小屋×都市 #04 仲間をつくる小屋|都市を科学する〜小屋編〜 – オンデザインパートナーズ×YADOKARI

イラスト:千代田彩華

小屋を媒介にして、仲間やコミュニティができる事例を探してみた。
「つかう」「つくる」「あつまる」。いろいろなシーンが見えてきた。

 

小屋をみんなで「つかう」

仲間やコミュニティは、何かを共有することで生まれ、関係が深まる。

 

小屋ならば、一番シンプルなのは小屋そのものを共有することだ。

仲間でシェアする“秘密基地”小屋

共同で手に入れて、みんなで楽しめば、仲間との思い出が増えていく。

 

地域のみんなが活用する「コミュニティスペース」という発想もある。

人が立ち寄って日常を共有する、カフェのような役割を果たしたり、

中国庶民の下町に作られたコミュニティスペース「Micro-Yuan’er(微杂院)
Via:archdaily.com

 

子どもたちが集まって遊ぶ公園代わりになったりするだろう。

地元の人たちとアーティストがペイントした、クリエイティブなコミュニティスペース「Ecology of Colour」
Via: studioweave.com

 

協力して「つくる」

小屋を「つかう」のではなく、みんなで「つくる」のも良い。

参加見学自由なYADOKARI小屋部のワークショップ

 

それなりに大きなものを作るから、協力して進める作業が多いのだ。

みんなで協力してDIY

 

デザインやDIY技術、現場の仕切りなど、いろんな人の”得意なこと”が活きる。

熟練者が、興味のある人に技術を伝授する場面なんかもあるだろう。

子どもにも仕事が

 

こうして一つの「小屋」を完成させ、思い出や達成感をともにする。

2018年の夏、10人以上が集まった1週間の泊まり込みのワークショップで、モバイルハウスをつくって手に入れた松永さんが、次のように話してくれた。

神奈川県相模原市の廃材エコビレッジ「ゆるゆる」で開かれたワークショップ(龍本さん提供)

「一人でつくるのは、技術的にも精神的にも難しかったと思います。みんなで楽しくやるのが、完成させる一番のコツだったんじゃないかな」

制作途中に記念写真。中央から黒い手袋で手を振っているのが松永さん。このモバイルハウスで、仲間を訪ねる旅に出るという(龍本さん提供)

小屋をつくることで仲間ができ、仲間がいるから小屋もできるのだ。

 

極論すれば、必ずしも小屋でなくても良いだろうけれど。

オンデマンドで店舗や家具を出力。コミュニティを盛り上げる「Wikiblock」のオープンソース・ツールキット
Via:popupcity.net

モノ自体ではなく、そのプロセスである「つくる」を共有する。

みんなでDIYをするのに、小屋はちょうどよい規模感だ。

 

小屋同士が時間や思い出を共有する「あつまる」

小屋は小さいから、「あつまる」ことにも向いている。

 

小さな家で暮らす人たちは、価値観が通ずる部分もあるだろう。

屋外スペースを共有して暮らせば、けっこう距離が近い”ご近所さん”になる。

【タイニーハウスに行ってみた】先駆者たちのタイニーハウス村(前編)より、(c)Naoko Kurata

 

移動可能な小屋であれば、日時を決めてどこかに集まるのも楽しい。

30台以上のモバイルハウスが大集合した「キャンパーフェス2018in安曇野」

実践者同士だからこそ、語り合えることもあるだろう。

モバイルハウスの工夫をお互いに紹介して情報交換

 

都市の”部活動”としての小屋

何かを共有して、仲間を増やしたり、つながりを深めたりする。

そんな”部活動”のような機会が、都市に求められているのかもしれない。

 

小屋を「つかう」時間、
小屋を「つくる」体験、
小屋で「あつまる」空間。

 

小屋は、いろいろなシーンを誰かと共有するのに絶妙なスケール感だ。
(了)

【都市科学メモ】

小屋の魅力

仲間やコミュニティをつくるツールになる

生きる特性

共有しやすさ、適度なDIY難度、機動力、価値観が似た人を集める力

結果(得られるもの)

仲間・コミュニティ、思い出や時間の共有、協力体験、小屋を完成させる活力

手段、方法、プロセスなど

ひとつの小屋を共同でつかう
すでにある仲間やコミュニティで小屋を手に入れれば、そこで過ごす時間を共有できるようになる。
イベントに参加する
「つくる」仲間を気軽に探したい人向け。小屋が自分のモノにならないかもしれないが、ネットワーク、思い出、充足感は得やすい。経験豊富な人から知恵を得られる可能性も。SNSなどを通じてイベントを探すのも有効。いきなり「つくる」イベントではなく、まずは小屋をテーマに交流するような場に出かけても良い。下記は具体例
YADOKARI小屋部
複数の小屋が集まる
自分の小屋がある前提。タイニーハウスビレッジのような場所に住んだり、モバイルハウスでイベントに参加したりする。小屋を持つ者同士、価値観に通ずるところがあるはず。小さい小屋だからこそ、広くないスペースにたくさん集まれるし、専有するものが少ないからこそ、シェアや助け合いが生まれやすい。
【Theory and Feeling(研究後記)】
前回記事のここで書いた「旅する星空案内小屋」みたいなの、どこかでみんなでつくってしまうという方法があるなぁ、と書きながら妄想が膨らんできたりしました。

その勢いで11月上旬、「キャンパーフェス2018in安曇野」にお邪魔して情報を集めてきたわけですが、その話はまたどこかで。(たに)

 

「都市を科学する」の「小屋編」は、横浜市の建築設計事務所「オンデザイン」内で都市を科学する「アーバン・サイエンス・ラボ」と、「住」の視点から新たな豊かさを考え、実践し、発信するメディア「YADOKARI」の共同企画です。下記の4人で調査、研究、連載いたします。

谷 明洋(Akihiro Tani)
アーバン・サイエンス・ラボ主任研究員/科学コミュニケーター/星空と宇宙の案内人
1980年静岡市生まれ。天文少年→農学部→新聞記者→科学コミュニケーター(日本科学未来館)を経て、2018年からオンデザイン内の「アーバン・サイエンス・ラボ」主任研究員。「科学」して「伝える」活動を、「都市」をテーマに実践中。新たな「問い」や「視点」との出合いが楽しみ。個人活動で「星空と宇宙の案内人」などもやっています。

小泉 瑛一(Yoichi Koizumi)
建築家/ワークショップデザイナー/アーバン・サイエンス・ラボ研究員
1985年群馬県生まれ愛知県育ち、2010年横浜国立大学工学部卒業。2011年からオンデザイン。2011年ISHINOMAKI 2.0、2015年-2016年首都大学東京特任助教。参加型まちづくりやタクティカルアーバニズム、自転車交通を始めとしたモビリティといったキーワードを軸に、都市の未来を科学していきたいと考えています。

さわだいっせい / ウエスギセイタ
YADOKARI株式会社 共同代表取締役
住まいと暮らし・働き方の原点を問い直し、これからを考えるソーシャルデザインカンパニー「YADOKARI」。住まいや暮らしに関わる企画プロデュース、空き家・空き地の再活用、まちづくり支援、イベント・ワークショップなどを主に手がける。

また、世界中の小さな家やミニマルライフ事例を紹介する「YADOKARI(旧:未来住まい方会議)」、小さな暮らしを知る・体験する・実践するための「TINYHOUSE ORCHESTRA」を運営。250万円の移動式スモールハウス「INSPIRATION」や小屋型スモールハウス「THE SKELETON HUT」を発表。全国の遊休不動産・空き家のリユース情報を扱う「休日不動産」などを企画・運営。黒川紀章設計「中銀カプセルタワー」などの名建築の保全・再生や、可動産を活用した「TInys Yokohama Hinodecho」、「BETTARA STAND 日本橋(閉店)」などの施設を企画・運営。著書に「ニッポンの新しい小屋暮らし」「アイム・ミニマリスト」「未来住まい方会議」「月極本」などがある。