【イベントレポート&動画】公園がオフィスになる? 実証実験「Vivid Worker’s Place」で見えた新しい働き方の形と屋外空間活用の新たな可能性

▼当日の映像を動画を視聴できます。レポートと合わせてお楽しみください

2021年4月、横浜市みなとみらい21地区にあるグランモール公園の一角に鮮やかな赤・青・黄のワークスペースが出現しました。会場には誰もが自由に使える机や椅子が配され、雑談のタネとなるようなちょっとした仕掛けも用意されています。これは、オフィスを外に持ち出したらどんな人がどんなふうに使うかを検証し、新しい働き方と公共空間の活用方法を考えていくための約一週間にわたる実証実験です。

この記事では、通常の実験設備に加えて1日限りの特別企画も実施された、4月26日の様子をレポートします。

  • 実証実験 Vivid Worker’s Place
  • 期間 2021年4月21日〜28日 11:00〜18:00
  • 会場 グランモール公園ヨーヨー広場
  • 主催 一般社団法人横浜みなとみらい21、国立大学法人横浜国立大学、三菱地所株式会社、YADOKARI株式会社
  • 協力 クイーンズスクエア横浜 横浜市都市整備局 ランドマークプラザ

グランモール公園は、ランドマークプラザやクイーンズスクエア横浜の間にあり、周辺のオフィスで働く人や近隣マンションの住人、買い物客らが行き交い、所々に配されたベンチで休憩をしたりする公共の空間です。そこに突如出現したカラフルなデスクやドームやガチャガチャは、非日常的な存在感が目を引きます。

平日昼間、働いている人にとっては忙しい時間帯ですが、興味を持って実際に使ってくださった方々もいらっしゃいました。そんな皆さんの声を各コンテンツの詳細とともにご紹介しましょう。

インスピレーションデスク
〜新しい刺激に出会う〜

「インスピレーションデスク」と名付けられたビビッドカラーのデスクは4席ずつ、通行の妨げにならないよう3箇所に分けて配置。着席するとWi-Fiも使えます。

お昼前は、周辺店舗などからテイクアウトしたメニューを飲食する方がちらほら。お昼頃になると、パソコンを広げたり、打ち合わせを始めたりする姿が見られるようになりました。

打ち合わせしていた4人グループ

商業ビル管理会社の同僚4人。ビル内の一部施設をワークスペースとして活用したいと企画している中でこの実証実験を知り、見学を兼ねて訪れてみたとのこと。

「外は風があって明るく、気持ちがいいですね」

 

近くのオフィスで働く同僚2人

事前に配布されたチラシを見て気になっていたとのこと。今は勤務時間中で、いつも社内でやっている仕事を持ち出してみたそうです。

「周囲のことがいろいろ目に入ってくるので集中はしづらいけれど、会話が弾みます」

「働く場所が、室内と屋外、両方にあると気分転換になっていいと思います」

 

高校生4人組

明日は小テストだという仲良しグループ。課題に取り組んでいるところをお邪魔しました。それぞれ通っている高校は違いますが、駅で落ち合い、課題をするためにファミレスか図書館に向かおうとしていた途中でここを見つけたといいます。

「Wi-Fi使えるし、自由に勉強もしていいとのことだったので。コロナが心配な時期、密にならないし安心だと感じました」

「室内だとついウトウトしてしまうけれど、外だと眠くならないのがいいですね」

 

この日は快晴で、風が出てやや肌寒い瞬間もありましたが、おおむね快適な外気温。時間帯によって直射日光が当たるのが気になりましたが、風を感じられる上にWi-Fiと座り心地のいい椅子とデスクがあり、過ごしやすかったようです。通りがかりに関心を持って声をかけてくれた人から、「テレワークが増え、自宅だと行き詰まることがあるが、こういう空間も働く場所として選択肢にあるといい」「しっかりしたものである必要はないけれど、植栽のようなゆるやかなパーティションがあると落ち着きそう」という声も聞かれました。

コミュニケーションガチャ

ガチャガチャのダイヤルを回して出てくるカプセルの中には、雑談のテーマが書かれた紙が入っています。これをネタに、同行者や偶然居合わせた人同士で会話を楽しみ、新しい出会いや発見を通して「雑談力」を磨いてもらおうという目的で設置されたのが、「コミュニケーションガチャ」です。

大学院修士課程の3人
3人のうち、2人は就職活動中。街づくりに携わっている会社への就職を希望しており、就活中にこの実証実験のことを知って興味を持ったそうです。

引き当てたテーマは「人生の分岐点だった瞬間は」。テーマについてひとしきりおしゃべりした後、インスピレーションデスクに移動し、オンライン授業に参加していました。

「講義などはずっとオンラインだったため、3人で直接会うのは今日が初めてなんです。今まで、こんなテーマで話す機会がなかったので、お互いの知らなかった一面が見えました」

近隣に在住・通学の学生2人

「一番会いたい人は?」とのテーマに、両者とも迷わず回答。1人は「家族」。進学で地元を離れて一人暮らしを始めて、改めて家族の大切さを実感したそうです。もう1人が会いたいのは「推し」。コロナ禍でなかなかライブなどの機会が激減した中、余計にその思いが強くなったようです。

余談ながら、偶然にも彼女と筆者は同じグループ推しだったため、ひとしきりおしゃべりが盛り上がり、新しい出会いと雑談の楽しさを改めて実感した次第です。

なおこの日は特別に、コミュニケーションガチャの周辺にスタッフが常駐。コミュニケーションガチャに興味を持って来てくれた人に使い方を案内したり、初対面の人同士を引き合わせたり、新しい出会いのお手伝いをしました。

アルコールクエスチョン
〜新しい働き方を考える〜

これからの新しい働き方に関わる問いに2択で答えるコーナーで、回答ボタンの代わりにアルコール消毒器をワンプッシュする、「アルコールクエスチョン」。

天秤のような棒の両端に消毒器が取り付けてあり、意見が多く集まった回答ほど消毒器の内容量が減って上へと上がる仕組み。感染症対策のついでに、普段なかなか考えない、生き方の根幹に触れる「問い」と向き合うことになります。

 

ここで掲げられた「問い」は以下の3項目。

  • Q1 一生遊び続ける/一生働き続ける
  • Q2 一生都会で働く/一生田舎で働く
  • Q3 給料 満足している/給料 満足していない

ユニークな見た目に興味を持って立ち止まり、積極的に使ってみる姿が多く見られました。なお、近隣で働く人が多い平日と、観光やショッピングで遠方から訪れる人もいる休日では、回答の傾向が異なっていた模様です。

 

特別企画  “NEW”公衆電話

会場にはスケルトン状のドームが3つ設置されました。中にはデスクと、受話器が接続されたパソコンが用意され、指定時間になると横浜で活躍するそれぞれ分野の異なるプロフェッショナルにつながり、通話ができるようになっています。主に働き方に関するトピックが記載されたシートを受け取り、これに沿って話を聞いたり、自身の悩みを相談したりできる仕組みが「“NEW”公衆電話」です。

シートに記載されていたトピックは以下5つ。

  1. あなたのプロフィールと電話を掛けようと思った理由を相手に伝えてください。
  2. 相手の名前と職業について相手に聞いてください。
  3. 相手に、今の仕事をするようになったきっかけを聞いてください。
  4. 今、相手にとって「働く」ということはどういうことと捉えているか聞いてください。
  5. 今、あなたの「働く」について相談したいことを相手に話してください。

スタンバイしているプロフェッショナルは5人で、通話は1回あたり約30分。受付に申し込み、指定時間になったら通話を開始します。

今回、モニタの向こう側にはこちらの5人が相談相手として待機しています。

  • 柴田大輔さん

シェアハウスやゲストハウス、カフェ等の運営、街のコミュニティづくり、BATTERA STAND日本橋のコミュニティビルダーなどを経て、2018年「始まり商店街」を始動、各種イベントやコミュニティ支援などに携わる。

  • 相澤毅さん

株式会社plan-A代表取締役、イノベーションブースター、株式会社ルーヴィス取締役。不動産事業者や家電メーカーのコンサル、IT企業の新規事業企画、自治体との街づくり、NPO法人理事等、多様な働き方を実践中。

  • 小泉瑛一さん

about your city代表。宮城県石巻市の復興街づくりの市民アクションISHINOMAKI2.0設立に参画。横浜の建築設計事務所オンデザインで拠点運営やエリアマネジメントなどを担当。2020年独立。

  • 飯野誉子さん

日本茶インストラクターの資格を取得し、横浜でお茶のある生活を提案する活動を開始。現在は、福岡県直方市に拠点を移し、全国各地から仕入れた茶葉や、お茶の道具を販売する誉茶紡を運営する。

  • 岩佐岳仙さん

カンビス合同会社代表。デザイナー。北欧文化研究家。長野県蓼科で、温泉宿・キャンプ場Hytter Lodge & Cabinsの運営や自転車ガイドを務める。交通インフラを見直し人間中心の街づくりを提唱する「Bicycle Urbanism」の普及活動にも注力中。

就職活動中の大学生

「知らない人と話せる機会は貴重だし、自分のことも話したいと思っていたので申し込んでみました。お話ししたのは、就職のことや進路選択の悩みなどについて。自分はあらかじめゴールを決め、それを達成したら満足してしまう方なんですが、今回、“立ち止まらず進め”というアドバイスをいただいたことが響きました」

就職活動目前の大学生

「進路選びに迷っていて、そのことについて相談したところ、“なりたい自分を考えるより、身に付けたい技術が何かを考えてみると道が開けるのでは”というアドバイスをいただいたことが新鮮でした。今回の相談相手は、たまたま自分が興味を持っている分野の専門家でしたが、他の分野の方とお話することにも興味があります。この公衆電話が常設になって、いろいろなジャンルの方にランダムにアクセスできると面白いと思います」

全く面識がなく、利害関係のない、しかも特定分野の専門性を極めた人と対話できる機会なんてそうそうありません。いただいたコメントにもありましたが、こんな公衆電話が気軽に利用できるようになったら実に刺激的だし、新しい相乗効果も生まれるのではないかと感じました。

この日、インスピレーションデスクやコミュニケーションガチャを使ってくださった方々の多くが「面白い試みだと思った」「身近にあって気軽に使えるなら利用したい」と感想を寄せてくれました。

横浜国立大学の研究室により行われた人流計測データは、今後、新たな公園の活用方法の検証、企画のために生かされることになります。

こんなふうに公共の空間を柔軟に使えるようになったら、多様で自由で健やかな働き方・暮らし方が実現できるかもしれません。そして、このグランモール公園が新しい発想・人・問い・好奇心に出会える場所になったら、みなとみらいはさらに面白くなっていくのではないでしょうか。