【特集コラム】第2回:ライフスタイルや環境に合わせて選べるタイニーハウスの多様化と可能性

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タイニーハウスムーブメントの特集として連載している全4回の特集コラム、今回は「ライフスタイルや環境に合わせて選べるタイニーハウスの多様化と可能性」についてお話しします。
第1回はこちらから ⇒ 第1回「小さな家でシンプルに無駄なく生きる。タイニーハウスムーブメントを紐解く」

ライフスタイルや環境に合わせて選べるタイニーハウスの多様化と可能性

今回ご紹介するのは「コンテナハウス」「アースバックハウス」「モバイルハウス」「スマートシェルター」の4種。今回は、それぞれがどのようなものなのかをお話ししていきます。
ほとんどのタイニーハウスは自作されているか、建築家と共に造り上げているかですが、自分で買って組み立てるという選択肢も増えてきました。ますます目が離せないタイニーハウスムーブメントを紐解いていきましょう。

コンテナを改造して気軽にはじめる小さな家暮らし

「タイニーハウスとは、普通のスモールハウスとは違う家です。」と前回のコラムで書きましたが、それではどのようなタイニーハウスがあるのでしょうか。
まず最初に、コンテナを改造したコンテナハウス。鉄の箱のイメージだけがよぎる方もいるかもしれませんが、多くのコンテナハウスは窓や間口を大きく取って通気や採光を十分に取れるように工夫して、積み上げたり立体的に交差する様に設置してロケーションに応じた見せ方や空間デザインが可能です。

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photo via : http://www.terra-z.ru/

無機質な素材ですが、内装に木材を多用することによって暖かみを出したり、外をペイントしたりと、工夫とアイデア次第で素敵な空間を演出できます。無機質な素材を生かしてクールに仕上げるのもカッコいいですね。

基本的に都市近郊(都市計画区域内)では、中古のコンテナを使ったスモールハウスやショップ等の建築は難しいため、建築確認申請に準拠したコンテナ風の鉄骨建築などで対応しているケースもあるようです。とはいえ地方郊外では、コンテナだけでゲストハウスとして申請して通った例もあるので、様々な可能性を秘めていると言えます。
そして何より安いのも魅力。配送料が別途掛かる事が多いですが、中古であれば、ひとつ10万~30万円で購入できたりします。

コンテナハウスのデメリットはなんでしょう?気軽に購入、設置できて法律上の問題もあまり気にしなくて良い反面、やはりデメリットもあります。
やはりまず気になるのは季節の寒暖による室内環境。いくら内装の壁を付けて空気層をもうけたり、耐熱塗料でまわりを塗ってもやはり限界はあります。あとはコンテナ自体の腐蝕。頑丈で強いコンテナも時と共に劣化していきます。

実は筆者も、半年ほど沖縄のコンテナハウスに住んで居たことがあるのですが、夏の日中の暑さは相当なものでした。夜寝る時にもクーラーは欠かせません。
この時のコンテナハウスは箱型だったので風の通りなどが無かったので電気代も掛かりましたが、今ならソーラー発電システムを導入して賄えるのにと思います。

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photo via : http://homeinabox.blogspot.jp/

ですが、海の近くだったのでコンテナの上に海が見えるルーフデッキを造って、そこから海に沈む夕日を見ながら飲むビールは最高でした。
「手頃な価格で頑丈で快適なタイニーハウスなんて、そんな都合の良い物無いかなぁ」と、ここで諦める事はありません。
次に紹介するタイニーハウス「アースバックハウス」は「手頃な価格・頑丈さ・快適さ」の全てを満たしてくれる、夢の様なタイニーハウスですよ。

2000年持つと言われる土の家、アースバックハウス

長ーい専用の土嚢袋(アースバック)に「土・砂・砂利・石灰・セメント・水」などを混ぜた物を詰めて、円を描く様に置き、それをドーム型に積み上げて造るアースバックハウス。アースバックと中に詰める土などに、外装の窓やドアだけで造れるので材料費があまり掛かりません。壁は30~40cmの土壁なので室内は夏涼しく、冬暖かいのが特徴です。

何より特筆すべきはこのアースバックハウス、理論上では2000年持つと言われているのです。アースバックハウスの歴史はまだ浅く、イラン生まれの建築家Nader Khalili(ナダー・カリリ)が提唱、発表した物。
世界中のどこにでもある土や石灰と持ち運び簡単な土嚢袋を使って快適で頑丈な家を造れるとあって世界中に広まりつつあります。そしてこの家、ものすごく可愛いんです。

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photo via : http://www.earthbagvillage.com/

どうでしょうこの愛らしい姿。
こんなに可愛いのになんで2000年も持つの?最近発表されたのに2000年?こんな疑問は当然ですよね。アースバックハウスの素材の中で重要なものは石灰。世界各地の遺跡や壁画の主素材は石灰が多く、万里の長城はまさに石灰と叩きの技術で造られたと言われています。

現代建築で多く使われているセメントは硬くて頑丈ですが、数十年と持たずに劣化が始まりどんどん脆く崩れていきます。ところが石灰の硬度はセメントのそれには劣るものの、その強度はずっと維持され、ほとんど劣化しない特性を持っているのです。

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photo via : http://www.earthbagbuilding.com/

基礎工事も無く、直径約3.5m以内のサイズであれば国内の建築法には引っかからないそうで、一つ20~30万円で造れるのに、とても頑丈で快適で可愛いタイニーハウス。もうこれ以上に無い位理想的なタイニーハウスですがデメリットを上げるとすると、造るのが物凄く大変なのです。「袋に土詰めてドーム型に積み上げるだけじゃ無いの?」違います。

万里の長城のくだりで少し出た、タタキの技術が重要なのです。
実際に筆者もアースバックハウスの現場に通ってお手伝いをさせていただく機会があったのですが、10~15人位の人数で地面をならしてから土をふるって配合し、なが~いアースバックに土を入れて、タンパーと言うタタキの道具で水平やバランスを見ながら全力で叩き固め、丸一日掛けて土のうを3~4段を積んで・・・、を毎日繰り返していると本当にヘトヘトになります。

もちろん友人知人に手伝ってもらうにしてもご飯や飲み物を用意したり、遠方からの人には泊まる場所を用意したりと大変。
最近ではワークショップという形でノウハウを教えながら手伝ってもらうバータースタイルや、クラウドファンディングで出費を抑える人も出て来ていますが、やはり2000年持つ家を造ると言うのは簡単では無いのです。

「これは大変そうだ・・・」という方には、次にご紹介するモバイルハウスはいかがでしょうか?

車輪を付けて手作りするモバイルハウス

法律では「家を勝手に建てちゃダメですよー。」と決められています。
日曜大工が趣味で、そろそろ小さな家くらいなら建てれるんじゃ無いかと頭をよぎっても、そう簡単にはいかないのですが、「小屋に車輪を付ければ法律に引っかからない」という抜け道を使って造られているのがモバイルハウス。小屋に車輪を付けるだけで法律にも触れず、基礎も無いので固定資産税も掛かりません。そして車で牽引すれば気軽にお引越しも出来ちゃいます。

小屋なので、なるべくスペースを有効に活用する為に屋根のスペースをロフトにしたり、太陽光を和らげる為に屋根に植物を植えてみたり。中には軽トラックの荷台専用で積み降ろし仕様に造られたモバイルハウスもあります。自作のタイニーハウスの中ではモバイルハウスが一番手軽で費用も掛からず造れるのではないでしょうか?

2×4工法でワクを組み、屋根、コンパネ、ドアと窓をつけ、雨対策をしたら最後に底に車輪を付ければ完成。簡易的なものなら10〜20万円で造れます。
更に快適にしたいのなら、断熱材やロフト、ソーラーパネル、冬に備えて薪ストーブまで付けちゃえば、あなただけの特別なモバイルハウスの完成です。

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photo via : http://www.inquisitr.com/

ロフトで寝て起きて、キャンプ用のシンクと排水用タンクに水タンクがあれば毎朝の洗顔もバッチリ。ロフトの下のスペースで可動式にしたデスクをパタンと出して本を読んだり、パソコンで作業したりして、ひと休みしたくなったらカセットコンロでお湯を沸かし、窓に置いてるプランターからハーブを積んでハーブティーブレイク。そんな日常を、毎日違う環境で過ごす事も、モバイルハウスなら可能なのです。

今日は海が見える海岸線、明日は山の上の星空に囲まれたとっておきの場所、あなたの気分とその日の天気に合わせて同じ窓から違う景色を眺めて暮らせるなんて素敵ですね。

大手企業が参入し始めたタイニーハウスや組み立て式コテージやシェルター

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輸送や設置が大掛かりなコンテナハウスや、造る手間が掛かるアースバックハウスやモバイルハウスよりも、気軽に組み立てられ、丈夫で安価な組み立て式コテージに、大手企業が参入し始めています。日本でもお馴染みのIKEAも機能的で丈夫な組み立てスマートシェルター「refugee shelters」を発表して話題になりました。タイニーハウスムーブメントが広まっていけば今後ますますこういった大企業が参入し始めるのでは無いでしょうか?

そうすればますます小さな住まい方の選択肢が増え、需要に応じて価格も手の届きやすい値段になるはずです。
タイニーハウスに住みたいけど「技術も経験も無いから自分で造るなんて出来ない!」「都会に住んでるから工作スペースが確保出来ない!」「木材を買って来て造る時間が取れない!」なんて方にはもってこいですね。

組み立て式コテージやシェルターは、大量生産ができれば10万円位で買える様になるとの事ですが、簡易シェルターなので耐久年数は約3年との事です。単純計算で100万円の予算があれば30年住める事になりますが、役目を終えたシェルターの破棄や新しいシェルターの配送費も別途掛かります。数年後には更に耐久年数の延びたシェルターが発表されるかもと考えると今後の大手企業のタイニーハウスの流れから目が離せません。
新しい車を購入するように、家も、形や機能、予算など、様々なスタイルから自由に選べるようになれば良いなと思います。

■次回の特集は「タイニーハウス、実際住んだらどうなるの?」

第2回となった、タイニーハウスムーブメント特集コラム、いかがでしたでしょうか?
ひとくちにタイニーハウス(ちっちゃかわいい家)と言ってもコンテナを利用したものや土を固めたもの、車輪をつけたり自作したり量産されたコテージやシェルターを購入したりと様々な選択肢があります。そしてそれぞれがいま日本各地にも少しずつ増え始めているのです。

タイニーハウスについて色々なカタチを紹介して来ましたが、次回は設備や電気や上下水道等のライフラインに注目し実際にタイニーハウスで暮らすライフスタイルについて詳しく掘り下げていきたいと思います。

まだ記憶に新しい東日本大震災では広範囲にわたってライフラインがストップし、日常の当たり前があっという間に機能しなくなり、社会のシステムの脆さを実感する事になりました。そこで「オフグリッド」という名のエネルギーの外からの依存脱却アクションが注目されるようになりました。

ソーラー発電システムやロケットストーブやウッドガスストーブなどを生活に取り入れる人達が増え始め、タイニーハウスにも、オフグリッドの流れが採用され始めているのです。
それでは続きは第三回で。

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