コロニヘーヴが持たらすデンマークの豊かな休日

日本において一般的にいわれる年間休日は120日程度。一年の中の約1/3を占め、更に人生のスパンで考えても、やはり休日はおおよそ1/3になると考えられる。
“人生の1/3の時間 = 休日”
これは、なかなかの存在感。ここでは、人生において大きな存在である“休日”にまつわる情報を世界中からかき集め、我々日本人が、休日という“自分らしく過ごせる時間”をどう捉え、過ごしているのかを少し向き合ってみたいと考えています。時は21世紀、個が尊重され、情報は世界中から飛び込んでくる時代。日本というスケールに収まる必要はなく、これまでの日本の休日という概念に捉われる必要もない。“家族との休日”、“恋人との休日”、“仲間との休日”、想像している以上に私たちは自由な時代にいる事に気付き、自分らしい休日のライフスタイルに拘ってみてはいかがでしょうか。
Holiday is your life.
ここで発信する情報は、読んで楽しかったというinputに留まらず、自分らしく過ごせる休日のヒントを見つけ出し、何か行動をおこすoutputのきっかけになることを願っています。
どこか遠くでバケーションを楽しみたい。でも、時間もお金もない。そんなデンマーク人の心を満たしてくれるのがコロニヘーヴ。忙しい都市での生活から気軽に抜け出し、いや、都会に居ながらにして豊かな休日が送れるデンマークのコロニヘーヴを紹介します。
コロニヘーヴとは、集落や集合体を意味するコロニーと庭を意味するヘーブから成る言葉。日本の家庭菜園のようなものなのだそうだが、コロニヘーヴには週末をゆっくりと過ごせる小屋がついているのが特徴です。そんな小屋付き菜園が何十区画と集まって集落を形成しているのだそうです。
空から見たコロニヘーヴ
コペンハーゲン郊外に位置するネールムには、小判のような形をした庭が連なるコロニヘーヴがあります。デンマークを代表する造園家・カール・テオドール・ソーレンセンによって1948年に40区画の庭が創られました。芝生が敷きつめられた敷地内には生け垣に囲まれた庭があり、それぞれ個性的な庭が広がっています。

流行りのオーガニック野菜を育てたり、ただ芝生を敷きつめて空を見上げるための寝転ぶスペースにしたり、BBQをしたり、コロニヘーヴの庭は自由そのもの。しかも、これらの庭は道路で繋がっていません。自分の車に乗るために、いつもより歩かなくてはなりませんが、その分、芝生を踏みしめながら新鮮な空気を吸いこみ、時にはお隣さんとの会話が楽しめるようになっているのです。

ブロンディーという街にあるコロニヘーヴは上空から眺めると、花のような丸いコロニーがいくつもあり、そのコロニーはまるで花びらのような庭に区画されています。
このコロニヘーヴはそこに住むことが目的ではありません(一年を通して住むことが禁じられています)。しかし、庭に建てられた小屋(家ではない)で多くの人々が夏の休日や週末を過ごしているのです。普段生活しない小屋だからこそ、本当に必要なものだけを身の回りにおき、華美ではないけれどシンプルで豊かな時間が過ごせるのです。
小屋も野菜も手作りで
とある建築家夫婦は週末や祭日になると庭に通い、2年間かけて小屋をリフォームしました。アウトドアが好きなふたりは開放的なパティオドアでリビングとテラスがひとつの空間として繋がるようにしたそうです。


また庭ではスーパーマーケットに行かなくてもよいようにたくさんの野菜を育てています。収穫した野菜だけで大好きな料理をすることが何より幸せなのだそうです。
コロニヘーヴの今昔
コロニヘーヴは18世紀末ごろからデンマークで広まっていきました。コペンハーゲンの街中に大きな五階建てビルの建設がすすみ、地方から大勢の人々が首都へとやってきたころでした。狭い集合住宅で暮らす人々が手軽に緑に触れることができる息抜きの場所だったのです。戦時中は、畑で獲れる野菜は貴重な食料となりました。

その後、自動車が普及するにつれ、多くの人々がより遠くへとサマーハウスを求めて移動するようになりましたが、オイルショックによって原油が高騰すると、再び、身近なコロニヘーヴに注目が集まるようになったそうです。1970年代後半には、デンマーク議会でコロニヘーヴの保護と拡張が決定され、コロニヘーヴで過ごす週末の豊かな時間は、国民のためのものとなったのです。
世界で最も有給の休日が多い国のひとつと言われているデンマークの国民にとって、コロニヘーヴは最も気軽にリラックスできる手段なのです。移動時間が短くてすむことや、金銭的にもお手頃なことが人気の秘密です。

現在、デンマーク国内には6万をこえるコロニヘーヴがあり、日本からも民泊サイトなどを通じて予約&宿泊することが可能です。ただ、日本から行くと手軽な週末ではなく立派な海外旅行になってしまいますが、日常の延長のような豊かな時間が待っていることだけは確かなようです。
コロニヘーヴ小屋は、豪華ではなく、とても質素。上下水道はありますが、電化製品も必要最低限のものだけ。最低限のインフラしかありませんが、家が主役ではなくて庭が主役、自然と家族と共にゆったりと過ごす時間はプライスレスです。日本でも地方の空き家などを家族でDIY改修しながら週末2拠点、複数家族でシェア別荘などが手軽に行える時代ですので、しっくりくる建物を見つけて「コロニヘーヴ」のような休日を過ごしてみてはどうだろうか。
Holiday is your life.
Via:
goodshomedesign.com
quora.com
cityfarmer.org
cphpost.dk