【イベントレポート】 “ちょうどいい” 新・団地暮らし!コロナ禍 で見直す、理想の日常とは?|未来団地会議「鶴川団地プ ロジェクト」
1960年代に先進的な住まいとして導入された「団地」は、人口増加の受け皿として日本の発展を支えてきました。しかし、建設から50年余りが経過した現在、高齢化や世帯人員の減少、建物の老朽化などの課題を抱えています。
また、コミュニティという視点でも、世代間ギャップなどに起因する新旧住民間の「壁」や、周辺地域との連携不足など、団地内外のコミュニティにおける課題もあります。
一方で、近年、空室が目立つようになった団地をリノベーションし、単身者や夫婦をはじめとした若い世代が、団地を選んで住む動きも加速しています。団地の新たな住まい手たちから聞かれるキーワードの一つが「ちょうど良さ」。団地が持つどこか懐かしい雰囲気、シンプルな居住空間、都心との距離感、集合住宅ならではの人の気配などによって感じられる 「ちょうどいい住み心地」が人気の理由ともなっているようです。
本プロジェクトの第1回目のオンラインイベントとなる今回は、ゲストに「まちにわ ひばりが丘」など数々の団地やマンション等で、ご近所づきあいを通じた 社会課題の解決「ネイバーフットデザイン」事業に取り組む田中宏明さん(HITOTOWA INC.)と、公共空間活用の専門家であり、自らもお住まいの団地「志木 ニュータウン」を中心にマーケットによるまちづくりを研究・実践している建築家 鈴木美央さんをお迎えし、これからコミュニティビルダーとして東京都町田市の鶴川団地に住むことになる石橋竣一さん・鈴木真由さんも参加。鶴川団地を題材に、団地の未来に向けた「ちょうどいい暮らし」や「日常のコミュニケーション」について、参加者のみなさんと一緒に考えました。その様子をレポートします!
未来の豊かな住まいとしてのポテンシャルを持つ「鶴川団地」
UR都市機構の小山さんによると、鶴川団地は昭和40年代(1960年代後半)に東京都の多摩丘陵に造成された大規模な団地で、最寄りの小田急電鉄鶴川駅からはバスも数多く出ており、町田駅までは約10分、新宿駅まで約30分と交通利便性にも優れています。元の地形が丘陵なので眺望が良く、団地内にはリノベーションされた部屋やエレベーター設置棟もあり、今後も住まいとしてのポテンシャルを感じさせます。
鶴川団地の大きな魅力の一つが団地内の「商店街」。地域でも評判の良いお店が集まっており、空き店舗もありません。そして、小山さんがイチ推しするこの団地の魅力は「夏祭り」に代表されるコミュニティ活動の活発さです。鶴川団地の住民ではないのに昔からこの夏祭りには参加していたという町田っ子も多数。しかし新型コロナウィルス感染症の影響で夏祭り をはじめとした団地内のコミュニティ活動は自粛を余儀なくされているそうです。
そんな中、このプロジェクトの大きな目的の一つは、これまで紡がれてきた鶴川団地のコミュニティの維持・支援を、団地の住民はもちろん、町田市民や団地に興味のある多様な人々と一緒に行っていくことにあります。
その推進のヒントとすべく、鈴木美央さんに、約9年前から家族でお住まいの埼玉県志木市の団地での実体験やマーケット開催を通じて得たことをお話しいただきました。
一度住んだら離れられない団地の魅力
鈴木さんが、パートナーの生まれ育った場所でもある団地「志木ニュータウン」に住むことにしたきっかけは子育て。都市計画の文脈では、大規模開発と共に地域に脈絡のない集合住宅がいきなりでき上がる点や、建物もまちも30〜50年くらいで急激に老朽化していく点などの問題も指摘される団地ですが、団地に一度でも住んだことのある人が口を揃えて「団地が好き」と言うことに、鈴木さんは不思議な興味を感じていたそうです。そして自身も住み始めてみると「少なくとも子育て中は絶対に団地から離れられないと思うほど魅力がある」と言います。
マーケットはなぜ、まちづくりのパワフルなツールになるのか?
鈴木さんにとって志木ニュータウンがそれほどまでに魅力的な場所になった背景には、立地や環境などのハード面の条件だけでなく、鈴木さんが団地の仲間と共に2017年から続けてきた「柳瀬川マーケット」の開催により、地域コミュニティのつながりや活動が活性化したというソフトの面での理由もありそうです。
マーケットがなぜまちを変えることができるのか? 鈴木さんによると、マーケットはそもそも地域の魅力を発見することから始まっており、出店者は基本的には地域の人。知る人ぞ知る素敵な活動や商品を提供し続けている地域の人を発掘し、出店していただくことによって、マーケットに地域の魅力がビジュアル化されて立ち上がってきます。そこでの交流や体験を通して、参加者は自分のまちの魅力を認識するようになるのです。「何もないまちだと思っていたけど、こんなに素敵なお店があり、楽しい時間を過ごせるまちだったのか」と。マーケットを通じてまちを好きになり、まちを誇りに思う気持ち(シビックプライド)が生まれ、「住みたいまち」へと意識が変わっていきます。(452)
誰にでも開かれたマーケットであるための3つのポイント
鈴木さんが「柳瀬川マーケット」において大切にしているのが、「よりパブリックで、誰もが参 加できるマーケットにしたい」ということです。ともすると回を重ねる度に特定の人々の結びつきや存在感が増して(コミュニティの結束が強すぎる状態)、その輪に入れない人は疎外感を感じてしまうことにもなりがちですが、そうならないための3つのポイントをシェアしていただきました。
1.コミュニティをケアする
マーケットを特定の誰かのものではなく、多くの人に関わってもらえるものにするには、コミュニティを適切にケアしていくことが必要。具体的な工夫としては、
・運営者、出店者の集合写真をSNSにアップしない
・仲の良い出店者同士を並べて配置するのは2店舗まで(「あの人たちのマーケットね」と思わせない)
・カラーの違う人に入ってもらうことは重要(リタイアした方やご高齢の方にも入っていただく =その人の年代が参加しやすくなる)
・グループ出店不可、個としての出店のみ(個として負担のない出店料を設定する)
2.関わることができる余白の設定
「コミュニティは関われるか関われないかが重要で、会話がなくても何かすることがあるとそこ に所属している気持ちになれる」と鈴木さん。運営者が何でもつくり込み過ぎず、「余白を残して参加者の能動的な活動を引き出す」という場の設計が重要のようです。
「柳瀬川マーケットでもみんながピクニックするみたいに楽しんでくれたらいいなと思っていましたが、おしゃれなレジャーシートをつくって販売や貸し出しをしても、それは運営者側がしてほしいことに参加者が乗っかっただけになるので、しないで待っていました。すると7回目くらいで自発的にピクニックをする人が現れたり、ある出店者さんがみんなで使える簡易テーブルを持参したりし始めました。そうやってみんなが自らマーケットを楽しむことが大切 だと思います。出店や会話することだけではなく、この風景をみんなでつくっていること自体が一つのコミュニティの在り方ではないかと思います」
3.関わり合いのレイヤーを設計する
コミュニティにどれだけ関われるか、関わりたいかは人によって違います。鈴木さんが紹介してくださったデータ(市民のまちづくりへの関心度合い 2015/野村総合研究所)によると、
・関心があり、自ら企画・運営している(1%)
・関心があり、参加している(4%)
・関心があるが、行っていない(58%)★
・関心はない(37%)
まちづくりに関心はありながらも活動はしていない層が最も多いことが分かります。この人たちがまちに関わることができる仕組みが必要で、それは日常生活や趣味の延長線上にある、自分の好きなことや負担のないことが適切だと鈴木さん。
「マーケットは、運営というかなり強いコミットもあれば、出店や、買い物に来るだけというゆるい参加までいろいろなレイヤーがあり、自分の好きな関わり方ができる点も魅力。マーケットはみんなの『コモン(共有財産)』ではないかと思います」
これらのポイントを心がけることで、より多世代・多様な人々が集うパブリックなマーケットやコミュニティが運営できそうですね!
広い公共空間と適度な人口密度が「団地にくらすよろこび」をつくる
マーケットは年に数回のイベントですが、一方で鈴木さんの住む団地には、日常的にコミュニティを豊かにしている重要な存在があるようです。それは団地内の緑地や花壇の世話をしている植栽委員の方。ほぼ毎日、団地内の公共空間を巡回して植栽や芝生の手入れをしていることで、住民たちと自然に交流が生まれ、子どもたちのケアにもつながっているそうです。また団地内の緑地で育ったミントやブルーベリーは住民たちの食卓に上ることもあります。このように公共空間の手入れをしながら敷地内の見守りも行ってくれる存在は、住民に大きな安心感や豊かな気持ちを与えているようです。
さらに、公園では実は起こりにくい異年齢・多世代交流が生まれやすいのも団地の公共空間の特徴だそうです。愛犬の散歩を通じて子どもからお年寄りまで多世代が輪になり会話するシーンや、幼稚園児から中学生くらいまでの子どもが一緒に遊ぶシーンが見られるそうです。これも団地という一つのまちに暮らす、ある程度顔見知りの関係性がベースにあるから起こること。
広い公共空間と適度な人口密度を兼ね備えているからこそ、心地よい距離感での人とのつながりや、共有財産によるベネフィットが手に入る団地。日々の暮らしの中で実感できる小さなよろこびが、自由に収穫できる果実のように、いたる所に実っている場所なのかもしれません。
「しがらみ」と「こどく」の間のネイバーフッドデザイン
続いて田中宏明さんからは、2015年からご自身が現地に常駐してコミュニティ活性に取り組んだ、東京都のひばりが丘団地のプロジェクト(まちにわ ひばりが丘プロジェクト)での実践事例や見識などをお話しいただきました。
「現在、コロナ禍で半径500m〜1kmくらいの関係性が大事と言われていますが、近年、集合 住宅や住宅地におけるコミュニティ(ご近所づきあい)の重要性が注目されています。防災などの側面で見ても、一人ないしは一世帯でできることには限りがあるので、地域一体で取り組める関係があるといいですよね。
また、何かやりたいことがある場合に、周囲に友達や気軽に相談できる人がいると始めやすい。地域にそういう関係性があると、多くの人にとって暮らしが楽しくなりますし、管理の面でも連携が取れて、まち全体の豊かな環境づくりにつながります。趣味や学びを共有できる集まりも増え、まちがにぎやかになり、面白い人たちが集まるようになります。
『コミュニティ』と聞くと、『しがらみ』というような少し面倒くさい関係をイメージする方もいらっ しゃるかもしれません。その一方で、社会では『こどく』も問題となっています。私たちはこの 『しがらみ』と『こどく』の間の“ちょうどいいつながりづくり”を『ネイバーフッドデザイン』と呼んで取り組んでいます」と田中さん。
理想的なご近所づきあいとは、干渉しすぎず、無関心でもなく、心地いい距離感を保ちつつ、いざという時には頼り結束できる関係性を育むことだと言えそうです。
新旧住民が一体となって継続的にまちづくりに参加できる仕組み
そのような関係性を、田中さんはひばりが丘団地でどのように育んでいったのでしょうか?
ひばりが丘団地は、昭和34(1959)年に首都圏初の大規模団地として、現在の西東京市と東久留米市にまたがる一帯に開発されました。自治の歴史がしっかりとあり、昔から自治会が幼児教室を運営するなど住民自らこのまちを豊かにしていこうという機運が息づいているのがこの団地の良い所です。
一方で、古くなった団地の建て替えで生まれた敷地に建設された分譲マンションや分譲住宅に新たに流入した住民と、元々の団地の住民との関係づくりという課題もありました。
そこで田中さんらは、団地の自治会と、新たなマンション・住宅の管理組合の関係をつなぎ、この地域が一体となってコミュニティ活動を持続していけるように、外部組織として2014 年に「一般社団法人まちにわ ひばりが丘」を設立、その運営を担うことでまちづくりを支援していきました。いずれはこの組織を地域の住民たちへ手渡して自治によるコミュニティの継続を実現することも最初から計画し、2020年度からは住民主体で運営されています。
まちづくりに参加できる場所と機会を用意する
次に、田中さんが団地の現場で具体的に行った活動について教えていただきました。
「場所としては、エリアマネジメントセンターとして改修された『ひばりテラス118』がシンボルとなり、ここに人が集まる仕掛けをしていきました。この建物の隣にあるみんなで使える畑を一緒に耕したり、『HACO NIWA』という、住民たちがハンドメイド雑貨を販売できるレンタルボックスを設置したり。このボックスは現在キャンセル待ちが40〜50件あり、団地内に自分の作品を届けたい人たちが大勢いることが分かります。また、敷地内にある花屋さん、カフェも人が集まる拠点となっています」
「機会としては、団地内の公園の清掃管理を担う代わりに公園を貸し切ってイベントを行っていきました。ひばりが丘の周年イベントである『にわジャム』の中で、みんなでごはんを食べる『まちにわ食堂』などを継続的に行い、2〜3年経つと夜のマルシェみたいなこともやらせていただけるようになりました。
個人的にとても良かったと思うのは、団地の姿を記憶するアーカイブを設置する企画です。 団地の歴史を感じる写真を展示すると、ご高齢の方も昔のまちのことをイキイキと話してくださり、団地のことを深く知ることができました」
その他、自治会と連携して行ったハロウィンイベントは、まち全体にチェックポイントを設けて仮装して出迎えていただくという内容で、今までイベントに参加しづらかったご高齢の方々も、まち全体がハロウィンの雰囲気になることによって参加していただきやすくなったそうです。
また、30年ほど前から次第に開催が難しくなってきていた餅つき大会は、分譲マンションの住民主催で行うようになり、そこに団地の住民の方々がだんだんと加わり、現在は共催という形で開催されるようになりました。
参加方法は人それぞれ。団地の外にも染み出す関わり
田中さんからも、こうしたコミュニティ運営への参加方法は、その人の主体性に合わせてさまざまな形があるとコメントがありました。
・活動の趣旨を理解して、応援をしている
・情報に目を通し、リアクションする
・イベントやキャンペーンに参加
・イベントや広報のお手伝い
・ボランティアスタッフ
・企画・主催する
・リーダー
(仕掛け人)
どんな参加方法でも、まちのことを考える人が増えていくのが重要だと言えます。
また、ひばりが丘団地内の関係づくりだけでなく、団地の外の人でも活動に参加できるボランティアチーム「まちにわ師養成講座」を開催したり、消防署の協力のもとで誰でも参加できる防災イベントを行ったりして、団地内外の関わりをもたらす仕掛けも行いました。
持続するネイバーフッド・コミュニティ
田中さんからのまとめとして、継続していくコミュニティを育成するためのポイントを共有いただきました。
・ビジョン、組織体、事業に一貫する仕組み
・まちにおける自治/管理/経営の組織バランス
・サービス受益者を産むだけではない相互コミュニケーションの回復
・活動エリア内→外へ染み出す関わりを増やす
一人でも多くの住民がまちのことを考え、関わることができる多様なきっかけをつくり出していくことが、住民の主体性を引き出し、持続可能なコミュニティ形成につながっていくと言えそうです。
第3部 トークセッション
イベントの終盤では、事前に設定した9つのテーマや、参加者からチャットで寄せられた質問を起点に、ゲストやコミュニティビルダーとの対話が展開しました。そのハイライトをご紹介します。
Q1)コロナ禍×団地で起きたこと
田中さん:「“ハレの日”的なこと(イベントなど)が開催しづらくなった分、“ケの日”=日常が大事ではないかと考え、ひばりが丘では近所からキッチンカーを出していただいてみんなで 屋外ランチを楽しんだり、芝生を使っていただくようなことを促しています。コロナ禍では、まちを庭のように使える人が増えたと感じます」
鈴木さん:「昨年5月に学校が閉鎖になり、公園の遊具なども使用禁止になって、親としても どうしたらいいのか分からなかった時に、外の公園に行くことは禁止したけれど、団地内の公共空間で遊ぶことは許しました。団地は不特定多数の他人の集まりではなく、なんとなく 顔見知りで、精神的にも団地の中を守ろうとする雰囲気があります。コロナで外出しづらく なった時にその共同体が自分の周りに広がっていることがどれほど豊かな環境であるかを 改めて感じました。屋外でみんなと一緒にいられる空間があるのはありがたいですよね」
Q2)団地に住むご高齢の方との関わり方
鈴木さん:「マーケットを始めた時、とにかく最初は『迷惑をかけない』ということを徹底しました。なぜなら、やはり長年住んでいる人は、まちで新しいことが起こるのを警戒するだろうと考えたから。徐々に町内会町さんたちとも仲良くなって言われたのは、『最初は地域の祭り もあるのに、なぜこんなことをするんだろうと思った』ということ。私たちはお祭りを潰そうとしているわけではないのに、やはり警戒するんですよね。でもそれを口で言うのではなく、基本的にはこちらがリスペクトして、細かい気遣いを丁寧に行っていき、私たちがやりたいことを見てもらいながら分かっていただくことが大事だと思います。論破しようとするとハレーションを生んでしまいますよね。
また、ある方からは『このマーケットがあると孫が遊びに来てくれるからうれしい』と言っていた だけました。万が一、最初は否定的な気持ちを持っていたとしても、孫が来てくれるというう れしさが伴って肯定的に見てくれるようになることもあります。あくまでみんなのフィールドだし、自分たちよりも前からその場所を大事にしている人たちがいるということを前提にすること が重要ではないでしょうか」
田中さん:「ひばりが丘団地の自治会は長く継続されていて、役員さんは70代、80代の方でした。自治会から、まちでやっていた行事が担い手不足で実施できなくなってきたというお話を最初に聞き、僕らがやりたいことをお伝えするというよりは、まずはまちに飛び込んでいって、まちの活動をお手伝いすることから始めました。例えば夏祭りでも1年目は駐輪場の 整理などをやらせていただき、2年目3年目はお店を出させていただきました。この夏祭りで は、昔はお神輿が担がれていたけれど近年はそれがなくなっていたので、子どもたちと一緒にリヤカーにお神輿を乗せてまちを練り歩くということをしたら、ご年配の方にもとても喜んで いただけました。このことがその後のハロウィンイベントなどにもつながっています」
Q3)「団地がもっとこうだったらいいな」と思うことは?
鈴木さん:「自分の『好き』をもっと表に出してもいい、ということが伝わっていくといいな。個人の趣味や『好き』が集合することによって場が豊かになることがもっと認められていくとい い。例えばツリーハウスをつくりたい人が、団地の中につくってくれたら最高! 団地は公園などの公的な公共空間とは違って、あくまで私有地だからできることがあると思うんです。だからこそオープンに、みんなが自分の庭としてやりたいことを共有できたら自然と面白くなると思います」
————————–
団地の持つ「ちょうど良さ」は、公共空間と適度な人口密度があるからこそ、いつでも人とゆるやかな接点をつくることができ、日常的に小さなよろこびが得やすいという点にありそうです。そして団地で何か活動をしていく際には、その場所を長く大切にしてきた人たちへの丁寧な心遣いも不可欠です。「ハレの日」的なイベントを開催するだけでなく、日常の中での関わりしろを工夫して小さなコミュニケーションを積み重ねていくことが、じわじわと団地全体、ひいては外部にも染み出す心地よい生態系をつくることにつながっていきそうですね。 鶴川団地の今後の展開にご注目ください!
◎今回のスペシャルゲスト
鈴木美央(すずきみお)さん
博士(工学)/建築家 8年前から団地に住まい、団地内公共空間の豊かさに取りつかれ、一軒家に憧れるも引っ 越せなくなる。団地内の公園でマーケットを主催する。O+Architecture(オープラスアーキテ クチャー合同会社)代表社員。東京理科大学講師。早稲田大学理工学部建築学科卒業。卒業後渡英、Foreign Office Architects ltdにてコンセプトステージから竣工まで世界各国で大規模プロジェクトを担当。帰国後、慶應義塾大学理工学研究科勤務を経て、同大学博士 後期課程、博士(工学)取得。現在は建築意匠設計から行政・企業のコンサルティング、公共空間の利活用まで、建築や都市の在り方に関わる業務を多岐に行う。二児の母でもあり 親子の居場所としてのまちの在り方も専門とする。著書「マーケットでまちを変える~人が集まる公共空間のつくり方~」(学芸出版社)、第九回不動産協会賞受賞。
田中 宏明(たなか ひろあき)さん
HITOTOWA INC. シニアプランナー 1991年長野県飯田市出身。大学休学中に地方と都市部それぞれの地域コミュニティ醸成に触れ、卒業後はフリーランスとして複数のまちづくり関連のプロジェクトに携わる。2015年 よりひばりが丘団地のエリアマネジメントプロジェクト「まちにわ ひばりが丘」の事務局として現地に常駐。2017年よりHITOTOWA INC.に所属し、ご近所付き合いを通じた社会課題の解決=「ネイバーフッドデザイン」事業に取り組む。2020年2月より賃貸マンション「フロール 元住吉」の管理・コミュニティサポート業務と、マンション共用部に併設された地域交流スペース「となりの.」の運営業務を担当する。