペースを使えます。そしてネスト・キッチンディッシュ自体が絵になることが多いので、オープンシェルフに飾っても。
【idea 12】ドアを収納スペースに変身させよう

意外と盲点ですが、ドアの裏は優秀な収納スペースになります。必要なのは、ドアに取り付けられるフックや、シャンプーボトルなどを保管できそうな薄い賭け型シェルフです。そのフックにはタオルを掛けたり、ドアのある部屋ごとに用途を使い分けてもいいですね。
【idea 13】迷ったら明るい色をチョイス

「小さな暮らし」のインテリアには、明るい色が断然おすすめ。「Jen Reviews」は、「カラーコーディネートに迷ったら白にこだわるべし」とアドバイスしてくれています。明るい色は目の錯覚で、空間を広く見せる効果があるのだそう。

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確かにタイニーハウスの内装は、明るめの色遣いのことが多いようです。ウッド調の素材を選ぶ場合も、明るめの色合いが選ばれています。オーナーたちも、色の効果をしっかり把握しているのかもしれませんね。
【idea 14】オットマンを活用しよう

日本ではあまりなじみのない言葉ですが、「オットマン」 (ottoman)をご存知ですか? 椅子やソファーの前に置いて使う足乗せ用ソファーのことで、一般的には背もたれのないタイプが好まれています。
実はオットマンは、「小さな暮らし」にうってつけの多目的家具なんですよ。フットレストとしてはもちろん、トレーを置けば、カップを載せたりできるコーヒーテーブルにも早変わり。そして、モノによっては中にスペースがあり、収納ボックスとして活用できることも。ぜひリビングスペースの家具として検討してみてください。
【idea 15】小さくて動かしやすいソファが便利

ついつい私たちは、からだをすっぽりと包み込んでくれるゆったりソファーにあこがれがちですよね。けれど「小さな暮らし」には、小ぶりなソファがマスト。時として収納へのアクセス確保のためなどに、ソファーの場所をずらす必要に迫られるかもしれません。自分ひとりでも動かせるサイズ&重さを目安にしましょう。
ラブチェアのような二人掛けサイズでも座り心地の良いソファーは沢山あるので、納得のいくソファーに出合えるまでじっくり選ぶようにしたいです。ちなみに「Jen Reviews」は、ソファーの下に小さなホイールをつけることをおすすめしています。確かにそれなら、移動も楽にできそうです。
「Jen Review」が提案する、「小さな空間をデコレーションする15のアイディア」いかがでしたでしょうか。盆栽やスライディングドアなど、日本でもすぐに取り入れやすいヒントがたくさんありましたね。ぜひみなさまの「小さな暮らし」の参考になってみてください。
ライター:倉田直子
Via:ttps://www.jenreviews.com/small-space-decorating-ideas/

(c)Naoko Kurata
こんにちは!オランダ在住のライター、倉田です。私はオランダにあるタイニーハウスを見学する機会がありますが、その際にしばしば感じるのが「ああ、この仕様だと日本の夏は乗り切れないだろうな」ということ。
ヨーロッパ大陸の北西部に位置するオランダの夏は、からっとして比較的過ごしやすい季節。暗く寒い冬が長いこともあり、地元民は積極的に夏の暑さを楽しむ傾向にあります。

(c)Naoko Kurata
例えば、以前見学した「Proeftuin Erasmusveld」というタイニーハウス村には、天井に半透明の素材を使ったタイニーハウスがありました。

(c)Naoko Kurata
昼間は、電灯をつけなくても室内が十分に明るいので、エネルギー節約のエコ志向ですよね。でも、この屋根のタイニーハウスで日本の夏を乗り切れるかどうかは少し疑問です。室内にいても、ほぼ直射日光のような日差しを浴びることになり、日射病の危険すらあるかもしれません。
日本の暑い夏をタイニーハウスで乗り切るには、いったいどんな工夫をすればいいのでしょう。既に小さな暮らしを実践している方たちの知恵を借りるべく、リサーチをしてみました。
米カリフォルニアの先駆者の工夫
アメリカ人の「小さな暮らし」実践者であるローガン・スミス氏は、かつてタイニーハウス・ムーブメントの中心地でもあるアメリカ北西部のポートランドで生活していました。その時は、特に空調の必要性などは感じずに過ごしていたのだそう。けれどご自身のモバイルハウスを南部のカリフォルニア州に移したとき、30度を超す気温に参ってしまいます。ペットに猫を飼っていたこともあり、暑さ対策に取り組んだのだとか。
彼がご自身のブログで語ったところによると、以下のようなことを実行されたそうです。
・モバイルハウスの駐車スペースは、なるべく木陰にする。
・黒いアスファルトからの熱を避けるため、可能であれば、芝生の上に駐車する。
・屋根に直射日光が当たらないよう、日除けの布をかける。
・小型エアコンの購入。
ローガン氏が購入したのは、Frigidaireというメーカーの窓付けエアコンだそう。検索してみると、同じものが日本の通販サイトでも購入できるようです。
便利そうですね!
私は俄然このエアコンのことが気になり、動画サイトで同じ商品の使用レポートをされている方の動画も発見しました。
https://youtube.com/watch?v=q68qI1LVOSE
この方によると、「1時間の使用で、室温が約27度(華氏84度)から21.5度(華氏73度)に下がった」のだそう。この方の部屋の広さは分かりませんでしたが、なかなかの威力ですね。
日本製のコンパクトな涼みアイテムたち
そしてつい最近、日本でも画期的な小型エアコンの新作が発表されました。それは何と、バケツ型のコードレス式エアコン。大阪市のベンチャー企業「クールスマイル」が開発した商品で、その名もずばり「バケツエアコンCS703」。7月18日から東京ビッグサイト(東京国際展示場)で3日間開催される「猛暑対策展」(日本能率協会主催)に出展され、話題を呼びました。
このバケツエアコンは直径約30センチ、高さ約39センチで、重さ約4.5kg。タイニーハウスにぴったりのサイズですね。
どうやって涼しくするのかというと、氷や冷凍ボトル、水の冷気を利用します。バケツ内部にロックアイスや冷凍ボトルを入れ、そこに電動ファンを当てて冷気を生み出し、バケツの周囲を涼しくするのです。メーカーによると、室温30度の環境下で約15度の冷気を噴き出すことができるのだとか。ちなみに、バッテリーは約2~3時間稼働するそう。
その他にも、「siroca」から発売されている「加湿つき温冷風扇 なごみ」という商品も。夏は保冷剤を利用した打ち水のような冷風を楽しめ、かつ冬は温風ピーターとしても使える一石二鳥家電です。収納や物の置き場が限られるタイニーハウス生活に、うってつけですね。
「小さな暮らしにぴったりの涼みアイテム」のご紹介、いかがでしたでしょうか。体調を崩してしまっては意味がないので、上手に文明の利器も活用しながら、暑い夏を乗り切っていきたいですね。
ライター:倉田直子
Via:
loganblairsmith.com
coolsmile.biz
siroca.co.jp
人里離れた村から村へと、三輪図書バイクを走らせるイタリアのおじいさん。『ニュー・シネマ・パラダイス』に登場する映写技師のような、人懐っこい笑顔のアントニオは元小学校教師。教師生活42年の後引退するも、社会から孤立して老いていく人生に我慢がなりませんでした。教師時代に感じた生徒たちに広がる読書への無関心も気になります。そこで彼は、2003年に中古のオート三輪を改造して、子どもたちのもとに本を届ける活動を始めたのです。
(さらに…)
ここは東洋と西洋が切り替わり、そして交わる場所、トルコのイスタンブール。
そこから160kmほどの場所に位置するエディルネという町。ヨーロッパの一国、ギリシャとの国境沿いでもある。そのような場所がら、この建築物の名前は ‘cabin on the border’(キャビン・オン・ザ・ボーダー)と名付けられた。そのまま「国境沿いのキャビン」という意味だ。
(さらに…)