お知らせ
2024.03.21
肌寒さが残るも、柔らかい陽に春の兆しが感じられた2月末のころ、長崎県西海市にて「さいかいタイニーハウスデザインコンテスト2023」の審査会が開催されました。
西海市とYADOKARIのコラボレーションにて開催する当コンテストの第1回テーマは「さいかい暮らし」。昨年12月から2月上旬までの短い期間に、251もの作品が集まりました。
小学生から60歳以上の方までと応募者の年代層は幅広く、全国のみならず海外からも応募があり、西海市ならではのタイニーハウスをつくる試みに、たくさんの方に関心をお寄せいただくことができました。
審査は主催者代表の杉澤泰彦西海市長、審査委員長の長崎総合科学大学名誉教授、宮原和明さんに加え、7名の審査委員により行われ、議論に議論をかさねて4件の受賞作品が決まりました。
その審査会の模様をレポートします。
審査会の会場は、西海市大瀬戸町にある公民館。集まった審査委員や関係者の皆さんは、この特別な日に緊張と期待を秘めた様子でした。
杉澤西海市長より「西海市は脱カーボンに取り組んでおり、森林資源を生かしたタイニーハウスの開発にも注目している。新しい市の魅力となるようなタイニーハウスを作りましょう」と挨拶があり、審査会がスタートしました。
審査委員長の宮原さんからは「今回たくさんの作品が集まり、優れたものが多く粒揃い。指定の時間内で受賞作品を決めるのは至難の業ではないかと思うほどですが、頑張って選んでいきましょう」と声をかけていただきました。
審査委員と審査方法
本年のコンテストは、西海市の総土地面積の55%を森林が占め、このうち人工林の94%を占める(この割合は長崎県内1位)西海市産ヒノキをふんだんに使用したタイニーハウスの西海市オリジナルモデルをつくり、それを市内に建設するというとてもユニークな内容です。
新しく建てるタイニーハウスは、西海市内外に向けて「さいかい暮らし」をPRする存在となるため、審査には建築やタイニーハウスの開発に関する専門家のほか、交流施設やゲストハウスを運営する移住者キーマンの方々にも参加いただきました。
【審査委員】
・長崎県建築士会 女性委員会委員長 三好 智子さん
・人・建築設計所 代表 髙橋 貴大 さん
・タイニーハウス西海モデル開発研究会 会長 谷川 信平さん
・山と海の郷さいかい 代表理事 橋本 ゆうきさん
・有限会社山﨑マーク 代表取締役社長 山﨑 秀平さん
・西海市観光協会 理事長 山口 文江さん
・YADOKARI株式会社 共同代表 さわだいっせいさん
【審査方法】
審査は以下のような流れで行われました。
・一次審査:審査委員が推薦作品を事前に選出
・二次審査:推薦作品を互いに評価しながら作品を絞り込む
・最終審査:更なるディスカッションを通して入賞作品を決定
一次審査
最初に、審査委員が事前に選んだ推薦作品を発表しました。それぞれのご専門領域や活動の実績を基準とした選考をしていただいており、選出作品の評価ポイントをお話しいただきました。
長崎市で設計事務所をなさっている長崎県建築士会 女性委員会委員長の三好さん(上写真にてマイクを持つ人物)は個性がありながらも住む場所としての構造や工夫が備わっているかをしっかりと見ておられました。畳の和の空間があるアイディアや一人暮らしや高齢者に向いているアイディアの作品などもあげておられました。
ご自身も移住者で、西海市で農林漁業体験民泊を手がけていらっしゃる山と海の郷さいかいの代表理事の橋本さん(上写真にてマイクを持つ人物)は、旅行者や移住関心層の目線で作品を選んでおられました。地域の魅力発信者の住まいとして設計されたアイディアや、住む場所に人を招き入れる「住み開き」が想定されたアイディアなどをお薦めされていました。
西海市で建築会社を営んでおられるタイニーハウス西海モデル開発研究会会長の谷川さん(下写真にてマイクを持つ人物)は、タイニーハウスを実際に建てることを重視し、ユニークなスタイルも持ちつつ、木材をふんだんに使ったものや、間取りや空間設計がしっかりしているアイディアなどを多くお薦めされていました。
このような流れで、全員で事前審査の作品を確認しました。その後さらに高く評価される作品を選ぶ二次審査へと進みました。
二次審査では作品をテーブルに並べ、ときにお互いの意見を交えながら選んでいきました。作品を審査する観点を多方面に巡らせながら、作品のアイディアの魅力や可能性についてチェックしていただきました。
タイニーハウスの建築を多く手がける人・建築設計所 代表の高橋さん(上写真3名の中央の方)は、応募作品のなかには、独創性、テーマ性だけでなく使い勝手の良さなど多くの利点が盛り込まれ、プロの住宅設計士の方がデザインしたのだろうという作品もあるとコメントされていました。
一方、タイニーハウスのなかで遊べる空間の設計が充実し、大人もワクワクさせられる小学生による作品や、将来のまちづくり商品開発のアイディアが充実した、拡張性があるアイディアなど、伸び代の多いアイディアも豊富にあり、選考者を唸らせる作品がたくさんありました。
西海市の空き家を改装した地域拠点の施設「HOGET」を営む有限会社山﨑マーク代表取締役社長の山﨑さん(上写真手前2名の左側の人物)は、日頃より交流を生む場における建物の力を感じるとのことで、タイニーハウスにおける移住者と地域住民の距離のとり方や、地域との接点となる居場所の楽しさのある有り様などの観点で審査をされていました。
繰り返し作品を吟味し、審査委員のみなさんの意見を集約させながら、審査を進めていきました。
審査は、作者の熱い想いや斬新なアイディアを重視しつつも、ヒノキなど西海市産の木材を十分に使えているか、地域内外の人が訪れたり住んだりしやすいか、という点も考慮しながら絞り込みをしていきました。
最終作品が6点ほどに絞られ、さらにディスカッションが繰り広げられました。
最優秀賞は実際に建築されることも考慮され、建設後の運用の面もあわせて検討されました。
甲乙つけ難い、魅力がしっかり詰まった作品ばかりで審査は困難を極めましたが、審査委員の皆さんの熟慮の末に、受賞作品が決まりました。
旭智哉さん、山地雄統さん
LIMBOON HAUさん、PYAEZONE AUNGSOEさん
北野 湧也さん
中林 金守さん
審査委員の皆さんが意見を交わし、議論の末に受賞作品を選ぶことができました。このコンテストを通してたくさんの作品に出会えたことに関係の皆さん深い感銘を受けておられました。
今後西海市の豊富な森林資源を活かしたタイニーハウスが誕生し、地域交流・地域経済の循環がさらに加速する、賑やかな未来がより身近に感じられるようになりました。