自然に寄りそって暮らすための、木の箱「The Box House」
オーストラリアのシドニーから数百km南に位置する森の中に、The box houseと呼ばれるキャビンが建っています。このキャビンのオーナーは、かつてはこの場所でテント暮らしをしていました。しかし、テントよりもっと生活のしやすいシェルターを求めて、Neeson Murcutt Architectsの設立者の1人である建築家、Nicholas Murcuttにキャビンのデザインをお願いしたのです。
このThe box house、開口部がたくさんあるので一見複雑そうな作りに見えますが、実際はとてもシンプルな木の箱です。北側の壁だけはほぼ一面がガラス窓なので、施工には技術が必要でしたが、その他の部分はすごくシンプル。北側以外は、サイディング(建物の外壁に使用する,耐水・耐天候性に富む板)の壁に小さな窓がいくつか空いているだけ。一般的な家屋のような断熱材ははいっていませんし、内装の仕上げも一切なし。ユーカリの木のサイディングに合うように、窓部分に木製の雨戸がついているだけです。
このキャビンが建てられた当初は、電気も水道もガスもありませんでした。トイレすらないので、近所の家のトイレを借りて生活していたそう。現在は、ソーラーパネルを設置して自家発電したり、雨水をタンクにあつめて生活用水として使用しているようです。電気や水を得たといっても、あくまでも自然に寄り添った生活を送り続けているそうです。
外観、設備だけではなく、中身もシンプル。1階のメインのフロアと、ロフトだけという構成です。メインのフロアは6m四方の36平米。ロフトはその半分弱の広さです。床面積の数字だけ見ると狭いと思いがちですが、北側の大きな開口部と、1階部分に連続しているデッキのおかげで、全く狭さを感じさせません。それに加えてこの立地。周りの森や野原をリビング代わりにくつろぐことができそうです。晴れた日は外で食事をとるのも気持ちよさそう。「家が欲しい」ではなく、「シェルターがほしい」と言ったオーナーの気持ちがわかるような気がします。