海
<海ってすごい>
海が見たい。一度は言ったことありませんか?人は何故、海が恋しくなるんでしょうか。羊水と成分が似てるとか、人間の祖先は海から始まった、母なる海など、世間に広がる理由はいろいろあります。バカヤロー!と叫ぶ定番から水平線に沈む夕日は恋愛のスパイスに欠かせなかったりと、数々の場面に実に臨機応変に対応してくれる海。人を選ばず、波内際に立てば、誰もがヒーロー、ヒロインになれる力がある。でも、それを何故?と考えたところで、理由は全くわからない。でも、そこが良かったりする。わからないから惹かれるし、魅力があるんだと洗脳される。恋愛と一緒ですね。海に恋していると言っても、強ち嘘ではないですし。私は海好きが高じてダイバーにもなりました。水中世界は更に海の魅力を教えてくれます。
<海との距離感>
私の故郷、北海道は海に囲まれていますが、殆どが海水浴禁止の荒れた海。夏が短く、雪に埋もれている時間が多い為、水温は尋常じゃない低さです。冬には流氷が来てしまう程ですから。そのため、水着で海へ!っていう発想が道民には全くありません。海は遠くから眺めるもの。もしくは、暖房器具完備の建物の窓から眺めるのが正しい海の楽しみ方だったりします。流氷ダイビングというものがあって、流氷の下を潜るのですが。。やりたいと思ったことは一度もなかったですね。
学校でも水泳の授業などは無く、泳げない人が大半でした。私も小学生の頃は、水が怖くて顔も付けられない程でした。今となっては笑い話ですが。なので、海に触れる機会は殆ど無かったですね。でも、東京に来てからというもの、夏は海、ダイバーになってからは、1年中、海。そんな感覚が自然に身に付きました。ただ眺めるだけではなく、海と触れ合う楽しさを初めて知って、自分の世界も広がりました。こんなに素晴らしい世界を今まで知らなかったことを悔やみ、自分の知らない世界の中には、まだまだ素晴らしい物が沢山あるんだと気が付くきっかけとなったのです。海が自分とは無関係に思えていた学生時代、本当はずっと憧れていたのかもしれない、と今はそう思えます。
<海の力>
自分の人生の中に、海で過ごす時間が入り込むようになって、劇的に変わったことがあります。一つは「出会い」。ダイビング仲間はもちろんですが、サーファーも釣り人も、漁師さんも、皆、海を好きな人達。手段は違っても、海を介してすぐに楽しい話が出来る。何故海が好きなのか、そんな話をするうちに、その人の人生が見えたりする。初対面でもそんな話が出来てしまうのは、まさに海の力。海好きなマスターが居るお店、週末には海のそばを走る人、犬の散歩は必ず海に行く人、海のそばに住んで居る人。意外と海に魅せられている人は多い。なので、あっという間に輪が広がる。そして、自分の世界も広がっていくのです。
二つ目は、精神的に落ち着く事。科学的にも海の色と波の音は自律神経に作用する事がわかっているようですが、理屈ではなく、体感すれば誰もが納得するでしょう。波が寄せては返って行く様をいつまでも眺めていたいと思うし、潮の匂いや波の音は、どんなアロマにも負けないヒーリング効果があります。私の場合は、暗示にかかっている部分もあるのか、行けば必ずモヤモヤが浄化されて、元気をもらえます。頭の中がすっきりと整理される感覚とでも言うのでしょうか。「水の音」にはリラックス効果がありますよね。
<自然の2面性>
まさに「いいことづくし」なんですが、海はヒーリンググッズではなく、壮大な自然であることを忘れてはいけないとも思います。現在も世界のあちこちで火山が噴火したり、津波におそわれたり、船が海に沈んだり、震災が起きたりと人間の限界を簡単に超えてしまう、逃れられない自然の怖さを日々見せつけられているような気がします。海での事故は毎年必ずニュースになるし、ダイビングでも死亡事故は絶えません。実際に私も、海の中に居る時に地震が起きたり、雷が落ちたり、ダイビング中に1人はぐれて水面で10分くらい助けを待った経験があります。自然の素晴らしさが、私達人間に与えてくれるものは計り知れないですが、同時に容赦なくどんなものでも奪ってしまう怖さと背中合わせであること。だからこそ感謝の気持ちを忘れたくない、と思います。
<海との共存>
海を愛する気持ちが、自分を豊かにすることに繋がって、そこに人が集まり、皆を幸せにする。幸せの連鎖。感謝の連鎖。何かを共有出来る人達が集まれば、海に関わらず、同じ連鎖が起こるのでしょうけど、共有の対象が自然であることに魅力を感じたので、今回記事にしてみようと思いました。「自然を共有する」って何か漠然とした感じがありますが、「海を共有する」って言われたら、イメージしやすいですよね。当たり前にある日常と、同じようにある当たり前の自然。当たり前の海。知らないうちに、そこから計り知れないパワーを受け取って、私達はより良い暮らしが出来ているのです。人間は自然と共存しなければ生きていけない動物です。心と身体のバランスが取れなくなる生き物です。我々が目指す未来は、自然を壊してコンクリートジャングルを造ることではなく、自然と共存する為に何をしなければいけないか、自然のありのままをどれだけ残していけるかです。自然環境はすべて世界遺産になってもおかしくないと心から思います。そこまでしても守られるべきものではないかと。今の日本は、オリンピックに向けてセッセと海を埋め立てて、更にコンクリートジャングルにしようとしている。四季がはっきりしている日本の自然こそが、何よりもアートで世界に誇れる遺産なのに。既に東京には自然が無くなってしまっている証拠なのかもしれません。
<幸せの連鎖>
ミーハー的海好きライターの独り言から始まった今回の話。意外と奥が深いことに本人もびっくりです。今まで海に興味がなかった方も、時間を作って行ってみようか、癒されてみようか、と思っていただけたら嬉しいです。私と同じ海好きな方は、ゴミのひとつでも海岸や海中で拾ってみよう、海好きの輪を広げてみようと思っていただけたら、更に嬉しいです。海が持つ不思議な力、癒しの力を大勢の方と共有して、幸せの連鎖が広がっていくと素敵ですね。