岐阜県・長良川鉄道3駅×We’ll-Being JAPAN、タイニーハウスを活用したワーケーション施設をオープン!

2020年から数年間は新型コロナウイルスの流行が歴史的に大きなトピックとして記憶されるのでしょう。しかしパンデミックの最中にも、ポジティブなムーブメントを創出しようと、行動している人がいます。そのひとりがタイニーハウスを軸にして、ワーケーションを推進する川口展満さんです。

We’ll-Being JAPAN 川口展満さん

”タイニーハウスを活用したワーケーション”という発明

タイニーハウスとは、1990年頃のアメリカでブームが起こり、今や住まいの選択肢として定着しつつある”小さな家”のこと。一般的な家よりも面積を抑えて住居費を安く、持ち物も少なくして身軽になり、その分物質的な枷から解放された自由を求める思想が、その根底にはあります。

川口さんは、住宅だけでなくオフィスにもタイニーハウスを取り入れれば、働き方も解放できると考えました。

「リモートワークが一般的になった今、かならずしもオフィスが都心にある必要はありません。むしろ日本各地にある素晴らしい土地でワーケーションをした方が、仕事の能率や創造性がアップすると、私は常々思っていました。しかしオフィスを作るのに大きなコストをかけるとなると実現が難しい地方もある。そこでタイニーハウスを活用することをひらめいたのです。オフグリッドのタイニーハウスなら、インフラの工事がない分低コストでどこにでも設置できます。更にシャーシ(車台)に乗り、車輪で移動ができるタイプなら、さまざまな場所での転用も可能です」(川口さん)

長良川鉄道・関駅に設置されたワーケーションタイニー内装
長良川鉄道・関駅に設置されたワーケーションタイニー外装

タイニーハウスは建設費が抑えられるうえ、コンパクトで自然の景観を壊すリスクもありません。ローコスト、ローリスクで実現しやすいのが大きなメリットです。実際に川口さんが取締役を務めるウェルビーイングジャパンは、既に各自治体や鉄道企業とコラボレーションし、各地でワーケーションの拠点づくりを行ってきた実績があります。

コロナ禍の地方滞在のひとつの形として

「私たちは2019年よりワーケーション事業を開始しており、その後コロナ禍の状況になったのですが、こんな状況だからこそワーケーションのニーズが高まっていると感じます。閉塞的な状況でストレスを抱えていては、仕事の能率が上がりません。移動を最小限に抑えて地元の人とのソーシャルディスタンスを保ちつつ、各地にじっくりと滞在するワーケーションというスタイルは、現在の地方と都市の関係性の、ひとつのあり方ではないでしょうか」(川口さん)

確かに実際に地方と首都圏の人口比を考えても、人の行き来を途絶えさせるのは現実的ではありません。タイニーハウスでのワーケーションであれば、双方が安心だと思えるまでの間ソーシャルディスタンスを保ちながら仕事をすることができます。

しかも川口さんのプロデュースするタイニーハウスは太陽光発電・蓄電池・水生成システム・排水浄化ユニット・浄水装置を完備。都市型のインフラを必要としない「完全オフグリッド」という先進的な構造。そんなタイニーハウスを使った長期滞在型のワーケーション施設は、さまざま状況に対応できる順応性の高さがポイントです。

新作ワーケーション施設はYADOKARIとのコラボレーション

ウェルビーイングジャパンの新しいワーケーションプロジェクトは、日本のタイニーハウスムーブメントを牽引してきたYADOKARIとのコラボレーション。一体どんなプロジェクトなのでしょうか。

「岐阜県長良川鉄道の『郡上八幡』駅構内にタイニーハウスを設置、コワーキングスペースとして解放しています。郡上八幡駅は城下町でもあり、また長良川の源流の豊かな自然に恵まれた土地です。そんな土地を象徴するような趣ある駅舎にマッチするデザインを、 YADOKARIと練り上げました。

この施設は月の半分は弊社のサテライトオフィスとして使用する予定ですが、その他の使用していない時間をコワーキングスペースとして解放します。また地域の振興に役立つ用途に活用していただいただいたりする計画です」(川口さん)

ウェルビーイングジャパンは快適なオフィス環境の提供に加えて、郡上市のアクティビティ提供企業等と連携し、郡上市のレジャーを体験するためのサービスも提供する予定とのこと。ワークとバケーションを両立するための拠点として、タイニーハウスを活用します。

「郡上八幡駅は1929に建てられた歴史ある駅舎で、有形文化財に登録されています。今回のタイニーハウスのデザインは、この貴重な駅の雰囲気を崩さぬようイメージをリンクさせました。具体的には駅舎と同様に外壁に焼杉を利用したり、日本に古来から伝わる伝統工法で建てていたりと、趣向を凝らしています。

実は川口さんは日本に100人程度しか現役世代がいないと言われる宮大工さん。神社仏閣の建築や補修に携わることもできるほどの技術を持っています。伝統工法を使ったタイニーハウスづくりは、川口さんならではの技術が活きているのです。

宮大工、川口展満さんがワーケーションを広める理由

川口さんが仕事を休暇と兼ねるワーケーションというスタイルを普及させたいと考えたのには、大工として働いていた経験が根底にあったといいます。

「私は宮大工の技術を活かして、各地の町屋などを修理する数寄屋大工の仕事をしています。私の技術が必要な建物がある土地に滞在するのが仕事のスタイル。様々な土地に滞在することが、仕事の創造性を高めることを、身を以て体験しました。その土地から受けた刺激を、自分の仕事に活かすという、仕事と旅の相乗効果は、きっとどんな仕事にもあるはずだという信念があるのです」(川口さん)

各地で受けた刺激を仕事に取り入れているという川口さん。特に今回のワーケーション施設のある岐阜県の長良川上流では、美しい自然と人々の優しさに感動したと言います。

「長良川という水の綺麗な川が流れるこの土地は、気の流れが良いせいか人々が本当に優しいです。今回は雨が多く施工が難航したのですが、そんななかでも提携した長良川鉄道の方々の心遣いに助けられました。食べ物もおいしくて、清流に育まれた鮎は絶品です。そういった岐阜の良いところを、このタイニーハウスに活かしたくて、地元の木材を使い、地元の職人さんにお願いしました」(川口さん)

その土地に長期間ステイして、仕事と生活をするということは、短期間の観光旅行に比べても、圧倒的に多くの情報をその土地から受け取れます。その体験は、コロナ禍において減ってしまった”体験からの学び”を補える貴重なチャンス。仕事のパフォーマンスのアップや、ワークライフバランスの好転、メンタルヘルスの維持など、多方面に好影響がありそうです。

長期化する在宅勤務のなかで、人生に新しい発見が不足しがちな今、岐阜県長良川でタイニーハウスでのワーケーションを体験してみてはいかがでしょうか。