SAIKAI TINY HOUSE
DESIGN CONTEST
2025

お知らせ
2026.04.01
審査委員より受賞作品の作品講評をいただきましたので掲載いたします。
さいかいタイニーハウスデザインコンテスト2025
今回のテーマは、西海市のヒノキ林の木材を使い活かしたい!想いとYADOKARIの タイニーハウスの可能性と社会への実装のビジネスモデル実践経験から、母屋と離れ屋、 妄想滞在記の提案を求めた課題となりました。
応募総数は、77点で、母屋部門 31点(一般25名、学生6名)。離れ屋部門46点(一般35名、学生11名)でした。
今回は西海市の自然豊かな海、山、川、ヒノキ林のキーワードが、応募者の創作意欲を掻き立てたのか、過去の応募総数より、少なかったにも関わらず、質の高い応募作品が多いと感じました。
審査は、午前中に5人の審査委員から、応募部門に関わらず、優れた作品を10点程度の推薦とその評価理由について、紹介してもらいました。
そして午後からそれらの作品を全て机上に並べ、各審査委員に一押し作品を3点づつ選んでもらいました。
最終選考に残った作品は、評価が拮抗したものもありましたが、意見交換を経て各賞は、以下の通り決まりました。
最優秀賞
240865 Tree Ring House
奨励賞
241015 森にひらく、料理教室
佳作三点
240265 SAIKAI HUB-UNIT
241095 星降るまちの約束
240505 海歌(うみうた)
妄想滞在記賞
240085 SR3
学生賞
240145 Treehouse Rental
タイニーハウス研究会賞
241275 ヒノキノイエ
受賞作品の講評については、さわだいっせい氏(YADOKARI 共同代表)、谷川信平氏(タイニーハウス研究会会長)にお願いしました。後方の記載をご覧ください。
最後に審査委員会を代表して応募者すべての皆様に謝意を表します。
応募期間が短いにも関わらず作品づくりにチャレンジし、ご提出いただきありがとうございました。
いま、私たちの住んでいる地球環境は、19世紀末の産業革命頃までは、平均気温15℃(大気中のCO2濃度380ppm)で安定した気候帯(熱帯〜寒帯)でそれぞれの気候特性を生かしながら、農業。漁業、各種産業など伝統的な地域文化を醸成して生活していました。
しかしここ1世紀の間、石炭・石油等の地下資源の恩恵を受け、世界中が発電等の燃料やモータリゼイション等便利な生活が普及し一般化しました。
そのため大気中のCO2濃度が徐々に上昇し、現在(2024年)地球の平均気温が➕⒈5℃(IPCC報告)まで上昇し、国連事務総長グテーレスさんが、地球沸騰化時代に突入したと発言しました。
大気中のCO2は、主に森林によって吸収され、木材等の森林循環施策は、日本においても地球温暖化防止の観点から重要施策として大きな役割を担います。
西海市とYADOKARIが連携して、実施された3回の「タイニーハウス」WEBコンペは、 GX(グリーントランスフォーメイション)につながる、価値あるコンペと位置付けております。
3回にわたって実施された、西海市タイニーハウスコンペも今回で終了しますが、これまでの労苦や成果を今後どう活かすか?
西海市を震源地として、今後長崎県内にもっともっと普及させる手立てを私も考えたいと思います。
西海市の皆様、クリエイティブ集団 YADOKARIの皆様にはこのコンペを通して多くのことを学ばせてもらいました。ありがとうございました。
さいかいタイニーハウスデザインコンテスト2025
小倉 源吾 様|東京都
細長い建物をグッと湾曲させ、西海の豊かな森や風をすっぽりと抱き込むような空間構成に、タイニーハウスの無限の可能性を感じます。ヒノキの年輪のように、住む人の思い出やライフスタイルの変化に合わせて空間をDIYで拡張していける余白が秀逸です。視線を気にせず中庭でくつろぎ、ヒノキ香るサウナから外気浴へと繋がる動線は、日常を最高に豊かにする至福のギミック。自然と呼吸を合わせる柔軟な暮らしを見事に空間化し、移住者が地域と緩やかに繋がるための美しい器となっています。
青木 真里 様|愛知県
西海の森のなか、ヒノキ香る空間で地元の食材を通じた温かな交流が目に浮かぶ、非常に情景豊かな滞在記です。子どもたちが料理そっちのけで、木琴のように音が鳴るデッキに夢中になる描写からは、この建築がもたらす無邪気なワクワク感が見事に伝わってきます。初対面の人々がデッキで食卓を囲みすっかり打ち解け、「今度は違う季節にも訪れてみたい」と結ばれる物語は、まさに西海市での暮らしが人との繋がりで一回りも二回りも豊かになり、何度も帰りたくなる場所になることを確信させてくれます。
株式会社市場建築 代表取締役 市場 和浩 様、製作者 井手 幸弘 様|長崎県
西海の美しい海岸線から山間部まで、牽引車両で自由に移動できる「動く木の家」という構想に、モビリティの未来への大きなロマンを感じます。日常のワクワクするようなレジャーや民泊拠点から、万が一の災害時の避難所へとシームレスに役割を変える柔軟性は、レジリエンスの高い小さな暮らしそのものです。柾目や板目、浮造りなど、ヒノキの特性を活かしきった緻密な加工美も素晴らしく、風景を渡り歩きながら地域と人々の交流を紡ぐ、まさに西海市の新たなハブとなる力強い提案です。
Dal Architects 徐 鋒 様、陳 立猛 様、相羽 様|中国・北京市
目の前に広がる西海の海と呼応し、タイニーハウスそのものを「海と共鳴する楽器」へと昇華させるクリエイティブな構想に胸が高鳴ります。従来の枠を超え、西海産ヒノキを横向きに積んだ「木ブロック」の壁は、美しい天然の音響拡散体。波の音や潮風、ヒノキの清々しい香りが交じり合い、五感を震わせる日々は想像するだけでワクワクします。自然との境界を溶かす暮らしの究極形であり、美しい海辺の風景に溶け込みながら、自分だけの音や内面と深く向き合える、極めて詩的な「創作の避難所」です。
谷 卓思 様|広島県
「星降るまちの約束」という詩的なタイトルに違わず、西海の美しい星空を仰ぎ見るために屋根を開く(垂木をグラデーション状に組む)という、ピュアで大胆な空間構成に深く魅了されます。絶景の海岸線に寄り添うように建つこの離れは、自然を支配するのではなく、西海の風や星空とともに暮らす謙虚な姿勢を体現しています。焚き火を囲み、星を見上げるためだけに人が集うという余白のある設計は、何気ない風景を共有し、人と深く繋がる豊かな時間を美しく提示しており、地域の新しい公共性をも生み出すポテンシャルを感じます。
同济大学 建築と都市計画学部 丁 瑶 様|中国・上海市
生きたヒノキの巨木が六角形のガラス部屋を貫く「ツリーハウス」という構想は、自然との共生を究極の形で表現した、学生ならではの瑞々しく野心的な提案です。木々のざわめきや建物のきしむ音、遠くの潮騒までをも建築の一部として取り込み、「森と共に呼吸する」という体験の解像度の高さに驚かされます。単身用、家族用、仕事用と用途を分けた展開も面白く、ヒノキの家具や食器を用いて五感すべてで西海の森を味わい尽くす滞在は、自然と一体化する小さく豊かな暮らしの理想形であり、西海の山麓に新たな風景の物語を刻む作品です。
Frame Design Lab 竹中 隆雄 様|東京都
「住みたいかどうかというよりも新しいビジネスを起爆したい」という、提案者自身の熱烈な決意表明とも言える異色の滞在記に強く惹きつけられました。世田谷区にある近所のバーの常連である独身男性3人が、西海市でのタイニーハウス暮らしを妄想してあれこれと語り合うストーリー展開と、彼らの特徴を捉えた味のあるイラストが実にユーモラスで面白いです。高齢男性の孤立という切実な社会課題に対し、風光明媚で食べ物も美味しい西海市を最適な余生の舞台として選び、自らが移住して実証実験を行うという構成には圧倒的な熱量とリアリティがあります。西海市の環境だからこそ実現できる、希望に満ちた豊かなセカンドライフの形を力強く提示した見事なテキストです。
(以上の作品講評:YADOKARI株式会社 代表取締役 さわだいっせい)
アトリエ och 平野 佳乃 様|東京都
全体印象として、ヒノキの種というコンセプトでとても分かりやすく自然・地域・人の循環が表現されていて素晴らしいと思いました。特に西海に根付き人・森・風土を育てるというストーリー性が整理され単なる建築物の紹介ではなく思想のあるタイニーハウスと思います。暮らし・地域・建築をつなぐ軸になり作品の絵のタッチもやわらかく、ヒノキ・森を印象させる作品になっていて非常にすばらしい作品でした。
(講評:タイニーハウス研究会 会長 谷川信平)
坂田 慎也 様|千葉県
西海市の豊かな土壌と農業の物語を、タイニーハウスという空間へ見事に翻訳した社会的意義の深い提案です。身近な野菜である「オクラ」の五角形断面に着目し、少ない材料で強度を生み出す構造的アプローチには、思わず唸るようなクリエイティビティがあります。特徴的なフォルムは地域のシンボルとしてワクワク感を生み出し、農協や市と連携した「おためし移住」の拠点となるビジネスモデルも秀逸。小さな家から始まる大きな地域変革の起爆剤として、人と自然、そして生業(なりわい)を力強く結びつけるソーシャルデザインの好例です。
(講評:YADOKARI株式会社 代表取締役 さわだいっせい)
