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via: ryearchdesignlab.blogspot.com

カナダのフードバンクの利用者は、2016年3月の1ヵ月間に86万人以上となっています(HungerCount, Food Banks Canada)。先進国の中でも順調な経済成長を遂げているはずのカナダですが、国民の10人に1人が貧困状態にあり、中でも先住民、一人親世帯、地方の高齢者、難民の貧困率が高くなっている状況があります。

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YADOKARIとエンジョイワークスが共同開発したリアルに住める高性能小屋「THE SKELETON HUT」(以下スケルトンハット)が2棟、湘南の海の近くに建っています。こちらは、スケルトンハットとしては初の賃貸住宅。現在、2組がセカンドハウスとして利用中です。ここでいま、どんな方がどんな住まい方をしているか、YADOKARIがお邪魔してお話をうかがってきました。

左から、森田哲史さん、森田麻耶子さん、ショパン、佐藤幸恵さん

辻堂駅から車で海方面へ向かって約10分。もともとは雑木林があった土地を、新しい住まい方ができる場所として有効活用したい、というオーナーさんの要望を受けて、2棟のスケルトンハットが誕生しました。

それぞれ内装デザインは異なりますが、サイズは同じ。ウッドデッキと庭は共用で、独立しながらゆるやかにつながっているイメージです。庭には雑木林にあった木々がいくつか残され、かつての面影を伝えています。

2棟のスケルトンハットのうち、向かって右側のA棟を事務所として使っているのは佐藤幸恵さん。IT企業を経営しており、ご自宅は横浜市港北区にあります。左側のB棟で暮らすのは、会社役員の森田哲史さんと妻の麻耶子さん、そして愛犬のショパン。山口県にご自宅をお持ちです。そんな2組が、セカンドハウスとしてスケルトンハットを選んだ理由はなんだったのでしょう。

ご近所づきあいのできる、小屋暮らし

森田さんのお宅にて、美味しいお茶を囲む

——こちらを借りることになったきっかけを教えていただけますか?

森田哲史さん

森田さん:自宅は山口県にあります。東京にある会社の役員を任されることになり、会議などに出席するために時々上京するようになりました。当初はホテルを利用していましたが、妻と犬と一緒に泊まれるところを見つけるのは大変。しかも最近は仕事の頻度が増えて苦労していると会社に相談したところ、こっちで家を借りていいということになったんです。今お話ししたように出社する頻度が増え、最近は月に2週間程度はスケルトンハットに滞在しています。

森田麻耶子さん

麻耶子さん:私たち、元々は東京に住んでいて、山口の家は瀬戸内海でシーカヤックを楽しむためのセカンドハウスとして建てたんです。2ヶ月に1回くらいそこに行って休暇を過ごし、帰京するというサイクルで生活していました。当時主人はフランスの会社に勤めていて日本とフランスを行き来していましたが、仕事が忙しくなり、このままだと身体を壊すんじゃないかと不安を感じてしまって。彼の健康寿命を考えると、二人で生き生きと過ごせる期間は残り15年くらい。その時間を大切に過ごしたいと考えるようになったんです。

森田さん:それで5年前、老後の生活に入るつもりで会社を辞めて、生活の拠点を東京から山口に移しました。すると今の会社に役員として来ないかと誘われて、会議などに呼ばれた時に家内と犬と一緒に上京するようになりました。

佐藤幸恵さん

佐藤さん:私は横浜市内にパートナーと購入した一軒家を持っていて、スケルトンハットは事務所として使っています。それ以前は約10年間、港区のビルに事務所を借りていました。当時は10人ほどの社員を抱えていて、一年中彼らのケアをしているような状態でした。休暇中にもガンガン電話がかかってくるんです(笑)。それでも楽しかったんですが、そろそろ会社の規模を縮小して一人で自由にやろうかなあと思うようになりました。今まで港区に事務所を構えていたのは、クライアントに信用していただくためにそれなりの住所が必要だったから。でも今はそういう時代でもないし、これまでの10年間でお客さまとの信頼関係も築いてきました。月一回程度しか行かない事務所に高い家賃を払うより、安いところに移して経費を抑えれば、その分たくさん旅行に行けるなあと目論みまして(笑)。新しい事務所用の物件として3件問い合わせたうちの一つがこちらだったんです。

——辻堂という場所で、スケルトンハットという一風変わった物件を選んだ決め手はなんだったんですか?

佐藤さん:小さいとはいえ開放感があるつくりで、窓から木が見えるところが気に入りました。私はもともと田舎のおばあちゃんの家のような建物が好きで、最初にネットで見つけたのがまさにそういう物件だったので、そこにするつもりだったんです。でもここを内見したら一目惚れしてしまって(笑)。念のため信頼している友達に相談したところ太鼓判を押してくれたので、ほぼ即決でした。

森田さん:うちも迷いませんでした。実は仕事のこととは別に、妻がYADOKARIのフェイスブックでここを見つけていたんです。もともと「小さな暮らし」に関心があって、山口の自宅もほぼ同じ形とサイズで、「可愛いね」なんて話していたんですよ。

——でも一般的な物件を考えるとやっぱり小さい。そこに抵抗はありませんでしたか?

佐藤さん:ホテルを探すような感覚で見ていたかもしれません。ここはホテルよりは広いので、特に違和感はなかったと思います。

麻耶子さん:「小さく住まう」という自分たちのライフスタイルをキープできる物件だったので、抵抗はありませんでした。砂浜が近くて、犬が一緒でもいいと許可をいただけたのも大きかったですね。

森田さん:お隣の佐藤さんにも快く受け入れていただいたこともありがたくて。

佐藤さん:犬好きなら悪い人ではないだろうと(笑)。

麻耶子さん:時々ショパンと遊んでいただいてありがとうございます。

佐藤さん:とんでもない。私も犬は大好きですから。

2棟の間に塀などの仕切りを設けていないのは、お隣さん同士の距離を開けず、ご近所付き合いのある暮らしを実現できる小屋にしたかったから。そんな作りも含め、楽しんで暮らしていらっしゃる様子が伝わります。

身の丈に合ったサイズの暮らしが心地いい

——森田さんは「小さな暮らし」がライフスタイルとおっしゃっていましたが、そんな暮らし方に関心を持たれたのはいつ頃ですか?

森田さん:僕はフランスに23年間ほど住んでいた時期がありました。その中で実感したのが、フランス人があまり物を増やさないということ。テーブルクロスやナプキン類は最低限のものを持って、例えば3年に1回とか定期的に交換します。その時、前に使っていたものはきっぱりと捨てる。寄付するシステムも完備されているんですよね。

——確かにヨーロッパには、バザーや寄付など、物を上手にシェアする文化があります。

森田さん:食事もシンプルですよね。日本式だと、ご飯があっていろんなおかずがあって……とあれこれ準備が必要になり、それだけ食器もたくさん使いますが、フランスでは普段の食事はほぼワンプレートで済ませてしまうんです。その習慣がいつの間にか染み付いていて、8年前に家内と結婚してからもそのスタイルを続けています。一度「よく我慢しているね」と聞いてみたら、「特に我慢してないよ」と言ってもらえた(笑)。

麻耶子さん:私達はよく旅行するんです。山口と東京を行き来するのにも車を使って、いつも違うルートを選んでのんびり旅を楽しんでいます。そんな時、二人の1週間分の荷物が小さなバッグに十分収まるので、最近はこれだけあれば生きていけるんじゃないかと思うようになりました。南仏で、アパート形式のホテルに滞在した経験も影響しています。食器もリネン類もシンプルなものが4組ずつしかなかったのに、それがすごく快適でした。「溢れる物に振り回されないことは、こんなに心地いいんだ」って。それで山口にセカンドハウスとして小さな家を建てました。偶然にも、スケルトンハットもほぼ同じサイズです。そんな小さな家で、日用家電やお皿も真剣に選んで本当に気に入った物だけに囲まれて暮らすのが気持ちいいと思うようになったんです。

森田さん:何かを購入するときもとにかく吟味して、1個増やせば1個減らす。その行為自体が楽しくなったんだよね。

佐藤さん:私も旅好きなので、物はそんなに必要ないという感覚はわかります。紙袋一つくらいの荷物で海外旅行、というスタイルに憧れているんです。

森田さんのスケルトンハットは、山口の家に次ぐもう一つの生活の場。シンプルなデザインの棚やテーブル、機能性の高さで知られる調理器具や家電が限られたスペースにぴたりと収まっています。一方、佐藤さんは事務所としての利用。もともとお好きだというアンティークが基調の椅子やテーブルがゆったりと配され、非日常的でありながら居心地の良さが伝わるインテリアです。

森田さん:うちは生活できる環境を早く整える必要があったので、テーブルやワゴンなどの家具に関しては一気に買い揃えました。無印良品やカインズホームなどのシンプルなものが中心ですが、靴箱やベッドはデザインが気に入ったものを入れました。

森田家のキッチン。棚やワゴンはサイズピッタリ。そこに厳選された道具が整然と収まっています。

佐藤さん:テイストが統一されているからか、急いで揃えたとは見えないのがすごいですね。私はまだ部屋づくりの途中です。自宅でもこのスケルトンハットでも、「一生好き!」と思うほど惚れ込まなければ買わないと決めています。それでも若い頃はあれこれ買っていたんですが、今の自宅を購入して引っ越すとき、大量に捨てました。今まで何度か引越しをするたびにゴミを運んでいたのか、とショックを受けるくらいの量でした(笑)。間に合わせで買うと絶対に後悔するのに、もったいないと思って捨てるに捨てられず、それがストレスになってしまう。だから今、本当に好きなものを探している最中なんです。

——佐藤さんはこちらを事務所としてお使いとのことですが、どんな風に過ごされていますか?

佐藤さん:ほとんどのクライアントは東京の企業なので、事務的な打合せなどは大体都内でやっています。こちらには、うちの元社員で今はフリーランスのシステムエンジニアとして契約している人達に来てもらうことが多いですね。ストレスを抱えてメンタルの調子を崩す人が多い職種なので、ここへ来て海でも見てのんびりしてもらうんです。

大きな窓から木が見える佐藤さんのリビング。アンティークのテーブルと椅子が落ち着いた雰囲気。

——こちらを借りてから、何か変化はありましたか。

佐藤さん:以前の事務所に行く時は「書類や郵便物が貯まる頃だから、そろそろ行かなきゃなあ」と、重い腰をあげるような状態でしたが、今では「今週は辻堂に行ける!」と楽しみになりました。いつもの生活から離れた場所だと「しなければいけないこと」から解放された感覚がありますし、いかにも事務所的な殺伐とした感じでもないので、ストレスは感じないしいい発想も湧きます。そういえば来客が減ったのもよかったことの一つです。都内の事務所だとみなさん割と気軽にいらっしゃる分、どうしても要件以外のおしゃべりも長くなってしまっていたのですが、そういう時間がぐっと減ったのはありがたい(笑)。事務所をここに移したことで「鵠沼海岸の近く?なぜ?」なんて話のきっかけになって、営業的にも役立っています(笑)。

森田さん:一ヶ所だけで暮らすより、変化があるのも楽しいですね。一箇所にとどまっていると物の見方も内向きになっていきますが、生活の場所が定期的に変わると否応なく外を見るようになります。

麻耶子さん:歳を重ねた時に人に迷惑をかけず、自分も楽に暮らしていけるのはこのくらい小さな家なのかも。広い家だと掃除やメンテナンスにエネルギーを使わざるを得ないけれど、このくらいのサイズでシンプルに暮らして、その分夫婦二人のアクティビティに時間を長く使ったほうが、人生は豊かになると思うようになりました。

佐藤さん:わかります。横浜の自宅はこのスケルトンハットに比べて随分広くて、掃除をしていると、家が主人で私が使われているかのように感じることがあるんです。掃除は趣味の一つなので楽しんではいますが。

森田さん:フランスで世話になったご婦人と、何かのきっかけで議論したことがありました。僕がなんとなく「人間は幸せになる権利がある」と言ったら、「人間が幸せになるのは権利じゃない。義務なのよ」と反論されて。つまり、義務である以上は幸せになる努力をしなきゃいけない、と真剣に言われて、フランス人が毎日のご飯もおろそかにしない、毎週末の過ごし方も無駄にしないのは、そういう考えに基づくものなんだなと思って、以後、心にとどめて日々を暮らしています。

佐藤さん:今日お話しさせていただいて、思いのほか勉強になって、ついメモを取ってしまいました(笑)。ありがとうございました。

森田さん:こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。山口の家にもぜひ遊びにいらしてください。

佐藤さん:ぜひ!

一つの場所に囚われない暮らしがいい刺激になっている、と口をそろえるお二方のお話には、小さな住まいで豊かに暮らすためのヒントがたくさん散りばめられていました。クリエイティビティ次第で、スケルトンハットの可能性はかなり広がりそうです。

THE SKELETON HUT(スケルトンハット)の詳細はこちら

リアルに住める高性能小屋「THE SKELETON HUT

企業とクリエイターを結ぶ一週間、クリエイターと中小企業が産み出した実験的な作品展示「ヨコハマの家」

2015年11月4日〜8日の5日間に渡り『YOKOHAMA CREATIVE WEEK』が、横浜・馬車道駅近郊のYCCヨコハマ創造都市センターで開催。

横浜市では、市内の企業とクリエイターのコラボレーションをコーディネートし、ビジネスに新しい付加価値を生み出す「創造的産業の振興」に積極的に取り組んでおり、今回もそれらの取り組みを広く知っていただくイベントとして「YOKOHAMA CREATIVE WEEK」が催され、期間中は企業とクリエイターが生み出すプロダクトの展示「ヨコハマの家」企画・ディレクションをYADOKARIが担当
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さわる知リ100 特集キャンペーン「家族でDIY、豊かな一日」

大塚製薬が展開するオロナインH軟膏のPRメディア、さわる知リ100シリーズの特集キャンペーンをYADOKARIが担当。企画・ディレクション、メディア&コンテンツ設計・構築・運用、取材撮影、DIYイベント、集客支援などをトータルプロデュース。

特設サイト:http://shiri100.yadokari.net/

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BETTARA STAND 日本橋:“動産・タイニーハウス活用” × “コミュニティビルド” で街のパブリックスペースを

動産・タイニーハウスを利用したイベント・キッチンスペース「BETTARA STAND 日本橋 (べったらすたんど)」
YDOKARIの自社施設として企画・設計・施工・運営までトータルプロデュース。

「BETTARA STAND 日本橋」は、元駐車場となっていた土地(約150平米)を移動可能な動産・タイ二ーハウスやDIYで作る屋台などを利用し再活用する。宝田恵比寿神社横という立地を活かし、コンセプトを「人が集まる神社境内のような安らぎ、賑わい」、日本橋本町・小伝馬町エリアの新たなパブリックコミュニティスペースとして解放、これまで日本橋エリアに来なかった人々を呼び込み、地元の企業や居住者との交流ができるスペースを運営することでエリアの活性化に携わっていく。

本施設は、“街と一緒に創る・コミュニティビルド” をテーマとして掲げており、施設そのもののDIYワークショップから各種イベント開催まで、まちづくりに関連する実験的な取り組みを多数開催していく予定。また、2020年の東京オリンピック向けての宿泊施設問題や資材費高騰、空き地・遊休地・デットスペースなどの期間限定利用などに「短工期、移動可能、コスト安」のメリットのある動産・タイニーハウスの活用の可能性が大きいとみており、今後、自治体や企業と連携して動産を活用した宿泊施設やイベント施設などの全国展開を予定。

▼「BETTARA STAND 日本橋」オフィシャルサイト
http://bettara.jp/

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INSPIRATION

YADOKARIスモールハウス「INSPIRATION」 物質的に豊かな世の中で、無駄なものを削ぎ落とし、できるだけシンプルに生きる。ミニマルで洗練された空間の中でクリエイティブなインスピレーションを得るための小さな家の企画・設計・販売をトータルプロデュース。仕様は、6m×2.4m、約4坪(約14㎡)のワンルームサイズ。生活に必要なシャワー・トイレ・キッチン・簡易収納を兼ね備えている。夫婦2人、小さな子供1人の3人家族が暮らせるコンパクトサイズ。

開口部を広く設けたことで、バルコニーやウッドデッキなどと組み合わせるとより開放感のある居住空間を実現。内庭もリビングの一つと見立て、外光をふんだんに取り入れられる仕様。

スモールハウスのサイズは海上用コンテナサイズ(20ft)を元に設計しているのでトレーラーや船などの交通インフラでの輸送が可能。住居としての必要最低限の機能を維持しつつ、一般住宅に比べコストを抑え、未来の可能性に向けた「移動性(モビリティ)」を確保しています。季節や趣味に応じて好きな場所へ移動する、そんなライフスタイルも実現可能。

次期展開として、太陽光発電、省エネ家電システム、バイオトイレ等を積極的に取り入れ、総エネルギー量を抑えたオフグリッドハウスも視野に入れて開発を実施予定。上下水道や電気などのインフラに依存しないことで、地球に優しく持続可能で移動性を兼ねた住まいを実現する。

▼「INSPIRATION」オフィシャルサイト
http://inspiration.yadokari.net/

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via: pod-space.co.uk

10年以上前にBen Lordは、母国イングランドのガーデンハウスを調査して、実にうんざりとした気分になった。型にはまったデザインと面白味のないインテリア。「もっとまともなデザインの選択肢が必要だ」と感じたBenは、「Pod Space」という会社を設立。2017年には、国際的なデザイン賞「レッド・ドット・デザイン賞」を受賞するまでになった。

(さらに…)

今年で第2回目となる「タイニーハウスデザインコンテスト2018」の審査会が、4/21〜22に山梨県小菅村にて行われました。

人口730人の小菅村がYADOKARIと一緒に昨年スタートさせた日本初のこのコンテストには、プロアマ問わず誰でも参加でき、受賞作品は村内に実物が建築されるのが特徴です。

今年の応募登録総数は365組、作品提出者は124組と昨年の2.5倍! 海外からの応募も複数ありました。力作ぞろいの応募作品から熟考を重ねて選び抜いた審査会の様子と、受賞作品についてレポートします!

山の谷間にある小菅村。清流には釣り人も多く訪れる。

多摩源流 小菅村ってどんなところ?

多摩川と相模川の源流部にある小菅村は、秩父多摩国立公園内に位置し、東西14km、南北7km。周囲を山に囲まれ、森林が総面積の95%を占める山間の小さな村です。

東京都を含む首都圏できれいな水道水が確保できるのも、ブナやミズナラの生い茂るこの森が100年以上にも渡って大切に守られてきたから。

小菅村の森に端を発する水が首都圏を潤している。

人口が増加し続けている!

そんな小菅村の総人口は、5年前は690人。ところが現在は730人にまで増え、さらに約40世帯から問い合わせが来ているというから驚きです!

就任以来さまざまな仕掛けで村の魅力を高め、活気のある村づくりを行っている舩木村長にお話を伺いました。

小菅村で生まれ育った舩木村長。就任以来、人口が増加し続けている。

「例えば山梨県内の他の町では、リタイアしたご夫婦の移住が多いケースもありますが、小菅村に移住してきてくれるのは、小さなお子さんのいる20代後半から30代のご家族が中心です。以前から源流親子留学などの取り組みをしていますし、都心から2時間という近さも、今の仕事を続けながらというスタイルが叶えられる距離なのかなと思います。働き方に対する理解も進んできていますしね」

山と山の間に掛けられた鯉のぼりは、村民が人力で設置しているそう!

定住にこだわるより関係人口を増やす

「一方で、恵まれた自然を生かした観光資源を中心に振興を図っていますので、村の中にも仕事がどんどん生まれています。『730人のなりわいづくり』が私のモットー。地域おこし協力隊や起業する人へのサポートを惜しまず、新しいチャレンジをしたい人が夢を実現できる村でありたい。人生のステージが変わってこの村から出て行くことになっても良いんです。定住にこだわるよりも、関係人口を増やすことを大切にしたい。

タイニーハウスは、移住してくる若い世代のための住居や、観光で訪れる人たちの宿泊施設として期待を寄せています」

昨年のコンテストで最優秀賞に選ばれたタイニーハウスの実物が設置されている。

タイニーハウスが村内に点在

昨年のタイニーハウスデザインコンテストの最優秀賞は、村の中で最も集客のある温泉施設「小菅の湯」と、国交省に新しく認定されたばかりの「道の駅こすげ」のある広々とした敷地内に設置されています。ツーリング客やキャンピングカーでの車中泊客も集まるこの場所は、タイニーハウスを知ってもらうのに効果的なロケーション。それ以外にも昨年の受賞作が複数、村のいろいろな場所に点在しています。

タイニーハウス小菅プロジェクトを牽引する建築家の和田隆男さん(小菅村地域おこし協力隊)

タイニーハウス小菅プロジェクトの発起人

小菅村タイニーハウスプロジェクトの発起人でもあり、このコンテストの責任者でもある建築家の和田隆男さん(小菅村地域おこし協力隊)にもお話を伺いました。和田さんは自ら、山梨市にある本宅と小菅村との2拠点生活をしています。

道の駅の敷地内に建つ小菅村タイニーハウスの一つ。

「タイニーハウスには4、5年前から着眼していました。建築を学ぶと必ず一度は小さな家がテーマになります。例えば茶室のような。小さいものを考えると、余分なものが削ぎ落とされて本質がより深く見えてくるからです。

単に小さい家というだけでなく、機能をうまく使って、小さいことのメリットを出していくのが大切。時代はもう変わっていて、住まいは財産という考え方から、住まいは日々過ごす場であるという考え方になっています」

タイニーハウスの室内。大きな開口部で外とつながる。

タイニーハウスを考えると住まいの原点が見えてくる

「タイニーハウスを考えることは、これだけあれば十分と言い切れる住まいの原点を考えること。形だけじゃなくて考え方も大事にしたい。今までの大きい家って何だったんだろう?という気づきも含め、これからの新しい住まいを考える上での出発点が違ってきます。コンテストを通じて、こんなにたくさんの人がそれを考えてるってすごいことですよね」

「タイニーハウスは単純に面積が小さいということではなく、住まい方をコンパクトにする、という考え方が重要」と和田さん。

小菅村の森林が抱える課題

今年のタイニーハウスデザインコンテストのテーマは「森林(自然)の活用」ですが、そこには小菅村のどんな想いがあったのでしょうか?

「やはり村特有の資源をどう活用するかは重要な課題です。森林は手をかければどんどん良くなるし、手をかけないとどんどん悪くなる。

“都会の視点”で見ればコスト重視で輸入した材木になるけれど、“地域の視点”で見れば地域の木を使うのが自然なこと。しかしその視点が、地方からはなかなか出てこないんです」

村のあちらこちらに昨年の受賞作が設置されている。

タイニーハウスが日本の問題解決に?

「タイニーハウスは地域の木を使う新たな供給先としての可能性があります。過疎地域でも声を上げて、1つで小さければ連携していけばいい。日本の国土の7割が山林なのに、今その資源を自らダメにしているっておかしいですよね。

特にこれから山間部の集落などでインフラが維持できなくなる時代が来た時、オフグリッドのタイニーハウスが活きてくるし、その住まい方は都市そのものの有り様への疑問にもなるんです。本当にそれは合理的なの?という」

地域の木をふんだんに使った小菅村役場は和田さんが設計。

デザインコンテスト2018の審査開始!

そんな思いが詰まった小菅村のタイニーハウスデザインコンテスト2018の審査会が、小菅村役場で行われました。1日目の第1次審査の様子です。

会議室いっぱいの応募作品のプレゼンシートをみんなで丹念に読み込んで行く。

村役場の広い会議室いっぱいに並べられた124作品の応募資料(A3用紙2枚)を、審査員全員が一つ一つ丁寧に見ていきます。

思わずほっこりするような作品も。

審査員は昨年の受賞者のみなさん

審査員の顔ぶれは、舩木村長、和田さんを筆頭に、YADOKARIのさわだ、ウエスギ、相馬、そして北は青森から南は宮崎まで、全国から駆けつけた昨年のタイニーハウスデザインコンテストの受賞者のみなさんです。

「グラフィックの腕前に惑わされないようにしないとね(笑)」

プロアマ問わずの応募作品は、資料内のプレゼンの仕方も多種多様。その中から、小菅村の「森林(自然)の活用」のテーマの下、キラリと光るアイデアが盛り込まれたタイニーハウスを選ぶのは本当に大変です!

みなさんじっくりと資料を読み込み、メモを取りながら、時には近くにいる人と意見を交わしつつ、数時間かけて1次審査を終えました。

数時間かけてようやく第1次審査が終了。

こうして1次審査を通過した作品が中央のテーブルに集められました! この中から翌日の最終審査で受賞作品を決定します。

この日は、審査員のみなさんは村の温泉で審査の疲れを癒し、旅館でイワナやヤマメなどの川魚や山菜たっぷりの郷土料理をいただいて労をねぎらいました。

審査会の疲れを癒しに天然温泉「小菅の湯」へ

小菅村のクラフトビールで乾杯!2日目の最終審査に向けて。

いよいよ最終審査

さて2日目、再び村役場に審査員が集合し、1次審査を通過した作品の中から、最優秀賞をはじめとする各賞を決めるため、全員での検討が始まりました。

2日目、最終審査開始。「概念も大事だけど、現実的に住めるかどうかも見てください」と和田さん。

白熱する最終審査。テーブルを囲んでディスカッション。

タイニーハウスの特性を生かす視点

評価のポイントとなったのは、まずはタイニーハウスならではのメリットがうまく出ているかどうか。

小さな空間を外部へ開いてその恵みを取り入れること、あるいは1つの空間・機能を多面的に使っていくつもの生活シーンを実現すること、暮らしに必要な機能を個別にユニット化し自由に連結して拡張・カスタマイズすることなどです。

宮崎県から駆けつけた審査員の内田さん。自ら設計した自然素材・伝統工法のタイニーハウスに住み、菜園を営んでいる。

小菅村の森林や環境を活用する視点

今回はこれらに加えて、コンテストのテーマとなっている森林との関係や小菅村特有の環境にも配慮したアイデアに審査員の注目が集まりました。

では、活発な議論を重ねた末、最終審査で選ばれた受賞作品をご紹介します!

最優秀賞

「タイトル:凸凹ハウス 森に開かれた細長い家/根岸 陽さん」

外界と一体になった小さなユニットの連結からなり、森の中にも傾斜地にも建設しやすそう、縦方向への拡張も容易にできそう、という点が評価されました。また、タイニーハウスの建設と植樹がセットになっており、既存の森の一部を開拓してタイニーハウスを建てつつ周囲に木を植えてみんなで育て、コミュニティ&里山を形成し山と町をつなぐという、大きなスケールでの森林との共生が考えられている点も秀逸です。

優秀賞

「タイトル:森に咲く家 森と踊る家/蜷川 結さん」

中央に何もない空間があり、四隅に設けたL字型の小部屋にそれぞれお風呂やキッチン、クローゼットといった生活機能が「収納」されていて、扉の開閉によって中央の空間とつながり、いろんな用途の部屋に変化するというユニークな発想が評価されました。気象や目的に応じて、外界との接点を開いたり閉じたりできるのも小菅村の環境にフィットしています。

特別賞-1

「タイトル:OFF-GRID LINK/高橋賢治さん・山本至さん」

10㎡未満のユニットを3つ組み合わせることで一つの住居になる他、複数を用いればコミュニティビレッジを形成することもできるアイデアです。リビング、キッチン&バスルーム、ベッドルームからなる3種のユニットは、それぞれの屋根が太陽光、雨水、腐葉土による熱を利用できる仕組みになっており、オフグリッドでの生活も可能。配置によっていろんな交流を生み出せそうですね!

特別賞-2

「タイトル:NAGA-HOSO HOUSE/塩島康弘さん」

森の中にガラス張りのこの建物があったらさぞ美しいだろうと思わせられるデザイン性が、高評価を集めました。日中の緑の中での佇まいはもちろんのこと、夜に灯が点った時の外側から見た感動が想像できます。タイニーハウスだからこそ、このような非日常的なデザインもより際立つのではないでしょうか。

村長賞-1

「タイトル:週末東京 仕事小屋付きオフグリッドタイニーハウス/田中健昌さん」

小菅村に住んで仕事をし、必要な時だけ東京に通うというテレワークの場としてのタイニーハウス。東京の仕事を田舎でこなしながら、家庭菜園やオフグリッドシステムも取り入れた健康的でコストのかかりにくい生活を送り、東京はたまに行く、という今までのセカンドハウスの持ち方とは逆の発想です。小菅村で過ごす日と東京で過ごす日のタイムスケジュール提案が具体的で、ソフト面のデザインが評価されました。

村長賞-2

「タイトル:ZOOM-IN INTO THE NATURE/Thet Su Hlaing(タスーライ)さん」

英語オンリーの提案書が、タイニーハウスムーブメントが世界的なものであることを雄弁に語っています!小菅村の地形と日の入り方がよく研究されており、傾斜地を利用して光と景色を最も効果的に取り込む配置が評価されました。丸太で基礎をつくるなど村の木材を生かす提案も盛り込まれています。

YADOKARI賞

「タイトル:SAUNA HOUSE 自然と遊ぶシェアするサードプレイスハウス/大西 洋さん」

森の中で薪炊きのプライベートサウナを楽しめる宿泊施設としての提案です。小菅村の木を薪としても活用し、多摩源流の水で熱くなった体を冷やす。ワーキングスペースも併設し、リモートワーカーもリフレッシュしながら働くことが可能。所有するよりハードルも低く、シェアすることで小菅村の関係人口増加にも貢献します。特産品の蜂蜜をサウナと絡めて商品化するアイデアなど、トータルでの具体的な事業構想が高い評価を得ました。(ちなみにYADOKARIさわだは大のサウナ好きでもあります。)

回を重ねるごとにコンテストが進化していきそうな予感!

第3回の開催に向けて

審査会を終えて、審査員のみなさんからはコンテストの次なる進化に向けたこんなご意見も。

「今年は建築業界のプロからの応募が増えた印象なので、来年からは学生枠や一般枠などエントリーを分けてはどうか」

「タイニーハウスの魅力は、建築されるロケーションや地形とも密接に関係する。建てる場所・エリアなどをあらかじめ指定してもいいかも」

回を重ねるごとに、さらに面白くなっていきそうです!

昨年、最優秀賞を受賞したタイニーハウスに設計者自ら1泊。

自分の設計したタイニーハウスに泊まってみて

また、審査員を務めた昨年の最優秀賞受賞者である光賀さん、佐藤さん(アトリエデザインパレット一級建築士事務所)は、今回、自ら設計したタイニーハウスの実物に1泊するという体験もしました。その感想を伺ってみると…

東京の柴又に育ち、地元に設計事務所を構えた光賀さん(写真中央)。「都会の狭小住宅と違い、大自然の中のタイニーハウスは外からの恵みが豊か」

光賀さん「とても贅沢な空間です!身体にフィットする安心感があり、狭いという印象はありません。とても短い滞在でしたが、都会に比べ、空の色や鳥の声、時間の移ろいに対し、積極的に自分の意識が向いている事に気づきました。それは単にプライバシーを意識する事とは異なる感覚です。僕たちの居室と水廻りを分棟とした案では、冬にテラスを行き来するのは確かに寒い(笑)ですがそのつかの間の体験をも”いいなぁ”と思えてしまう感覚でした」

佐藤さん(写真中央)は学生時代から光賀さんと共に勉学に励んだ間柄で、共に事務所で活動中。

佐藤さん「夜、歯を磨くために外に出たら、星空が一面に広がりとてもきれいでした。テラスを行き来するたびに、風や光、気温といったリアルな感覚を肌で味わえて、そこに留まりたくなりました。ふとした日常の中に触れられる豊かさがある、その価値を改めて感じました」

数人で使っても意外と快適なタイニーハウスの内部。

光賀さん「朝も良かった!外の明るさで自然と目が覚め、目を開けると空が飛び込んできました。コンパクトな空間に光が溢れ、とても清々しい気分でした。テラスに出て飲んだ目覚めのコーヒーは格別でした」

元公民館をリノベーションした奥の建物は、図書館、コワーキング、シェアキッチン、シェア工房などからなる複合施設として小菅村に近日オープン予定。その前で一同記念写真。

豊かな住まい方、コミュニティの在り方をデザインする

こうして2日間に渡るタイニーハウスデザインコンテスト2018の審査会は幕を閉じました。

改めて、タイニーハウスのデザインを考えることは、表面的な形状のデザインではなく、豊かな住まい方や、地域資源を含めたコミュニティの在り方そのものをデザインすることなんだと気づかされた2日間でした。

人の流動性が高まるこれからの時代において、タイニーハウスはミニマリストのための居住空間に留まらず、小さいからこそ外部に開かれた、多様な人々を呼び寄せ交流を生む場としての大きな可能性を秘めているのではないでしょうか。

このコンテストの授賞式の様子や、受賞作品の建築・活用についても随時お届けして行く予定です。続報をぜひお楽しみに!

▼ タイニーハウスデザインコンテスト2018
http://kosuge.yadokari.net/

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THE SKELETON HUT

好きなライフスタイルをインストールできるタイニーハウス・小屋「THE SKELETON HUT」YADOKARIと鎌倉の不動産・建築事務所エンジョイワークスとのコラボレーションにて企画・設計・施工・販売をトータルプロデュース。

「スケルトンハット」と名付けられたこの小屋は、木の板を外壁に貼ったボックス型の躯体(スケルトン)の中に、自由につくれる内装(インフィル)を持ち、何度でもスケルトンの状態へリセットできる可変性が大きな魅力。床面積3帖のSmallと、床面積10帖+ロフト5帖のLargeがあり、最小限の居住機能を備えたLargeには大人2人と子ども1人までなら暮らすことも可能。

▼「THE SKELETON HUT」オフィシャルサイト
http://skeletonhut.yadokari.net/

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月極本

世界中のミニマルライフや新しい暮らしの事例を纏めた定期雑誌「月極本」。年間で3冊を発刊。YADOKARIのコアファンに向けた “プレミアムメンバー会員制度” があり、定期雑誌提供の他にオリジナルコンテンツ&動画配信や特別イベント・交流会などを展開。

▼「月極本」オフィシャルサイト
http://tsukigime.yadokari.net/

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HOUSE VISION

「HOUSE VISION2 2016 TOKYO EXHIBITION」にてYADOKARI × 土谷貞雄 トークセッションに弊社代表のさわだ・ウエスギ両名が講演・登壇。

▼ 「HOUSE VISION」オフィシャルサイト
http://house-vision.jp/

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巨匠ル・コルビュジエが最愛の妻へと贈り、人生の終焉を迎えた最後の建築「カップ・マルタンの休暇小屋」。この小屋は、建築家が最期に辿り着いた「答え」ではなく、住まいとは何か、暮らしにとって大事なものは何かという「問い」に向き合うための場所だった――。前回の記事ではそんな仮説を立てたところで締めくくりました。

今回、小さな小屋のなかに身を置いたつもりで、改めて問いを立てたいと思います。

「未来の豊かな暮らしとは?」

これまでの連載では、小さな住まいの過去と現在地について、世界各国の事例をお伝えしてまいりました。この一年お送りしてきた連載をふまえ、未来の豊かな暮らしについて考えていきます。

「パーソナライゼーション」「モビリティ」「コミュニティ」、この3つの観点から考えていきたいと思います。

▼ 記事本編はこちら
https://house.muji.com/life/clmn/small-life/small_180522/

TINY HOUSE JOURNALタイニーハウスの“現在”を知る

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