汚染されたブルックリンの運河に浮かぶ、実験的ボートハウス「Jerko」

南米、ペルーとボリビアにまたがる、チチカカ湖に浮かぶウロス島は葦を幾重にも積み重ねて作られた浮き島だ。ここに住む人々は、この葦の天然のボートの上に家をつくり暮らしている。その時の気分で、葦の土台を周りから切り離して家ごと引っ越してしまうこともあるそうだ。なかなか自由気ままで素敵だ。

チチカカ湖から遠く離れた、ニューヨークにも同じようにボートの上に家を建てて住んでいる人がいる。今回取り上げるのは、ニューヨークのような大都会でも自給自足な暮らしが可能であることを証明すべく、二階建てのボートハウスをつくった男の話だ。

酷く汚染されたブルックリンのゴワナス運河に点在するボートハウス。そのうちのひとつ、ピエロの絵が描かれた家こそが、自給自足に挑戦するボートハウスだ。「The Jerko」と言う名のその家は、29歳のアダム・カッツマンが所有するエコなボートハウス。カッツマンは、自身のボートハウスをエネルギー効率良く作り、市からの電気は一切受けていない。

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カッツマンはたったの1ドルでボートハウスに住んでいた家族からボートを譲り受けた。彼はそのボートを回収物を使用して改装した。彼は、屋根にソーラーパネルを設置し、必要最低限の電気をまかなった。その総ワット数は350ワット。ソーラーパネルは彼の日々の質素な生活を支えるのに十分な需要を満たしていたものの、嵐や吹雪の際は電気の供給ができずにまだまだ試行錯誤の最中だ。

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水はろ過システムを採用し、雨水の飲料水利用をしている。一日あたり、1人や2人程度の人が使用する分には十分な量を供給できる。

カッツマンは家の小さなキッチンで、パラボラ型ソーラークッカーで料理をする。室内にあるガーデンシステムで育てた野菜やハーブを料理に使っている。生ごみはすべて堆肥にしている。そして、汚水処理タンク方式を使用したトイレを使い、堆肥を作っている。まさにすべてをリサイクルする家だ。

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また、竹を使用した自然のフィルターを使用した水上農園を作った。この竹のフィルターを使い、汚水に酸素を送りながら処理をするようになっている。ボートハウス自体の大きさは約32㎡あり、ニューヨークのワンルームマンションに相当する広さだ。室内はビンテージの家具や雑貨が置かれ、どこか懐かしくそれでいてオシャレな空間になっている。

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都市の資源を一切使用していないにもかかわらず、ニューヨーク市はゴワナス運河にあるボートハウスを取り締まる可能性がある。EPA(環境保護庁)は運河自体が毒性を持っているため、その上に生活するのは危険であるとみなしたためだ。住民たちは係留許可を購入しているものの、市当局によると、彼らは土地所有者に家賃を払わず、建築及び消防検査にも合格する必要があると言う。また陸に住む住人は、カッツマンの近隣住民によって主催されたパーティーの騒音について苦情の声を上げているということも背景にあるようだ。

様々な問題に直面しながらも、一年ここで過ごすと決めたカッツマン。生活のすべてがリサイクルに直結するボート暮らしで限りなく少ない資源を最大限に活用するために、可能性を模索する日々だ。

違法か合法かは今後の市の判断に任せるとして、カッツマンの試みは巨大な汚染都市におけるエネルギー効率の良い生活を提案するという点において、非常に画期的なプロジェクトである。

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Via:
fubiz.net
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